日々の増えてゆくカメラ関連機材の中で、個人的に気になる商品の特集記事。第十一弾の今回は銘匠光学のニコンZマウント用レンズ「TTArtisan AF 27mm F2.8 Z」をピックアップ。
TTArtisan AF 27mm f/2.8 C
- 販売:焦点工房など
- ブランド:TTArtisan
- 用途:ニコンZマウント用交換レンズ
- 価格:26,820円
- 主なスペック・特徴:
・APS-C
・Zマウント
・27mm
・F2.8-F16
・7枚絞り
・39mmフィルター
・0.35~∞
・φ63×29mm
・100g
・ステッピングモーターAF
ポイント
ここが良さそう
- 手ごろな価格
- 小型軽量
- 絞りリング
ここが気になる
- 互換性
TTArtisanとして2本目のZマウント用APS-C AFレンズ。(最初のレンズはフルサイズ対応の「TTArtisan AF 32mm f/2.8 Z」)まだまだ選択肢が少ないZマウント用サードパーティ製レンズとして貴重な選択肢であり、その中でも小型軽量で携帯性に優れているレンズ。さらに2万円台で購入することができる手ごろな価格も魅力的。
小型軽量で手ごろな価格ながら、MTF曲線を見る限りでは周辺部まで安定した結果を得ることができるようです。気になるのはニコンZカメラとの互換性ですが、レンズはパソコン経由でのファームウェアアップデートに対応。ソフトウェア的な不具合や機能改善が可能となっています。実際、既にZ 30装着時の動作を改善するファームウェアが公開されています。
購入早見表
実際に使ってみた
おことわり
今回は焦点工房からの無償提供となります。と言っても、無償提供にあたり、レビュー内容の指示や金銭の授受は発生していません。また、装着するカメラやフィルターは実費で購入。無意識のバイアスがかかっている可能性は否定できませんが、そのあたりは過去のレビューを参考にしながら「このブログは無償提供の製品レビューでも信頼できる」と思ったら読み進めてください。
外観など
箱・付属品
焦点工房よりサンプルを頂いたのでさっそく開封。日本のレンズメーカーと比べてデザイン性を重視した箱に入っています。指摘する点はいくつかあるものの、「高い物を買った(交換レンズとしては安いほうですが)」という体験としては肯定的に評価。レンズ本体のほかにレンズキャップとフードが付属。リアキャップはUSBポートを搭載しており、レンズのファームウェアアップデートが可能です。
外観
外観はNIKKOR Z SEレンズと同じくシルバーのリングが特徴的。Z fcを意識したようなデザインとなっています。軽量なレンズですが、外装は全体的に金属パーツを採用。全体的にプラスチック製のNIKKOR Z 28mm F2.8と比べると質感が良好。また、ZマウントのAFレンズとしては珍しく絞りリングを搭載。全域で1/3段刻みのクリック付きで動作。フォーカスリングは滑らかに回転しますが、肝心のステッピングモーターの動作が粗く、遠景の微調整は難しめ。実を言えば富士フイルムXマウント用も所持。よく似た質感・操作性ですが、ニコン用は大口径Zマウントに合わせてマウント付近が大きくなっています。Xマウント用と同じく、フォーカシングは全群繰り出し式で、レンズ中央の小さな内筒が前後に移動します。内筒の移動は鏡筒の内側で完結するため、全長に変化はありません。39mmフィルターを装着することで、実質的にインナーフォーカス。鏡筒の直径は大きいものの、レンズは前後ともに小さめ。周辺は反射防止のためにマットブラックの塗装が施されています。Z 30を手放してしまったのでZ 8に装着。
オートフォーカス
フォーカスの動作そのものはキビキビとしていますが、合焦直前にウォブリングが発生。結果的に合焦速度が低下し、場合によってはピントの山を外した状態でフォーカスがロックする場合あり。お世辞にも良好とは言えない状態です。TTArtisanはZ 30用に互換性を改善するファームウェアアップデートを公開していますが、Z 8の最新ファームウェアには非対応なのかもしれません。少なくとも富士フイルムXマウント用はZマウント用よりも良好な結果が得られたので、将来的にファームウェア更新で解決する可能性あり。
実写
光学性能の細かいレビューはXマウント版を参照してください。開放F値は大きめですが、小型軽量で適度に広い画角を備えており、使い勝手の良いレンズ。全群繰り出し式ということもあり、接写でも遠景でも収差の変動が少なく、安定感のある結果を得ることが可能です。少なくとも、価格を考慮すると優れた光学性能と言えるでしょう。接写時の安定感はZ 28mm F2.8よりも優れています。柔らかいボケとは言えないものの、諸収差がよく抑えられ、悪目立ちはしていません。また、「27mm F2.8」という性質上、大きなボケを得るにはしっかり近寄る必要があります。
注意点として、レンズに厚めのプロテクトフィルターを装着した状態で付属のレンズフードを使用すると周辺部がケラれます。フィルターを装着した状態でフードを使いたい場合は社外製の幅が広いフードを用意したほうが良いでしょう。実際のところ、前玉が鏡筒内部に隠れるような形となっているので、レンズフードの必要性は低い。接写性能(最短撮影距離・撮影倍率)は低めで、小さな被写体をクローズアップするような撮影には不向きです。それでも、F2.8を活かして背景をぼかすことで被写体を浮き上がらせることは可能。この際のピント面はシャープなので、パンチのある描写が得られます。
お世辞にも良好な逆光耐性とは言えません。状況によっては厄介なフレアが発生する可能性あり。フレアやゴーストは発生しやすいものの、光源が光学系に直接入らなければ致命的な問題は避けることが出来ました。
まとめ
AFの問題さえクリアできれば、コストパフォーマンスの高い単焦点レンズです。逆光耐性は低めですが、接写でもシャープな結果をえることができ、接写時のボケは滑らかで綺麗。AFや耐候性、逆光耐性などを重視すると「NIKKOR Z 28mm f/2.8」「NIKKOR Z DX 24mm f/1.7」の優先度高めですが、Z fcと組み合わせる趣味性の高いAFレンズを探しているのであれば検討すべき一本。
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