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シグマ 18-50mm F2.8 DC DN RF mount レンズレビュー完全版

このページではシグマ「18-50mm F2.8 DC DN RF mount」のレビューを掲載しています。

18-50mm F2.8 DC DN RF mountのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 手ごろ
サイズ 非常に小さい
重量 非常に軽い
操作性 シンプルだが良好
AF性能 非常に高速
解像性能 大部分がF2.8から良好・接写時に周辺低下
ボケ 縁取りと色収差の影響あり
色収差 軸上色収差が残存
歪曲収差 補正が必要なシーンあり
コマ収差・非点収差 開放で少し残存
周辺減光 無限遠で目立つ
逆光耐性 平凡
満足度 小型軽量でコスパに優れた大口径ズーム

評価:

小型軽量でコスパに優れた大口径ズーム

光学性能・価格・サイズが高水準にまとまっている大口径ズームレンズ。完璧なレンズではないものの、大部分は許容範囲内に収まっており、購入を躊躇するような欠点はほとんどありません。カメラ製品の高価格化が進む中、このレンズの価格は良く抑えられており、性能が良いこともあっておススメしやすい一本。

This large-aperture zoom lens has a high level of optical performance, price and size. Although it is not a perfect lens, most of its features are within acceptable limits, and there are few drawbacks that would make you hesitate to buy it. As the prices of camera products continue to rise, the price of this lens is well controlled, and it is easy to recommend it because of its good performance.

まえがき

2021年10月にソニーEマウント用として登場。シグマのContemporaryラインに属するAPS-C用大口径ズームレンズです。2024年4月にキヤノンRFマウントへの参入を発表し、当初の予定通り7月に本レンズが発売となりました。全長74.5mm、重量300gで、開放F値「F2.8」固定の大口径標準ズームとしては一線を画す小型軽量レンズに仕上がっています。

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  • フォーマット:APS-C
  • マウント:RキヤノンRF
  • 焦点距離:18-50mm
  • 絞り値:F2.8-F16
  • 絞り羽根:7枚(円形絞り)
  • レンズ構成:10群13枚(SLD1枚、非球面レンズ3枚)
  • 最短撮影距離:12.1(W)-30(T)cm
  • 最大撮影倍率:1:2.8(W)-1:5(T)
  • フィルター径:φ55mm
  • サイズ:φ69.2mm × 74.5mm
  • 重量:300g
  • 防塵防滴:簡易防塵防滴
  • AF:STM
  • 手ぶれ補正:-
  • その他機能:-

特筆すべきは前述した小型軽量なレンズサイズ。競合レンズと比べて広角側が18mmと狭い画角であるものの、比較的して圧倒的に小さな筐体を実現しています。このレンズサイズで全域「F2.8」を実現しているのは凄い。さらに撮影倍率は広角側で0.35倍、望遠側で0.2倍と比較的高く、クローズアップの撮影に強い仕様。また、AFはステッピングモーター駆動で静音性と高速性の両立しています。

価格のチェック

Eマウント発売時の初値と比べると値上がりしており、売り出し価格は7万円強。以前と比べると少し高くなっていますが、ここ最近のAPS-C用大口径ズームとしては最も安い。気軽にF2.8ズームの使ってみたいのであれば面白い選択肢となることでしょう。

  • 発売日:2024年7月11日(木)
  • 予約開始日:2024年6月28日 10時
  • 希望小売価格:オープンプライス
  • 直販価格:79,200円
  • カメラのキタムラ:71,280円

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

SGVシリーズ(Sigma Global Vision)らしい白を基調としたシンプルなデザイン。右上に表示している3桁の数字はエディションナンバーで、発売した西暦の下3桁を表しています。RFマウント版が登場したのは「2024」ですが、最初に登場したEマウント版の「2021」がプリントされています。

Eマウント版のレンズ本体は紙製の緩衝材に包まれていましたが、RFマウント版は段ボールの間仕切りに変更。どのような意図で元に戻ったのかは不明。

レンズ本体の他に、レンズフード、説明書、保証書が付属。レンズケースはありません。レンズ本体のリアキャップは、純正品と同じく装着する方向が決まっているので使い辛い。

外観

Contemporaryラインらしいプラスチック製パーツを外装に使用。高級感は無いものの、しっかりとした作りで堅牢性に不安は感じません。同価格帯の他社製レンズと比べても立派なビルドクオリティ。
外装にはマットブラックな塗装が施され、質感は非常に良好。ただし、スレによる跡が付きやすいのが悩ましいところ。

装飾はほとんどありません。白字でプリントされた焦点距離やレンズのロゴ以外には「Contemporary」を表す「C」マークが埋め込まれているくらい。ちなみにレンズはもちろん日本製。もっと言えばシグマの会津工場製。一貫して日本の向上で生産し続けているので、個人的には積極的にシグマ製レンズを購入したいと考えています。(「日本製」というブランドではなく「地産地消」と言う意味で)

ズーム操作により内筒が伸びる仕様。内筒は多段式では無く、ズーム操作で少し伸びる程度。こちらもしっかりとした作りでガタツキなどはありません。

ハンズオン

全長74.5mm、重量300gのレンズであり、非常に小さく、非常に軽い。フルサイズ用レンズ「28-70mm F2.8 DG DN」のAPS-C版と考えるとしっくりくるサイズ感。レンズサイズは「30mm F1.4 DC DN」とよく似ており、カメラバッグへの収納性は非常に良好。

前玉・後玉

フィルター径は55mm。もちろんこのクラスでは最小。この径に対応するAPS-C用レンズは多くありませんが、「56mm F1.4 DC DN」「RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM」などと共用可能。仕様を見る限り防汚コートは施されていないので、水滴や汚れの付着が想定されるシーンではプロテクトフィルターを装着しておきたいところ。

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真鍮製レンズマウントは4本のビスで固定。周囲は簡易防滴用のシーリングが施されているものの、それ以外の点に防塵防滴処理が施されているのか不明。

最後尾のレンズはマウント付近で固定。ズーム操作で最後尾のレンズが前後に動くことはありません。このため、センサーボックス内における空気の出入りが少なくなり、小ゴミの混入が少なくなると思われます。個人的に評価したいポイント。

フォーカスリング

幅12mmの小さなフォーカスリングを搭載。プラスチック製ながら、表面の加工で良好なグリップ。リングは適度なトルクで滑らかに回転。ピント移動量はカメラ側で設定・調整が可能。ピント移動時の設定に関わらず、全体的にストロークが長め。微調整に適していますが、ダイナミックな操作には不向き。

ズームリング

幅27mmのゴム製ズームリングを搭載。程よいトルクはズーム全域で一貫しており、滑らかに回転。動画撮影にも適しているように感じます。全体のストロークは90度未満で、ワンアクションで18mmから50mmまでの操作が可能。

レンズフード

プラスチック製の花形レンズフードが同梱。

装着例

APS-CボディのEOS R7に装着。見た目や質感はボディとの相性が良く、適度な携帯性。大きなR7のみならず、小型軽量なR50やR10との組み合わせも良さそう。

AF・MF

フォーカススピード

フォーカスレンズの駆動にはステッピングモーターを使用。静かで滑らか、そして高速で正確に動作。過去にEマウント用をテストしましたが、比較して明らかに高速。ボディ側のAF性能の違いなのか、ライセンスの下で高い互換性を実現しているのか気になるところ。

至近距離から無限遠までの大きなピント移動でも合焦速度が非常に速い。キヤノンRF-Sレンズには本レンズよりも明るい開放F値のズームレンズが存在しないため、低照度でも効果的なAFが期待できる唯一の選択肢。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

18mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

ブリージングがほとんど発生していません。撮影倍率が非常に高いレンズながら、ブリージングをこれほど良く抑えているのは凄い。もちろん動画撮影でのピント送りも全く違和感が無いと思われます。

50mm

18mmと同じく、画角の変化はほとんど発生していません。非常に優れた結果。ブリージングが抑えられたフォーカシングは動画撮影に役立つうえ、静止画撮影時も滑らかなフォーカシングが良質な撮影体験になると思われます。

精度

EOS R7と組み合わせて特に大きな問題はありません。

MF

前述した通り、少し長めのストローク。フルマニュアル操作で使用するにはストロークが長すぎると感じるものの、AFの微調整として使うのであれば問題ないでしょう。

小型軽量でAPS-Cミラーレスと相性が良く、このクラスとしては非常に手頃な価格で買いやすいレンズ。光学性能を抜きにして、これは売れると思うし、おススメしやすいレンズに仕上がっている。前述したように、これがEOS Mや富士フイルムXマウントで使えないのが実に惜しい。

(まだテスト中だが)肝心の光学性能も良好に見える。倍率色収差など、いくらかカメラ側の補正に依存している部分は見られるが、解像性能は広角端から望遠端まで良好で、特に大きな弱点は無いように見える。ボケもこのクラスとしては滑らかで綺麗。逆光耐性もシグマ製レンズとしては良好で、全体的に文句ナシ。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R7
  • 交換レンズ:18-50mm F2.8 DC DN RF-mount
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

18mm

接写時は像面湾曲が強いうえ、周辺部や隅の性能が低下します。標準ズームの広角端接写時のパフォーマンスとしては一般的な傾向であり、絞って大きく向上する点で他の製品よりも良好。少なくとも中央はF2.8から非常に良好で、周辺や隅もF5.6まで絞ると大きく改善します。

残存する倍率色収差が存在するものの、自動補正しやすい問題なので心配無用。18mm F2.8 隅はこのレンズで最も画質が低下するポイントであり、これを許容できるのであれば他の焦点距離やF値は問題ないと言えるでしょう。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 3802 2195 1444
F4.0 3743 2968 2329
F5.6 4121 3480 2945
F8.0 3544 3685 3081
F11 3223 3541 2919
F16 2711 2529 2453
F22 2166 1962 2013
実写確認

24mm

18mmと比べると、絞り開放のF2.8から全体的に良好。特に中央はF2.8からほぼピークの性能を発揮し、周辺や隅もF4~F5.6で非常に良好な結果を得ることが出来ます。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 3937 3214 2363
F4.0 4185 3834 3293
F5.6 4184 4133 3386
F8.0 3600 2991 3479
F11 3008 3037 3060
F16 2795 2828 2574
F22 2159 2037 1898
実写確認

28mm

中央の数値が広角側と比べて低下。その代わり、周辺や隅との画質差が小さく、均質性の高い結果を得ることが可能。F2.8から全体的にほぼピークの画質であり、絞りによる改善幅が小さい。単焦点レンズほど切れ味のある描写ではありませんが、必要十分性能を備えています。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 3352 3659 3111
F4.0 3421 3766 3408
F5.6 4041 3874 3608
F8.0 3398 3720 3386
F11 3000 3352 3164
F16 2665 2500 2499
F22 2159 2182 2049
実写確認

35mm

28mmと同じ傾向ですが、F2.8におけるパフォーマンスが全体的に少し低下。このあたりから軸上色収差を含めた残存収差が影響していると思われます。F4-F5.6まで絞ると改善。均質性は非常に高く、中央から隅までほぼ同じ結果を得ることができます。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 2919 3223 3208
F4.0 3242 3502 3586
F5.6 3757 3703 3519
F8.0 3480 3618 3591
F11 3261 3060 2964
F16 2577 2527 2408
F22 2028 1995 1919
実写確認

50mm

35mmと同傾向で、F2.8のパフォーマンスはさらに低下します。解像性能を重視する場合はF4-5.6まで絞ったほうが良いでしょう。それでも、標準ズームの望遠端としてはフレーム周辺・隅の性能低下が少なく、安定感のあるパフォーマンスを発揮しています。

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F2.8 2914 2685 2564
F4.0 3456 3316 2803
F5.6 3408 3659 3189
F8.0 3327 3605 3232
F11 3194 3204 2972
F16 2625 2735 2386
F22 1969 2023 2012
実写確認

他製品との比較

競合する製品が存在しないため、キヤノンキットレンズ「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」と比較。

RF-S18-45mmは小型軽量という以外に取り柄が無く、シグマは24mm以降で特に周辺部や隅のパフォーマンスが良好。価格差やサイズ差が問題とならないのであれば、個人的にはシグマがおススメ。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2024.7.11
  • カメラ:EOS R7
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE スポット測光
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ

18mm

フレーム周辺に倍率色収差の影響が見られる以外はF2.8から非常に良好。単焦点ほどの切れ味ではないものの、中央から隅まで良好なシャープネス・コントラスト。絞ってもほとんど変化ありません。

中央

周辺

四隅

24mm

18mmとよく似た傾向ですが、倍率色収差が良く抑えられています。中央から周辺までの結果は18mmよりもわずかに良好。隅はF2.8で僅かにソフトですが、F4~F5.6まで絞ると改善します。

中央

周辺

四隅

28mm

24mmとほぼ同じ。

中央

周辺

四隅

35mm

広角側と比べると細部のコントラストが僅かに低下。ただし中央から隅までの画質は均質性が高い。F5.6のピークに向けて、絞ると少し改善します。

中央

周辺

四隅

50m

35mmと同じ傾向で、画質の低下はありません。中央から隅まで均質性が高く、ズームレンズにありがちな望遠端における落ち込みは無し。ただし、他の焦点距離と比べると解像性能のピーク値が低いように見えます。

中央

周辺

四隅

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

18mmの接写時は像面湾曲が非常に目立つものの、より重要となる遠景では良好な補正状態です。絞り開放から大きな問題はなく、遠景のパンフォーカスが得られます。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

18mm

レンズ補正をオフにすることで若干の色収差を確認できます。影響は軽微で自動的に補正可能。特に問題無い程度。

24mm

18mmよりも若干良好ですが、ゼロではありません。

28mm

24mmと同じ。

35mm

広角側と比べると色収差がほぼゼロに抑えられています。全く問題ありません。

50mm

35mmと同じく全く問題無し。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

18mm

ピント面前後に極わずかな色づきがあるものの、これが実写で目立つことは非常に稀。問題視する必要は無いと思われます。

35mm

広角側と比べると色収差がやや目立つようになります。極端な高コントラストの状況で色づく可能性あり。F4まで絞っても残存しており、F5.6なで絞ると少し改善します。

50mm

35mmと同じく少し目立ちます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

18mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

ミラーレス用レンズでしばしば見られる極端な歪曲収差ではありませんが、レンズ補正をオフにすることで顕著な樽型の歪曲収差が発生。風景撮影では軽い魚眼効果が得られる許容範囲内かもしれませんが、直線が重要となるシーンでは補正必須。

24mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

18mmとは打って変わって非常に穏やかな樽型歪曲。未補正でもほぼ問題ない水準に見えます。

28mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

広角側とは異なり糸巻き型の歪曲収差。穏やかな収差で影響は軽微。

35mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

28mmとは異なり、強めの糸巻き型歪曲収差。かなり目立つので補正必須のシーンが多いと感じるかもしれません。

50mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

35mmと同じく強めの糸巻き型歪曲。広角側の樽型を含め、レンズ補正は常時適用がおススメ。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

全体的に完璧な補正状態ではなく、わずかに影響が残存しています。顕著な収差ではなく、1段絞ると改善します。点光源の再現性が極めて重要という撮影以外で問題となることは少ないでしょう。

球面収差

18mm

特に大きな問題は無いように見えます。

50mm

広角側と比べるとボケの縁取り付近における光量が変化しています。若干の影響があるものの、これが顕著に目立つことは少ないと思われます。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

ニュートラル寄りですが、少なくとも50mmでは後ボケが比較的柔らかい描写。ボケの縁取りが弱く、自然と背景に溶け込んでいくように見えます。残念ながら、軸上色収差の影響が僅かに残っています。

前ボケ

後ボケとは異なり、やや硬い描写。さらに軸上色収差の影響があるため、状況によっては悪目立ちするかもしれません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

18mm

縁取りが弱く、玉ねぎボケが目立たず、口径食の影響も良く抑えられています。「18mm F2.8」のため大きなボケは得にくいですが、持ち前の接写性能を活かすことでボケを作ることが可能。

35mm

口径食はフレームの隅を除けば穏やかですが、諸収差の項目で指摘したように、軸上色収差の影響がやや目立ちます。

50mm

35mmと同じく、ボケに軸上色収差の影響が僅かにあります。

ボケ実写

18mm

ボケが大きい接写時は滑らかな後ボケですが、撮影距離が長い場合は周辺部が少し騒がしい描写。騒がしいと感じた場合はF4-5.6まで絞ると改善します。全高170cmの三脚をフレーム一杯に撮影すると、ボケはほとんどなく、ボケ質が気にならない。

35mm

18mmとよく似た傾向ですが、軸上色収差の影響が少し強くなります。気にならない程度ですが、状況によってはF4かF5.6まで絞ったほうが良くなる可能性あり。

50mm

35mmと同じ傾向ですが、50mm F2.8のボケが大きいのため、目障りとならない場合も多い。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

18mm

ピント位置に関わらず、F2.8でやや目立ちます。F5.6まで絞ると改善しますが、最短撮影距離では四隅にしつこい減光効果が残っています。

35mm

広角端や望遠端と比べると影響は軽微。絞るとほぼ問題ありません。

50mm

他の焦点距離と比べると撮影位置によって減光の影響が変化。最短撮影距離では問題ないものの、無限遠側のF2.8ではかなり目立ちます。幸いにもF5.6まで絞ると大幅に改善します。

逆光耐性・光条

18mm

強い光源を正面から受けるとやや目立つフレアが光源付近に発生。(センサー前面の)カラーフィルターの反射と思われ、絞ると点光源に変化します。カラーフィルターの影響を分けてチェックすると、若干のゴーストが発生していることが分かります。光源を隅に移動させるとフレアやゴーストの影響は軽微。ただし、小絞りではゴーストが僅かに発生。

50mm

全体的に18mmと同じ傾向。大きな変化はありませんが、ゴーストが僅かに発生しにくくなっているように見えます。

光条

最小絞りまで絞ったとしても先細りしない分散するタイプの描写。また、回折の影響を避ける絞り値では光条がほとんど発生していません。このレンズで光条はあまり期待しないほうが良いでしょう。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 手ごろな価格設定
  • F2.8ズームとしては驚くほど小型軽量
  • シンプルながら良好なビルドクオリティ
  • 簡易防塵防滴
  • 滑らかなコントロールリング
  • 静かで高速なAF
  • フォーカスブリージングが抑えられている
  • 均質性の高い遠景の解像性能
  • ズーム全域で良好なクローズアップ性能
  • 穏やかな倍率色収差
  • 滑らかなボケ(広角・準広角)

レンズサイズや価格を考慮すると安定感のある優れたF2.8ズームレンズ。解像性能にこれと言った弱点がなく、諸収差はカメラ側補正込みで概ね許容範囲内に抑えています。レンズの作りは安いっぽくなく、AFは純正品並に高速で正確。

Considering the lens size and price, this is an excellent F2.8 zoom lens with a stable feel. It has no particular weaknesses in terms of resolution performance, and various aberrations are generally kept within acceptable limits, including camera-side correction. The lens is not cheap-looking, and the AF is as fast and accurate as genuine products.

悪かったところ

ココに注意

  • ズーム・フォーカス以外のコントロールが無い
  • 接写時の周辺画質が低下する
  • 接写時の像面湾曲が目立つ
  • 望遠側のコントラストが少し低下する
  • 軸上色収差が発生する場合がある
  • 望遠側の球面収差が残っている
  • 周辺減光の影響が強い
  • 中程度の樽型歪曲と糸巻き型歪曲
  • 絞り開放でコマ収差の影響がある

シグマContemporaryラインのレンズとして、レンズサイズや価格とトレードオフになっている点が複数あります。F2.8ズームですが、完璧な光学性能ではありません。とはいえ、大部分は許容範囲内に収まっており、問題となる要素は少ないはず。これはもうどうにもならないと感じるのは、接写時の強い像面湾曲くらい(それが問題となるシーンは限られています)。

As a lens in the Sigma Contemporary line, there are several points that are a trade-off with the lens size and price. It is a F2.8 zoom, but it is not perfect in terms of optical performance. However, most of the elements are within acceptable limits, and there should be few problematic factors. The only thing that feels like it can't be helped is the strong field curvature when shooting close-ups (and there are only a limited number of scenes where this is a problem).

社外製レンズであることを強く意識する点があるとすればズーム中のサーボAF。しばしばミスショットが混じるため、この点を重視するのであれば純正のF2.8ズームが登場するのを待ったほうが良いでしょう。

If there is one thing that you should be very aware of when using an external lens, it is the servo AF when zooming. As you will often get a few mis-shots, it would be better to wait for the release of a genuine F2.8 zoom lens if this is a point that you are concerned about.

結論

満足度は99点。
光学性能・価格・サイズが高水準にまとまっている大口径ズームレンズ。前述したように完璧なレンズではないものの、大部分は許容範囲内に収まっており、購入を躊躇するような欠点はほとんどありません。カメラ製品の高価格化が進む中、このレンズの価格は良く抑えられており、性能が良いこともあっておススメしやすい一本。

購入するを悩んでいる人

このレンズに直接競合するレンズは存在しません。APS-C RFでF2.8の大口径ズームが必要でれば迷う理由がありません。F2.8が必要ない場合に悩む選択肢があるとすれば以下の通り。

RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM

カメラのキットにもなってる小型軽量な廉価ズームレンズ。沈胴構造のため収納性が非常に良好で、小型軽量なR50やR10と組み合わせに最適。ただし、光学性能はシグマのほうが良好で、開放F値が大きいので低照度には不向き。沈胴構造のため、使用時は内筒が大幅に伸びる点も注意したいポイント。このレンズを3.8万円の新品で購入するのであれば、もう少し足してシグマを検討するのがおススメ。

RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STM

RF-Sレンズもう一つの選択肢。カテゴリが全く異なるレンズのため、シグマと悩む人はほとんどいないはず。光学性能は悪くなく、むしろ近距離の解像チャートではシグマと互角。F2.8が必要なく、150mmの望遠域まで使いたいのであればコチラがおススメ。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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