ボケ味に変態的なこだわりを持って登場したオリンパスのF1.2 PROシリーズは2018年に登場した17mm F1.2 PROを加えて3本となりました。滑らかで魅力的な描写のレンズですが、どれもこれも10万円を超える強気な価格設定ですね。
今回は「F1.2 PROを買いたいのだけど、どれを買えば良いか分からない」迷える子羊を誘うべくページを作成しました。
Index
F1.2 PROシリーズの特徴
滑らかなボケ
オリンパス公式ウェブサイトが主張している通り、ボケ質にこだわったレンズ。
特に後ボケが大きく滲む傾向を持ち、2線ボケが発生しない滑らかなアウトフォーカスを楽しむことが可能。小ボケ領域がじわりじわりと滲み、大ボケ領域は背景の輪郭を溶かすため視覚的にボケ量が大きく感じられます。滲みが大きいので色収差が目立たず柔らかい描写です。
一方、前ボケは比較してボケ質が固め。と言っても一般的なレンズと比べてまだまだ良好。ただし、後ボケと比べて滲みが少ないので色収差が目立つシーンがあります。そのようなシーンでは1?2段ほど絞って色収差を抑える必要があります。
3本とも似たような傾向の描写なので使い勝手を共有できる点が便利ですね。
周辺まで安定した解像性能
ボケ味を重視したレンズは絞り開放の解像性能が安定しないものですが、このシリーズはF1.2から四隅までシャープな描写を堪能できます。ボケ質と解像性能を両立したレンズはマイクロフォーサーズシステムでは貴重な存在。
マイクロフォーサーズ用でここまで高水準を維持したレンズは少ないはず。ボケ、もしくは解像性能のいづれかに欠点(多少なり)を抱えていることが多くこのシリーズほど安定感はありません。
このパフォーマンス(ボケ味と解像性能の両立)はフルサイズ用の高価で巨大な単焦点レンズでしかお目にかかったことが無い画質と言うことが出来ます。
統一されたサイズ・重量
3本とも似たようなサイズ・似たような重量のレンズです。他社を含めてここまで統一感のある単焦点レンズ群があるでしょうか?
面白いことにレンズフード(バヨネット)やフィルター径まで統一しているので使いまわしが容易。あまりにも似ているのでカメラバッグに収納するとどれがどれだか分からなるなるのが欠点。
どのレンズもサイズが大きく、逆光耐性で気になるポイントがある
どのレンズも光学設計が複雑でレンズ構成枚数が多いのも特徴の一つ。マイクロフォーサーズ用レンズとしては重く大きく、逆光時に複数のゴーストが目立ちやすい(発生しやすいとは別にして)傾向があります。
下にゴーストが発生した場合の作例を掲載。
PROレンズらしい堅牢性と操作性
金属製の頑丈な鏡筒に加えて信頼性の高い防塵防滴仕様。後玉はマウント面で固定されているためボディ側のメカダストが入り込む余地がありません。前玉ももちろん固定されたインナーフォーカスタイプです。
前玉に撥水・撥油性を持つフッ素コーティングが施されていれば完璧でしたが、オリンパスはまだフッ素コーティングを導入していない模様。これは是非とも今後のレンズで改善して欲しいポイント。ただし、撥水・撥油性の高い保護フィルターを装着してしまえばこの問題は解消できます。
フォーカスリングはクラッチ構造を採用しているので電子制御式ながら近接端・望遠端でハードストップがあるピント操作を楽しむことが可能。
MFT用レンズとしては高価
どのレンズも10万円を超える高価な値札が付けられています。F1.4やF1.8のレンズが2?5万円程度で販売していることを考えるとコストパフォーマンスは悪いと感じることでしょう。
10万円もあれば17mm F1.8・25mm F1.8・45mm F1.8を揃えてしまうことが出来そうです。
3本とも買った私が言うのもアレですが、やっぱ高いです。せめて8mm F1.8 FishEye PROと同程度の価格設定なら良かったのですけども…。
ただし、どの焦点距離にしても防塵防滴仕様のレンズはこのシリーズのみ。防塵防滴を重視するのであれば高くても買うしか無い特性。(42.5mm F1.2も非防塵防滴)
レンズの紹介
M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO
2018年に登場した最も新しいF1.2 PRO。カメラグランプリ2018でSIGMA 135mm F1.8 DG HSMやSONY FE12-24mm F4 Gなど凄いレンズを押しのけてレンズ大賞に輝いた一本です。
マイクロフォーサーズの準広角としては非常に大柄で重たいレンズです。「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」や「LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH.」を扱いなれた人からすると、このサイズは許容しがたいかもしれません。正直に言うと、17mm F1.2 PROを所有したとしても携帯性の高い17mm F1.8や15mm F1.7は欲しくなります。
また、準広角レンズなのでF1.2の明るさがあったとしてもボケ量は多くありません。もしも全身ポートレートなどの距離感で被写体を浮かび上がらせたいのであれば、焦点距離を変えるか、VoightLander NOKTON 17.5mm F0.95を使うか、素直にフルサイズを使うべき。
他2本と同じく後ボケ重視で滲みを伴う滑らかなボケ質。比較して前ボケは硬さを感じるものの、この焦点距離で前ボケが気になるシーンはそう多く無いはず。
大ボケ領域が狭い一方で、小ボケ領域が広く「レンズの味」が活きてくる焦点距離でもあります。「滲みのあるボケ」を最も感じやすいPROシリーズは今のところ17mm F1.2 PROと言えるでしょう。
ちなみに他2本が「Made in Japan」であるのに対し、本レンズは「Made in Vietnam」だったりする。
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競合レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8
- M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8
- LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH.
- LUMIX G 20mm/F1.7 II ASPH.
- 19mm F2.8 DN
- 16mm F1.4 DC DN
- VoightLander NOKTON 17.5mm F0.95
あわせて検討したいレンズは特に「シグマ 16mm F1.4 DC DN Contemporary」。絞り開放の解像性能は17mm F1.2 PROほどで無いものの、ボケ味は負けず劣らず良い感じ。サイズや重量はドッコイで価格は1/3程度とお手頃感がありますね。
17mm F1.8や15mm F1.5は小型軽量なので携帯性は明らかに良好。
M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
F1.2 PROシリーズ最初の一本。
なんだかんだで使いやすい標準画角のレンズ。私が最も多用しているのはコレ。画角とボケ量のバランスが良く開けても良し絞っても良し。
高周波域の解像性能が抑えられているのか17mmや45mmほど尖ったシャープネスではありませんが、人物を撮るには使いやすい特性を持ってます。風景で使うと周辺部で僅かに非点収差の影響を感じるかもしれません。また、レンズ構成枚数が他と比べて少し多く、透過率や逆光耐性に影響を及ぼしています。
LEICA25mm F1.4やM.ZUIKO 25mm F1.8など魅力的なレンズが多いので、2?4倍も高価な本レンズには手を出し辛いはず。他のレンズと25mm F1.2 PROの決定的な違いは「AF速度・防塵防滴・絞り開放の周辺描写」あたりでしょうか?描写の安定感や環境を選ばない堅牢性は替えの利かない特性と言えるでしょう。
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競合レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8
- LUMIX G 25mm/F1.7 ASPH.
- LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH.
- 30mm F2.8 DN
- 30mm F1.4 DC DN
- PROMINAR 25mm F1.8 MFT
- VoightLander NOKTON 25mm F0.95 Type II
- SPEEDMASTER 0.95/25mm MFT
特に意識するのは「LEICA 25mm F1.4 ASPH」や「SIGMA 30mm F1.4 DC DN Contemporary」あたり。どちらも良いレンズですが、25mm F1.2 PROほど絞り開放の描写は安定していません(色収差や周辺解像など)。
サイズは25mm F1.2 PROがひと際目立つので大きさを許容できるかどうか要検討。
M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO
絞り開放からバッキバキの超解像レンズ。絞り開放におけるピント面のシャープさは個人的に3本中で最高。おそらく当たり玉を引いたのかも、と感じるシャープなF1.2の描写。
特に高周波域の細部の繊細な描写に優れているため、ポートレートだと少し写りすぎるかもしれません。
描写性能は圧倒的ですが、コンパクトでナイスな写りの「45mm F1.8」や接写性能がずば抜けた「42.5mm F1.7」が存在します。ぼかし易い中望遠レンズであることから45mm F1.2 PROの必要性が薄く感じてしまうかもしれません。
この画角を主に使っている、もしくはボケ量や絞り開放のシャープさが必要、という訳では無いならば17mm PROや25mm PROを優先して購入するべき。
実際に比較してみると分ると思いますが、「45mm F1.8」と比べて周辺解像は明らかに上質です。F1.2から高解像な描写で、絞った際の画質改善も早い。これはパフォーマンスに定評のある「75mm F1.8」と比べても優れています。「明るさ+防塵防滴+高速AF+中望遠レンズ」とメリットが組み合わさっているのでハイスピードレンズとして活躍することでしょう。
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競合レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8
- LEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2 ASPH./POWER O.I.S.
- LUMIX G 42.5mm/F1.7 ASPH./POWER O.I.S.
- VoightLander NOKTON 42.5mm F0.95
最も競合するレンズはNOCTICRON 42.5mm F1.2。画角が僅かに広く、絞りリングと手振れ補正を搭載しています。パナソニックボディなら42.5mm F1.2がおススメ。しかし、防塵防滴仕様では無いため、過酷な環境で使うつもりなら45mm F1.2 PROをチョイスしたいところ。
おススメの購入順序
- M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO…「滲むボケ」を堪能したい
- M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO…F1.2 PROで色々撮ってみたい
- M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO…ポートレート撮影が多く、中望遠を多用する
おススメは「2→1→3」「1→2→3」の順番。
前述したとおり、45mm F1.2 PROは焦点距離の関係でボケ量がもともと大きく「滲むボケ」を味わい辛い。中距離のポートレートや心象風景など限定的な環境で特性を発揮するので「どの焦点距離を買うか迷っている」人におススメすることは出来ません。それなら45mm F1.8や42.5mm F1.7をおススメします。
一方で17mmや25mmが汎用性が高く、滲むボケを味わいやすいのでおススメ。ボケ量も重視すると25mmを真っ先に買ってみるべきでしょう。17mmは「15mm F1.7や17mm F1.8とのサイズ差」を十分に考慮するべき。
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