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RF24-240mm F4-6.3 IS USM交換レンズレビュー総集編

このページではキヤノン製フルサイズミラーレス用交換レンズ「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」のこれまでレビューした内容をまとめ、総評を掲載しています。

RF24-240mm F4-6.3 IS USMレビュー総集編

JPEGで真価を発揮する便利な10倍ズーム

Good

  • ズームレンジを考慮するとバランスの良いサイズ
  • 滑らかで適度な抵抗量のズームリング
  • ほぼ無音で非常に高速かつ滑らかなオートフォーカス
  • ズームレンジ全域で良好な中央解像性能
  • 中間域でとても良好な解像性能の均質性
  • 望遠端でも全体的に良好な解像性能
  • ズームレンジ全域で良好な遠景解像
  • 高倍率ズームとしては良好なボケ質
  • 非常に効果的な光学手ぶれ補正

Bad

  • レンズフード別売り
  • コントロール・フォーカス兼用リングで誤操作しやすい
  • 防塵防滴非対応
  • 広角側の最短撮影距離が少し長い
  • デジタル歪曲補正の手段によってクロップ率が変化する
  • 完全にデジタル補正依存の倍率色収差と歪曲収差
  • 平凡な逆光耐性

部分的にデジタル補正に依存したミラーレスらしい高性能な光学10倍ズーム。

描写性能

ズームレンジ全域で良好かつ安定した解像性能を発揮。このようなズームレンズに多い広角端や望遠端における描写の甘さは目に付きません。特に50?100mmの中間域ではLレンズより良好な解像性能を発揮。コントラストや発色も良好で、RF24-105mm F4L IS USMと見比べて大きな違いはありません(レンズフードが不足しないので逆光には注意する必要があります)。

ボケ質は極上と言い難いものの、高倍率ズームレンズとしては滑らか。特に騒がしと感じる描写では無く、使いやすい部類と言えるでしょう。

ただし、後処理しやすい歪曲収差と倍率色収差は光学的な補正を諦めており、ボディ内もしくはソフトウェアで現像時にデジタル補正を適用する必要があります。特に広角側の歪曲収差は大きく、イメージサークルが35mmフルサイズに達していません。後処理で2400万画素に復元されますが、社外製ソフトウェアでRAW現像する際は気持ち悪さを感じます。特にレンズプロファイルを適用できない環境では注意が必要。

その反面、RFレンズはボディ内デジタルレンズオプティマイザに対応しているためJPEG出力は10倍ズームとは思えないシャープな画質を楽しむことが出来ます。

使い勝手

オートフォーカスはナノUSM駆動で非常に高速、かつ非常に静かな動作。望遠側はF5.6~F6.3と開放F値が暗いので低照度時にパフォーマンスが低下しやすいものの、日中の屋外では快適なAF。

手ぶれ補正は非常に効き目が良く、望遠端でも1/7秒程度で手持ち撮影が可能。これはキヤノンが主張する5段分の手ぶれ補正に相当するシャッタースピードです。渓流や滝など手持ち撮影で水のスローシャッター表現が出来るのは大きい。

他のRFレンズと異なり、コントロールリングが省略されフォーカスリング兼用となっている点には注意が必要。スイッチで役割を切り替え可能ですが、触れやすい位置にあるうえ、無段階リングで抵抗量が小さいため誤操作しやすいのは明らかにマイナス。

レンズサイズはフルサイズ用光学10倍ズームとしてはまずまず良好なサイズ感。RF24-105mmと比べて大きな違いは無いので同じカメラバッグの収納スペースへ格納することが可能。

少し残念なのは10万円のレンズながら防塵防滴非対応であること。急な雨などに対応できると便利ズームとしての価値が高まったはず。

価格

この光学性能とオートフォーカスならLレンズに匹敵する価格設定でもアリな気がします。ただ、10万円を超える価格設定ならレンズフード同梱で簡易防滴くらいは備えて欲しかったところ。

総評

満足度は90点。

高倍率ズームレンズとしては非常に満足のいく画質」と、「高速AF」「効き目の高い手ぶれ補正」が主な強み。光学性能原理主義からすると、歪曲収差(広角端ではイメージサークル不足)と倍率色収差は吐き気がするかもしれませんが、デジタルレンズオプティマイザで綺麗に補正されるので個人的には特に問題無かったり。許容できない欠点と言えば「誤操作しやすいフォーカスリングの配置と抵抗量」くらいなもの。

正直に言うと、「RF24-105mm F4L IS USM」を手放してコチラを残そうかなと検討中。そのくらい使い勝手が良く、画質の妥協が少ない高倍率ズームに仕上がっています。EOS R以上の高画素モデルが登場した暁には解像性能が不足するかもしれませんが、少なくとも現行のEOS RとEOS RPの画素数で極端な解像不足とは感じないはず。

RF24-240mm F4-6.3 IS USM
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購入を迷っている人へ

キヤノンRF・EFマウントでフルサイズ用高倍率ズームは非常に貴重な存在。高倍率ズームが必要であれば迷うべきレンズがありません。他に高倍率ズームがあるとすれば「EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM」や「28-300mm F/3.5-6.3 Di PZD (Model A010)」くらいのものでしょう。しかし、どちらもやや設計の一眼レフ用レンズであり、「24mmの広い画角」や「良質な望遠側の画質」「効果的な手ぶれ補正」を持ち合わせたこのレンズがおススメ。

利便性や100mm付近での解像性能よりボケ描写を重視するのであれば「RF24-105mm F4L IS USM」をチョイス。比較的望遠側のボケ描写が柔らかく、ズームレンズとしてはとても綺麗だと感じています。防塵防滴仕様に加えてフッ素コーティングが施されている点も一つのポイント。

外観・操作性

箱・同梱品

キヤノンRFシリーズではお馴染みの黒い箱。同梱品は限られており…

  • 説明書
  • 保証書
  • レンズキャップ前後

上記3点のみ。ケースはともかくレンズフードまで付属しないのはキヤノンらしいと言えばらしいですが、10万円近いレンズに同梱しないのはどうかと思うのです。ちなみに別売りレンズフードはおよそ3000円程度。

レンズフード EW-78F
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外観

全体的な質感は他のRFレンズと同程度。外装はプラスチック製で似たような意匠が施されています。キヤノンの標準ズームレンズとしては珍しくフォーカスリングが手前に配置されているのは一つの特徴と言えるでしょう。お陰様で誤操作が若干多いように感じます。

ちなみに製造国は台湾。

スライドショーには JavaScript が必要です。

ズーム操作によりプラスチック製の内筒が前後します。24mm時に最も短くなり、ロックスイッチで固定可能。240mm時に最も長くなります。レンズの自重によるズレは発生せず、程よい抵抗量で状態を維持。

ズーム操作による開放F値の変動は以下の通り

  • 24mm:F4.0
  • 28mm:F4.5
  • 44mm:F5.0
  • 70mm :F5.6
  • 105mm:F6.3

広角域以外はRF24-105mm F4Lと比べて1段前後暗いレンズと認識しておけば良さそうです。解像性能はF5.6~F8がベストなので、遠景の風景写真などでは少し絞った状態にしておくと使いやすいかもしれません。

フィルター径は72mmを採用。RFレンズでは他にこの径を採用しているレンズは存在しません。77?82mmか、35マクロの52mm。汎用性が低いのでステップアップリングで77mmか82mmフィルターを使うのが良さそうです。

RF24-105mm F4L IS USMと異なり前玉にフッ素コーティングは施されていません。水飛沫や油汚れが付着しそうな状況ならば対応するプロテクトフィルターを装着しておいた方が良いでしょう。

後玉は固定されておらず、ズーム操作により前後に移動します。レンズマウント面に防塵防滴仕様は施されていないので、ズーム操作により外部の塵やゴミを吸い込む可能性は比較的高いかもしれません。

内部は反射防止のため黒塗りされています。ズーム操作で後玉が前方へ大きく移動しても反射に繋がる明るいパーツはほぼ無し。フレキも反射を極力抑えているように見えます。

レンズ全長はRF24-105mm F4L IS USMよりも若干長く、収納性はそこまで良くありません。とは言え、24-240mmのズームレンジを考慮するとこんなものでしょう。重量が750gあるので、EOS Rと組み合わせると少しフロントヘビーと感じます。しかしEOS Rの握りやすいグリップならば、ハンドリングで大きな問題は感じません。

操作性

ズームリングの回転角は約100度。ワンアクションで24mmから240mmまで移動するには少し大きめの回転角と感じます。程よく滑らかに回転し、自重落下しない程度の抵抗量です。抵抗は一定ですが、望遠端付近のみ僅かに抵抗が増す印象。

RFレンズ初となるフォーカスリングとコントロールリングの兼用デザイン。兼用は特に問題を感じませんが、カメラを支える左手で触れやすい配置となっているのが気になるところ。特にフルタイムマニュアルをオンにしていたり、コントロールリングとして使っていると誤操作の頻度が高くなるかもしれません。リング機能を無効にするスイッチも欲しかったところ。

レンズ側面のスイッチはフォーカスリング・コントロールリングの切り替えスイッチと光学手ぶれ補正のオンオフ。AF/MF切替スイッチは省略されているため、ボディ側での切り替えが必須。

ニコンZシステムもフォーカスリングをコントロールリングとして利用可能ですが、役割の設定はボディ側のメニューでのみ変更可能。素早い操作には不向きで、このレンズのように素早く切替可能なデザインは素晴らしい。

AF

静止画

「ナノUSM」らしく、ほぼ無音で非常に高速なオートフォーカス。シングルポイントなどでたまに動作が遅くなることもありますが、基本的にボディ側の問題でありレンズ側のパフォーマンスはとても高い。

最短撮影距離は焦点距離によって変動するので注意が必要。24mm時の最短撮影距離は50cmなので広角域で寄れるレンズとは言えません。最大撮影倍率は0.26倍と高いですが、これは240mmを使った時なので注意が必要。

各焦点距離における最短撮影距離はライブビューのピント距離情報を見る限り…

  • 24mm:0.5m
  • 35mm:0.5m
  • 50mm:0.5m
  • 70mm:0.5m(少し長くなる)
  • 100mm:0.6m
  • 150mm:約0.7m
  • 240mm:約0.7m

となっています。

動画

ピント移動時の画角変化(フォーカスブリージング)は目立たず、オートフォーカスは滑らかで自然なピント移動となっています。

バリフォーカル特性の確認

広角側でピントを合わせるとクローズアップ時にズレてしまいますが、クローズアップ時にピントを合わせるとまずまず良好。ズームアウト時にピントが僅かに手前へ移動しますが、急激なピンボケとはならないようです。

雑感

メモ

  • レンズフードが同梱してない
  • プラスチック外装だが安っぽさを感じない外装
  • フォーカス操作・コントロール操作兼用リング
  • 兼用リングは誤操作しやすい
  • 105mm時に開放F値がF6.3に到達
  • 防塵防滴非対応・フッ素コーティングなし
  • 高速・静音のオートフォーカス

レンズフードが同梱していない以外は良くまとまったレンズで、24-240mm高倍率ズームとしては程よいサイズ感で使いやすい。敢えて言えば、防塵防滴仕様だとさらに旅行や行楽で使いやすかったかなと。さらに、コントロールリングの配置は従来通りレンズ前方のほうが誤操作少なかったはず。

解像力チャート

24mm

F値 中央 周辺部 四隅
F4 3946 4105 2385
F5.6 3991 4055 3439
F8 3946 3855 4032
F11 4036 3751 4032
F16 3404 3556 3562
F22 2908 2965 2978

後日別の記事で投稿予定ですが、24mmは歪曲収差が大きいうえにイメージサークルが35mmフルサイズセンサーを満たしていません。ボディ内でソフトウェアによる歪曲収差補正は必須です。補正後はイメージサークルの外周部がトリミングされ、24mm相当の画角に整えられます。

ソフトウェア補正が強めに適用される焦点距離ですが、RAW(未補正イメージ)の解像性能を解析するとこのレンズで最もパフォーマンスが高いポイントであることが判明。

絞り開放F4では四隅がやや甘いものの、1段絞るとグッと解像性能が高まりF16までパフォーマンスが維持されます。フレーム全域での均質性は良好で、F5.6以降のパフォーマンスはRF24-105mm F4Lに匹敵します。

倍率色収差は目立つものの適切に補正することで高倍率ズームながら良好な広角24mmを楽しめるはず。

サンプル F4

35mm

F値 中央 周辺部 四隅
F4.5 3752 3202 2493
F5.6 3793 3701 3058
F8 3999 3833 3246
F11 3456 3479 3528
F16 3419 3220 3219
F22 3004 2831 2706
F25 2736 2756 2493

基本的に24mmと同傾向ですが、歪曲収差の影響は遥かに小さくなります。四隅の解像性能は24mmよりも少し高く、F5.6まで絞るとフレーム全域でとてもシャープな画質となります。解像性能のピークはRF24-105mm F4Lよりも良好。

やはり倍率色収差は若干目に付くのでデジタル補正を適用させておきたいところ。

サンプル F4.5

50mm

F値 中央 周辺部 四隅
F5.0 4030 3649 3025
F5.6 3954 3998 3262
F8 3960 3972 3350
F11 3910 3360 3556
F16 3211 3124 3083
F22 2962 2805 2750
F29 2646 2546 2468

24mmと同じく最も解像性能の高い焦点距離。中央や周辺領域は絞り開放から非常に良好で、四隅もそれほど悪くありません。(むしろ良好な水準)

3000万画素のEOS Rを使う限りでは絞り値による画質変動が小さく、画質の改善はあまり期待できません。被写界深度の調整として使うと良いでしょう。

F5.0サンプル

70mm

F値 中央 周辺部 四隅
F5.6 3516 3979 3554
F8 3623 3518 3370
F11 3569 3032 3406
F16 3317 3211 2839
F22 2972 2750 2616
F29 2520 2417 2320

解像性能のピークは低いものの、フレーム全域の均質性は開放からとても良好。絞っても全く改善せず、パフォーマンスはF11付近まで維持されます。RF24-105mm F4Lの85mm時と比べて周辺や四隅領域の画質がより良好な結果となっています。

F5.6サンプル

100mm

F値 中央 周辺部 四隅
F5.6 3505 3318 2967
F8 3701 3168 3038
F11 3790 3143 3014
F16 3220 3168 2877
F22 2857 2620 2538
F32 2443 2269 2133

基本的に70mmと同じ傾向ですが中央以外のパフォーマンスはワンランク低下。広角?標準域と比べて倍率色収差が目立たないので、シャープネスは低いですが良像と感じます。RF24-105mm F4Lと互角かそれ以上のパフォーマンスなので何も心配することはありません。

F5.6サンプル

150mm

F値 中央 周辺部 四隅
F6.3 3321 2842 2685
F8 3382 2930 2348
F11 3297 3007 2238
F16 3126 2697 2260
F22 2858 2465 2260
F32 2395 2211 2193
F36 2127 2183 1904

中央領域は依然として健闘している解像性能ですが、周辺や四隅領域の画質は苦しくなります。良像ギリギリの水準で絞っても改善しません。このあたりはデジタルレンズオプティマイザなどで画質をブーストしたいと感じます。

F6.3サンプル

240mm

F値 中央 周辺部 四隅
F6.3 3790 2962 2211
F8 3583 3053 2280
F11 3790 2956 2349
F16 3229 2541 2211
F22 2857 2564 2326
F32 2390 2078 1907
F36 2183 2024 1907

依然としては中央領域はとても良好。被写体を中央に配置するなら全く問題を感じません。高倍率ズームの望遠端と考えると評価できるパフォーマンス。

周辺領域もまずまず良好ですが、四隅はこのレンズで最も甘い領域となり、絞っても全く改善しません。

F6.3サンプル

領域別テスト結果

中央領域

中央領域に限ってみると、ズームレンジ全域で安定したパフォーマンスを発揮しているのが分かります。特に近接の解像力チャートでこの結果を発揮するのは凄い、

中央解像 24mm 35mm 50mm 70mm 100mm 150mm 240mm
F4 3946 3752 4030
F5.6 3991 3793 3954 3516 3505 3321 3790
F8 3946 3999 3960 3623 3701 3382 3583
F11 4036 3456 3910 3569 3790 3297 3790
F16 3404 3419 3211 3317 3220 3126 3229
F22 2908 3004 2962 2972 2857 2858 2857
F32 2736 2646 2520 2443 2395 2390
F36 2127 2183
周辺領域

24?70mmまではとても良好なパフォーマンスですが、100?240mmはワンランク画質が低下していることが分かります。ただし、望遠端240mmでも顕著な画質低下が見られないのはGood。

周辺解像 24mm 35mm 50mm 70mm 100mm 150mm 240mm
F4 4105 3202 3649
F5.6 4055 3701 3998 3979 3318 2842 2962
F8 3855 3833 3972 3518 3168 2930 3053
F11 3751 3479 3360 3032 3143 3007 2956
F16 3556 3220 3124 3211 3168 2697 2541
F22 2965 2831 2805 2750 2620 2465 2564
F32 2756 2546 2417 2269 2211 2078
F36 2183 2024
四隅領域

四隅領域は24?100mmの間で一貫性のある画質を維持し、150?240mmでワンランク・ツーランク画質が低下する模様。特に240mmの四隅はあまり期待しないほうが良いでしょう。

四隅解像 24mm 35mm 50mm 70mm 100mm 150mm 240mm
F4 2385 2493 3025
F5.6 3439 3058 3262 3554 2967 2685 2211
F8 4032 3246 3350 3370 3038 2348 2280
F11 4032 3528 3556 3406 3014 2238 2349
F16 3562 3219 3083 2839 2877 2260 2211
F22 2978 2706 2750 2616 2538 2260 2326
F32 2493 2468 2320 2133 2193 1907
F36 1904 1907

雑感

完璧なレンズからは程遠い結果ですが、光学10倍の高倍率ズームレンズと考えると及第点以上の解像性能を維持していると感じます。特にRF24-105mm F4L IS USMの守備範囲は互角かそれ以上に良好なパフォーマンスを発揮しています。一部の収差は目立ちますが、補正しやすい収差を残しているので過度に心配する必要は無し。

歪曲収差や倍率色収差はソフトウェア補正に依存しているため、RAW現像は適切に補正出来るかどうかが鍵となります。ボディ内JPEG出力やプロファイルを適用できる現像ソフトなら問題ありませんが、手動補正を強いられる現像環境では注意が必要。

遠景解像

チェックポイント

  • 大気の影響が気にならない程度で無限遠を使った被写体を撮影
  • EOS RのRAWファイルを使用
  • 歪曲収差と色収差補正はAdobe Lightroom CCのプロファイルを利用
  • 中央領域・像高5割付近・像高9割付近の3カ所をクロップ
  • どの焦点距離も同じサイズのクロップ領域を使用

偏心のチェック

24mm F4におけるフレーム左端と右端のクロップを掲載。多少クロップ倍率の小さいLightroom(後述)で現像した場合、右側に若干の片ボケを確認。初期不良と感じるほどではありませんが、細かくチェックするとやや気になる画質差。今回のチェックでは比較して画質の悪い右側を利用、以降に掲載する「フレーム四隅のクロップイメージ」の画質はこのレンズにおける最低値とお考え下さい。

24mm

中央領域は絞り開放から非常にシャープで絞ってもあまり改善しません。この領域はEOS R以上の高画素モデルが登場しても耐用できそうな解像性能となっています。周辺部は非点収差のような像の甘さこそあるものの、開放から悪く無いパフォーマンスだと思います。

比較してフレーム四隅の絞り開放は1ランク・2ランクの画質低下が見られます。大きな樽型歪曲をレンズプロファイルで補正しているので多少の画質低下は予想範囲内。F5.6~F8まで絞ると多少改善しますが中央や周辺部ほどシャープになりません。

後から気が付いたことなのですが極端な歪曲収差を補正する場合、Adobe Lightroom CCのレンズプロファイルと、ボディや純正ソフトで歪曲補正が適用される場合とで画角の違いが大きい。Lightroomの場合はキヤノンが想定しているより広い画角となるので四隅の画質には注意が必要(後述)。キヤノンボディ出力や純正ソフトで適切な歪曲補正を利用すると画質は今回のテストよりかなり良好となります。

中央 周辺 四隅 四隅
JPEG
とても良好 F4-11 - - -
良好 F16 F5.6-F16 - -
F22 F4,F22 F8-F16 F4-16
ソフト - - F4-F5.6,F22 F22

全体像

ボディ内出力のJPEGとLightroomで現像したJPEGの比較

ご覧のようにボディ内出力のJPEGとLightroom現像で画角が大きく異なります。説明が難しいのですけども…

  • ボディ内JPEGは「24mm相当」の画角をイメージからクロップした上で3000万画素のイメージに最適化される
  • Lightroomはボディ出力よりも広めの画角をクロップした上で3000万画素のイメージに最適化される

この結果、イメージから同じポジションを同じサイズでクロップしてもボディ内出力のほうが少し内側となります。結果的に無理の無い画質でシャープなフレーム四隅の像となるのです。このレンズを使う際は純正ソフト「Digital Photo Professional」の使用がおススメ。Lightroomで現像する場合は適度にトリミングすると良いでしょう。

35mm

24mmと同じようにボディ内JPEGとLightroom現像で多少の画角差が発生します。

全体的な傾向は24mmと同じで、開放からシャープな中央、極僅かに低下する像高5割、1ランク画質低下が見られる四隅の画質。ボディ出力の画角に合わせると多少画質は改善する印象。

RAWのフレーム隅は良像と言い難いですが、EOS Rの3000万画素なら許容範囲。

中央 周辺 四隅
とても良好 F5.6-F11 - -
良好 F4.5,F16 F4.5-F16 F8-F11
F22 F22 F4.5-F5.6
ソフト F25 F25 F16-F25

50mm

まだボディ内JPEGとLightroom現像にクロップ差はありますが、周辺解像は広角域と比べて安定しています。RAWからLightroomで現像しても特に違和感を感じません。フレーム全域で均質的な画質となる一方、絞りによる画質改善は見られません。被写界深度が必要無ければF5.6~F8あたりがベスト。ここから100mmあたりまでピークの解像性能を発揮します。

中央 周辺 四隅
とても良好 F5.6-F11 F5.6-F11 -
良好 - - F5.6-F11
F16-F22 F16 F16
ソフト F29 F22-F29 F22-F29

70mm

50mmと同様、Lightroomのレンズプロファイル範囲でもフレーム全域で安定した画質。中央と四隅で僅かな画質差があるものの、まずまず快適に利用可能。

中央 周辺 四隅
とても良好 F5.6-F11 F5.6-F11 -
良好 F16 F16 F5.6-F16
F22 F22 -
ソフト F29 F29 F22-F29

100mm

70mmと同様。

中央 周辺 四隅
とても良好 F5.6-F11 F5.6-F11 -
良好 F16 F16 F5.6-F16
F22 F22 -
ソフト F32 F32 F22-F32

 

150mm

高倍率ズームレンズとしては絞り開放から良好な画質と感じますが、絞り開放では100mm以下と比べて球面収差・軸上色収差のような甘さが少し発生します。F8まで絞れば改善するので多少は絞っておくのがおススメ。

中央 周辺 四隅
とても良好 F8-F11 F8-F11 -
良好 F6.3,F16 F6.3,F16 F6.3-F11
F22 F22 F16
ソフト -F36 -F36 F22-F36

240mm

基本的に150mmやそれ以前と同様の解像傾向。開放からまずまずコントラストが良好で、高倍率ズームとしては良好な中央解像と像高5割までの解像感と言えるでしょう。比較して四隅は甘いものの、特にこれと言った描写の粗はありません。キレを求めるとパーフェクトとは言えませんが、利便性と画質のバランスは非常に高いと感じます。

中央 周辺 四隅
とても良好 - - -
良好 F6.3-F16 F6.3-F16 -
F22 F22 F6.3-F16
ソフト F32-F36 F32-F36 F22-F36

雑感

ポイント

  • ボディ内補正と社外製レンズ補正で画角が変わる
  • ボディ内補正のほうが画角が狭く、フレーム全体の画質が良い
  • ズームレンジ全域で安定した中央から像高5割程度の画質
  • 標準域から望遠端まで粗が目立たないフレーム四隅の画質
  • 広角側で倍率色収差が目立つので要補正

フルサイズ用の24mmをカバーする光学10倍ズームレンズとしては良好な画質のレンズ。利便性と引き換えの代償として画質低下はやむを得ないものの、妥協できる範囲内に収まっています。特に広角側でデジタル補正必須である点を理解して購入すれば満足度は高くなるはず。

どの焦点距離でもボディ出力のJPEGとAdobe LightroomでRAW現像したJPEGとでは画角が異なる点には気を付けておきたいところ。全体的にLightroomは画角が若干広く、ボディJPEGは画角が少し狭い。

RF24-105mm F4L IS USMとの比較 解像性能

近距離解像チャート比較

どのようにテストしているのか?テストページに掲載しています。

24mm

中央から像高5割はどちらもほぼ同じ解像性能を発揮。特に目立った優位性はありません。RF24-240mmの絞り開放は四隅がやや甘いものの、1段絞ると大きく改善し、F8?F11ではRF24-105mmと同等のパフォーマンスを発揮します。光学10倍の高倍率ズームとしては良好な広角端のパフォーマンスですね。

50mm

全体的にRF24-240mmのほうが良好な解像性能を発揮し、RF24-105mmはF8-F11で同等のパフォーマンスとなります。遠景解像テストの結果(後述)も考慮すると正確な数値なのではと感じます。

100mm

中央解像はほぼ同じですが、像高5割?四隅における解像性能はRF24-240mmのほうが明らかに良好です。ワンランク上のパフォーマンスと言っても過言では無いでしょう。RF24-105mmは絞ってもあまり改善せず、F11まで絞ってRF24-240と同等。

 

実写比較24mm

JPEG中央

近距離解像チャートのテスト結果と同じように、パフォーマンス差は見られません。

JPEG端

似たようなパフォーマンスですが、RF24-240mmの像は比較的甘めとなっています。

RAW端

JPEGと同じく顕著な解像性能差はありません。若干ですが、球面収差のような像の甘さがRF24-240mmで感じられます。

RAW四隅

絞り開放のRF24-240mmはやや像が甘く、同じく開放の24-105mmと比べて差が分かります。1段絞ると安定しますが、倍率色収差が顕著で補正は必須。

実写比較105mm

JPEG中央

どちらも良好なパフォーマンスを発揮しています。RF24-105mmの絞り開放F4も安定した解像性能となっているので1段明るいことが強みとなるでしょう。

RAW中央

RF24-105mmは僅かにRF24-240mmより極僅かに甘い。これは近距離解像チャートと同じ傾向ですね。球面収差のような像の甘さがあります。

JPEG四隅

明らかにRF24-240mmのほうが良好なパフォーマンスを発揮しています。RF24-105mmでRF24-240mmと同じパフォーマンスを得るにはF8-F11まで絞りたいところ。

 

RAW四隅

RF24-105mmの倍率色収差が目立つので要補正。その反面、RF24-240mmは補正無しでも色収差は目立ちません。解像性能はとても良好です。

歪曲収差・周辺減光(RAW)

左:RF24-240mm・右:RF24-105mm

24mm

RF24-240mmは顕著な樽側歪曲に加えてイメージサークルがフルサイズに足りていません。四隅は真っ暗、と言うかケラレています。ボディ出力やレンズプロファイルで補正されますが、フレーム端や四隅は24mm相当にクロップ&引き延ばされます。特に四隅は元の像倍率が小さいので解像性能の低下はやむを得ないでしょう。

105mm

やはりRF24-240mmは顕著な糸巻き型歪曲となりますが、24mmと比べて影響度合いは小さいです。周辺減光は24-105mmと同程度。

雑感

歪曲収差や倍率色収差をボディ内補正・ソフトウェア補正に依存していますが、全体的にパフォーマンスが高いRF24-240mmのほうが使い勝手は良く感じます。RF24-105mmは望遠側の四隅が伸び悩むので風景撮影メインであればRF24-240mmのほうがおススメ。

その一方でRF24-105mmは中間域以降で1段明るいF値となるためボケ量やシャッタースピードで有利に働きます。ディテールの再現性が程よく甘いのでポートレートには良いかもしれませんね。

RF24-105mm F4L IS USMとの比較 ボケ

24mm

基本的にボケ描写の画質差はほぼありません。多少24-240mmのほうが綺麗に見えるような気もしますが、誤差の範囲内。ただし、24-240mmは前ボケに軸上色収差が僅かに残存しています。コントラストの高いシーンでは色収差で24-105mmと差が付く可能性あり。

RF24-240mm F4-6.3 IS USM

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RF24-105mm F4L IS USM

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F4比較

24-240mmは樽型歪曲だったり、像倍率が低くかったりするので、ボディ内で極端なソフトウェア補正が適用されています。ソフトウェア補正を適用しても24-105mmの24mmよりパースが付きやすくなっている点には気を付けたいところ。

105mmその1

100mmでは24-240mmの絞り開放がF5.6、24-105mmがF4となります。24-105mmの開放F値が1段有利であることに加え、ボケ質も若干滑らかであることが分かります。同じ被写体で撮り比べないとハッキリ差が見えてこない程度の違いですが、24-105mmのほうが有利であると言うことが出来るでしょう。

その一方、24-240mmは光学10倍の高倍率ズームながら騒がしいボケ描写では無く、とても健闘している画質だと感じます。僅差のボケ描写より高倍率の利便性を取るのも十分アリな画質。また、100?240mmを利用することで24-105mmよりもボケ量の大きな撮影も可能(ボケ質は少し劣り、画角は狭くなりますが)。

RF24-240mm F4-6.3 IS USM

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RF24-105mm F4L IS USM

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開放比較
F5.6比較

105mmその2

やはり24-105mmの105mm F4を利用できる点で有利。球面収差の補正が良好で滑らかな玉ボケに見えます。24-240mmのように玉ボケ周囲に現れる色収差も無く良好な描写と言えるでしょう。非球面レンズの影響(玉ねぎボケ)の抑制は完璧と言えませんが、特に悪目立ちすることはありません。

24-240mmも特に酷いとは感じませんが、輝度や色のコントラストが高いと少し騒がしく見えてしまうのが残念。

RF24-240mm F4-6.3 IS USM

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RF24-105mm F4L IS USM

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開放比較
F5.6比較

雑感

解像性能の比較では24-105mmがやや劣勢でしたが、ボケ描写は有利と感じる結果となりました。ボケ量はF2やF2.8ズームに敵いませんが、環境ポートレート・心象風景と言ったジャンルでは使いやすい一本と言えるかもしれません。

24-240mmは高倍率ながら許容できる、実用的なボケ質。光学10倍でそこそこ解像するズームレンズであり、さらに騒がしくないボケ描写は肯定的に評価できると思います。

歪曲収差

24mm

ミラーレスは一眼レフよりソフトウェアで収差を補正する傾向あります。歪曲収差はその筆頭と言っても過言ではない収差。

一眼レフのように光学ファインダーで”レンズの生の状態”を見ることが無くなり、ソフトウェア補正後のライブビュー像を表示できるミラーレスならではの特徴と言えます

特に広角・標準の歪曲収差をデジタル補正に依存するケースが多く、このレンズもご覧のように歪曲収差の補正はソフトウェアに丸投げ状態

歪曲収差は目立つ樽型となり、競合他社の標準ズームレンズと比べても遜色ないレベルの収差量となっています。RF24-105mm F4L IS USMは光学的に歪曲収差を”ある程度”補正していたので悪い意味で意外な結果でした。

さらにイメージサークルは、四隅が完全にケラレてしまうほど小さい。ハッキリ言えばフルサイズセンサーをカバーしていません。ソフトウェア補正後に35mmフルサイズ判相当で24mmとなる画角を抽出しているように見えます。

当然ながら、像倍率の小さい四隅を大きく引き伸ばしているので画質は推して知るべし。とは言え、元の解像性能が中々良いので極端に酷くなることは無いでしょう。

50mm

単焦点レンズでは「樽型歪曲」となるのが一般的な50mmですが、このレンズは望遠レンズでよく見る「糸巻き型歪曲」に変化しています。50mmとしてはかなり目立つ歪曲収差が残存しているので、やはりデジタル補正必須と感じます。

100mm

50mmよりさらに強めの糸巻き型歪曲となります。幸いにもレンズプロファイルが格納されているので、プロファイルに対応する現像ソフトウェアなら特に問題とはならないはず。

240mm

同じく大きな糸巻き型歪曲。周辺減光もやや目立つようです。

逆光耐性

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正直に言うと逆光耐性はあまり良くありません。コントラストに壊滅的なダメージを与えるコントラストの低下は少ないものの、小さなゴーストが数多く発生します。これを味と見るか、厄介な邪魔者と見るかは個人差があると思います。

光条は高倍率ズームレンズと考えると綺麗な描写に見えます。F8あたりから鋭くなり、F16~最大絞り値にかけてシャープな光条を楽しめます。

球面収差

特に目立った影響は見られず、問題ありません。

今回使用した機材

EOS R
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RF24-240mm F4-6.3 IS USM
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