ニコン「Z fc」のレビュー第五弾を公開。今回はZ fcのRAWにおけるISO感度ノイズやダイナミックレンジ、JPEGにおける色合いやコントラストなどをチェックしています。
Index
Z fcレビュー一覧
- ニコン Z fc 徹底レビュー 完全版
- ニコン Z fc 徹底レビュー Vol.5 JPEG/RAW画質 編
- ニコン Z fc 徹底レビュー Vol.4 フォーカス編
- ニコン Z fc 徹底レビュー Vol.2 メニュー・カスタマイズ編
- ニコン Z fc 徹底レビュー Vol.1 外観・操作性編
ISO感度ノイズ
ノイズ
おそらく、定評のあるNikon D500と関係のある2000万画素センサーだと思われる。ノイズ耐性はAPS-Cながら良好で、処理しやすいカラーノイズは発生するもののISO 3200までは良好な画質を維持しているように見える。ISO 6400以降はノイズが増加するが、ノイズがきめ細かく、ディテールに大きな影響はない。
ISO 12800~ISO 25600でノイズが徐々に強くなり、ISO 51200付近から処理しきれないカラーノイズも目立つようになる。ISO 102400以降の拡張感度は画質が破綻しているので極力避けたい。
色再現
明るい色ならばISO 25600くらいまで使えそうに見える。それ以降はノイズが強くなり、色あせて見える可能性が高い。シャドウを重視する場合はISO 1600~3200くらいまでを基準として使いたいところ。
解像性能
ピークの画質はISO 3200まで。ISO 6400以降はディテールの損失が見られるものの、ISO 12800までは良好な画質を維持している。ISO 25600はディテールの低下が目立つが実用的な画質だと思う。
ISO 51200以降はディテールの低下が目立ち、ISO 102400~204800はディテールが破綻している。
ダイナミックレンジ
適性露出と±5EVの露出補正、計11枚を12bit・14bit RAWで撮影。撮影後にAdobe Lightroom Classic CCで適正露出まで復元し、さらにハイライトとシャドウを上げ下げしたのが以下の作例となる。
RAW画質は撮影メニューから変更可能。高速連写H+は12bit RAWと14bit RAWで最高速が変化するので注意したい。自動的にRAW画質が切り替わることは無いので、手動で切り替える必要がある。
情報量が変化するため、RAWのファイルサイズにも変化がある。例えば今回のテスト環境では以下のような違いが見られた。
- 14bit RAW:24.5MB
- 12bit RAW:19.5MB
12bit RAWを使用することでファイルサイズを80%に抑えることが可能。画質を考慮してもファイルサイズを抑えることに価値を見出せるかどうかは以下を読み進めて欲しい。
14bit RAW
まずまず良好なダイナミックレンジだが、最新のAPS-Cセンサー(例えば富士フイルムの2600万画素 X-Trans CMOS 4)などと比べるとハイライト側が少し狭い。比較してシャドウの復元力が僅かに良好だが、ハイライトの差を考慮するとやや見劣りする。
多少のノイズが発生するものの、シャドウ側はー5EVまで良好に色を復元しているように言える。逆にハイライトは+3EV付近から情報が飛び始め、+4~+5で実用的とは言えない画質となってしまう。
12bir RAW
12bit RAWで同じ環境で撮影・現像すると、シャドウのノイズがより目立つ。特に-5EVの復元時が目立つが、-4EVや-3EV時も深いシャドウの復元でノイズの影響を受ける可能性が高い。もしも撮影後の現像で柔軟性を重視するのであれば、14bit RAWに固執する価値があると思う。
逆にハイライトは14bit RAWと比べて有意な差が見られない。撮影後の現像でハイライトの編集が多いのであれば、12bit RAWでも問題ないと言える。
JPEG画質
撮像範囲
アスペクト比はAPS-C全エリアの「DX(3:2)」に加えて「1:1」「16:9」が用意されている。個人的に縦位置では「4:3」が好みだが、撮影後にトリミングする必要がある。(なぜかカメラ内の画像編集時は「4:3」「5:4」「4:5」「3:4」「2:3」「9:16」と幅広い選択肢から選ぶことができる)
ちなみにZカメラの七不思議として「撮影範囲設定はカメラ内で固定(カスタムモード無視)」はこのカメラも継承している。Z fcはカスタムモードが無いので関係ないかと思いきや、撮影範囲設定はAutoモードにも適用されるので気を付けたい。
ピクチャーコントロール
7種類のプリセットとオートモードを搭載。「オート」は自動的にピクチャーコントロールを切り替える機能では無く、基本的に「スタンダード」の色合いや諧調を自動調節するモードである。飛び道具的なプリセットは存在しないが、後述するCreative Picture Control(CPC)にまとめられている。
Creative Picture Control
他社で言うところの、いわゆる「フィルター効果」に近い、個性的なプリセットが20種類用意されている。ただし、通常のピクチャーコントロールと同じようにシャープネスやコントラストを調整できるほか、効果の適用度を調整することも可能だ。調整幅も広く(後述)非常に自由度が高いフィルター効果である。
PC・CPCの色合い・諧調確認
ホワイトバランスを固定して、各種ピクチャーコントロール・CPCで撮影した結果が以下の通り。通常のピクチャーコントロールは素直な使い勝手だが、CPCは癖がかなり強い。低コントラストながら色被りしていたり、彩度と明度が極端に低いプリセットも存在する。
(ニコンはCPCについてデジチューターで解説しているので参考となるかもしれない:リンク)
ピクチャーコントロール7種のうちスタンダードやビビッド、風景はコントラストが高く、ニュートラルやフラットはコントラストが低い。CPCはさらに極端な高コントラストのプリセットも多いが、極端な低コントラストのプリセットは無いように見える。
カスタムピクチャーコントロール
自由にパラメータを調整してカメラに登録できる「カスタムピクチャーコントロール」が9枠あり、ネット上に公開されているプリセットルデータや、自分で調整したデータを登録することが可能。つまり、ピクチャーコントロール・CPCと合わせて、カメラ1台で計37種類のプロファイルを使うことが出来る。
さらに、メモリーカード上に記録しているプリセットをカメラに登録することが出来る。各カメラメーカーの中ではぶっちぎりで面白いシステムと言える。
注意点として、メモリーカード内に保存しているプリセットは「メモリーカードの初期化」で消えてしまう。日頃からカード内の画像データを削除する方法として「初期化」を使っている人は気を付けたい。
仕上がり調整
ピクチャーコントロールには以下の調整項目が存在する。
- クイックシャープ
- 輪郭強調
- ミドルレンジシャープ
- 明瞭度
- コントラスト
- 明るさ
- 色の濃さ(カラー)
- 色合い(カラー)
- フィルター効果(モノクロ)
- 調色(モノクロ)
- 適用度(CPC)
一般的な彩度やコントラスト、シャープネスの他に、色相や明瞭度まで調整できる面白いシステムとなっている。パラメータによっては0.25刻みの微調整が可能となっており、自分好みのプリセットに煮詰めやすい。さらにCPCではフィルター効果を弱めることが出来る適用度を利用可能だ。カスタムピクチャーコントロールは一部の項目が固定され調整することが出来ない。
アクティブD-ライティング
アクティブD-ライティング(ニコン)
白とびや黒つぶれを軽減した、見た目のコントラストに近い画像を撮影できます。暗い室内から外の風景を撮ったり、直射日光の強い海辺など明暗差の激しい景色を撮影するのに効果的です。アクティブD-ライティングを設定したときは、測光モードをマルチパターン測光に設定して撮影することをおすすめします。
JPEG出力時にシャドウを持ち上げる処理が施され、明暗差が大きなシーンで黒潰れを軽減する機能。ささらに、自動露出(絞り優先・SS優先・ISOオート時)時は微妙に露出も調整される。
基本的には白飛びを回避するために撮影時の露出が少し暗めとなり、JPEG出力時に露出を持ち上げて適正露出+シャドウの補正が適用される場合が多い。ただし明暗差によっては動作が異なる場合あり。元の露出が暗くなる場合、シャドウにノイズが発生する場合があるので気を付けたいところ。
長秒ノイズリダクション
読んで字のごとく、長秒シャッター時に発生するノイズを軽減する機能。
ノイズリダクション
高ISO感度使用時に発生するノイズ(輝度・カラー)を抑える機能。JPEG出力時に有効だが、「標準」は効き目が強くディテールが溶けやすい。「しない」に設定するとカラーノイズが目立つので、個人的には「弱め」推奨。
ヴィネットコントロール
レンズ由来の周辺減光をJPEG出力時に補正する機能。レンズによっては「標準」で対応できない場合があるので、状況に応じて使い分けたいところ。場合によってはノイズ増の原因となる(特に高ISO感度使用時)。
回折補正
小絞りで発生する回折効果を低減する機能。多少効果はあるものの、過信は禁物。Z fcの場合はF8~F10以降で回折の影響が強くなる。
自動歪み補正
レンズ由来の歪曲収差を自動的に補正する機能…なのだが、Z DXレンズはこの機能が強制的にオンとなるレンズが多く、オフにすることは出来ない。少なくともZ DX 16-50mmやZ DX 18-140mmは強制的に適用される。
今回のおさらい
定評ある2000万画素センサーの高ISO感度画質は健在。ノイズの発生は避けられないが、ディテールが豊富で実用的な画質を維持しているように見える。個人的にISO 6400~12800くらいまでは使える画質と感じ、ISO 25600以上は可能な限り避けたいところ。
ハイライトの粘りは他のカメラと比べて大差はないはず。フルサイズと比べると若干狭いが、驚くほどの差は無いと思う。状況によってはアクティブDライティングを適用することで自動的に白飛びを軽減してくれる。ただし、シャドウ側も重視する場合はノイズ増に気を付けたい。
ダイナミックレンジは競合機種と比較してトップクラスの性能とは言い難いが、比較的シャドウ寄りの印象が強く、シャドウを強めに復元してもノイズは目立ちにくい。ただし前述したようにアクティブDライティングを使用する場合はノイズ増に注意。
RAWを現像するのも楽しいが、柔軟性の高いピクチャーコントロール・Creative Picture Controlを楽しむのも面白い。標準プリセットを自分好みにカスタマイズするのも良し、癖の強いCPCの適用度を下げることでまた違ったプリセットとして楽しめるかもしれない。さらにカスタムピクチャーコントロールと「Nikon Picture Control Editor」の存在が非常に大きく、カメラ内では見つからなかったお気に入りのプリセットを探す楽しみもある。