ニコン「Z f」のレビュー第四弾を公開。今回はカメラの連続撮影性能やバッファ、センサーのリーリングシャッターについてチェックしています。
Z f のレビュー一覧
- ニコン Z f レビュー 完全版
- ニコン Z f レビュー Vol.6 フォーカス編
- ニコン Z f レビュー Vol.5 ISO感度編
- ニコン Z f レビュー Vol.5 メニュー・カスタマイズ編
- ニコン Z f レビュー Vol.4 ドライブ編
- ニコン Z f レビュー Vol.3 ダイナミックレンジ編
- ニコン Z f レビュー Vol.2 ピクチャーコントロール 編
- ニコン Z f レビュー Vol.1 外観・操作性 編
- ニコン Z f ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
Index
連写・ドライブ
仕様の確認
撮影速度
- 低速連続撮影:約1~7コマ/秒
- 高速連続撮影:約7.8コマ/秒
- 高速連続撮影(拡張):約14コマ/秒
- ハイスピードフレームキャプチャー+(C30):約30コマ/秒
- ハイスピードフレームキャプチャーはJPEG NORMAL固定
- プリキャプチャー 最高約30コマ/秒 JPEG NORMAL固定
Z 8やZ 9と同じくEXPEDD 7プロセッサ搭載モデルですが、電子シャッターの高速連写は「C30」まで対応。このあたりは搭載しているイメージセンサー(Z fは積層型ではない)が異なるので妥協すべき範囲。幸いにも、RAW出力が可能な高速連続撮影(拡張)では14コマ秒まで撮影することが可能。
同価格帯でこれ以上の連写速度を実現しているのはキヤノン「EOS R8」「EOS R6」とパナソニック「LUMIX S5 / S5II」など。ただし、これらはローリングシャッターの歪みを伴う電子式シャッターの使用が必須。メカニカルシャッターとしてはZ 6IIと並んでトップクラスと言えるでしょう。
高速連続撮影(拡張)は連続撮影を優先したモードであり、高速連続撮影と比べて何らかの条件や制限が発生すると思われます。過去のニコン機は機種によって(拡張)との差が明記されていますが、Z fではまだその記述がありません。Z fは少なくともフリッカー低減に対応している模様。(例:Z 7におけるHiとHi+の違い)
連続撮影可能コマ数
- RAW(ロスレス圧縮RAW):186コマ
- RAW(高効率★):200コマ以上
- RAW(高効率):200コマ以上
RAW出力に対応する際速の撮影速度が「14コマ秒」なので、最低でも10秒以上はバッファの目詰まりなく撮影することが可能。さらに圧縮率の高い高効率RAWでは上限を明確に定めず、200コマ以上の撮影が可能とのこと。一眼レフ時代ならばプロ機のような性能です(ミラーレス時代のプロ機は次元が違いますが……)。
シャッタースピード
- 1/8000~30秒
- 撮影モードMでは900秒まで延長可能
- メカニカル/電子先幕/電子シャッター
- 1/200秒以下の低速シャッタースピードで同調
このあたりの使用はZ 6IIと同じ。電子シャッターでも1/8000秒まで利用可能となっています。従来通り、シャッタースピードに合わせて方式を切り替える「オート」モードを搭載。キヤノンやソニーと異なり、電子先幕シャッターの「露出ムラ」やメカニカルシャッターの「シャッターショック」を効果的に回避することが出来ます。
撮影速度の調整
- 低速連続撮影:7/6/5/4/3/2/1 コマ秒
Z fでは低速連続撮影のみ撮影速度の調整が可能。C30やプリキャプチャーの撮影速度を調整することはできません。
バッファ・バッファクリア
Prograde Digital COBALT SD UHS-IIメモリーカードを使用し、「5/10/15秒」の連続撮影で記録できた写真の枚数をカウント。他の機種でのテストと同じく、RAWで最もファイルサイズが大きくなる「ロスレス圧縮RAW」を使用。テスト結果は以下の通り。
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
メカ 14fps | 56 | 113 | 154 |
電子 14fps | 125 | ||
C30 | 154 | 300 | 451 |
その他のカメラ設定
- Z 24-120mm F4 S
- MF
- ISO 100 1/8000秒 F4 固定
- フリッカー低減オフ
- 歪曲収差補正 外せない
- レンズ補正 オフ
カメラに負荷がかかりそうな設定を外した状態で撮影。それでもメカニカルシャッターHi+は期待値(5秒で70コマ)に届かず、約10コマ秒となっています。電子シャッター使用時はさらに連続撮影速度が低下するようです。原因は今のところ不明、
撮影速度はともかく、バッファはとても良好。撮影後のバッファクリアも非常に速く、一般的な連続撮影であれば快適に利用できると思います。(SD UHS-IIでの結果ですが)
RAWの種類による変化
- RAW(ロスレス圧縮RAW):約25.9MB
- RAW(高効率★):約16.5MB
- RAW(高効率):約11.0MB
Z fはEXPEED 7プロセッサ搭載モデルらしく、圧縮率の高い「高効率RAW / ★」に対応。特に圧縮率の高い「高効率RAW」はJPEG Fine並みのファイルサイズを実現しており、SD UHS-IIへの書き込み速度は非常に速いと思われます。
Hi+ | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
ロスレス圧縮 | 56 | 113 | 154 |
高効率★ | 58 | 112 | 170 |
高効率 | 58 | 112 | 170 |
それぞれのRAWでテストした結果が上の通り。少なくとも15秒間の連続撮影で顕著な差は発生していません。画質優先であればロスレス圧縮RAWを使うのも手ですが、画質差がほとんどないので、ファイルサイズを抑えた高効率RAWが個人的にはおススメ。また、高効率RAWはロスレス圧縮RAWと比べて僅かに撮影速度が速いようです。
Micro SDカードとの比較
Z fはSD UHS-IIに加えて、Micro SD UHS-Iカードスロットも搭載。書き込み速度は遅くなるものの、バックアップなどに使用することが出来ます。試しに高効率RAWのHi+連続撮影15秒間を使用し、SD UHS-IIと比較した結果が以下の通り。
使用カード | 撮影枚数 |
ProGrade Digital COBALT UHS-II | 170 |
Nextorage microSD UHS-I | 144 |
ご覧の通りSD UHS-IIと比べると撮影速度に低下が発生。とは言え、顕著な低下ではなく、妥協できる範囲内に収まっているように見えます。ボトルネックを考慮しても、同時記録による冗長性を重視する場合は一つの選択肢となりうるのかなと。
撮影タイミング
Z 8やZ 9はメカニカルシャッターレスのため、撮影を認識する手段として「電子音」と「ライブビュー上の表示」を使用します。電子音の音量を上げることで大部分の状況は対応可能ですが、メカニカルシャッターと比べると高音で耳障りとなる可能性があります(静粛性が求められる場合、状況に似つかわしくない奇妙な電子音)。
Z fはメカニカルシャッターを搭載しているので、通常は必要ありません。しかし、サイレントモードやC30連写モードでは電子シャッターを使用。このような場合に「ライブビュー上の表示」で認知する手段が用意されています。
電子音が不適な場合はライブビュー上に「撮影タイミングの表示」が可能。利用できるモードは3種類。
- A:瞬間的にブラックアウト
- B:ライブビュー上下左右に枠表示(白色)
- C:ライブビュー左右に枠表示(黒色)
撮影シーンによって適する表示方法が異なるため、素早く切り替えることが出来るようにマイメニューに設定しておくのがおススメです。どの設定でも表示する枠やブラックアウトの色を変更することは出来ません。(個人的には目立つ赤枠が良かったです)
ただし、Z 8のようにシャッタースピードによるType Aへの自動切換え機能には対応していません。
オートISO
撮影メニューのISO感度設定には従来通り感度自動制御機能(ISO AUTO)を搭載。DXフォーマットの「Z fc」は、このメニュー画面からISO AUTOのオンオフを切り替える必要があり。しかし、Z fはボタンカスタマイズで任意のボタンに「ISO」を登録することで、ダイヤル操作によりISO AUTOの切替が可能となっています(ISOダイヤル「C」設定は必須)。
上限設定は従来通り。ISO AUTO時の下限設定は「C」ポジション時にダイヤル操作(ISOボタン必須)で対応。「C」ポジション以外の場合はISOダイヤルの設定値が反映されます。
低速限界設定も従来通り。ショートカット機能はないので、メニュー画面での操作が必須。個人的には多用する機能なので、いずれかのボタンに割り当てることが出来ると良かったかなと。また、Aモードなどではシャッタースピードダイヤルが役立たずとなっているので、低速限界設定に利用できると良かったです。
ローリングシャッター
CMOSセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的。しかし、フルサイズミラーレスでは発熱やノイズなど、様々な問題から実現に至っていません(ソニー「α9 III」を除く)。現在はイメージセンサーの上ラインから下ラインまで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的です。言葉で説明しても難しいので、下部の動画で分かりやすく解説しています。
動画のように、コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分がローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用。実際にこのカメラのローリングシャッターの影響を調べた結果が以下の通り。
ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となっています。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生。影響の度合いは競合する2400万画素センサー搭載機(α7 III・α7C・LUMIX S5IIなど)と同程度であり、良くも悪くもありません。この観点でいえばキヤノン「EOS R8」が頭一つ抜きんでた性能と言えるでしょう。他のカメラではどのような影響があるのか?は以下の通り。
高解像ながら積層型CMOSのZ 8がはるかに良好。EOS R8も非積層型のフルサイズセンサーとしては非常に良好。Z fはZ fcの2000万画素 14bit RAWと同程度と言ったところ。4500万画素BSIのZ 7よりも優れています。
まとめ
20コマ以上の高速連写には対応していませんが、一眼レフ時代のプロ機並みと言える連続撮影、バッファを備えています。連写や撮影枚数を重視するシチュエーション以外では満足のいく性能と言えるでしょう。
カメラ内のバッファが十分にあるうえ、ファイルサイズの小さい高効率RAWを使用することで柔軟性を確保しつつストレージを節約することが可能。わずか数千円のmicro SDを活用することで冗長性やストレージの拡張に利用できます。
気になる点は「電子シャッターで連写速度の低下」「ISO感度 低速限界設定へのアクセスが悪い」など。前者はメカニカルシャッターを利用することで回避できるものの、AやPモードで役に立たないシャッタースピードダイヤルを低速限界の設定で使えると便利だったなと感じました。このあたりはZ fcから感じている不満点なので、今後も改善される可能性は低そう。
ローリングシャッター歪みは従来の2400万画素機と同じく、かなり目立ちます。被写体が静止していたり、ゆっくりとした動作するぶんには問題ありませんが、高速移動する被写体を追いかけると不自然な描写となる可能性あり。
参考情報
購入早見表
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