このページではニコン「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」とソニー「FE 28-60mm F4-5.6」を外観・操作性・光学性能の観点から見比べています。
仕様の確認
発売日・価格設定など
名称 | Z 24-50mm | FE 28-60mm | |
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発売日 | 2020年 8月28日 | 2021年春 | |
初値 | ¥47,520 | 不明 | |
商品ページ | 商品ページ | ||
仕様表 | 仕様表 | ||
データベース | データベース |
どちらも2020年に登場したコンパクトな標準ズームレンズです。手ごろな価格のフルサイズミラーレスのキットレンズとして登場し、2?3万円と比較的手ごろな価格設定で購入可能です(キットレンズとして付属する場合)。
ソニーは2021年春までレンズ単品で購入できませんが、今のところα7Cのキットレンズとして入手可能です。
レンズ構成比較
光学設計はニコンのほうが少し複雑で、3枚の非球面レンズに加えて2枚のEDレンズを採用しています。広角24mmを備えつつ、高い光学性能を維持するには特殊レンズの使用が不可欠だったのかもしれません。
ソニーは比較的シンプルですが、それでも非球面レンズを3枚使用したミラーレス専用設計となっています。広角側の画角を抑えたショートズームだったので設計しやすかったのかもしれませんね。その分価格設定に反映されていると思います。
名称 | Z 24-50mm | FE 28-60mm | |
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レンズ構成 (群-枚) | 10-11 | 7-8 | |
EDレンズ | 2 | 0 | |
非球面レンズ | 3 | 3 |
スペック比較
似たようなスペックですが、ニコンは広角24mmを、ソニーは望遠60mmの焦点距離をカバーしています。開放F値はニコンのほうが少し暗いですが、1/3段差なので特に大きな問題は無いでしょう。
使い勝手の面で大きく異なるのはニコンがズームレンジ全域で最短撮影距離0.35mを実現している点。これにより、望遠側でソニーよりもクローズアップしやすいレンズに仕上がっています。さらにソニーでは非対応のレンズフードに対応している点も特徴と言えるでしょう。
名称 | Z 24-50mm | FE 28-60mm | |
---|---|---|---|
レンズマウント | Zマウント | Eマウント | |
焦点距離(mm) | 24-50 | 28-60 | |
レンズ構成 (群-枚) | 10-11 | 7-8 | |
開放絞り (F値) | 4-6.3 | 4-5.6 | |
最小絞り (F値) | 22-36 | 22-32 | |
絞り羽根 (枚) | 7 | 7 | |
円形絞り | ○ | ○ | |
最短撮影距離 (m) | 0.35 | 0.3(W) 0.45(T) | |
最大撮影倍率 (倍) | 0.17 | 0.16 | |
フィルター径 (mm) | 52 | 40.5 | |
手ブレ補正 | - | - | |
フードタイプ | HB-98 | - | |
外形寸法 最大径x長さ (mm) | 73.5 × 51 | 66.6 x 45 | |
質量 約 (g) | 195 | 167 |
外観の比較
サイズ・質感
名称 | Z 24-50mm | FE 28-60mm | |
---|---|---|---|
外形寸法 最大径x長さ (mm) | 73.5 × 51 | 66.6 x 45 | |
質量 約 (g) | 195 | 167 |
どちらも標準ズームとしては非常にコンパクトで軽量なレンズです。ただし、見比べてみるとソニーFEのほうが全体的に少し小さい。この差が大きなアドバンテージになるとは言えませんが、「最小・最軽量のフルサイズミラーレス用標準ズーム」はソニーに軍配が上がります。(もちろんズームレンジなどに違いはありますが)
どちらもプラスチック製ですが、安っぽさで言えばソニー。ニコンはレンズマウントまでプラスチック製ですが、ズームリングやフードバヨネットなどを含めて、しっかりとした作りと感じます。
カメラボディに装着すると、α7C+FE28-60mmのサイズ感は魅力的と感じます。コンパクトと言うよりも、フラットなデザインでカメラバッグに収納しやすいのがGood。
取り回しの良さで言うと、グリップやボタン配置が使いやすいZカメラと組み合わせたZ 24-50mmのほうが良い感じ。システムサイズに大きな差は無いので、収納性を考慮しなければ、個人的にはニコンのほうが使いやすい。
とは言え、ソニーはα7 IIIなど使いやすいコントロールレイアウトの従来機でも使用可能。その際はもう完全に好みの問題です。
どちらのレンズも沈胴機構を採用しており、使用時は内筒を伸ばして使用します。繰り出し量はほぼ同じ。どちらも沈胴機構のロックはズームリングを回転することで解除可能です。
前玉・後玉
どちらも防塵防滴に配慮した設計ですが、前玉にフッ素コーティング処理されている記述は見当たりません。水滴や汚れの付着が想定される場合はプロテクトフィルターを装着して使いたいところ。
ソニーは40.5mmと非常に小さなフィルターサイズに対応。このサイズのフィルターをフルサイズEマウントレンズで使用するのは非常に稀で、他のレンズとフィルターを共有し辛いのはマイナス。
その一方で、ニコンはやや大きめの52mmフィルターを採用。ソニーよりも大きなフィルター径ですが、対応レンズはやはり少ない。
どちらにしても、フィルター径が小さいので手ごろな価格でNDやC-PLフィルターを導入可能です。
後玉の設計には大きな違いが見られます。ニコンは沈胴機構を展開しても、ズーム操作中でも後玉はレンズマウント面に固定されています。このため、ボディ側のイメージセンサーからレンズ後玉の空間における空気の出入りが無く、密閉性を保っています。防塵防滴性の観点で優れた設計と言えるでしょう。
一方、ソニーは後玉が前後に移動する機構です。空気の流れや出入りがゼロとは言えず、レンズ内へのゴミ混入やセンサーへゴミが付着する可能性が高まっています。実際、私はα7C購入3日目で大きなゴミが付きました。
フォーカスリング・ズームリング
ニコンはフォーカスリングが手前、ズームリングが前方に配置され、ソニーはその逆。どちらもズームリングの幅が少し広く、フォーカスリングは最小限となっています。
ニコンはズームリングにゴム製カバーを採用しているのでグリップが良好。さらにプラスチック製フォーカスリングと触感が異なるのでファインダーを覗きながらでも簡単に操作することが出来ます。ソニーはどちらもプラスチック製で触感がかなり似ているので使い分けが難しい。
沈胴機構のロック解除はソニーのほうが抵抗量が強く、若干安っぽいロック感があります。比較してニコンのロックは滑らかに解除可能。リングの回転はどちらも完璧な滑らかさとは言えませんが、比較してニコンが少し良好です。
フォーカスリングのピント移動量は、ソニーがリニアな操作性に対して、ニコンは回転速度に応じて変化します。どちらが使いやすいかは好みが分かれると思いますが、個人的にはソニーのほうが直感的で使いやすいと思います。
レンズフード
ニコンは別売りレンズフードをラインアップしています。24mmの画角に合わせているため、遮光性はあまり期待しないほうが良いでしょう。保護性の観点で言えば十分な仕事をしてくれると思います。
ソニーはそもそもレンズフードに対応していません。社外製ねじ込み式フードを用意することになりますが、現状でどのフードと互換性があるのかは不明。できれば自動開閉に対応しレンズバリアが登場すると良いのですけども…。
AFの比較
ニコンはステッピングモーター駆動、ソニーはリニアモーター駆動を採用しています。どちらも非常に高速ですが、見比べてみるとソニーが僅かにリードしている印象。駆動音はどちらも静かで特に問題はありません。
フォーカスブリージングはニコンで僅かに目立ち、ソニーは良く抑えているように見えます。
ボディ側の問題ですが、α7Cの追従性能が非常に高く、カジュアルなシーンではとても使いやすいと感じます。ニコンも改善していますが、ソニーのリアルタイムトラッキングと比べるとやや見劣りします。
風景など、高速性が求められないシーンではどちらを使っても不満は感じません。
光学性能の比較
解像力チャート
キットレンズとしてはどちらも非常に優れていると思います。テスト機の解像性能に違いがあるため厳密には言えませんが、広角側ではニコンのほうが一貫性の高いシャープな解像性能を発揮し、望遠側ではソニーのほうが一貫性の高いシャープネスを実現しています。
どちらにせよ、ズームレンジ全域で良像が確保されているため、弱点と言える部分は極僅か。あえて言えばソニーの28mm四隅が少し甘い。
遠景解像
基本的に解像力チャートテストと同じようなテスト結果となっています。風景用として広角域を重視するのであればニコン有利と感じます。
28mm(Z:FE)
35mm(Z:FE)
50mm(Z:FE)
撮影倍率
ニコンはズームレンジ全域で最短撮影距離が0.35m固定のため、望遠側で被写体を大きめのクローズアップすることが可能。スペックシート上ではソニーとあまり変わらないはずですが、特に望遠側でのクローズアップ性能には差が見られます。テスト時はMFを使用したため、AF使用時はまた違った結果となるかもしれません。
Z 24-50mm
FE 28-60mm
倍率色収差
どちらも良好な色収差補正を実現しています。実写でも特に目立つシーンは少ないはず。
軸上色収差
倍率色収差と同じく、特に大きな問題は見られません。
歪曲収差
広角側はどちらも中程度の樽型歪曲。ミラーレス用の標準ズームとしては健闘しているほうで、思っていたよりも良好に見えます。どちらにせよ、レンズプロファイルで完璧に補正可能です。
望遠側はニコンが中程度の糸巻き型歪曲であるのに対し、ソニーは良好に収差を補正しています。どちらもプロファイルで補正可能であり、画質への影響も軽度であることから弱点と感じることはないでしょう。
周辺減光
撮影環境が異なるので厳密には言えませんが、ニコンのほうが減光の影響が大きく感じます。比較して画角が広いので重めの減光は避けられないのかなと。
逆光耐性
強い光源がフレーム内に入った時はニコンのほうが非常に良好。フレア・ゴーストどちらも少なく、良好なコントラストを維持しているのが分かります。
その一方、ソニーはフレア・ゴーストがどちらも発生しており、画質に大きな影響を与えていることが分かります。これをメリットと捉えるか、デメリットと捉えるかは人次第。
玉ボケ
どちらも積極的に使いたいボケ描写とは言えません。パフォーマンスはよく似ています。
前後ボケ(Z/FE)
どちらも前ボケが硬調で、後ボケが滑らかな描写。F値の大きな標準ズームレンズとしては良好なバランスであり、硬調な前ボケがフレームに入る可能性は低い。より重要な後ボケが滑らかであるのは強みと言えるでしょう。
総評
サイズ | ソニー |
---|---|
質感 | ややニコン |
堅牢性 | ニコン |
操作性 | 互角 |
AF | ややソニー |
拡張性 | ややニコン |
解像性能 | 広角 ニコン 望遠 ややソニー |
色収差 | 互角 |
歪曲 | ややソニー |
逆光耐性 | 圧倒的ニコン |
ボケ | 互角 |
価格 | おそらくソニー |
そもそもシステムが異なるので、好きな方を買えばいいと思います。どちらも新世代のコンパクト標準ズームとしては非常に良好で、満足のいくパフォーマンスだと思います。全体的に解像性能は良好で、諸収差は良く抑えられており、後ボケは綺麗でオートフォーカスは非常に高速。
2020年11月現在で「Z 5+24-50レンズキット」「α7C+28-60レンズキット」のどちらを買おうか悩んでいるのであれば、以下のようにおススメします。
- 風景・植物・動きの遅い動物や予測可能なスポーツ:ニコン
- 家族写真・スポーツ・動きの速い動物:ソニー
個人的に「小型軽量な標準ズーム」を家族写真などで使う機会が多く、用途を考慮するとソニーのほうが使いやすいと考えています。(風景写真などでは携帯性を考慮せず、より良好なズームレンズを持ち歩くため。)
とは言え、ニコンも今後登場する新機種でAF性能が改善されれば、24-50mmもかなり使いやすいと思います。24mmの広角は近寄ってくる子供やペットに対して有効、そして望遠側で接写性能が高く、テーブルフォトなどで使いやすい点がGood。
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