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ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.4 ピクチャーコントロール編

ニコン「Z 8」のレビュー第四弾を公開。今回はJPEG出力で利用するピクチャーコントロールについて、色やコントラスト、使い勝手をチェックしています。

Z 8のレビュー一覧

ピクチャーコントロール

ニコンお馴染みの仕上がり設定は従来通り7種類。ソニーや富士フイルムほど味付けの濃い設定ではありませんが、キヤノンほど変化のない淡泊な設定(統一感があるとも言えますが)でもありません。

ピクチャーコントロール一覧

モノクロを除くと、主な変化は彩度とシャドウ側のコントラスト。色相に大きな変化はありません。雰囲気を変えたい場合はクリエイティブピクチャーコントロールなどを使ったほうが手っ取り早いです。

スタンダード

鮮やかでバランスの取れた標準的な画像になります。ほとんどの撮影状況に適しています。

ニュートラル

素材性を重視した自然な画像になります。撮影した画像を調整、加工する場合に適しています。

ビビッド

メリハリのある生き生きとした色鮮やかな画像になります。青、赤、緑など、原色を強調したいときに適しています。

モノクロ

白黒やセピアなど、単色の濃淡で表現した画像になります。

ポートレート

人物の肌がなめらかで自然な画像になります。

風景

自然の風景や街並みが色鮮やかな画像になります。

フラット

シャドー部からハイライト部まで幅広く情報を保持した画像になります。撮影した画像を積極的に調整、加工する場合に適しています。

クリエイティブピクチャーコントロール一覧

EXPEED 6プロセッサより導入した新機能で、計20種類のプリセットに対応。他社では「フィルター」に相当するような設定も多くありますが、大きく異なる点はピクチャーコントロールのようにシャープネスやコントラストを調整できること。さらに「適用度」(後述)を操作することで、全体的な効果を弱めることも可能です。ピクチャーコントロールと比べると色相やコントラストを大幅に調整するプリセットが多く、手軽に雰囲気を変えることが出来るのは魅力的。ただし癖の強いプリセットが多いため、適応度100で使うのは難しいかもしれません。

ドリーム

軽やかさの中に温かみが感じられる、やさしい表現に。全体の色調を薄オレンジ色にし、暗部を明るくして輪郭を弱めるため、ふわっと柔らかな画調になります。

モーニング

早朝のすっきりとした空気の中で撮影したような雰囲気に。暗部をやや明るめにし、全体の色調を透明感のある青傾向とすることで爽快感のある画調になります。

ポップ

カラフルな色彩や質感を、よりクリアーに引き出すために。もっとも彩度の高い効果です。より明るい画調でありながら、被写体が持つ本来の色味を際立たせることができます。

サンスター

晴れた日曜の昼下がりに撮影したような、開放的な雰囲気に。コントラストを高めて、ハイライト部分を大胆に飛ばします。被写体の印象を強めた表現が得られます。

ソンバー

憂いを帯びた、雨上がりのようなしっとりとした雰囲気に。彩度を高めにして明度を抑えることで、アンダーながらしっかりと色味を感じられる表現になります。

ドラマ

光と陰を強調した、重厚感のある表現に。暗めの画調でありながら、ハイライト部をより明るく表現できます。光をドラマティックに演出するのに適しています。

サイレンス

はかなく寂し気なトーンの空間演出に。軟調な画調で、彩度をより抑えた静謐感のある画像を撮影できます。

ブリーチ

メタリック感が感じられる、渋い雰囲気に。全体的に緑がかった彩度の低い画調になります。被写体のディテールをしっかりと再現した、銀残し風の味わいある表現を楽しめます。

メランコリック

わずかに気だるさの漂う、レトロ調の表現に。全体的にマゼンダがかった画調になります。彩度と輪郭を弱めているため、柔らかな印象の画像を撮影できます。

ピュア

ベールをかけたように柔らかく、無垢なイメージに。全体的に柔らかな印象の青味がかった画調になります。特にハイライト部やシャドウ部から感じられる青味により、静かな雰囲気を演出できます。

デニム

青味の強い深い色合いに。彩度を高めにして、青をシアン方向に表現。被写体の青色を、より際立たせることができます。

トイ

トイカメラをイメージした、味わいのある一枚に。彩度を高めにして、青を藍色方向に表現。一般的なトイカメラ画像よりも、深みと落ち着きの感じられる表現になります。

セピア

退色した古い写真のような、クラシカルな雰囲気に。セピア画像に。モノクロプリントを着色したような味わいの画調になります。撮影意図に応じて、調色の強弱をコントロールできます。

ブルー

寂し気な雰囲気を強調したクールな一枚に。ブルー系の静かな雰囲気の画調になります。被写体によっては、青写真のような風合いにも。調色の強弱もコントロールできます。

レッド

赤みの強いねっとりとした色味で、ひと味違うレトロ調に。レッドスケールフィルム風の画像を撮影できます。撮影意図に応じて、調色の強弱をコントロールできます。

ピンク

ふわっと甘めの色合いでロマンティックな表現に。ピンクがかった画像になります。さらにピンクを強調し、より甘い雰囲気を演出することも可能。調色の強弱はコントロールできます。

チャコール

墨の濃淡で描いたような優しい雰囲気のモノクロームに。黒つぶれや白とびを抑えた、軟調のモノクローム画像に。輪郭を弱めているため、冷たくなりがちな白黒の世界に柔らかさを演出できます。

グラファイト

くっきりとした輪郭とつややかな黒で光を効果的に表現。コントラストと輪郭を強めた、硬調なモノクローム画像になります。メリハリのある画が得られます。

バイナリー

ディテールが省略された、主役が引き立つ力強い描写に。ほぼ2階調の、パキッとしたモノクローム画像を撮影できます。白と黒だけの世界をより強く、個性的に演出できます。

カーボン

黒を基調にしたグラデーションで、どっしりと厚みのある画づくりに。全体的にアンダーな、より黒を強調した画調になります。重厚感のある画づくりを求める方におすすめです。

コントラストの変化

キヤノンと異なり、通常のプリセットもコントラストに大きな差が付けられています(主にシャドウ側)。ニュートラルやポートレートを基準とすると、スタンダードやビビッド、風景などはコントラストが強め。逆にフラットはコントラストが弱めの設定となっています。プリセットに合わせた適正露出はカメラ設定で同等ですが、好みは分かれるかもしれません。

一方でクリエイティブピクチャーコントロールは個性的。フラットよりもフラットな「ピュア」「ドリーム」があったり、0/1でこの上ないコントラストの「バイナリー」など尖った設定のプリセットも存在します。癖が少ない「ポップ」「サンスター」あたりは使いやすいと感じるかもしれません。

色が邪魔に分かりづらいと感じる人のために脱色バージョンを用意。

色の変化

前述したように、通常のピクチャーコントロールに色相の大きな変化は見られません。彩度やコントラストの強弱で選べばいいように見えます。

クリエイティブピクチャーコントロールは色相を傾けているプリセットも多く、見るからに色被りしている設定も多い。通常に近いのは「ポップ」「サンスター」くらい。

カスタムピクチャーコントロール

ピクチャーコントロール・クリエイティブピクチャーコントロールを合わせると計27種類のプリセットがあります。さらに細かく調整できる設定値が数多くあり、ゴリゴリに癖の強いプリセットへ変化させることも可能。通常の設定値と分けて使いたい人はカスタムピクチャーコントロール(9枠)に登録することが可能。設定値は別枠で登録できるほか、メモリーカードに保存したり、保存した設定値(ファイル)を読み出すことが可能。自分のお気に入りを公開したり、共有することも可能です。

ウェブにはカスタムピクチャーコントロールのプリセットを多数公開している「Nikon Picture Control Edutor」というサイトがあります。プリセットの効果を確認しながら設定値を調整したり、ダウンロードすることが可能。非常に簡単で便利なサイトなのでおススメ。

仕上がり調整

通常のピクチャーコントロールでは以下の設定が可能。

  • クイックシャープ±2
  • 輪郭協調 9段
  • 明瞭度±5
  • ミドルレンジシャープネス±5
  • コントラスト±3
  • 明るさ±2
  • 彩度±3(カラー)
  • 色相±3(カラー)
  • フィルター(モノクロ)
  • 調色(モノクロ)
    (各0.25段で調整可)

幅広い設定に対応しているほか、調整値は細かく刻むことが可能。自分好みの設定にしやすく、こだわりの設定値は前述したようにメモリカードで保存や共有が可能。

クリエイティブピクチャーコントロールは通常の設定値に加えて「適用度」の項目があります。通常は100となっており、数値を下げると通常のピクチャーコントロールへと変化(おそらくスタンダード)。癖が強すぎると感じら適用度を調整するのがおススメです。

「ピクチャーコントロール」をボタンカスタマイズで呼び出す場合(初期設定でFn3ボタンに登録されています)、リアダイヤルでプリセットの選択、フロントダイヤルで適用度を調整可能。ライブビューで確認しながら素早く適用度を調整できるので便利。

まとめ

お馴染みのピクチャーコントロールは初期設定だとシャドウ側のコントラストが高いものが多く、状況によっては少しパンチが強すぎると感じるかもしれません。シャドウ側のみ調整する項目が無いので、コントラストを弱めたり、アクティブ-D-ライティングを使うと改善するかもしれません。その一方、プリセットのコントラストが一定のキヤノンと比べて強弱が付けられており、スタンダードや風景でより引き締まったシャドウが得られると思います。

クリエイティブピクチャーコントロールは従来の「フィルター」に相当するプリセットが柔軟性を獲得したと考えると良いかもしれません。適用度を変更することで自然に溶け込む味付けが可能となり、シャープネスやコントラストなどの微調整も可能。適用度の素早い調整も可能であり、積極的に利用できるシステムとなっています。

適用度によっては少し嘘くさく感じるものの、撮影後にRAW現像でゴリゴリ編集するくらいであれば、カメラ出力でサクッと調整するのも一つの手なのかなと。兎にも角にも使っていて面白い機能です。

NPCE T-MAX

NPCE T-MAX

カスタムピクチャーコントロールを活用することで、ゴリゴリに調整したプリセットや、NPCEなどでダウンロードしたプリセットを利用できるのも魅力的。他社にも似たような機能はありますが、登録できる枠と簡単さを考慮するとニコンがベストと感じました。幅広いモノクロプリセットも存在するので、色々と見比べてみるのも面白い。

全体的に見て、幅広い設定値で効果的なJPEG出力が可能。個人的には富士フイルムのフィルムシミュレーション以上に楽しめるシステムとなっています。

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