「NIKKOR Z 35mm f/1.8 S」のレビュー第一弾を公開。シンプルなコントロールですが、防塵防滴の堅牢な外装で、フォーカスブリージングが良く抑えられてる点が特徴的でした。
簡易的なまとめ
野暮ったい外観とシンプルすぎるコントロール、十分ながら電光石火とは言えないAFなど、高価な35mm F1.8としては不満を感じる部分がいくつかあります。とはいえ、可動部が少ない防塵防滴の頑丈な作りと考えれば許容範囲内。
また、カスタマイズに対応する滑らかなフォーカスリングに問題はなく、手頃な価格のプロツールと思えばバランスよくまとまっているようにも見えます。Z8のようなカメラと組み合わせると、カメラ側の操作が豊富なのでレンズはシンプルで問題ないと感じました。
さらに、フォーカスブリージングが良く抑えられている点でキヤノンやソニーとは大きく異なります。
The outdated appearance and overly simple controls, along with autofocus that is adequate but not lightning-fast, are among the areas that leave something to be desired for an expensive 35mm F1.8 lens. However, considering its dust- and weather-resistant construction with few moving parts, these shortcomings are within acceptable limits.
Additionally, the smooth focus ring, which supports customization, functions well, and when viewed as an affordable professional tool, it appears to be well-balanced. When paired with a camera like the Z8, which offers abundant camera-side controls, the lens's simplicity feels appropriate.
Furthermore, it differs greatly from Canon and Sony in that focus breathing is well suppressed.
NIKKOR Z 35mm f/1.8 Sのレビュー一覧
Index
まえがき
- 発売日:2018年 9月28日
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickr
2018年にニコンZシステム始動時にリリースされたレンズ3本のうちの一つ。
今でこそF1.4やF1.2レンズが存在するものの、最初の5年間くらいは 35mm F1.8 S が35mm唯一の選択肢でした。最初の単焦点レンズとして、使いやすい焦点距離の本製品を選んだ人も多かったのではないでしょうか。
現在は「NIKKOR Z 35mm f/1.4」「NIKKOR Z 35mm f/1.2 S」のほか、リバースエンジニアリングと思われるサードパーティ製の35mmを利用可能。選択肢が広がっています。しかし、純正品で汎用性の高いレンズとして、35mm F1.8 S を検討している人はまだ多いはず。
主な仕様
35mm F1.8としては平均的な9群11枚のレンズ構成。構成中には2枚のEDレンズと3枚の非球面レンズを採用。ナノクリスタルコートを採用するなど、力の入った製品となっています。
AFは2系統のフォーカスユニットを動かすマルチフォーカス方式を採用。「近距離の収差を劇的に改善しながら、極めて高いピント精度と高速なAF制御を実現」とニコンが言及しています。
レンズマウント | Z |
対応センサー | フルサイズ |
焦点距離 | 35mm |
レンズ構成 | 9群11枚 |
開放絞り | F1.8 |
最小絞り | F16 |
絞り羽根 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.25m |
最大撮影倍率 | 0.19倍 |
フィルター径 | 62mm |
手振れ補正 | - |
テレコン | - |
コーティング | ナノクリスタル SIC |
サイズ | φ73.0×86.0mm |
重量 | 370g |
防塵防滴 | 対応 |
AF | STM マルチフォーカス |
絞りリング | - |
その他のコントロール | AF/MFスイッチ |
付属品 | レンズフード ポーチ |
価格のチェック
売り出し価格は10万円前後。光学性能・ビルドクオリティを高めた「S-Line」シリーズらしく、35mm F1.8 レンズとしてはやや高価。キヤノン・ソニー・パナソニックなど競合他社を見渡しても、本製品が最も高価な35mm F1.8となっています。それだけのクオリティを実現していると期待したいところ。
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S | |||
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外観・操作性
箱・付属品
NIKKOR Zらしい、黒と黄色を基調としたデザインの箱。35mm単焦点レンズとしては箱のサイズが少し大きめ。50mm F1.8 S-Lineと同程度。
レンズ本体のほかに、レンズフードとポーチ、通常のつまみ式キャップ、説明書・保証書が付属します。
外観
NIKKOR Z レンズとしては古い世代のレンズデザイン。「NIKKOR」「S-Line」のロゴはまとめて側面に配置され、レンズ上部には焦点距離とF値のみ掲載。独立したコントロールリングは存在せず、幅広いフォーカスリングが鏡筒の大部分を占めています。
鏡筒の素材はフォーカスリングの前後にプラスチックパーツを使用、フォーカスリングやマウント付近には金属パーツを使用しています。質感は悪くなく、幅広いフォーカスリングの存在で「頑丈な金属鏡筒」のような印象。
一見するとシンプルでモダンな外観にも見えますが…。幅広いフォーカスリングは使いやすいものの、全体的に見ると野暮ったい印象。
焦点距離やF値の表示のみ加工され、その他の表示はプリントでレンズ下部に記載。製造国は中国。
ハンズオン
サイズ | φ73.0×86.0mm |
重量 | 370g |
競合他社の35mm F1.8と比べると、全長が長く、重量のあるレンズ。レンズ構成枚数は他社と同程度ですが、防塵防滴のプロ仕様と考えると妥協できる範囲内。
前玉・後玉
「S-Line」はナノクリスタルコートが標準採用されているものの、NIKKOR Z 24-70mm F4 Sのようにフッ素コーティング処理は施されていません。水滴や汚れの付着が想定されるシーンではプロテクトフィルターを装着しておくと良いでしょう。
35mm F1.8のフィルター径はメーカーによってバラつきがあるものの、NIKKOR Z は比較的大きめの62mmに対応。NIKKOR Z 50mm F1.8 S や Z 50mm F1.4 、Z 105mm F2.8 と同じフィルター径なので揃えやすい近距離の収差を劇的に改善しながら、極めて高いピント精度と高速なAF制御を実現。
金属製レンズマウントは4本のビスで本体に固定。マウント周辺に防塵防滴用のシーリングあり。後玉はマウントから少し奥に配置、周辺は不要は反射を抑えるために黒塗りされています。
フォーカスリング
金属製の幅広いフォーカスリングを搭載。滑らかに回転しますが、期待よりも少し緩め。応答性は機種によって変更でき、リニアレスポンスで操作角度の調整が可能。変更できない機種はノンリニアレスポンスで、リング回転速度に応じで90-360度くらいのストロークで操作可能。
スイッチ
左側面にはA/Mスイッチのみ搭載。
Fnボタンなどはありません。
レンズフード
花形レンズフードが付属。機能性のないシンプルなデザインで。フードを逆さ付けにした状態でもフォーカスリングは辛うじて操作することができます。
装着例
Z 8 に装着したところバランスは良好。ボディが大きいので特に問題はありません。ただし、比較的コンパクトなZ 7 / Z 6 やAPS-Cに装着すると、レンズが少し大きめと感じるかもしれません。
レンズとグリップの間には余裕があり、前面Fnボタンは操作しやすい。幅広いフォーカスリングに触れてしまいそうですが、マウント付近でに僅かな「くびれ」があるので、ここに指をひっかけておくことが可能。
AF・MF
フォーカススピード
ステッピングモーター駆動のマルチフォーカス方式を採用。
リニアモーターを使った電光石火のAFと比肩する性能ではないものの、このレンズを必要とする撮影には十分な速度。近距離の動体撮影で使う場合は力不足と感じるかもしれません。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
公式で「フォーカスブリージングを抑制」とあるように、35mm F1.8 レンズとしてはフォーカスブリージングが良く抑えられています。キヤノンやソニーの同等品はフォーカスブリージングが非常に目立つので、比較して遥かに使いやすい。
精度
Z 8との組み合わせで大きな問題はありませんでした。ミスショットがあるとすれば、カメラ側の問題であることが多い。(特に被写体検出が途切れたり、意図しない場所を検出したりした時)
MF
前述したように、フォーカスリングは少し緩めで滑らかに回転。
機種によっては応答性を調整できるため、好みの操作性で利用することが可能。
まとめ
野暮ったい外観とシンプルすぎるコントロール、十分ながら電光石火とは言えないAFなど、高価な35mm F1.8としては不満を感じる部分がいくつかあります。とはいえ、可動部が少ない防塵防滴の頑丈な作りと考えれば許容範囲内。
また、カスタマイズに対応する滑らかなフォーカスリングに問題はなく、手頃な価格のプロツールと思えばバランスよくまとまっているようにも見えます。Z8のようなカメラと組み合わせると、カメラ側の操作が豊富なのでレンズはシンプルで問題ないと感じました。
肝心の光学性能はと言うと、まだテスト中ですが「S-Line」らしい優れた結果。
開放から非常にシャープで、色収差は効果的に補正されています。いくつかの点から「Z 50mm F1.8 S ほどではない」と感じるものの、F1.8から隅までシャープで、被写界深度以外で絞る必要性はほとんどありません。
比較的安価な35mm F1.8は隅に向かって画質低下が目立つので、その点で均質性の高いレンズと言えます。また、滲みを伴う柔らかいボケからは程遠いものの、悪目立ちする収差が良く押さられ、使い勝手の良い「綺麗な」ボケでした。
価格なりのパフォーマンスはあるのかなと。
購入早見表
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作例
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