日々の増えてゆくカメラ関連機材の中で、個人的に気になる商品の特集記事。第九弾の今回はTECHARTのライカM → ニコンZ 用AFアダプタ「TZM-02」をピックアップ。
TECHART TZM-02
TECHART(テックアート) TZM-02は、ライカMマウントレンズをニコンZマウントのカメラでAF動作させる電子マウントアダプターです。AF駆動用モーターを搭載し、レンズ側のマウント面を自動で前後に動かしてピントを合わせます。前モデル(TZM-01)の改良版となる本製品は、モーターを4つ搭載した先進的な設計により、耐久性が向上し、AFの動作音を低減。アダプター底部にあったモーター格納用の膨らみもなくなり、カメラケースと干渉しにくいスマートなデザインになりました。
- ブランド:TECHART
- 製品名:TZM-02
- 用途:ライカMマウントレンズ→ニコンZカメラ用AF対応アダプタ
- 価格:¥56,700
・焦点工房EC
・Amazon
・楽天市場- 旧モデルの情報:TZM-01
主な特徴
- MマウントのMFレンズでAF撮影が可能
- モーターを4つ搭載した新しい駆動ユニットを採用し、前モデルよりも高い耐久性と静粛性を実現
- カメラケースに干渉しにくいリング状のスマートなデザイン
- 本体部の設計と加工方法を見直すことで、より高い剛性と小型化を実現
- AF-S、AF-C、動画AF(AF-F含む)に対応
- 瞳AFや顔検出AF、各種被写体検出AFに対応
- レンズの最短撮影距離を短縮可能(可動部分の繰り出し量:約4.5mm)
- USB DOCKからファームウェアアップデートが可能
- 設定した焦点距離(20種)を、Exifデータに記録可能(レンズの焦点距離が変わる度に設定が必要)
- アダプター内部の植毛加工により内面反射を抑制
- 他のマウント変換アダプターと併用可能
主な仕様
- サイズ:約 Φ68mm×19.5mm(突起部除く)
- 重量:約 155g
- 対応カメラ:Z 9、Z 7II、Z 6II、Z 7、Z 6、Z 5、Z fc、Z 50、Z 30など
- 撮影モード設定はA(絞り優先)モードまたはM(マニュアル)モードで撮影
- レンズの絞りが開放のときに最もAFの性能が高くなる
- 重量500gを超えるレンズに使用すると、故障や動作不良の原因となる場合あり
- AFエリアモード「ピンポイントAF」に非対応
ポイント
ここが良さそう
- 1型からスリムになった
- MFレンズのAF化
- アダプター経由で他マウントも利用可能
- マスターレンズの最短撮影距離を改善できる
- カメラ側に伝達できる焦点距離の増加
ここが気になる
- 価格設定
- カメラとの互換性
ライカMマウント用のMFレンズをマウントごと前後に動かしてAFを動作させる力技のAFレンズアダプター。「全群繰り出し式フォーカス」をアダプターで動作させる構造です。その構造上、装着レンズの重量には制限があるものの(500gまで)、フォクトレンダーの50mm F1.0でも484gなので大部分のMマウントレンズは対応しているはず。
価格はやや高めですが、フランジバックの短いライカMマウント用であるため、他社のマウントアダプターを装着することで様々なマウントのレンズで利用できるのが魅力的。市場に流通している手ごろな価格のPENTAX KマウントやM42マウント、OMマウントのレンズも利用可能となっています。
あとはZカメラとの互換性が気になるものの、TZM-02にはファームウェアアップデート用のリアキャップが付属しており、TECHARTは頻繁に対応ファームウェアを更新しています。
価格をチェック
国内では主に焦点工房が代理店となり流通しています。焦点工房の直営サイトやカメラのキタムラ、ビックカメラなどで入手可能。他社のアダプターとセットで買うなら焦点工房直営の楽天市場やAmazonがおススメ。
TECHART TZM-02 | |||
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実際に使ってみた
おことわり
今回は焦点工房からの無償提供となります。と言っても最初から本製品のアプローチがあったわけではなく「何か気になる製品はあるか?」と聞かれたのでTZM-02を挙げたところ、送られてきた製品を使用しています。無償提供にあたり、レビュー内容の指示や金銭の授受は発生していません。また、装着する側のレンズやアダプターは実費で購入しています。
無意識のバイアスがかかっている可能性は否定できませんが、そのあたりは過去のレビューを参考にしながら「このブログは無償提供の製品レビューでも信頼できる」と思ったら読み進めてください。
箱
TECARTではお馴染みのデザイン。シンプルですが安っぽさはありません。本体はウレタンの緩衝材に包まれています。
付属品は説明書とファームウェアアップデートに対応するレンズキャップのみ。USBケーブルは付属していないため、こちらで用意する必要があります。
外観
全体的に金属製のしっかりとした作り。外装は光沢の残る黒色の塗装が施されています。手に取ってみると思ったよりも重く、中身が詰まった密度のあるAFアダプターであることが分かります。
アダプター内部は不要な光の反射を抑えるため、フェルトのような生地を張り付けています。
カメラ側のバヨネット周辺に防塵防滴用のシーリングはありません。悪天候での過度な使用は避けたほうが良いでしょう。
キャップ
レンズ側のキャップは金属製のしっかりとした作り。作りは良好ですが、摘まみにくく、外しにくい。
カメラ側のキャップも金属製。さらに電子接点付きでアダプターのファームウェアアップデート時に必要となります。紛失しないように気を付けたいところ。持ち歩く際は通常のZマウント用キャップを使用するのがおススメ。
ファームウェアアップデート時に使用するUSB端子はMicro B。普及しているとはいえ、USB-Cに取って代わられつつある中でMicro Bは使い辛く感じます。と言っても自宅でファームウェアアップデート時に必要となるだけなので特に気になりません。
装着例
TZM-02用にCOSINAのCOLOR-SKOPAR 35mm F2.5P IIを用意しました。VMマウント用の中でも新品を手ごろな価格で入手できる国産レンズです。TZM-02装着時は外装の質感に一体感があり、違和感がほとんどありません。塗装もよく似ています。
SKOPAR 35mm F2.5は後玉が後方へ飛び出しているレンズですが、アダプター装着時は無限遠でもアダプター内に収まっています。ミラーレスカメラ装着時にセンサーやシャッターを傷つけてしまう心配はなさそうです。
アダプターには反射防止の対策が施されていますが、ご覧のようにアダプターとレンズの隙間には光を反射するであろう光沢が見えます。実写でこれがどのように影響するのか今のところ不明。そもそも、自動で絞りが調整できないMFレンズで強い光源に向かって撮影するのは避けたほうが良いでしょう。
(特に絞り開放付近で太陽をフレームに入れ続けるとセンサーや周辺部が焼けてしまう可能性あり)
Z 8に装着。センサーシールド搭載のZ 8でもレンズが干渉することはありませんでした。レンズサイズに対してボディが大きすぎる印象を受けますが、特に問題はありません。
COLOR-SKOPAR 35が良かったので、勢いでNOKTON 40mm F1.4 SCも入手しました。こちらも手ごろな価格で入手できるVMマウントレンズです。SKOPARと同じく後玉がアダプターから突出することはありません。
Z 8に装着。特に問題なく使用できそうです。
ボディサイズの大きなZ 8ですが、センサーシールドを搭載しているのでレンズ交換しやすい(比較的安心できる)のが強み。注意点はレンズの後玉が突出しているとシールドと干渉する可能性があること。
以前から所有していたsmc PENTAX-M 50mm F1.7を活かすためにK-L/Mアダプターを入手。これをTZM-02に装着することでPENTAX Kマウントレンズも利用可能となります。
全てを装着。外観はフォクトレンダー装着時よりも洗練されていませんが、PENTAX-MレンズでAFを利用できるようになるのは魅力的ですね。現在も新品の流通があるFA LimitedやFAシリーズも利用可能。
このレンズもZ 8装着で特に問題ありません。
使用方法の確認
一般的なAFレンズアダプターと使い勝手が異なるため、焦点工房が配布している日本語説明書(PDF)の熟読をおススメします。主に注意する点は以下の通り。
- 装着するレンズに制限がある(~500g)
- 基本的にはレンズのフォーカスリングを無限遠に合わせておく
- 接写時はレンズのフォーカスリングを最短撮影距離に合わせておく
- 露出モードは絞り優先かマニュアルを使用する
- カメラ側で設定する「F値」はアダプター側にレンズの焦点距離を認識させる識別番号として使用する。(これが重要)
- 絞ったままAFすると合焦に失敗する可能性がある
特に気を付けたいのはカメラのF値。これは電子接点のないMFレンズの焦点距離をアダプター側に認識させるために使用します。アダプターそのものは「電子接点を搭載したAFレンズ」としてカメラ側に認識されているため、カメラ側のセットアップメニューにある「レンズの焦点距離とF値」の設定は無効です。
- カメラ側でF値を設定
- アダプター側がF値を元に装着しているMFレンズの焦点距離を認識
- アダプターがカメラにレンズの焦点距離を伝達
- カメラがレンズの焦点距離を認識、手振れ補正の調整
と言った感じで動作しているはず。このため、間違ったF値を使用すると手振れ補正が誤作動するので注意。これさえ気を付けておけば問題なく使用可能です。対応するF値と焦点距離は以下の通り。
- F1.0:135mm
- F1.1:90mm
- F1.3:85mm
- F1.4:75mm
- F1.6:55mm
- F1.8:50mm
- F2.0:40mm
- F2.2:35mm
- F2.5:28mm
- F3.2:24mm
- F3.5:21mm
- F4.0:20mm
- F4.5:18mm
- F5.0:16mm
- F5.6:12mm
- F8 → シャッター → F4.0:300mm
- F8 → シャッター → F4.5:200mm
- F8 → シャッター → F5.0:180mm
- F8 → シャッター → F5.6:150mm
動作の確認
NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C.
思いのほかキビキビと動作します。荷重により変化するかもしれませんが、少なくとも175gのNOKTON Classic 40mm F1.4 S.C.では快適な動作。ただし、レンズ側の問題(球面収差や軸外収差)などの影響でカメラ側のAF性能が低下する可能性があります。球面収差が大きいと、硬いボケにピントを合わせてしまうこともあるでしょう。個人的にはF2~F2.8くらいまで絞ったところが使いやすいと感じました。絞り過ぎると被写界深度が深くなることでピントの山を掴み損ねる可能性あり。
NOKTON Classic 40mm F1.4 S.C. 最短撮影距離
レンズのピントを最短撮影距離に設定してAFを動作させることで、マスターレンズよりも接写性能が高くなります(言ってしまえば動く接写リングのような役割となるため)。この際は遠側にピントが合わなくなってしまうものの、操作に慣れればフォーカスリングをちょちょいと操作して復帰させることが可能。
smc PENTAX-M 50mmF1.7
アダプター経由のPENTAX 50mm F1.7でも動作を確認。AF-Cでも動作しますが、近距離での追従性はあまり期待しないほうが良いでしょう。
まとめ
TZM-02はMFレンズをAFのように使うことができる夢のようなアダプターですが、AFレンズと同等のAFは期待すべきではありません、ピントの山にしっかりと合わせてシャープな結果を追い求めるのであればネイティブZマウントのレンズをおススメします。そのあたりを理解して使えば非常に面白いアイテムとなるでしょう、
防湿庫に眠っているMFレンズが再び日の目を見る機会となったり、ピントリングが壊れて回らなくなったレンズでもTZM-02で再びピント合わせが可能となるかもしれません。市場には今でも手ごろな価格のライカMマウントレンズが数多く流通しているので、新しいレンズを試してみるのも一興。
使い方に癖があるので万人におススメすることは出来ませんが、オールドレンズの資産がある人、クラシカルな見た目やレンズに興味がある人ならば検討する価値があると思います。
TECHART TZM-02 | |||
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作例
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