コシナ フォクトレンダー「NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM」のレビュー第五弾を公開。接写では滲む後ボケが得られますが、それ以外では縁取りが硬め。気になる場合は1~2段絞っての撮影が良さそうです。
NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM のレビュー一覧
- NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM レンズレビュー完全版
- NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM レンズレビューVol.5 ボケ編
- NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM レンズレビューVol.4 諸収差編
- NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM レンズレビューVol.3 解像チャート編
- NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM レンズレビューVol.2 遠景解像編
- NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C VM レンズレビューVol.1 外観・操作編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
このレンズは撮影距離によって質感が変動しますが、近距離では滲むような柔らかい後ボケ。接写時はもう少し滲みが強くなります。
前ボケ
後ボケはとは打って変わって縁取りが少し強めの描写。ただし、極端な質感ではなく許容範囲内。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
テストした撮影距離では縁取りが非常に強い描写。口径食の影響も強く、状況によっては騒がしい背景となる可能性があります。2段絞ると改善しますが、円形絞りではないためボケが角ばる点に注意。
ボケ実写
至近距離
接写時は滲みを伴う柔らかい後ボケ。ピント面も強く滲むため、コントラストを重視する場合は少し絞ったほうが良いでしょう。
近距離
ボケの質感が変化し、縁取りが強めの描写。ただし、ボケが大きいので背景の騒がしさは抑えられています。少し目立つ場合でもF2-2.8まで絞ると改善します。
中距離
さらに縁取りの強いボケ質へと変化。騒がしいと感じる状況が増えるため、静かな背景を好むならF2-2.8まで絞るのがおススメ。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れる撮影距離でも背景に十分なボケが得られる。もちろん少し騒がしい描写なので、状況に応じて1~2段絞ると良さそう。ただし、40mm F1.4はボケが大きいため、上半身くらいまで近寄るとボケ質は気にならなくなります。
まとめ
近距離では球面収差が強めの柔らかい後ボケ。このような場合は文句なしの夢のような描写が得られます。特にミラーレスはヘリコイド付きアダプターを装着することで撮影距離の短縮化が可能。より近い距離で球面収差が強い結果を得られます。ただし、柔らかい描写が得られるのは被写体に接近した場合のみで、一般的な撮影距離(人物やそれ以上に離れる場合)では前ボケと質感が逆転。縁取りの強い騒がしい描写へと変化します。問題ない場合もありますが、気になるときは1~2段絞ったほうが良い結果を得られるかもしれません。状況によって変化するボケ質を好まない場合、最初から数段絞っておくのも一つの手。コマ収差や周辺減光も良く抑えられるので、レンズの色やコントラストを活かすことに集中できることでしょう。
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