ニコン「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」のレビュー第一弾を公開。今回はレンズの外観や操作性、カメラに装着してAF/MFの使いやすさなどを確認しています。
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8のレビュー一覧
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビュー 完全版
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.5 諸収差編 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.4 ボケ 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.3 解像チャート 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.2 遠景解像 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF 編
Index
まえがき
2023年7月に発売したニコンZマウント用のF2.8大口径望遠ズームレンズ。一般的な「70-200mm」よりも望遠側の焦点距離が短く、インナーズームではなく伸びる方式のズーム構造を採用。さらに光学手振れ補正を搭載しないことでレンズの小型軽量化を実現。また、従来のF2.8ズームと比べて手ごろな価格もあって、気軽にF2.8 望遠ズームを体験することが可能。
ちなみに、F2.8ズームレンズながら「S-Line(ニコン独自の設計指針と品質管理をさらに厳格化したNIKKOR Z レンズの中でも、さらに高い基準を満たしたレンズ群の名称)」ではありません。他の非S-Line F2.8ズームレンズである「NIKKOR Z 17-28mm f/2.8」「NIKKOR Z 28-75mm F2.8」と同じく、光学設計や製造がタムロン(ネット上では「T-Line」とも)なのではと言われている一本です。
概要 | |||
---|---|---|---|
レンズの仕様 | |||
発売日 | 2023年7月14日 | 初値 | 18万2,000円前後 |
マウント | Z | 最短撮影距離 | 0.27-0.85m |
フォーマット | フルサイズ | 最大撮影倍率 | 0.48倍 |
焦点距離 | 70-180mm | フィルター径 | 67mm |
レンズ構成 | 14群19枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | 防汚 / SIG |
絞り羽根 | 9枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ83.5mm×151m | 防塵防滴 | 対応 |
重量 | 約795g | AF | STM |
その他 | テレコン対応・防汚コート | ||
付属品 | |||
キャップ・フード・ケース |
レンズ構成や各種パラメータは「70-180mm F/2.8 Di III VXD」とよく似ているものの、フォーカスユニットにステッピングモーターを使用している(タムロン版はリニアモーター「VXD」)、AFで最大撮影倍率0.48倍を達成、NIKKOR Z テレコンバージョンレンズ対応、など、仕様面でいくつかの違いあり。単なるタムロン版の移植ではないことが分かります。
価格のチェック
売り出し価格は「163,350円」。タムロン版が「123,748円」で販売開始したことを考慮するとやや高め。とは言え、互換性を保証されたニコン純正「NIKKOR Z」として売り出していること、AF対応の最短撮影距離改善、テレコンバージョンレンズ対応などを考慮すると価格差ぶんの価値はあると考えています。実際のどのようなパフォーマンスを発揮するのかはこれからのテストでじっくり確認していく予定。
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 | |||
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レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
NIKKOR Zらしい、黒と黄色を基調としたデザインの箱。2018年のZシステム始動時から変化はありません。
レンズ本体のほかに、レンズフードと通常のつまみ式キャップ、説明書・保証書が付属します。非S-Lineのレンズですが、レンズポーチが付属しています。
外観
外装は全体的にプラスチックパーツが多めで、ズームリングのみゴム製カバーを装着。表面は光沢を抑え、少しざらつきのある塗装が施されています。触った際の質感に安っぽさは無く、しっかりとした作り。ただし、S-Lineのような高級感もありません。
コントロールはズームリング・フォーカスリング・ズームロックスイッチのみ。L-FnボタンやAF/MFスイッチはありません。
ズーム操作によって内筒が最大で3cm伸びる仕様。素材は鏡筒と同じくプラスチックで、伸ばした際のガタツキや歪みはありません。
ハンズオン
800gを切る重量であり、F2.8望遠ズームレンズとしては驚くほど軽量。大口径ズームレンズと言えば、大きく重く、携帯し辛いのが悩ましいところ。しかし、本レンズは重量とサイズをよく抑えています。長時間の手持ち撮影でも苦と感じることはありませんでした。小型軽量化は、望遠側の焦点距離が短いこと、伸びるズーム方式の採用に加え、光学手振れ補正を搭載していない点も軽量化に繋がっていると思われます。
前玉・後玉
前面は67mm径のねじ込み式フィルターに対応。フッ素コーティング対応のため、過度にプロテクトフィルターを装着する必要はありませんが、C-PLやNDフィルターで光線や光量を調整したい場合は活用したほうが良いでしょう。
最後尾のレンズはレンズマウントからやや奥まった位置にあります。タムロンのEマウント用レンズでは対応するコンバージョンレンズがなかったものの、ニコンZマウント用では2つのテレコンバージョンレンズに対応。
フォーカスリング
表面にローレット加工が施されています。コントロールリングとして、自分好みの機能を割り当てることが可能。必要なければフォーカスリングとして操作することも可能。回転は滑らかですが、抵抗が弱く、回転動作は少し緩め。フォーカス操作時のレスポンスはノンリニアで、回転速度に応じてピント移動距離が変化。ストロークは焦点距離によってばらつきがあり、広角側で最も短く、望遠側で最も長くなっています。
ズームリング
70mmから180mmまで約90度の操作角度で回転。全域でかかるトルクは一貫しており、小さな力でも滑らかに操作可能。ちなみにタムロン版では「100mm」と表示されている箇所が「105mm」となっています。ニコン的なこだわりポイントでしょうか。
側面には70mmでのみ固定できるズームロックスイッチを搭載。鏡筒左側にあるため左手で操作しやすい反面、テレコンバージョンレンズのリリーススイッチと似たような配置となっているので誤操作に注意。
レンズフード
レンズにはプラスチック製のレンズフードが付属。このクラスのレンズフードと言えば円筒型ですが、比較的コンパクトな花形を採用しています。装着した状態でレンズをフード側から立たせることは難しく、少し不便と感じるかもしれません。また、C-PLフィルターを操作する窓は無し。
テレコンバージョンレンズ
ベースになっていると思われるソニーEマウント版には無かったテレコンバージョンレンズに対応。既存のニコン純正テレコンバージョンレンズで問題なく動作します。ソニーEマウント版はライセンス上の問題でテレコンバージョンレンズを用意できなかったとは言え、タムロンは将来的にこのよな展開に備えてマウント付近の空間を確保した光学設計を採用していたのでしょうか。前述したように、テレコンバージョンレンズのリリーススイッチと、レンズ側のズームロックスイッチの配置が似ています。誤ってレンズのリリーススイッチを操作しないように気を付けたいところ。
装着例
Z 8に装着。少し長めの70-300mmズームレンズを装着しているような感覚で利用することが出来ます。一般的な70-200mm F2.8と比べて収納性が優れているのは間違いない。一方で、200mmに固定したまま収納、運搬するのは難しく、内側の鏡筒に負担をかける可能性があります。
AF・MF
フォーカススピード
タムロン版では初めてリニアモーター駆動(VXD)を採用しており、AF-C時に超高速なAF速度を実現しています。このニコン版ではなぜかステッピングモーター駆動に切り替わっています。フォーカス速度は十分良好ですが、VXD駆動ほど電光石火とは言えません。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
70mm
105mm
180mm
皆無というわけではないものの、接写性能を考慮するとよく抑えられているように見えます。
精度
今のところZ 8との組み合わせで問題なし。
MF
前述したように、フォーカスリングが緩く、ノンリニアレスポンスのため操作性が良いとは感じませんでした。ただし、ピントの微調整で利用する際に問題ないストロークは確保されています。
まとめ
小型軽量で手ごろな価格のF2.8 望遠ズームレンズ。S-Lineほどの高級感はありませんが、しっかりとした外装。ただし、コントロールは最小限に抑えられています。個人的にはAF/MFスイッチくらいは用意してほしかったと考えています。
タムロン版を使用した経験があるからこそAF速度は「少し遅い」と評価してしまいますが、実写で不満を感じるようなパフォーマンスではありません。むしろ、大部分の撮影では満足のいくフォーカス速度を備えていると思います。
既に光学性能のチェックを始めていますが、全体的に良好なパフォーマンスを発揮しているように見えます。ただしいくつか気になる点があるので、今後のレビューで紹介予定。
購入早見表
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 | |||
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作例
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