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ニコン Z f レビュー 完全版

このページではニコン「Z f」のレビューを掲載しています。

Z f のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 安くも高くもない
サイズ 横幅がZ 8並み
重量 意外と重い
グリップ 無いに等しい
操作性 メジャーとニッチの狭間
応答性 とても良い
AF性能 ニコン最新システム
画質 定評のある24MP BSI
カスタマイズ ニコンZとしては柔軟性がある
メニュー やや使い辛い
レンズ Z f向けの選択肢は少ない
ファインダー 極上ではないけど良好
モニター とても良好だがバリアングル
バッテリー 過不足なし・充電器別売り
満足度 見た目重視な高性能ミラーレス

評価:

見た目重視の高性能ミラーレス

ニコンの最新のテクノロジーをヘリテージデザインに詰め込んだカメラ。操作性や撮影テンポが悪いと感じる部分はあるものの、撮影のモチベーションを上げてくれるデザインと、価格に見合った質感や性能を併せ持つ。多少の不満は愛情でカバー。

カメラのおさらい

2023年10月 発売のニコンZマウント用フルサイズミラーレスカメラ。Z 9やZ 8に続き、最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」プロセッサを搭載。ニコン最新のAFや画像処理、撮影機能を利用することができます。これまでのレトロデザインモデル「Df」「Z fc」が従来機の外観を変更したカメラだったのに対し、Z fはこれまでにない新機能や最新技術を贅沢に導入したカメラとなっています。

概要
発売日 2023年10月27日 初値 269,280
主な仕様
センサー 裏面照射型 解像度 2450万画素
手振れ補正 8段分 除塵機能 超音波
プロセッサ EXPEED 7 メモリーカード SD / microSD
AF ハイブリッド 測距点 273点
被写体検出 対応
連写速度 14fps シャッター 1/8000~900秒
連写枚数 RAW★ 200+ プリ連写 対応
動画 ~4K 60p 動画圧縮 LGOP
Logなど N-log 撮影時間 無制限
ファインダー 0.5型 x0.8 369万dot LVフレームレート -120fps
モニター 3.2型 210万dot モニター可動 バリアングル
Wi-Fi 2.4-5.1GHz Bluetooth 5.0
NFC - GPS -
USB Type-C 3.0 マイクなど 3.5mm/3.5mm
サイズ・重量など
サイズ 144×103×49mm 防塵防滴 対応
重量 710g ボディ素材 マグ(前・上)
バッテリー EN-EL15c 追加グリップ -
付属品
 バッテリー・ストラップ・ケーブル・キャップなど

主な特徴

  • FM2にインスピレーションを得たレトロデザイン
  • 最新のEXPEED 7 プロセッサ
  • 新しい2種類のモノクローム
  • 被写体検出・3Dトラッキング対応の最新AF
  • 世界初のフォーカスポイントVR
  • ニコン初のピクセルシフト撮影
  • 4K 60p・N-Log
  • フルサイズZカメラ初のバリアングルモニタ
  • ファインダーやモニタはZ 7 / Z 6 とよく似た仕様

価格をチェック

売り出し価格は269,280円。EXPEED 7プロセッサ搭載モデルとしてはZ 8・Z 9よりも大幅に安く、Z 6IIと同程度の販売価格。安い機種ではないものの、中身を考えると妥当な価格設定と言えるでしょう。

カメラレビュー

外観・箱

箱・付属品

Z fcと同じく、外箱は通常の黒を基調としたデザインのZカメラと大きく異なります。中は段ボールで間仕切りされ、本体は緩衝材に包まれています。

同梱品として、ストラップ、ケーブル、バッテリー、説明書などが付属。カメラ本体にキャップとシューカバーが既に装着されています。注意点として、USB充電用のアダプターが付属していません。また、付属のUSBケーブルは前後ともに「Type-C」端子のケーブル。USB-PD対応のアダプターやType-Cのポートを搭載しているパソコンと接続して充電する必要があります。(または外部充電器を用意する)

外観

デザイン

Z fcと同じく、過去のフィルム一眼レフを参考にしたヘリテージデザイン。フルサイズセンサー搭載モデルでこのようなデザインのカメラボディは珍しい。ただし、側方へ展開するバリアングルモニタや既存製品と同じ背面ボタンのレイアウトなど、Zカメラらしい部分もあります。

質感

ボディ前面と上部カバーにマグネシウム合金を使用。指が振れやすいコントロールダイヤルやレリーズボタンも金属パーツを使用しており、質感は概ね満足のいく水準。いくつかのパーツは真鍮製と言われていますが、正直なところアルミニウムとの違いはよく分かりません。背面はプラスチック製ですが、モニターやボタンが広い面積を占めているのでプラスチック感は強くありません。ボタンのデザインや形状が他のZカメラと同じで、特別感は無し。底面は全体的にプラスチック製で、質感が大きく見劣りするポイント。また、強い衝撃で破損する可能性も否定できません。後述する追加グリップが金属製であり、装着すると問題なし。堅牢性や質感の観点から追加グリップがおススメ。

ハンズオン

横幅はZ 8とほぼ同じで、全高もZ 6IIやZ 7IIより大きい。つまり、小さいカメラではありません。また、グリップが無いわりに、重量はZ 6IIとほぼ同じ。軽量でもありません。Z fcと比べてグリップ(のような突出部分)があるものの、握りにくさに変わりなし。持ちにくいぶん、Z 6IIと同程度の重量が負担と感じます。追加グリップ無しで利用する場合はショルダーストラップとの組み合わせがおススメです。

サイズ

Z 8と比較すると、横幅は同程度。全高は抑えられているので小さく見えますが、追加のグリップを装着するとサイズはほぼ同じ。ソニーαシリーズと比べるとかなり大きく見えます。

カメラグリップ

前述したように、カメラのグリップは最小限。サムレストもないので、手のひら全体でカメラを掴むように握る必要あり(対してZ 8は指をかけるように自然なグリップ)。後述する追加グリップで多少は改善するものの、劇的な差はありません。

コントロールレイアウト

フロントFnボタン

前面には右手薬指で操作できるFnボタンを搭載。見栄えが良く、押しやすく、豊富なボタンカスタマイズに対応。ボタン押しっぱなしでダイヤル操作が必要な場合、このボタンを利用がおススメ。

フロントコマンドダイヤル

フロントのコマンドダイヤルはカメラ右端に近く、グリップと接する部分にあります。追加グリップ装着時は操作しやすい配置ですが、追加グリップ無しの場合は操作し辛い。また、Z 8やZ 7のような一般的なコマンドダイヤルと比べて抵抗が強く、余計な力を入れないと回しづらくなっています。クリック感が強いので、撮影体験としてはプラスになると思いますが、素早く操作したい人には不向きかなと。

リアコマンドダイヤル

フロントダイヤルよりもクリック感が弱く、少し弱い力でも操作しやすい。操作量が多い設定値はリアダイヤルを使ったほうが良いでしょう。ダイヤルは前後ともに金属製で質感は良好。ただし、爪砥ぎのようなデザインで少し痛い。

AE-L / AF-L ボタン

Z fにAF-ONボタンはありませんが、カスタマイズ可能なので「AF-ON」としても利用可能。設定できる機能は豊富で、フロントFnと同じく自由度が高い。押しやすい位置にあるので、使用頻度の高い機能を登録しておくのがおススメ。

マルチセレクターと4つのボタン

背面右下はZカメラでは一般的なデザインで、マルチセレクターと4つのボタンが密集しています。機能の配置はZ fcと同じ。表面的なボタンの形状はほぼ同じで触覚による識別は難しい。ただし、MENUボタンのみ突出が少なく、誤操作が少ないデザイン。

マルチセレクター(方向ボタン)はフォーカスエリア移動に使用し、他の機能を割り当てることは出来ません。中央の「OK」ボタンはフォーカスエリアのリセットか拡大機能として利用可能(従来機と同じ)。

EXPEED 7搭載モデルらしく、DISPボタンのカスタマイズが有効。後述する再生ボタンもカスタマイズ可能となっているので、配置を入れ替えることが可能。

拡大・縮小ボタンは依然としてカスタマイズ不可。機能固定の拡大ボタンの横にある「OK」ボタンのカスタマイズがほぼ拡大機能のみという残念な仕様。

再生 / ゴミ箱 ボタン

ニコンでは一般的な左肩の2連ボタン。機能の配置は機種にとって異なりますが、Z fでは再生・ゴミ箱でZ fcやZ 6IIなどと同じ。前述したように、再生ボタンがカスタマイズ可能。ゴミ箱ボタンは撮影中に不要であるにも関わらずカスタマイズ不可。実に惜しい。

レリーズボタン

Z fcと同じく同軸に電源スイッチを備えたレリーズボタンを搭載。全体的に金属製で質感は良好。表面にはソフトレリーズ用のように見えるネジ穴があり、Z fcよりもレトロデザインっぽさを醸し出しています。ただし、これはケーブルレリーズには対応しておらず、あくまでもソフトレリーズ用のアクセサリを装着できるだけのネジ穴。ケーブルレリーズが必要な場合、USBケーブルを利用する「リモートグリップ MC-N10」が必要。

レリーズボタンはノンクリックタイプでシャッター半押しから全押しまでシームレスに動作。半押しまでがやや深く、全押しがかなり浅い。

REC ボタン

レリーズボタンの横に小さなRECボタンを搭載。FnボタンやAFLボタンと同じく、自由度の高いカスタマイズに対応。押しやすいボタンのため、使用頻度の高い機能を割り当てておくと良いでしょう。

露出補正ダイヤル

他社ではなくなりつつある露出補正ダイヤルを搭載。±3の範囲で設定可能。コマンドダイヤルで操作したい時、±3を飛び越えて調整したい時は「C」ポジションに設定します。露出補正ダイヤルはオートモードやマニュアル露出(M)モードのISO AUTO時でも利用できます。

F値表示パネル

F値のみを表示できる小さな情報パネルを搭載。モニターやファインダーから目を離した状態で確認する際に便利ですが、バックライト非搭載のため暗所では視認性が低い。

シャッタースピードダイヤル

4秒から1/8000秒まで1段刻みで調整できるシャッタースピードダイヤルを搭載。1/3段刻みで操作したい場合、「1/3STEP」に合わせてコマンドダイヤルを使用します。このダイヤルが機能するのはシャッタースピード優先「S」、マニュアル露出「M」モードのみで、他のモードを利用中は全く使用しません。絞り優先「A」やプログラムオート「P」でもISO低速限界設定の調整値として利用できると良かった。

ダイヤルは1/3STEPに合わせた時のみ自動的にロックされ、解除するには中央のボタンを押しこみながら操作する必要があります。1/3STEP以外はロックされません。

静止画 / 動画 / B&W 切り替え

Z fcと同じく、シャッタースピードダイヤルの下部に静止画/動画の切替スイッチを搭載。Z fでは追加でモノクロ専用モード「B&W」あり。ソニーのようにスイッチにロック構造は搭載していませんが、誤操作はほとんどありません。

モノクロ専用「B&W」モードはピクチャーコントロールの選択範囲をモノクロームに制限して選びやすくなっています。プリセットの3種類以外にも、カスタムピクチャーコントロールで登録したモノクロームも表示されるため便利。ただし、クリエイティブピクチャーコントロールのグラファイトなどは選択することが出来ません。惜しい。

ISOダイヤル

ISO100からISO64000まで設定できるISOダイヤルを搭載。Z fcと異なり「C」ポジションに合わせることでダイヤル操作に対応。ダイヤル操作は、いずれかのボタンに「ISO」機能を割り当てる必要があります。ISOダイヤル操作時は前ダイヤルでISO AUTOの切替もできるため、Z fcのようにメニュー画面に潜る必要はありません。しかし正直に言うと、「C」ポジションの横に「A」ポジションがあると良かったです。ISO AUTO時は、ISOダイヤルの設定値はISO AUTOの下限設定値として機能します。

PSMA スイッチ

このようなカメラでは珍しく「P/A/S/M」モードスイッチを搭載。他の物理ダイヤルよりも強制力があり、カメラの露出設定に詳しくなくとも扱いやすい。この点で富士フイルムのXシリーズと大きく異なります(富士フイルムはダイヤル操作がより重要となる。というかP/A/S/Mがない製品もある)。

注意点として、AUTOモードだったとしてもISOダイヤルの設定値は反映されます。ISO AUTOでも設定値が64000の場合はそのまま。「C」ポジションの場合は強制的にISO AUTOとなるので、特にこだわりが無ければ「C」に合わせてロックしておけば問題なし。

ファインダー

スペック的にはZ 6やZ 7シリーズと同等のファインダーを搭載。実際、見栄えが良く、大きなファインダー像を得ることが出来ます。ライブビュー映像のフレームレートは60fps固定で、120fpsの選択肢はありません。アイセンサーは光学系上部に配置され、モニターとの切替速度は良好。

不具合

ファームウェア Ver1.00にて、起動後にファインダーを覗くと全体的に暗く表示されている場合があります。ファインダーからモニターに切り替え、再度ファインダーを覗くと改善。対応は簡単ですが、再現性が高く、撮影テンポを崩す厄介な不具合となっています。

アイピースはZ fcの「擬態丸窓」ではなく、Z 8やZ 9と同じアイピースを利用できる本格的な丸窓を採用。アクセサリーも共有することができます。ただし、大型アイピースとバリアングルモニタの相性が悪く、干渉しやすい点には注意が必要です。

モニター

フルサイズZカメラとしては初となる、側方へ展開するバリアングルモニタを搭載。自撮り撮影時にモニターを確認できる初めてのフルサイズZカメラとなりました。可動域が広いので個人的には好みの構造ですが、素早くモニタを倒したい人には手間のかかる仕組みです。モニターパネルのスペックはZ 6やZ 7と同じで、3.2型 210万ドットの高解像なパネルを使用。従来機通り、ファインダーとモニターはそれぞれカラーカスタマイズが可能。

ストラップ金具(アイレット)

カメラ側面に三角環の付いたストラップ金具を装備。賛否両論あると思いますが、このタイプの金具は動きやすく接触音が発生しやすい。このため、動画撮影時に「カチャカチャ」と音を拾ってしまう可能性あり。また、斜め前ではなく側面にあるため、フロントヘビーな重いレンズを装着すると前かがみとなりやすいので注意。ただし、Z f と組み合わせを想定しているである軽量なレンズとの組み合わせでは相性の良い配置と言えるでしょう、ストラップ装着時でもダイヤル・ボタン操作が不便とは感じませんでした。

インターフェース

左側面にはUSB-C、HDMI D、3.5mmマイク/ヘッドホンに対応するポートを搭載。いずれのポートもバリアングルモニタと干渉する配置。ただし、ウェストレベルにモニタを傾けるだけならばUSB-Cポートのみ干渉。USB-Cは充電と転送の両方に対応。

バッテリー

フルサイズZカメラでは一般的なEN-EL15cを使用。グリップの無いボディにこのような大型バッテリーを搭載したのは凄い(そのぶん横幅広いですが……)。リチャージはUSBポート経由でバッテリーを装着したまま充電するか、外部充電器を購入するかの2択。外部充電器を購入する金額で、大容量のUSB-PDバッテリーを購入するのも一つの選択肢。

メモリーカード

バッテリースロットの横にSD UHS-II / microUSB UHS-I カードスロットを搭載。microSDカードは取り外しにくく、書き込み速度も遅い。メインでSD UHS-IIを使用し、バックアップにmicroSDを使うのが良いでしょう。

個人的にはカスタムピクチャーコントロールの設定をmicroSDに大量に保管、必要な時にカメラへ登録する時に使用しています。ただし、SDカード挿入時はmciroSD側のカスタムピクチャーコントロール設定を認識しません。この場合、SDカードを一時的に取り外すことで認識するようになります。

追加アクセサリー

Z f の心もとない小さなグリップを補助するため、ニコンやSmallRigからZ f 用のハンドグリップが用意されています。どちらもアルカスイス互換のベースプレートを内蔵。今回は(比較的手ごろな)SmallRigのハンドグリップを購入しました。Z f に装着すると、不足していたカメラグリップを程よく追加することが出来ます。グリップを保持した状態でフロントダイヤルも押しやすくなる。全高は少し高くなりますが、アルカスイス互換のプレートも内蔵していると思えば妥協できる範囲内。

レンズ装着例

Z fに様々なレンズを装着。大きなズームレンズ「180-600mm VR」は似合わないかと思いきや、思いのほかバランスがいいように見えます。ただし、追加のグリップを装着しないとカメラの保持がかなり難しいと思います。

相性が良いのは小型軽量なレンズですが、24-120mm F4のように全長が長いレンズでも問題なく利用することが出来そうです。

起動速度

起動速度は高速で、その後のAFからレリーズまでテンポよく移行することができます。

シャッター音

Z f はZ fcと同じく前後メカニカルシャッターを搭載。必要に応じて「メカニカル」「電子先幕」「電子」シャッターを使い分けることができます。従来通りシャッタースピードに応じて方式を切り替えることも可能。メカニカルシャッター / 電子先幕シャッターの印象はZ 7と同じ。キレのあるシャッターサウンドではありませんが、これと言った不満もなし。

メカニカルシャッター シングル

メカニカルシャッター 高速連続撮影

電子先幕シャッター シングル

電子先幕シャッター 高速連続撮影

ISO感度ノイズ

RAW

お馴染みの2400万画素 裏面照射型CMOSセンサーを搭載。直接言及はされていないものの、古くはα7 III、そしてZ 6やZ 6IIでも使われているCMOSセンサーの系譜と思われます。定評のあるセンサーらしく、ISO 6400くらいまでは良好な画質を維持。ISO 12800でカラーノイズが増加するものの、暗部のコントラストは良好に見えます。ISO 25600まで感度を上げると、暗部のコントラストが徐々に低下。ISO 51200ではカラーノイズで諧調が潰れてしまっているように見えます。

Z 7・Z 8との比較

ISO 6400

同じ撮影距離から同じ部分をクロップして比較してみたところ、3種類のセンサーで顕著な違いはありません。

ISO 12800

明るい部分は同程度に見えるものの、暗部のノイズはZ7やZ 8よりも良く抑えられています。特に低照度でISO感度を使う場合には差が大きく見えるかもしれません。

ISO 25600

どのカメラも非常にノイジーですが、Z 7やZ 8と比べると、まだ良好な画質を維持しているように見えます。

ダイナミックレンジ

撮影環境

  • 照明:NALITE PavoTUBE 6C II
    ・CCTモード 100%
  • レンズ:SIGMA 70mm F2.8 DG HSM
  • 露出:ISO 100 F5.6 固定 1/160s ~ 6s (-5EV ~ +5EV)
  • 三脚:Leofoto Summit LM-363C
  • 雲台:Leofoto G4
  • RAW現像:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

RAW

Z fは従来の「ロスレス圧縮」「圧縮」「非圧縮」の3択ではなく、「ロスレス圧縮」「高効率★」「高効率」の3種類を利用可能。「非圧縮」の選択肢はなくなってしまいましたが、効果的にファイルサイズを圧縮することができる「高効率RAW」2種類が特徴的。同じシチュエーションでファイルサイズを見比べた結果が以下の通り。

  • ロスレス圧縮RAW:27.0MB
  • 高効率★ RAW:17.0MB
  • 高効率 RAW:11.2MB
  • JPEG Fine L:10.8MB
  • LUMIX S5II RAW:27.5MB
  • EOS R8 RAW:21.9MB
  • EOS R8 圧縮RAW:9.71MB

ロスレス圧縮RAWは(同じ2400万画素センサーの)LUMIX S5IIのRAWとほぼ同じ。ただし、高効率RAWはファイルサイズが小さく、特に「高効率RAW」はJPEGのファイルサイズに近いところまで圧縮しています。ストレージを圧迫しないという点において、高効率RAWの有用性は高いように見えます。

高効率★RAWは高効率RAWよりもファイルサイズが大きくなりますが、ニコン曰く、高効率RAWよりも高画質であるとのこと。具体的にどのような点で優れているのかは不明。EOS R8の「圧縮RAW」はファイルサイズをかなり小さくすることができますが、暗部のノイズが増加するので諸刃の剣。

ロスレス圧縮RAW

他社と比べると極わずかに白飛びしやすいものの、これはニコン機全般に言えることであり、Z fに限った話ではありません。また、気にするほどの差でも無し。カメラ設定値のISOが実効ISOに比較的忠実であると思われます。

全体的な性能は、この価格帯の2400万画素 裏面照射型CMOSセンサーでよく見る結果とほぼ同じ。特筆すべき結果ではないものの、期待通りの性能を発揮するはず。

高効率RAW★

ロスレス圧縮RAWよりも圧縮率の高いRAWですが、暗部のノイズに大きな変化はありません。白飛びの閾値は同じ。じっくり比較してみるとわずかにノイズが増えているものの、実写で心配するほどの差ではないように見えます。

高効率RAW

(「EV-4」のRAWデータが破損して使えなくなっていました)
圧縮率が非常に高いRAWファイルですが、白飛びの閾値は他のRAWと同じ。全体的に顕著な画質低下はありません。よく見ると暗部のノイズがやや強く、カラーノイズでコントラストが低下しているように見える可能性あり。多くの撮影ではロス(ノイズ微増)よりベネフィット(ファイルサイズ大幅減)が上回ると思われます。

参考 LUMIX S5II

全体的な傾向はZ fと同じですが、白飛びの閾値は僅かに良好。S5IIにはZ fのような圧縮RAWの選択肢がないので、ファイルサイズは大きめ。

参考 Z 8

Z fと同じく、僅かに白飛びしやすい傾向が見られます。高解像センサーのわりには広いダイナミックレンジを備えています。やはり高効率RAWはロス少なめでファイルサイズは大幅減。ファイルサイズが大きなZ 8のほうが高効率RAWの恩恵を受けやすい印象。

参考 EOS R8

キヤノンのダイナミックレンジが狭かったのはもはや過去の話。ソニーやニコンの最新センサーと比べて、少なくとも低ISOで顕著な差は無いように見えます。(よく見ると若干多い)

圧縮RAWはファイルサイズを大幅に低減することができるものの、暗部のノイズは目に見えて増加します。これを見た後にZ fの高効率RAWを確認すると、「確かに高効率だ」と感じます。

JPEG画質

ピクチャーコントロール

ニコンお馴染みの仕上がり設定は従来通り7種類に加え、「フラットモノクローム」「ディープトーンモノクローム」「リッチトーンポートレート」を加えた計10種類。ソニーや富士フイルムほど味付けの濃い設定ではありませんが、キヤノンほど変化のない淡泊な設定(統一感があるとも言えますが)でもありません。「オート」はスタンダードをベースとして色合いや諧調を自動的に調整してくれるモードです。風景と人物撮影を交互に撮影するようなシーン(家族写真・旅行など)で便利。

モノクロを除くと、主な変化は彩度と暗部の諧調。色相に大きな変化はありません。雰囲気を変えたい場合はクリエイティブピクチャーコントロールなどを使ったほうが手っ取り早いです。

グレースケールを同じ露出で撮影したところ、プリセットごとに変化があることが分かります。スタンダードを基準にすると「ビビッド」「モノクローム」「風景」で似たような結果が得られるため、色彩の変化で使い分けていけばいいのかなと。新しい「リッチトーンポートレート」もスタンダードに近い結果が得られています。

一方、「ニュートラル」「フラット」「ポートレート」などは比較して軟調で、暗部の締まりがない、良く言えば柔らかい表現と感じるかもしれません。新しい「フラットモノクローム」はポートレートやニュートラルに近い味付けと言えそう。

個性的なプリセットが「ディープトーンモノクローム」。従来のプリセットは暗部の調整が多かったものの、明るい部分までかなり暗く写るようです。(ただ、色によって感度が異なるらしいので後述)

同じ環境でカラーチャートを撮影したもの。ディープトーンモノクロームは「青色の感度が低い」「赤色の感度が高い」とニコンが言及しており、確かにその傾向があるようです。緑色や黄色にも影響がある模様。他のプリセットが比較的安定しているだけに、ディープトーンモノクロームが突出しているように見えます。

パステル系の淡い色を撮影したのが上の画像。この場合、ディープトーンモノクロームの赤色への影響は控えめとなりますが、青色の低感度は依然として強い個性を放っているように見えます。日中の青空や夕景、マジックアワーなど時間帯によって異なる描写が楽しめるかもしれませんね。

クリエイティブピクチャーコントロール

EXPEED 6プロセッサより導入した新機能で、計20種類の個性的なプリセットに対応。他社では「フィルター」に相当するような設定も多くありますが、大きく異なる点はピクチャーコントロールのようにシャープネスやコントラストを調整できること。

さらに「適用度」(後述)を操作することで、全体的な効果を弱めることも可能です。ピクチャーコントロールと比べると色相やコントラストを大幅に調整するプリセットが多く、手軽に雰囲気を変えることが出来るのは魅力的。ただし癖の強いプリセットが多いため、適応度100で使うのは難しいかもしれません。

フラットよりもフラットな「ピュア」「ドリーム」があったり、0/1でこの上ないコントラストの「バイナリー」など尖った設定のプリセットも存在します。クリエイティブピクチャーコントロールは色相を傾けているプリセットも多く、見るからに色被りしている設定も多い。癖が少ない「ポップ」「サンスター」あたりが使いやすいです。

カスタムピクチャーコントロール

ピクチャーコントロール・クリエイティブピクチャーコントロールを合わせると計30種類のプリセットがあります。さらに細かく調整できる設定値が数多くあり、ゴリゴリに癖の強いプリセットへ変化させることも可能。

通常の設定値と分けて使いたい人はカスタムピクチャーコントロール(9枠)に登録することが可能です。設定値は別枠で登録できるほか、メモリーカードに保存したり、保存した設定値(ファイル)を読み出すことが可能。自分のお気に入りを公開したり、共有することも可能です。

ウェブにはカスタムピクチャーコントロールのプリセットを多数公開している「Nikon Picture Control Edutor」というサイトがあります。プリセットの効果を確認しながら設定値を調整したり、ダウンロードすることが可能。非常に簡単で便利なサイトなのでおススメ。

仕上がり調整

通常のピクチャーコントロールでは以下の設定が可能。

  • クイックシャープ±2
  • 輪郭協調 9段
  • 明瞭度±5
  • ミドルレンジシャープネス±5
  • コントラスト±3
  • 明るさ±2
  • 彩度±3(カラー)
  • 色相±3(カラー)
  • フィルター(モノクロ)
  • 調色(モノクロ)
    (各0.25段で調整可)

幅広い設定に対応しているほか、調整値は細かく刻むことが可能。自分好みの設定にしやすく、こだわりの設定値は前述したようにメモリカードで保存や共有が可能。

クリエイティブピクチャーコントロールは通常の設定値に加えて「適用度」の項目があります。通常は100となっており、数値を下げると通常のピクチャーコントロールへと変化(おそらくスタンダード)。癖が強すぎると感じら適用度を調整するのがおススメです。

「ピクチャーコントロール」をボタンカスタマイズで呼び出す場合、リアダイヤルでプリセットの選択、フロントダイヤルで適用度を調整可能。ライブビューで確認しながら素早く適用度を調整できるので便利。

オートフォーカス

カバーエリア

静止画撮影における選択可能なAFエリアモードは以下の通り。

  • ピンポイント
  • シングルポイント
  • ダイナミック S/M/L(AF-C時)
  • ワイドエリア S/L/C1/C2
  • オートエリア
  • 3D-トラッキング(AF-C時)

EXPEED 6世代と比べて大きく異なる点は「3D-トラッキング」に対応していること。旧世代でも「ロックオンAF」を利用可能ですが、あくまでもオートエリアAFの付随機能なので使い勝手が悪い(いちいちボタンを押して呼び出さなければならない)。3Dトラッキングは一眼レフ時代のシステムと同じように使うことが可能となっています。追従性能は完璧と言えないものの、追従する被写体を素早く選択して追いかける状況では重宝します。さらにワイドエリアAFには自分でサイズを調整することができるカスタム枠が2つ追加されています。菱形など特殊な形状には対応できないものの、従来よりも柔軟性の高い設定が可能。使わないAFエリアは表示から消しておくことで任意の設定を素早く選ぶことが可能。

AF-S

基本的にZ 9やZ 8と同世代のAFシステムであり、これと言って不満はありません。一般的な撮影環境ではストレスフリー。EXPEED 6世代でもAF-Sは困っていませんでしたが、被写体検出が使いやすくなっているのがGood。ようやく他社と同じ使いやすさになったと感じます。

敢えて言えば、大デフォーカス時に合焦速度がキヤノンやソニーと比べると遅め。これがレンズのフォーカス性能なのか、カメラ側の制御が問題なのか断言はできません。

低照度AF

明るいレンズと組み合わせることで-10EVにまで対応すると言われています。実際のところ、確かに非常に暗い環境でもピントを合わせようとカメラが動作します。ただし、光量が少ない環境ではコントラストAFに切り替わるためか、AF速度が非常に遅くなります。動く被写体を追いかけるのは難しい状態。似たような環境ではEOS R8やR5のほうが良好で、ソニーの高解像モデルほど悪くはありませんん。

AF-C

柔軟性のある被写体検出や3Dトラッキングに対応したことで、他社並みの快適なフォーカスが可能となっています。被写体の検出精度は改善の余地を残しているものの、応答性に不満はありません。追従性はまずまず良好。被写体検出と組み合わせたほうが上手くいくシーン、組み合わせないほうが上手くいくシーンがそれぞれあるため、自信の状況に合わせて使い方を切り替えていきたいところ。積層型CMOSのZ 8と比べると反応速度が遅め。しかし、EXPEED 6世代と比べると遥かに快適。AFロックオン設定は横切りへの反応のみ調整可能。背景の色や輝度によってはAFエリアのマーカーが見えづらくなるため、色を変更することが出来ます。また、MF時のポイント表示やダイナミックAF時のアシスト表示が切り替え可能。

検出機能

他社が続々と被写体検出に対応しており、ニコンZシリーズもEXPEED 7世代でついに実装。ソニーのように昆虫こそ対応していないものの、人物から動物、車両、航空機まで対応しています。動物は陸上生物と鳥のどちらも検出の対象となっているので、動物園やサファリなど、複数の動物が混在するシーンでは誤検出が頻発するかもしれません。

幸いにも、EXPEED 7では全てのAFエリアで被写体検出を利用可能。AFエリアモードを狭めて、狙いたい被写体にAFエリアを近づけると自動的に検出して対応することが出来るようになっています。

フレーム全体に対して、顔・瞳の検出できるサイズを表したのが上の図。検出できる距離はどちらも従来通りと言った印象。ソニーの瞳検出と比べるとやや見劣りするポイント。後述しますが、検出できる距離であればソニーよりも瞳を検出しやすいのはGood。

瞳を検出できる環境であれば、良好な精度と追従性。両目がフレームにある場合は近いほうの目にフレームが移動します。瞳や顔の検出が外れた場合に頭部の検出へ移行しません。このため、検出が外れたタイミングでAFエリアが他に乗り移る可能性あり。このあたりは3Dトラッキングや小さめのAFエリアを使用することで回避可能。試しに3Dトラッキングを使ってみたのが以下のサンプル。

オートエリアAFよりも粘ってくれますが、やはり検出が途切れる場合あり。ピント位置が妙にぶれる場合もあるため、不安定な印象を受けます。

眼鏡装着時でも比較的安定感のある検出精度を維持。両目がフレームに入った場合でも、適切な瞳にピントを合わせ続けています。裸眼と比べると不安定ですが、他社と比べて良好な部類。

眼鏡装着時でもピントは眼鏡ではなく瞳にピントを合わせています。メーカーによっては眼鏡にピントが引っ張られてしまう場合もあるので、これは良い傾向と言えるでしょう。

帽子をかぶった際の顔検出は意外と苦手なメーカーが多い印象。ニコンもやや不安定となりますが、それでもキヤノンやソニーと比べて瞳の検出頻度が高く、健闘しています。

動物検出を鳥でテスト。人物と同じく瞳の検出が良好で、安定感のある追従性能を発揮。少なくとも瞳が見えている間に不安定となることはありませんでした。瞳が隠れても頭部を検出しているように見えますが、瞳検出時ほど安定はしていません。

瞳検出時の追従性能は良好で、他の被写体に乗り移る可能性は低い。ただし、瞳の検出が途切れる場合、他の被写体の瞳に乗り移りやすい印象あり。AFロックオン設定を調整することで動作に違いが見られるかどうかは未検証。

検出が乗り移ってしまうと、元の被写体に復帰する可能性は低い。この際はAF-Cの動作を止めて、元の被写体を捕捉する必要あり。オートエリアAFだともたつく可能性があるので、3Dトラッキングを使うと良いでしょう。もしもフレーム内の限られたエリアに収めることが出来るのなら、ダイナミックAFやワイドエリアAFを使うのも一つの手。

マニュアルフォーカス

フォーカスエイド

(画像は過去のZ fcレビュー時のもの)
フォーカスエイドとは一眼レフ時代から存在するMFアシスト機能。ライブビュー左下に三角と丸で現在のピント位置を表しています。拡大中でもこの機能を利用することが可能

  • 丸の場合:合焦
  • 三角左側の場合:合焦よりピント位置が近側にある
  • 三角右側の場合:合焦よりピント位置が遠側にある
  • 三角両側の場合:デフォーカスが大きすぎて判断不可

正直に言うと使い辛いです。そもそも論として、目線を被写体から外せない場合はフォーカスエイドをフレーム左下に表示されても見ることが出来ません。キヤノンのようにフォーカスフレーム上に表示できたらいいのにと感じます。(合焦時にフォーカスエリアが緑色に点灯するので識別は可能)

一眼レフの時代は光学ファインダーである以上、フレーム左下に表示するしかなかったと思いますが…。制限が無いミラーレスのライブビューで、あえて見にくいフレーム左下に表示する必要は無いのかなと。

フォーカスアシスト

カスタムメニューa12の設定項目から、ピーキングのオン・オフ、そして感度と色の調整が可能。ただし、これは従来通りで、特に大きな変化はありません。また、FマウントAFレンズ使用時はフルタイムマニュアル時のピーキングも利用不可(Zマウントレンズは可能)。

MFレンズを組み合わせる機会も多いと思われるZ fが、MF時の被写体検出に対応した意外でこれといった改善点は見当たりません。

他社のモノクロライブビュー(実際にはカラー写真だけど、ライブビューのみモノクロ)がMF時にとても便利。特にピーキングとの相性が良く、将来的に似たような機能が実装されることに期待。

ライブビュー拡大

他社に存在する「フォーカスリングを操作すると自動拡大」機能はありません。拡大するにはボタンカスタマイズに対応する機能を割り当てるか、右下の拡大ボタンを押す必要があります。拡大中に倍率を下げたい時は縮小ボタンを利用します。

厄介なことに、拡大ボタンは拡大しかしません(押し続けると等倍まで拡大して止まる)。縮小ボタンを押すと縮小しますが、等倍まで拡大していると一発で全画面まで復帰できず、何回かボタンを押す必要があります。(ボタンカスタマイズに割り当て時は同一ボタンで復帰可能)

また、シャッター半押しで復帰する機能は見当たらず、レリーズまで拡大しっぱなしです。そのくせレリーズ後は強制的に全画面へ戻り、拡大を維持する機能は見当たりません。

メニューシステム

動画でメニュー一覧を確認する

操作性について

スライド式で1ページが長い

Zシリーズではお馴染みのメニューシステム。様々な機能を調整可能ですが、項目が多いにも関わらず階層構造は基本的に1段目のメインと2段目のサブのみ。このため、撮影メニューや動画メニューは1ページに大量のコマンドが配置されています。おまけにページ化されていない(スライド方式)ため、下部に配置された項目を選ぶ際に手間がかかります。3層構造となっているのはカスタムメニューのみ。中間にカテゴライズされた階層があるため、探し物が見つかりやすい構造となっています。
撮影メニューや動画メニュー、セットアップメニューもそろそろ中間層を作ってほしいところ。幸いにもメニューシステムは応答性の高いタッチ操作に対応。素早くドラッグすることで目的の機能までボタン操作よりも早くたどり着くことが可能です。

オンオフの切替を素早く操作可能

EXPEED 6世代との違いとして、単純に「オン / オフ」の機能がメインメニュー画面で操作できるようになりました。操作したい機能にカーソルを合わせて右ボタンを押すことで切替可能。従来の操作方法になれていると少し混乱しますが、すぐ慣れるはず。

メニューの「戻る」機能に統一感がない

少し厄介と感じたのは「戻る」機能。
Z fのメニューシステムでは基本的にマルチセレクターの「左」を押すことで「一つ戻る」ことが可能。「右」を押すと選択した設定の詳細へ移行できる操作とセットで便利。素早く操作することができます。一方、「左」で一つ戻ることができない設定もあります。例えばボタンカスタマイズ。このような場合に設定画面から戻りたい場合はカメラの「MENU」ボタンを押す必要があります。

ただし、MENUボタンを押して戻る場合h「第一階層まで戻る」となってしまいます。例えば、カスタムメニューからボタンカスタマイズ画面に入り、MENUボタンを押して戻ると、カスタムメニュー一覧を飛び越えて第一層(撮影メニューや動画メニューの選択)まで戻ってしまいます。間違えて戻ってしまった際は第一層から、カスタマイズ一覧の第二層、そしてカテゴリ別の第三層まで戻る必要あり。非常に不便と感じました。

画面右上のタッチパネルボタンで「一層戻る」ことができるものの、ボタン操作とタッチ操作を使分けるのは地味に不便と感じました。それに、横幅がZ 8と同程度あるため、右手親指でタッチ操作は難しい。

撮影メニュー一覧

43種類の機能を有する静止画撮影時のメニューシステム。動画撮影とは設定が分離しているため、静止画向けの調整で問題なし。画質全般やファイルの設定、撮影におけるカメラの諸設定などを変更することができます。HDRやタイムラプス、多重露光など特殊な撮影に対応。

前述したように、撮影メニューの中間や下部に配置された機能はメインメニューから素早くアクセスするのが難しい。必要であればマイメニューを積極的に活用したいところ。

また、Z 9やZ 8のような「管理メニュー」が無いうえ、Z 7IIなどのユーザーモードもありません。このため、カメラが記憶できる設定は1通りのみ。設定を切り替えたい場合は全てを操作する必要があります

動画メニュー一覧

35種類の設定に対応。静止画メニューと同じくカテゴリ分けされていません。画質全般から画像処理、出力設定、音声などが全て含まれています。

カスタムメニュー一覧

従来通りカスタムメニューのみ第二層・第三層に細分化されています。

  • フォーカス 13種
  • 露出・測光 5種
  • AEロック・タイマー 3種
  • 撮影/記録/表示 18種
  • フラッシュ・BKT 8種
  • 操作 14種
  • 動画 17種

全78項目あり、第二層はカテゴリ分けされていますが、各機能のある第三層は83種類全てが(スライドする)1ページに収まっています。マルチセレクターの左右ボタンで2層と3層を行き来できる場合は問題ありませんが、前述したようにMENUボタンで戻る必要がある場合は1層まで戻ってしまうのが残念。意識的にタッチパネルの「戻る」ボタンを使う必要があります。

再生メニュー

12種類の機能に対応。再生操作や連写時のグループ設定など。このメニューからボディ内現像を操作することは出来ない模様。(再生時の「i」ボタンメニューから選ぶ必要あり)

セットアップメニュー

36種類の機能に対応。やはり第二層のカテゴリ分けはありません。多用するメモリーカードのフォーマットやセンサークリーニング、電子音の調整、ファインダーの調整などが点在しているので厄介。頻繁に使う機能はマイメニューに登録しておくと良いでしょう。

ネットワークメニュー

10種類の機能に対応。詳細は割愛します。

マイメニュー

他社と同じように頻繁に使うメニュー機能を一か所にまとめることができる「マイメニュー」機能を搭載。少し異なるのはページ化されないこと。Z 8の他のメニューと同様、数多くの機能を登録してもページ化せずに下方へ設定した機能が次々と登録されます。

このため、数多くの機能を登録すると下部へのアクセスが難しくなり、素早く機能を呼び出すことができるマイメニューとしての役割が少し損なわれてしまうのが残念。

ボタンカスタマイズ

割り当てることが可能な機能の紹介は割愛。ニコンZ f活用ガイドを参照してください。
主に「押して呼び出す機能」と「押しながらダイヤル操作する機能」の2系統に分かれています。

Fn1

ニコンZカメラではお馴染みのFn1ボタンを搭載。単体・ダイヤル併用どちらの機能も登録可能で割り当てる際の自由度が高い。特に頻繁に利用する機能を登録しておきたいところ。

AE-L / AF-L

カメラを握った際に自然と親指で操作できる背面コントロールの一等地。Fnボタンと同じく豊富な機能を登録可能で、操作頻度の高い機能を割り当てておくと便利です。押しながらダイヤル操作が必須の機能も登録できますが、当然ながら親指が使えなくなるのでリアダイヤルの操作は出来ません(フロントダイヤルのみで操作できる機能がおススメ)。

再生ボタン

Zカメラでは珍しく再生ボタンのカスタマイズに対応。AF・AE系の機能を割り当てることが出来ないものの、ダイヤル操作を併用する多くの機能を登録可能。左手を使えるシーン・レンズでは多用できるので、単焦点レンズなど携帯性の高いレンズと相性の良いボタン。

DISPボタン

Z 9でも対応していないDISPボタンのカスタマイズに対応(Z 8は可能)。
「DISP」を多用せず、一等地にあるDISPボタンの機能を変更したいと思っていた人は多いはず。ダイヤル操作を併用する機能には対応していませんが、それでも様々な機能を割り当てることが可能。DISPボタンと再生ボタンの位置を入れ替えることもできますが、ゴミ箱ボタンの位置は固定である点に注意。

OKボタン

従来通りOKボタンのカスタマイズに対応。従来機と同じく割り当てることができる機能は非常に少ない(RESETと拡大のみ)。個人的に解せぬポイント。ここはカメラ側で制限せず、自由にカスタマイズさせてほしかった。

動画撮影ボタン

ダイヤル操作の機能を含めた幅広い機能に対応。シャッターボタンに近いこともあり重宝すると思います。

コマンドダイヤルカスタマイズ

各モードで操作する設定値を前後どちらのダイヤルで操作するか設定したり、フォーカスモード機能呼び出し時のダイヤル役割、拡大表示中のダイヤル役割を変更することが出来ます。

(「露出補正」ボタンを使わない)サブダイヤルのみで露出補正を操作したい場合、初期設定では機能オフになっている設定の変更が必要です。初期設定のまま露出補正ダイヤルを「C」に設定しても操作できません。露出補正をサブダイヤルに割り当てるには、カスタムボタンの機能ではなく、カスタムメニューの「露出補正簡易設定(b2)」をオンに設定する必要あり。

レンズFnボタン

ダイヤル併用の機能は割り当て不可ですが、AF-ONボタンやDISPボタンと同じような機能を登録することが可能。今のところL-Fn2ボタンのカスタマイズには対応していません。

レンズFnリング(左回し・右回し)

左右で呼び出すことができる機能を分けることができる面白いコントロール。初期設定のように2種類のフォーカス位置を記憶させることも可能(登録時は「個別記録」を選択)。

メモリーセットボタン

初期設定のようにフォーカス位置の登録で利用できるほか、他のボタンと同じようなカスタマイズも可能。

コントロールリング

画像が無かったのでZ 8のものを流用しています
レンズに電子制御のフォーカスリング、またはコントロールリングがある場合のみ表示されます(MFレンズやメカニカルなフォーカスリング搭載レンズを装着時は表示なし)。リングを操作することで露出補正・絞り・ISOを変更できる機能を設定可能。フォーカスリングの場合は社外製レンズだとカスタマイズに対応していない可能性あり(機能を変更してもフォーカス操作固定)。

iメニュー カスタマイズ

カメラの「i」ボタンを押すことで呼び出すことができる10種類の機能を自由に割り当てることが可能。静止画と動画で割り当て機能を分けることも出来ます。

他社のQメニューやFnメニューとよく似ていますが、AF-Cのカスタマイズやボタンカスタマイズのメニューへ直接移動することができるショートカット機能が個性的。撮影現場でAF-Cを調整しながら使いたい場合は重宝することでしょう。モニターの輝度やファインダーの見栄えを変更できる機能も地味に便利。

難点を挙げると、できることに対して登録枠が10と少ないこと。できれば15枠、もしくは2ページくらいは欲しかったです。(メインメニューが使い辛いため)

カスタマイズできないところ

  • 「i」ボタン
  • マルチセレクター
  • 拡大ボタン
  • 縮小ボタン
  • MENUボタン

右手親指で操作するコントロールの大部分はカスタマイズ不可、もしくはカスタマイズの自由度が低いボタンとなっています。融通が利くのは「AE-L / AF-L」「DISP」ボタンの2か所のみ。正直に言うと拡大縮小機能をあまり使わないので(代替手段も多い)、カスタマイズに対応して欲しかったところ。

タッチFn

Z fの新機能として、ファインダー使用時にタッチパネルを操作することで任意の機能を使用することが出来ます。初期設定ではオフとなっているので、使いたい場合はオンにして機能を選択しておきましょう。利用できる機能は「フォーカスポイント移動」「瞳の切替」「ガイドライン表示」「拡大」「水準器表示」の5種類。富士フイルムのタッチFnのように特定の方向へフリックすることで機能を呼び出すものではなく、タッチすると機能を直接呼び出す(操作)することが可能。

ガイドライン表示はオンオフのみで、パターンを切り替えることが出来るわけではありません。また、素早い操作が可能である一方、不意にモニタに触れてしまったり、鼻が当たってしまった場合に誤操作が発生しやすいので注意が必要です。誤操作を予防するため、タッチFnが反応する領域を制限することが可能。使いやすく、かつ誤操作が少ないと思われる領域を設定しておくのがおススメです。

連写・ドライブ

仕様の確認

ニコンイメージング Z f 主な仕様より

撮影速度

  • 低速連続撮影:約1~7コマ/秒
  • 高速連続撮影:約7.8コマ/秒
  • 高速連続撮影(拡張):約14コマ/秒
  • ハイスピードフレームキャプチャー+(C30):約30コマ/秒
  • ハイスピードフレームキャプチャーはJPEG NORMAL固定
  • プリキャプチャー 最高約30コマ/秒 JPEG NORMAL固定

Z 8やZ 9と同じくEXPEDD 7プロセッサ搭載モデルですが、電子シャッターの高速連写は「C30」まで対応。このあたりは搭載しているイメージセンサー(Z fは積層型ではない)が異なるので妥協すべき範囲。幸いにも、RAW出力が可能な高速連続撮影(拡張)では14コマ秒まで撮影することが可能。

同価格帯でこれ以上の連写速度を実現しているのはキヤノン「EOS R8」「EOS R6」とパナソニック「LUMIX S5 / S5II」など。ただし、これらはローリングシャッターの歪みを伴う電子式シャッターの使用が必須。メカニカルシャッターとしてはZ 6IIと並んでトップクラスと言えるでしょう。

高速連続撮影(拡張)は連続撮影を優先したモードであり、高速連続撮影と比べて何らかの条件や制限が発生すると思われます。過去のニコン機は機種によって(拡張)との差が明記されていますが、Z fではまだその記述がありません。Z fは少なくともフリッカー低減に対応している模様。(例:Z 7におけるHiとHi+の違い

連続撮影可能コマ数

  • RAW(ロスレス圧縮RAW):186コマ
  • RAW(高効率★):200コマ以上
  • RAW(高効率):200コマ以上

RAW出力に対応する際速の撮影速度が「14コマ秒」なので、最低でも10秒以上はバッファの目詰まりなく撮影することが可能。さらに圧縮率の高い高効率RAWでは上限を明確に定めず、200コマ以上の撮影が可能とのこと。一眼レフ時代ならばプロ機のような性能です(ミラーレス時代のプロ機は次元が違いますが……)。

シャッタースピード

  • 1/8000~30秒
  • 撮影モードMでは900秒まで延長可能
  • メカニカル/電子先幕/電子シャッター
  • 1/200秒以下の低速シャッタースピードで同調

このあたりの使用はZ 6IIと同じ。電子シャッターでも1/8000秒まで利用可能となっています。従来通り、シャッタースピードに合わせて方式を切り替える「オート」モードを搭載。キヤノンやソニーと異なり、電子先幕シャッターの「露出ムラ」やメカニカルシャッターの「シャッターショック」を効果的に回避することが出来ます。

撮影速度の調整

  • 低速連続撮影:7/6/5/4/3/2/1 コマ秒

Z fでは低速連続撮影のみ撮影速度の調整が可能。C30やプリキャプチャーの撮影速度を調整することはできません。

バッファ・バッファクリア

Prograde Digital COBALT SD UHS-IIメモリーカードを使用し、「5/10/15秒」の連続撮影で記録できた写真の枚数をカウント。他の機種でのテストと同じく、RAWで最もファイルサイズが大きくなる「ロスレス圧縮RAW」を使用。テスト結果は以下の通り。

5秒 10秒 15秒
メカ 14fps 56 113 154
電子 14fps 125
C30 154 300 451

その他のカメラ設定

  • Z 24-120mm F4 S
  • MF
  • ISO 100 1/8000秒 F4 固定
  • フリッカー低減オフ
  • 歪曲収差補正 外せない
  • レンズ補正 オフ

カメラに負荷がかかりそうな設定を外した状態で撮影。それでもメカニカルシャッターHi+は期待値(5秒で70コマ)に届かず、約10コマ秒となっています。電子シャッター使用時はさらに連続撮影速度が低下するようです。原因は今のところ不明、

撮影速度はともかく、バッファはとても良好。撮影後のバッファクリアも非常に速く、一般的な連続撮影であれば快適に利用できると思います。(SD UHS-IIでの結果ですが)

RAWの種類による変化

  • RAW(ロスレス圧縮RAW):約25.9MB
  • RAW(高効率★):約16.5MB
  • RAW(高効率):約11.0MB

Z fはEXPEED 7プロセッサ搭載モデルらしく、圧縮率の高い「高効率RAW / ★」に対応。特に圧縮率の高い「高効率RAW」はJPEG Fine並みのファイルサイズを実現しており、SD UHS-IIへの書き込み速度は非常に速いと思われます。

Hi+ 5秒 10秒 15秒
ロスレス圧縮 56 113 154
高効率★ 58 112 170
高効率 58 112 170

それぞれのRAWでテストした結果が上の通り。少なくとも15秒間の連続撮影で顕著な差は発生していません。画質優先であればロスレス圧縮RAWを使うのも手ですが、画質差がほとんどないので、ファイルサイズを抑えた高効率RAWが個人的にはおススメ。また、高効率RAWはロスレス圧縮RAWと比べて僅かに撮影速度が速いようです。

Micro SDカードとの比較

Z fはSD UHS-IIに加えて、Micro SD UHS-Iカードスロットも搭載。書き込み速度は遅くなるものの、バックアップなどに使用することが出来ます。試しに高効率RAWのHi+連続撮影15秒間を使用し、SD UHS-IIと比較した結果が以下の通り。

使用カード 撮影枚数
ProGrade Digital COBALT UHS-II 170
Nextorage microSD UHS-I 144

ご覧の通りSD UHS-IIと比べると撮影速度に低下が発生。とは言え、顕著な低下ではなく、妥協できる範囲内に収まっているように見えます。ボトルネックを考慮しても、同時記録による冗長性を重視する場合は一つの選択肢となりうるのかなと。

撮影タイミング

Z 8やZ 9はメカニカルシャッターレスのため、撮影を認識する手段として「電子音」と「ライブビュー上の表示」を使用します。電子音の音量を上げることで大部分の状況は対応可能ですが、メカニカルシャッターと比べると高音で耳障りとなる可能性があります(静粛性が求められる場合、状況に似つかわしくない奇妙な電子音)。

Z fはメカニカルシャッターを搭載しているので、通常は必要ありません。しかし、サイレントモードやC30連写モードでは電子シャッターを使用。このような場合に「ライブビュー上の表示」で認知する手段が用意されています。

電子音が不適な場合はライブビュー上に「撮影タイミングの表示」が可能。利用できるモードは3種類。

  • A:瞬間的にブラックアウト
  • B:ライブビュー上下左右に枠表示(白色)
  • C:ライブビュー左右に枠表示(黒色)

撮影シーンによって適する表示方法が異なるため、素早く切り替えることが出来るようにマイメニューに設定しておくのがおススメです。どの設定でも表示する枠やブラックアウトの色を変更することは出来ません。(個人的には目立つ赤枠が良かったです)
ただし、Z 8のようにシャッタースピードによるType Aへの自動切換え機能には対応していません。

オートISO

撮影メニューのISO感度設定には従来通り感度自動制御機能(ISO AUTO)を搭載。DXフォーマットの「Z fc」は、このメニュー画面からISO AUTOのオンオフを切り替える必要があり。しかし、Z fはボタンカスタマイズで任意のボタンに「ISO」を登録することで、ダイヤル操作によりISO AUTOの切替が可能となっています(ISOダイヤル「C」設定は必須)。

上限設定は従来通り。ISO AUTO時の下限設定は「C」ポジション時にダイヤル操作(ISOボタン必須)で対応。「C」ポジション以外の場合はISOダイヤルの設定値が反映されます。

低速限界設定も従来通り。ショートカット機能はないので、メニュー画面での操作が必須。個人的には多用する機能なので、いずれかのボタンに割り当てることが出来ると良かったかなと。また、Aモードなどではシャッタースピードダイヤルが役立たずとなっているので、低速限界設定に利用できると良かったです。

ローリングシャッター

CMOSセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的。しかし、フルサイズミラーレスでは発熱やノイズなど、様々な問題から実現に至っていません(ソニー「α9 III」を除く)。現在はイメージセンサーの上ラインから下ラインまで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的です。言葉で説明しても難しいので、下部の動画で分かりやすく解説しています。

動画のように、コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分がローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用。実際にこのカメラのローリングシャッターの影響を調べた結果が以下の通り。

ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となっています。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生。影響の度合いは競合する2400万画素センサー搭載機(α7 III・α7C・LUMIX S5IIなど)と同程度であり、良くも悪くもありません。この観点でいえばキヤノン「EOS R8」が頭一つ抜きんでた性能と言えるでしょう。他のカメラではどのような影響があるのか?は以下の通り。

高解像ながら積層型CMOSのZ 8がはるかに良好。EOS R8も非積層型のフルサイズセンサーとしては非常に良好。Z fはZ fcの2000万画素 14bit RAWと同程度と言ったところ。4500万画素BSIのZ 7よりも優れています。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • フルサイズミラーレスでは貴重なヘリテージデザイン
  • Z fcよりも全体的に質感が向上
  • 従来よりもボタンカスタマイズの柔軟性が向上
  • 素早く切り替えが可能なB&Wモード
  • 本格的な丸形ファインダー
  • 見栄えの良い電子ビューファインダー
  • 高解像なバリアングルモニタ
  • EN-EL15cバッテリーに対応
  • SD UHS-II・microSDのデュアルカードスロット
  • 起動速度が良好
  • 優れた高ISO感度性能
  • 良好なダイナミックレンジ
  • 効果的な圧縮率の高効率RAW
  • ピクチャーコントロールの豊富なプリセット
  • 柔軟性のあるJPEG設定
  • EXPEED 7 世代の優れたAFシステムと被写体検出
  • 効果的な手振れ補正
  • (シンプルながら)ピクセルシフトマルチショットの実装
  • 良好なバッファクリア・連写性能

見た目こそヘリテージデザインのレトロな外観ですが、中身はEXPEED 7プロセッサを搭載した最新モデル。Z 8やZ 9など高価格帯のカメラ以外では初となる被写体検出や最新のAFシステムを実装し、手振れ補正やピクチャーコントロール関連で新開発の機能をいくつか搭載しています。将来登場するであろうZ 6IIIやZ 5IIのスペックを暗示しているよう。他社を圧倒するAFとは言えませんが、EXPEED 6世代と比べると遥かに使いやすくなっています。被写体検出により素早くAFエリアを合わせることができ、3Dトラッキングで柔軟に被写体を捕捉することが可能。モノクロモードへ素早く切り替えることが出来る「B&W」はJPEG出力がメインであれば面白い機能。思っていたよりもずっと多用することができ、プリセット4種に加えて追加登録したモノクロプリセットも利用できるのが良かったです。(ただし、適用度を変化できるカスタムピクチャーコントロールは使用不可)

悪かったところ

ココに注意

  • 外部充電器は別売り
  • ボディ底面がプラスチッキー
  • 横幅がZ 8並みに大きい
    (決して小さいカメラではない)
  • 最小限のグリップ
  • AFジョイスティック無し
  • 拡大・縮小ボタンが依然として機能固定
  • 安価なケーブルレリーズの選択肢がない
  • シャッタースピードダイヤルは「S/M」モード以外で機能無し
  • ISOダイヤルにAポジションが無い
  • 低照度AF時に合焦速度が大幅低下
  • 瞳検出が外れた場合にトラッキングが不安定
  • MFレンズの撮影体験で大幅な改善は無い
  • 旧態依然のメニューシステムで操作性が悪い
  • ローリングシャッター歪みの影響が強い

デザインや操作性は好みが分かれると思います。購入する前に確認できることが多いものの、底面のプラスチック感や撮影時の操作性は実際に使ってみないと分からないものです。致命的な使い辛さは感じないものの、撮影のテンポを乱されるポイントはいくつかあります。

MFレンズと相性の良い外観ですが、使い勝手の良い機能はほとんど追加されていません。(愛着のあるMFレンズがないのなら)基本的にはZマウントのAFレンズ用と割り切ったほうが良さそう。

画質やAFなど、カメラの基本性能として欠点と感じる部分はそう多くありません。ただし、2018年から(α7 IIIの24MP BSIセンサー)変化のない目立つローリングシャッター歪みや、キヤノン・ソニーと比べて被写体検出時の追従性はイマイチと感じました。

総合評価

満足度は95点。
外観・操作性は好みが分かれるものの、中身は確かにニコン最新のミラーレスカメラ。「Z 8」「Z 9」ほど高価なカメラには手が届かないものの、効果的な撮影機能やAFシステム、手振れ補正などを必要としている場合は要検討。EXPEED 6世代のカメラと比べると違いはハッキリと表れています。手ごろな価格でニコン最新のテクノロジーを体感してみたい人は要検討。とは言え万人向けのカメラと言えず、デザインありきのカメラであることは否定できません。
前述したように、撮影のテンポが乱れると感じる操作性・システムが複数存在しています。素早く設定変更したい、快適なMF操作を利用したいなどは注意が必要。もちろん、Z fの操作性が肌に合うという人もいると思うので、自身の撮影テンポに合うかどうか確認したほうが良いでしょう。最新スペックや注意点などいくつか紹介しましたが、Z fのデザインに惹かれたら「買い」で良いのは間違いありません。他のこのような選択肢のフルサイズミラーレスは存在せず、価格に見合うだけの質感や性能は満たしています。このカメラを手に取っているだけで撮影のモチベーションが上がってくる人もいるはず。多少の不満はカメラへの愛情でカバーできるのかなと。

相性の良いレンズが少ないのは悩ましいところですが、それは時間が解決してくれるかもしれません。(純正レンズの拡充やサードパーティの参入など)

参考情報

購入早見表

作例

Flickrにてオリジナルデータを公開

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