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銘匠光学 TTArtisan 10mm F2 C レンズレビュー Vol.3 諸収差編編

銘匠光学「TTArtisan 10mm F2 C」のレビュー第三弾を公開。色収差や歪曲収差は良好な補正状態ですが、像面湾曲が目立つので遠景の撮影ではしっかり絞ったほうが良いかもしれません。

はじめに

今回は焦点工房から期間限定で無償提供していただいた製品を評価しています。レビューにあたり、金銭の受け取りやテスト結果・評価への指示は一切ありません。無意識のバイアスがかかっている可能性を否定できませんが、これまでに様々な製品をレビューしてきた経験をもとに、出来る限り客観的な評価を心がけています。

TTArtisan 10mm F2 Cのレビュー一覧

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

絞り開放では中央~隅までピントが合っています。しかし、F2.8以降は何故か像面湾曲の影響が強くなり、パンフォーカスを得るためにはかなり絞る必要があります。これが像面湾曲と言い切ることができるのは、絞った状態で隅にピントを合わせるとシャープな結果を得ることができるため。参考までに、以下に隅でピント合わせを実施したサンプルを掲載。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

手ごろな価格の超広角レンズですが、倍率色収差は良好に補正されています。わずかに残る収差もカメラやソフトウェアで簡単に修正が可能。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

F2の絞り開放から目立たない程度に良く抑えられています。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

穏やかな樽型歪曲。このままでも問題ないシーンが多いと思いますが、直線的な被写体をフレーム端に配置する場合は修正が必要と感じるかもしれません。この際は手動補正で簡単に修正が可能。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

完璧な補正状態とは言えませんが、全体像では気にならない程度に良く抑えられています。

球面収差

前後のボケ質を確認してみたところ、完璧な補正状態ではないように見えますが、これが画質に顕著な影響を与えるようには見えません。

まとめ

2種類の色収差は良好に補正されています。特にこれと言って気になるシーンはありませんでした。僅かに残る色ずれは、気にならない程度。おかげさまでボケが過度に悪目立ちすることもなく、細部のコントラストは良好。歪曲収差は無視できる程度に抑えられています。追加の補正が必要と感じるシーンはほとんどありません。あったとしても現像ソフトなどで簡単に修正することが出来ます。気を付けるとしたら像面湾曲。F2の絞り開放では目立たないものの、絞るとなぜか悪化します。湾曲の度合いがかなり強いため、遠景でパンフォーカスを得るにはしっかりと絞る必要があります。中途半端な絞り(F2.8~F5.6)では周辺部が甘くなる可能性があるのでおススメしません。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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