このページではα7 IIIとセットで手に入れたソニーの望遠ズームレンズ「FE 70-200mm F4 G OSS」をレビューしています。FE70-200mm F2.8 GMが登場した今となっては影の薄いズームレンズですが、実際に使ってみるとシャープな描写と良好なボケ質を併せ持つハイクオリティなレンズであることが分かりました。
Index
仕様おさらい
FE70200 G | EF70200 F4L | AF-S 70200 F4G | |
レンズ構成 | 15群21枚 | 15群20枚 | 14群20枚 |
絞り羽根枚数 | 9枚 | 8枚 | 9枚 |
最小絞り | 22 | 32 | 32 |
最短撮影距離 | 1-1.5m | 1.2m | 1m |
最大撮影倍率 | 0.13倍 | 0.21倍 | 0.27倍 |
フィルター径 | 72mm | 67mm | 67mm |
最大径×長さ | 80x175mm | 76×172mm | 78×178.5mm |
質量 | 840g | 760g | 850g |
手ブレ補正効果 | 非公開 | 約4段分 | 約4段分 |
ご覧のように、一眼レフ用レンズと比べて特に小さく無ければ軽くもありません。
ミラーレスの長所を活かしやすい(小型化しやすい)広角?標準レンズと比べて気になるサイズ感ですね。α7シリーズは一眼レフよりボディサイズが小さいので余計にレンズが大きいと感じるかもしれません。
さらにキヤノンやニコンの競合レンズと比べて明らかに接写性能が低いことは大きなマイナスポイント。植物や小動物の撮影が多いので、せめて0.20倍程度は欲しかったなぁと感じます。
また、最小絞り値の幅が狭いため被写界深度優先で撮影する場合に自由度が少し狭い。奥行のある風景写真や接写時のパンフォーカス撮影などで気になるポイント。
最も注意したいポイントはテレコンバージョンレンズに非対応であること。300mm F5.6や400mm F8として使える柔軟性が無いため、望遠側が200mmで十分かどうかは購入前によく確認しておきたいですね。
外観
金属製の頑丈な鏡筒
鏡筒は金属パーツで構成され、しっかりとした造り。
質感はキヤノンのLレンズと似ており、「G」の刻印が無ければキヤノンレンズと言っても過言ではないはず。
手に取るとやや重いと感じますが、F2.8ズームと比べて遥かに軽量。フードと三脚座を外せば普段使いでも許容範囲内と言ったところでしょう。
プラスチック製レンズフード
プラスチック製の円形フードは価格を考えるとしっかりとした造り。
装着はバヨネット式でロック機構は無し。C-PLフィルターの操作窓はありません。
内側には反射を低減させるため、フェルトのような生地となっています。光の反射を低減する反面、小ゴミが付着しやすいことがネック。
個人的に好きなポイントはフード先端のゴムラバー。レンズを垂直に立てておく場合に安定して自立します。
72mmフィルター口径
フィルター径は72mm。一眼レフ用の70-200mm F4と比べて少し大きめの口径を持っています。
「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」や「FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS」と同じ口径でフィルターを使いまわせるので便利。単焦点レンズだと「FE 100mm F2.8 STF GM OSS」が72mmですね。
インナーズームのためズーミングによる鏡筒長さに変化はありません。鏡筒内でレンズ群が前後に移動します。
マウント部にシーリング無し
「ちょっとどうなの?」と感じたポイントがマウント周辺部。
「防塵防滴に配慮」と謳っているわりにマウント部にシーリングが見当たらない。せめてシグマのようにスカートを付けるとか、出来なかったのでしょうか?
マウント部は他社と同様に4本のネジで固定されています。
ズームリング・フォーカスリング
ズームリングの回転角は約90度。
動作のトルクは丁度良いか、少し重い程度。印字は「70mm・100mm・135mm・200mm」の焦点距離が表示されています。個人的に150mmの画角も多用するので表示して欲しかったですねえ。
フォーカスリングは他のレンズと同じくバイワイヤ方式。一眼レフの超音波モーター駆動のようにAF-C作動中の直接介入(フルタイムマニュアル)が出来ないのでフォーカスホールドボタンなどを駆使する必要があります。
レンズにはフォーカスホールドボタンが3カ所配置されており、カメラ側で機能をカスタマイズ可能。
スイッチ類
- AF/MF切替
- AFリミッター「∞-3m・FULL」
- 手振れ補正 オン/オフ
- 手振れ補正 モード1/2
オートフォーカス切替操作はカメラ側から「DMF」や「AF/MF切替」などの制御に対応しているのであまり使わないかもしれません。
接写性能があまり宜しく無いので、AFリミッターの恩恵はやや薄いです。それでもハンチングを予防するのであればAFリミッターを作動させておくと間違いないでしょう。
手振れ補正はまずまず良好な効き目です。マイクロフォーサーズのカッチリ固定される手振れ補正と比べると少し効き目が甘いかなと感じます。
三脚座
FE70-200mm F4 G OSSで最も不満なポイントがこの三脚座。
レンズとの接触面はフェルト加工の滑り止めが施されています。90度ごとのクリックストップはありません。
ガイドレールのような仕組みは存在しないため、三脚座のネジを緩めすぎるとがたつきが大きい。また、三脚座のネジは締め付けまでのアソビが少なく、比較的緩みやすい印象です。
アルカスイス互換では無い点も含めて、各社三脚座の中で使い勝手はかなり悪いと感じるレベル。
金属製の三脚座は取り外し可能ですので、必要無ければ外して軽量化を図ると良いでしょう。取り外しはネジを緩めて手前へ引っ張ることで留め具が外れます。
α7 IIIとの組み合わせ
α7 IIIへの装着例。
両手で構えている場合は問題ありませんが、メニューや設定を操作する時にα7のグリップが小さくホールドし辛いと感じます。特にα7はメニューの「戻る」機能が左肩の「MENU」ボタンなので面倒くさいですね。
カメラプレートやエクステンショングリップを装着することでハンドリングは若干ですが改善します。
描写チェック
ボケ1
このレンズの好きなポイント。
他社一眼レフ用の70-200mm F4と同じく、ズームレンズとしてはとても良好なボケ。
前後とも滑らかで特に前ボケがとても素晴らしい。特に厳しいシーンを除いてボケが騒がしいと感じる場面は少ないはず。
軸上色収差による色づきは少なく、高コントラストなシーンでも特に目立つことは無いはず。
ボケ2
遠景解像
このレンズの好きなポイントその2。
絞り開放からほぼ全域シャープな描写性能。少なくとも2400万画素のα7 IIIで使う限り、描写低下を少し感じるのは絞り開放の200mm四隅のみ。
重箱の隅を楊枝でほじくるように等倍クロップでチェックするならば、1?2段は絞ると良いでしょう。
回折の影響は許容範囲内なので、被写界深度優先で小絞りを使うのはやぶさかでない。
私の個体は200mmの右上が極僅かに片ボケの傾向でした。
シャープネスの結果早見表
A…とても良好・B…良好・C…普通・D…やや甘い・E…甘い
F4 | F5.6 | F8 | F11 | F16 | F22 | ||
70mm | 中央 | A | A | A | A | A | |
隅 | B | A | A | A | B | ||
100mm | 中央 | A | A | A | A | A | B |
隅 | B | B | A | A | B | C | |
135mm | 中央 | A | A | A | A | A | A |
隅 | B | B | A | B | B | B | |
200mm | 中央 | A | A | A | A | A | A |
隅 | C | B | B | B | B | B |
個体の片ボケにより200mm F4?F5.6の右上のみ「E」
70mm
100mm
135mm
200mm
実写
隅から隅までシャープなレンズなので風景撮影で積極的に使いたい望遠ズームレンズ。
防塵防滴仕様が不安なので悪天候に持ち出すのは憚られるものの、描写性能は非常に良好。
α7 IIIの良好な分解能も手伝って2400万画素らしからぬ高い解像感です。マイクロコントラストはより安価なシグマ「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM」より良好、線が少し細い描写です。
前後の良質なボケは実写でも良い感じ。
ハイライトの内側は滑らかで、縁取りは強く無いとてもナチュラルな描写。個人的に好みです。騒がしいと感じるシーンはごく一部の極めてシビアな状況のみ。
四隅の口径食がやや強め。イルミネーションなど玉ボケが多くなるシーンは注意したほうが良いでしょう。
発色やコントラストはヌケが良い単焦点レンズと比べて劣りますが、ズームレンズとしてはまずまず良好。
α7 IIIと組み合わせた場合、近距離の小動物を撮影する際のオートフォーカスは良好に動作。
一眼レフ用の超音波モーターと比べて初速や切り返しが軽快でD850や6D Mark IIよりも好み。
駆動音はゼロで無いため、ボディ内マイクを使うと音を拾うかもしれません。
至近距離を爆走するウサギもα7 IIIと組み合わせることで捕捉可能。
メカシャッターによる連写なのでα9や電子シャッターで連写する一部のミラーレス一眼(E-M1 Mark II)と比べて少し劣ります。
レンズの接写性能が悪いため、爆走するウサギは手前に近寄られて撮影距離を割られることが多い。捕捉したら高速連写でコマ数を一気に稼ぎたいところ。
まとめ
FE70-200mm F4 G OSSの特徴
- 金属鏡筒のしっかりとした造り
- テレコンバージョンレンズ非対応
- 不安が残る防塵防滴仕様
- ライバルと比べて接写性能が悪い
- ライバルと比べて小絞りの限界値が小さい
- レンズフードのゴムラバーにより垂直置きが安定する
- インナーフォーカス・インナーズーム
- 使い勝手がやや悪い三脚座
- α7 IIIと組み合わせると少しレンズのサイズが大きい
- 前後共に滑らかで良好なボケ
- 2400万画素で隅から隅までシャープな解像性能(200mm F4の四隅を除く)
- 実用的なオートフォーカス速度
「ソニーFEで望遠ズームならとりあえずコレ買っとけ」と言うことが出来る一本。テレコン非対応と三脚座のクオリティさえ妥協できれば特に不満なポイントはありません。
テレコン非対応200mm望遠ズームですので汎用性は70?300mmや100?400mmと比べて劣りますが、携帯性や解像性能のバランスは高水準と感じます。これで防塵防滴仕様がもう少ししっかりしていれば強くおススメできるレンズだったかもしれません。
悩ましい選択肢は恐らく「FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS」であるはず。同価格帯で300mmまでズームレンジがあるので使いやすいですね。個人的にFE70-300mmをチョイスするのであればシグマ「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM」も悪く無いのじゃないかなと思います(AF速度はやや劣りますが)。画質優先なら間違いなくFE 70-200mm F4 G OSSがおススメ。
購入早見表
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