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ニコン Z f レビュー Vol.1 外観・操作性 編

ニコン「Z f」のレビュー第一弾を公開。今回はカメラの外観や操作性、携帯性などをチェックしています。Z fcよりも向上した質感、相変わらず小さなグリップ、気持ちの良い起動速度や既知の不具合など。

Z f のレビュー一覧

箱・付属品

Z fcと同じく、外箱は通常の黒を基調としたデザインのZカメラと大きく異なります。中は段ボールで間仕切りされ、本体は緩衝材に包まれています。

同梱品として、ストラップ、ケーブル、バッテリー、説明書などが付属。カメラ本体にキャップとシューカバーが既に装着されています。注意点として、USB充電用のアダプターが付属していません。また、付属のUSBケーブルは前後ともに「Type-C」端子のケーブル。USB-PD対応のアダプターやType-Cのポートを搭載しているパソコンと接続して充電する必要があります。(または外部充電器を用意する)

外観

デザイン

Z fcと同じく、過去のフィルム一眼レフを参考にしたヘリテージデザイン。フルサイズセンサー搭載モデルでこのようなデザインのカメラボディは珍しい。ただし、側方へ展開するバリアングルモニタや既存製品と同じ背面ボタンのレイアウトなど、Zカメラらしい部分もあります。バリアングルモニタは便利ですが、ヒンジ部や突出するモニタが外観を損なっているようにも見えます。個人的にはバリアングル派ですが、チルトモニタを採用してほしかったという意見も理解できます。

質感

ボディ前面と上部カバーにマグネシウム合金を使用。指が振れやすいコントロールダイヤルやレリーズボタンも金属パーツを使用しており、質感は概ね満足のいく水準。いくつかのパーツは真鍮製と言われていますが、正直なところアルミニウムとの違いはよく分かりません。背面はプラスチック製ですが、モニターやボタンが広い面積を占めているのでプラスチック感は強くありません。ボタンのデザインや形状が他のZカメラと同じで、特別感は無し。底面は全体的にプラスチック製で、質感が大きく見劣りするポイント。また、強い衝撃で破損する可能性も否定できません。後述する追加グリップが金属製であり、装着すると問題なし。堅牢性や質感の観点から追加グリップがおススメ。

ハンズオン

横幅はZ 8とほぼ同じで、全高もZ 6IIやZ 7IIより大きい。つまり、小さいカメラではありません。また、グリップが無いわりに、重量はZ 6IIとほぼ同じ。軽量でもありません。Z fcと比べてグリップ(のような突出部分)があるものの、握りにくさに変わりなし。持ちにくいぶん、Z 6IIと同程度の重量が負担と感じます。追加グリップ無しで利用する場合はショルダーストラップとの組み合わせがおススメです。

サイズ

Z 8と比較すると、横幅は同程度。全高は抑えられているので小さく見えますが、追加のグリップを装着するとサイズはほぼ同じ。ソニーαシリーズと比べるとかなり大きく見えます。

カメラグリップ

前述したように、カメラのグリップは最小限。サムレストもないので、手のひら全体でカメラを掴むように握る必要あり(対してZ 8は指をかけるように自然なグリップ)。後述する追加グリップで多少は改善するものの、劇的な差はありません。

ストラップ金具(アイレット)

カメラ側面に三角環の付いたストラップ金具を装備。賛否両論あると思いますが、このタイプの金具は動きやすく接触音が発生しやすい。このため、動画撮影時に「カチャカチャ」と音を拾ってしまう可能性あり。また、斜め前ではなく側面にあるため、フロントヘビーな重いレンズを装着すると前かがみとなりやすいので注意。ただし、Z f と組み合わせを想定しているである軽量なレンズとの組み合わせでは相性の良い配置と言えるでしょう、ストラップ装着時でもダイヤル・ボタン操作が不便とは感じませんでした。

コントロールレイアウト・操作性

フロントFnボタン

前面には右手薬指で操作できるFnボタンを搭載。見栄えが良く、押しやすく、豊富なボタンカスタマイズに対応。ボタン押しっぱなしでダイヤル操作が必要な場合、このボタンを利用がおススメ。

フロントコマンドダイヤル

フロントのコマンドダイヤルはカメラ右端に近く、グリップと接する部分にあります。追加グリップ装着時は操作しやすい配置ですが、追加グリップ無しの場合は操作し辛い。また、Z 8やZ 7のような一般的なコマンドダイヤルと比べて抵抗が強く、余計な力を入れないと回しづらくなっています。クリック感が強いので、撮影体験としてはプラスになると思いますが、素早く操作したい人には不向きかなと。

リアコマンドダイヤル

フロントダイヤルよりもクリック感が弱く、少し弱い力でも操作しやすい。操作量が多い設定値はリアダイヤルを使ったほうが良いでしょう。ダイヤルは前後ともに金属製で質感は良好。ただし、爪砥ぎのようなデザインで少し痛い。

AE-L / AF-L ボタン

Z fにAF-ONボタンはありませんが、カスタマイズ可能なので「AF-ON」としても利用可能。設定できる機能は豊富で、フロントFnと同じく自由度が高い。押しやすい位置にあるので、使用頻度の高い機能を登録しておくのがおススメ。

マルチセレクターと4つのボタン

背面右下はZカメラでは一般的なデザインで、マルチセレクターと4つのボタンが密集しています。機能の配置はZ fcと同じ。表面的なボタンの形状はほぼ同じで触覚による識別は難しい。ただし、MENUボタンのみ突出が少なく、誤操作が少ないデザイン。

マルチセレクター(方向ボタン)はフォーカスエリア移動に使用し、他の機能を割り当てることは出来ません。中央の「OK」ボタンはフォーカスエリアのリセットか拡大機能として利用可能(従来機と同じ)。

EXPEED 7搭載モデルらしく、DISPボタンのカスタマイズが有効。後述する再生ボタンもカスタマイズ可能となっているので、配置を入れ替えることが可能。

拡大・縮小ボタンは依然としてカスタマイズ不可。機能固定の拡大ボタンの横にある「OK」ボタンのカスタマイズがほぼ拡大機能のみという残念な仕様。

再生 / ゴミ箱 ボタン

ニコンでは一般的な左肩の2連ボタン。機能の配置は機種にとって異なりますが、Z fでは再生・ゴミ箱でZ fcやZ 6IIなどと同じ。前述したように、再生ボタンがカスタマイズ可能。ゴミ箱ボタンは撮影中に不要であるにも関わらずカスタマイズ不可。実に惜しい。

レリーズボタン

Z fcと同じく同軸に電源スイッチを備えたレリーズボタンを搭載。全体的に金属製で質感は良好。表面にはソフトレリーズ用のように見えるネジ穴があり、Z fcよりもレトロデザインっぽさを醸し出しています。ただし、これはケーブルレリーズには対応しておらず、あくまでもソフトレリーズ用のアクセサリを装着できるだけのネジ穴。ケーブルレリーズが必要な場合、USBケーブルを利用する「リモートグリップ MC-N10」が必要。

レリーズボタンはノンクリックタイプでシャッター半押しから全押しまでシームレスに動作。半押しまでがやや深く、全押しがかなり浅い。

REC ボタン

レリーズボタンの横に小さなRECボタンを搭載。FnボタンやAFLボタンと同じく、自由度の高いカスタマイズに対応。押しやすいボタンのため、使用頻度の高い機能を割り当てておくと良いでしょう。

露出補正ダイヤル

他社ではなくなりつつある露出補正ダイヤルを搭載。±3の範囲で設定可能。コマンドダイヤルで操作したい時、±3を飛び越えて調整したい時は「C」ポジションに設定します。露出補正ダイヤルはオートモードやマニュアル露出(M)モードのISO AUTO時でも利用できます。

F値表示パネル

F値のみを表示できる小さな情報パネルを搭載。モニターやファインダーから目を離した状態で確認する際に便利ですが、バックライト非搭載のため暗所では視認性が低い。

シャッタースピードダイヤル

4秒から1/8000秒まで1段刻みで調整できるシャッタースピードダイヤルを搭載。1/3段刻みで操作したい場合、「1/3STEP」に合わせてコマンドダイヤルを使用します。このダイヤルが機能するのはシャッタースピード優先「S」、マニュアル露出「M」モードのみで、他のモードを利用中は全く使用しません。絞り優先「A」やプログラムオート「P」でもISO低速限界設定の調整値として利用できると良かった。

ダイヤルは1/3STEPに合わせた時のみ自動的にロックされ、解除するには中央のボタンを押しこみながら操作する必要があります。1/3STEP以外はロックされません。

静止画 / 動画 / B&W 切り替え

Z fcと同じく、シャッタースピードダイヤルの下部に静止画/動画の切替スイッチを搭載。Z fでは追加でモノクロ専用モード「B&W」あり。ソニーのようにスイッチにロック構造は搭載していませんが、誤操作はほとんどありません。

モノクロ専用「B&W」モードはピクチャーコントロールの選択範囲をモノクロームに制限して選びやすくなっています。プリセットの3種類以外にも、カスタムピクチャーコントロールで登録したモノクロームも表示されるため便利。ただし、クリエイティブピクチャーコントロールのグラファイトなどは選択することが出来ません。惜しい。

ISOダイヤル /

ISO100からISO64000まで設定できるISOダイヤルを搭載。Z fcと異なり「C」ポジションに合わせることでダイヤル操作に対応。ダイヤル操作は、いずれかのボタンに「ISO」機能を割り当てる必要があります。ISOダイヤル操作時は前ダイヤルでISO AUTOの切替もできるため、Z fcのようにメニュー画面に潜る必要はありません。しかし正直に言うと、「C」ポジションの横に「A」ポジションがあると良かったです。ISO AUTO時は、ISOダイヤルの設定値はISO AUTOの下限設定値として機能します。

PSMA+AUTOモード スイッチ

このようなカメラでは珍しく「P/A/S/M」モードスイッチを搭載。他の物理ダイヤルよりも強制力があり、カメラの露出設定に詳しくなくとも扱いやすい。この点で富士フイルムのXシリーズと大きく異なります(富士フイルムはダイヤル操作がより重要となる。というかP/A/S/Mがない製品もある)。

注意点として、AUTOモードだったとしてもISOダイヤルの設定値は反映されます。ISO AUTOでも設定値が64000の場合はそのまま。「C」ポジションの場合は強制的にISO AUTOとなるので、特にこだわりが無ければ「C」に合わせてロックしておけば問題なし。

ファインダー

スペック的にはZ 6やZ 7シリーズと同等のファインダーを搭載。実際、見栄えが良く、大きなファインダー像を得ることが出来ます。ライブビュー映像のフレームレートは60fps固定で、120fpsの選択肢はありません。アイセンサーは光学系上部に配置され、モニターとの切替速度は良好。

不具合

ファームウェア Ver1.00にて、起動後にファインダーを覗くと全体的に暗く表示されている場合があります。ファインダーからモニターに切り替え、再度ファインダーを覗くと改善。対応は簡単ですが、再現性が高く、撮影テンポを崩す厄介な不具合となっています。

アイピースはZ fcの「擬態丸窓」ではなく、Z 8やZ 9と同じアイピースを利用できる本格的な丸窓を採用。アクセサリーも共有することができます。ただし、大型アイピースとバリアングルモニタの相性が悪く、干渉しやすい点には注意が必要です。

モニター

フルサイズZカメラとしては初となる、側方へ展開するバリアングルモニタを搭載。自撮り撮影時にモニターを確認できる初めてのフルサイズZカメラとなりました。可動域が広いので個人的には好みの構造ですが、素早くモニタを倒したい人には手間のかかる仕組みです。モニターパネルのスペックはZ 6やZ 7と同じで、3.2型 210万ドットの高解像なパネルを使用。従来機通り、ファインダーとモニターはそれぞれカラーカスタマイズが可能。

インターフェース

ポート類

左側面にはUSB-C、HDMI D、3.5mmマイク/ヘッドホンに対応するポートを搭載。いずれのポートもバリアングルモニタと干渉する配置。ただし、ウェストレベルにモニタを傾けるだけならばUSB-Cポートのみ干渉。USB-Cは充電と転送の両方に対応。

バッテリー

フルサイズZカメラでは一般的なEN-EL15cを使用。グリップの無いボディにこのような大型バッテリーを搭載したのは凄い(そのぶん横幅広いですが……)。リチャージはUSBポート経由でバッテリーを装着したまま充電するか、外部充電器を購入するかの2択。外部充電器を購入する金額で、大容量のUSB-PDバッテリーを購入するのも一つの選択肢。

メモリーカード

バッテリースロットの横にSD UHS-II / microUSB UHS-I カードスロットを搭載。microSDカードは取り外しにくく、書き込み速度も遅い。メインでSD UHS-IIを使用し、バックアップにmicroSDを使うのが良いでしょう。

個人的にはカスタムピクチャーコントロールの設定をmicroSDに大量に保管、必要な時にカメラへ登録する時に使用しています。ただし、SDカード挿入時はmciroSD側のカスタムピクチャーコントロール設定を認識しません。この場合、SDカードを一時的に取り外すことで認識するようになります。

追加アクセサリー

Z f の心もとない小さなグリップを補助するため、ニコンやSmallRigからZ f 用のハンドグリップが用意されています。どちらもアルカスイス互換のベースプレートを内蔵。今回は(比較的手ごろな)SmallRigのハンドグリップを購入しました。Z f に装着すると、不足していたカメラグリップを程よく追加することが出来ます。グリップを保持した状態でフロントダイヤルも押しやすくなる。全高は少し高くなりますが、アルカスイス互換のプレートも内蔵していると思えば妥協できる範囲内。

レンズ装着例

Z fに様々なレンズを装着。大きなズームレンズ「180-600mm VR」は似合わないかと思いきや、思いのほかバランスがいいように見えます。ただし、追加のグリップを装着しないとカメラの保持がかなり難しいと思います。

相性が良いのは小型軽量なレンズですが、24-120mm F4のように全長が長いレンズでも問題なく利用することが出来そうです。

起動速度

起動速度は高速で、その後のAFからレリーズまでテンポよく移行することができます。

シャッター音

Z f はZ fcと同じく前後メカニカルシャッターを搭載。必要に応じて「メカニカル」「電子先幕」「電子」シャッターを使い分けることができます。従来通りシャッタースピードに応じて方式を切り替えることも可能。メカニカルシャッター / 電子先幕シャッターの印象はZ 7と同じ。キレのあるシャッターサウンドではありませんが、これと言った不満もなし。

メカニカルシャッター シングル

メカニカルシャッター 高速連続撮影

電子先幕シャッター シングル

電子先幕シャッター 高速連続撮影

まとめ

レトロ感を味わうことができる高性能FXエントリー

世にも珍しいヘリテージデザインの国産フルサイズミラーレス。ダイヤルが多いので取っつきにくい印象を受けるかもしれませんが、Z fcと同じく初心者フレンドリーな操作性を採用。ダイヤルを所定のポジション「ISOダイヤル C」「シャッタースピードダイヤル 1/3STEP」「露出補正ダイヤル C」で固定しておけば無理にダイヤルを操作する必要なくレトロデザインでおしゃれなカメラを使うことが可能。高性能でおしゃれなエントリーモデルと言っても過言ではないのかなと。

気になる部分

その一方、ベテランユーザーにとって気になる部分はZ fcからいくつか継承しています。側方へ展開するバリアングルモニタ、なんちゃってレリーズねじ穴、底面のプラスチック感、操作し辛い前ダイヤルなどなど。改良されているとはいえ、ボタンレイアウトやボタンカスタマイズなどにも制限を感じます。ユーザーモード設定がなければ、上位機種のような管理メニューもありません。ファインダーの不具合は再現性が高く、プリプロダクションモデルのテスト段階で気づけなかったのは残念。このあたりはファームウェアアップデートによる修正に期待。

撮影体験の質は満足のいく水準へ

気になる部分はあるものの、外観・操作性・スペック共に「なんちゃって感」は薄くなり、所有欲を満たす水準を達成していると感じました。初心者から玄人まで、幅広い層に訴求できる落としどころにきちんと落ちているカメラ。画質や連写性能の詳細は今後のテストでチェックしていきたいと思いますが、ざっと触った限りでは好印象のカメラでした。

参考情報

購入早見表

作例

Flickrにてオリジナルデータを公開

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