このページではキヤノンの一眼レフカメラ「EOS 90D」の1か月の間にレビューした記事をまとめ、元EOS 80Dユーザーとしての総評を掲載しています。
管理人の評価
バランス良好のハイパフォーマンスなミドルレンジ一眼レフカメラ
ライブビューのパフォーマンスが大幅に向上。2019年現在で最も使いやすいライブビューを備えていると言っても過言では無い一眼レフ。
Points
外観 | EOS 80Dとほぼ同じ |
操作性 | EOS 80Dとほぼ同じ (AFレバーで若干改善) |
カスタマイズ | EOS 80Dとほぼ同じ |
解像性能 | EOS 80Dより改善 ただし性能を引き出せるレンズは要検討 |
高感度画質 | EOS 80Dとほぼ同じ (解像性能のおかげで少し改善) |
ダイナミックレンジ | EOS 80Dとほぼ同じ (解像性能のおかげで少し改善) |
JPEG画質 | EOS 80Dとほぼ同じ |
オートフォーカス(OVF) | EOS 80Dとほぼ同じ EOS iTR AFで人物の検出精度向上 |
オートフォーカス(EVF) | 見違えるような鬼進化 ただし、性能を引き出せるレンズが少ない |
連写性能 | EOS 7D Mark II並 |
連続撮影能力 | EOS 80Dとほぼ同じ (3250万画素のデータ量が大きい) |
拡張性 | グリップ・フラッシュの対応製品が多い 80Dのアクセサリーを継承可能 |
バッテリーライフ | 中型APS-C一眼レフの中でも良好 (ただしLVの使用頻度が多いと消耗が早い) |
防塵防滴 | 対応するレンズが少ない |
価格 | 適正だが同価格帯にライバル多し |
外観・操作性
基本的にEOS 80Dと同じ
基本的にEOS 80Dを踏襲しているので違和感なく乗り換えることが可能。
バッテリー・縦位置グリップが従来モデルに対応、レリーズなども含めて拡張アクセサリーを買い替えなくて良いのでキヤノンの良心。当然ながらEOS 80Dと比べてサイズ・重量もほぼ同じ。
全体的に見て「中型APS-C一眼レフとしては」充実した操作性と拡張性を実現しています。
AFスティックの追加良いのだけども…
測距点の操作にスティック型マルチコントローラーが実装されたのは大歓迎。
ただし、測光タイマーが切れると自動的にマルコンの操作もシャットダウンしてしまうのが理解できない。(測光タイマーオフ状態だとマルコン操作がロックされている)
マルコン操作にも手前で測光タイマーを起動するワンアクションが必要となってくるので素早い操作に不向き。さらに、ボタン式マルチコントローラーと設定を棲み分けることが出来ないので、スティック型を活用する場合はボタン型の存在意義が無くなるのは悲しい。ミラーレスと同じくボタンカスタマイズに対応して欲しかったところ。
ボタンカスタマイズに制限あり
基本的にカスタマイズの傾向はEOS 80Dと同じ。シャッターボタン横の小さなボタンは「M-Fn」に非ず。カスタマイズ不可。
前述した通り、方向ボタンが役立たずとなり、右肩液晶周りのボタンは1カ所につき1機能のみ。上位機種のように前後ダイヤルで別の機能を操作することは出来ません。
画質
高解像化の恩恵あり
APS-Cカメラとしては珍しい3250万画素の高画素センサーを導入。
高画素化=画素ピッチの狭さが気になるところですが、高感度耐性は基本的にEOS 80Dと同等。高解像となっているぶん、全体的に見るとノイズ粒子がきめ細かく見えます(解像感を損ないにくくなった)。
ダイナミックレンジは従来通り。フルサイズ以下ですが、APS-Cセンサーとしては及第点以上だと感じます。高感度ノイズと同じく、高画素化によりノイズが目立たなくなっています。
レンズは要検討
高解像センサーですが、絞り開放から3250万画素の解像性能を存分に活用できるレンズは限られてきます。特に望遠レンズでクロップを考えている人は要注意。センターに耐えうる高解像なレンズが必要となってきます。
データサイズ大
3250万画素といえば、フルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark IV」よりも高解像なセンサーです。当然ながらデータサイズもフルサイズ並み。
RAW・JPEGのファイルサイズが肥大化しているので、転送速度の速いSD UHS-IIを用意しておくのがおススメ。当然、パソコンで処理する際も2400万画素と比べて少し重く感じるかも。
ファイルサイズはDIGIC 8で実装した「C-RAW」を使うことでコンパクトなRAWデータを取り扱うことが出来ます。損失するデータはそこまで目立たないので、ダイナミックレンジや諧調を特に重視しない場合は「C-RAW」で十分だと思います。
AF
鬼進化のライブビュー
そこそこ使えるようになったEOS 80Dのライブビューと見比べても、EOS 90Dで見違えるほどの進化を感じるはず。連写速度も速く、最新のEOSミラーレスと比べても遜色の無いパフォーマンス。
ただし、肝心の「ライブビューに適したレンズ」の選択肢が少ないので注意が必要。リニアタイプのステッピングモーターやナノUSMを搭載したレンズがおススメ。
光学ファインダーもぼちぼち進化
光学ファインダーはライブビューほど劇的な違いはありません。しかし、EOS iTR AFシステムの導入により顔検出に対応したのは割と良い。ポートレートや家族写真では思っていたよりも安定して顔にピントを置き続ける好印象な動作となっています。
AFタブが無い
不満があるとすれば、メニューシステムでAF専用タブが無いことくらい。サーボAFの特性変更や連写時の優先モードなど、AF各種設定は「C-Fn II」に格納されています。
小まめに設定変更しながら使いたい機能もC-Fn IIに格納されているため、必要であればマイメニュー機能で呼び出しやすくしておくと良いでしょう。
速写性
7D Mark IIと同じ10コマ秒の連写速度を手に入れたものの、3250万画素とおおきなデータ量もあってバッファは少なく感じます。バッファクリアもそれなりに時間がかかるのでSD UHS-II対応カードを用意したいところ。
価格
EOS 80Dの初値と比べて2万円ほど高価となっていますが、それだけの価値はあるかなと思います。
ただし競合他社と見比べた場合、EOS 90Dの価格帯には強力なライバルが多数存在します。一眼レフの「Nikon D500」やミラーレス「Sony α6600」「FUJIFILM X-T3」「OLYMPUS M-D E-M5 Mark III」など、より個性的なモデルがあります。
EOS 90Dは上記のようなライバルモデルほど個性的なカメラではありませんが、一眼レフとミラーレスの良いところを使い分けることが出来るカメラとしては最も優れた選択肢。
総評
満足度は85点。
ライブビューは見違えるほど進化し、ファインダー使用時は10コマ秒の高速連写とEOS iTR AFで利便性UP。外装はEOS 80Dを踏襲しており、アクセサリー類を共有できるのがGood。
パフォーマンスや拡張性を考えると「ハイエンド寄りのミドルレンジモデル」と言って過言では無いはず。
その一方、同価格帯に存在する「尖った性能」を持った一眼レフ・ミラーレスと比べて没個性的。特にここ1年で登場したミラーレスは手ごろな価格ながらハイパフォーマンスなモデルが多い。EOS 90Dは登場するのがあと1年早ければ、もっと高く評価できたカメラ。
さらにフルサイズセンサーを搭載したカメラも安くなってきているので、EOS 90Dで本当に良いのかはよく考えておきたいところ。(例:EOS RP・EOS 6D Mark II・α7 II・α7など)
Good | Bad |
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購入を悩んでいる人へ
EOS 80Dは現役か?
予算に問題がなければ、80Dの正統進化モデルである90Dがおススメ。ライブビューAFやBluetoothによる常時接続など、目に見えて利便性が向上している部分がいくつか存在します。
とは言え、EOS 80Dの画質・AFに満足できているのであれば、今の価格差でEOS 90Dへ乗り換える意義は小さい。
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EOS 7D Mark IIからの乗り換えはOK?
後継モデルが全く登場しない「EOS 7D Mark II」から乗り換える場合はいくつか留意事項があるので注意が必要。
- シングルSDカードスロット
- AFセンサーがグレードダウン
- ボディサイズが小さい
- ボディ素材がプラスチック
- 光学ファインダーが小さい
- ボタンの機能が異なる(特に右肩)
上記でメリットを考慮しつつ、それでも高解像・高感度画質・ライブビュー性能が必要であればEOS 90Dをチョイス。許容できない場合はマウントを変えてでもNikon D500のほうが満足できるはず。
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個人的にはEOS M6 Mark II
キヤノンのライブビューAFと追従連写性能が高水準となってきたので、AFで一眼レフにこだわる必要も薄くなってきているはず。
そんな時は14コマ秒の追従連写が可能なEOS M6 Mark IIも一つの手。EOS 90Dよりも安く、同じセンサーと処理エンジンを搭載し、小型軽量で、より高速連写が可能。ファインダーが無いものの、別売り電子ファインダーを装着可能です。
EOS 90Dはスティック型マルチコントローラーを搭載していますが、正直に言うとライブビューで便利だとは感じません。よってマルチコントローラーが無くてもそう不便には感じないはず。
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目次
Index
EOS 90D徹底レビュー
外観・操作性
外観・重量
ボディサイズは140.7mm×104.8mm×76.8mm、質量はSDカード・バッテリー込みで約701g。ボディの材質について言及されていませんが、触った限りでは剛性のあるプラスチック。
基本的にEOS 80Dのボディサイズ・形状・材質を継承しており、80Dユーザーであれば違和感なく乗り換えることが出来ると思います。形状が同じである上、EOS 70Dや80Dと同じバッテリーグリップ「BG-E14」を利用できるのは便利。
中型APS-C一眼レフとしては一般的な重量であり、D7500やPENTAX K-3 IIとほぼ同じ。重くもなく、軽くもなくと言ったところ。主流となりつつあるミラーレスカメラと比べるとやはり重たい。
フラッシュ
ガイドナンバー約12、焦点距離17mm相当の画角に対応するポップアップストロボを内蔵。仕様はEOS 80Dと全く変わっていないはず。
EOS 80Dと異なる点があるとすれば、モードダイヤルから「発光禁止モード」が無くなっていること。80Dはオートモード使用時にストロボが必要と自動的に判断した場合、ポップアップストロボが展開してストロボを発光します。しかし、EOS 90Dは自動ポップアップ機能が無くなり、カメラ側面のストロボボタンを押さないとポップアップしません。
カメラグリップ
形状がEOS 80Dと同じなので違和感なし。改善点もなし。グリップ滑り止めの触り心地は少し変わったような…、変わっていないような…。
グリップサイズはハイアマ志向な「EOS 7D Mark II」と比べると小さく、フルサイズ用望遠レンズを装着するとやや心もとないかも。
スティック型マルチコントローラー
基本的に歓迎すべき追加機能ですが、少し気になる部分があるのでリストアップ。
初期設定ではダイレクト選択がオフとなっている
EOS 90D系モデルとしては50D以来となるスティック型のマルチコントローラーを搭載。上下左右の移動に加えて斜め操作にも対応しています。初期設定では「AFフレームダイレクト選択」がオフとなっているため、「C.Fn III」のボタンカスタマイズで機能を有効にしておく必要があります。
EOS 90Dの45点AFだと測距点が少ないので従来通り方向ボタンでも困ることはありませんが、サーボAF動作中にAFフレームを操作しようとするとスティック型のほうが使いやすいと感じます。
光学ファインダー時は滑らかに操作出来ない
AFフレーム移動は押し込み式というよりもクリック式。スティックを左に倒して右から左まで一回の操作で移動することはできません。スティックを左に一回倒すと、1マスだけ左へ移動します。
例えば、左に倒した状態から斜め左上→上と中央に戻さず操作してもフレーム移動には反映されません。その一方、ライブビュー時は一度の操作で右から左へ操作できるうえ、左→上と言った連続操作にも対応しています。
ボタンと差別化出来ない
スティックタイプのマルチコントローラーを搭載していますが、役割はボタンのマルチコントローラーと全く同じ。AFフレーム移動をスティックに任せ、ボタンに別の役割を割り当てることは出来ません。ミラーレスモデルで方向ボタンのカスタマイズが可能となっていますが、なぜ一眼レフに同じような機能を実装しないのか理解できません。
その他ボタン類
シャッターボタン周辺
シャッターボタン
シャッター半押しまでのストロークとそこから全押しまでのストロークはやや深め。誤操作し辛い点でプラスに働く反面、瞬間的なシャッターチャンスではレスポンスに影響するかもしれません。これは実際に実機を触って確かめて欲しいところ。
測距エリア/AF方式選択ボタン
従来通りの仕様であり、上位モデルやミラーレスのように「M-Fn」ボタンとしてカスタマイズは出来ません。ミラーレスはEOS Kiss Mのようなエントリーモデルですらカスタマイズの自由度が高まっています。それを考えると90Dもカスタマイズに対応して欲しかったところ。
サブ液晶周辺
従来通り、AF・ドライブ・ISO・測光・液晶点灯ボタンが配置されています。ボタンカスタマイズは非対応で所定の機能しか呼び出すことは出来ません。
サムレスト周辺
従来通り、外側から拡大(AFフレーム選択)・縮小(AEL)・AF-ON・LVボタンの配置となっています。ボタンカスタマイズに対応しているのは「AF-ON」と「縮小(AEL)」のみ。どちらも似たような機能を割り当てる事が可能となっています。
- AEL/AFL
- 測光・AF開始
- AF停止
- ワンショットAF/サーボAF切替
- AEロック ホールド
- AEロック
- FEロック
- ISO感度設定 押しながら
- 露出補正 押しながら
- OFF
カメラ左上
キヤノンらしい左肩の電源スイッチとメニューボタン、そしてINFOボタンがあります。機能は他の一眼レフと同じ。光学ファインダー時にINFOボタンを押すと、「消灯」「水準器」「INFOパネル」がモニターに表示されます。ライブビュー時にINFOボタンを押すと「情報表示無し」「ヒストグラム」「水準器」と切り替えることが可能。
従来機と同じように、ライブビュー時の「顔検出・追従優先モード」では水準器を表示することが出来ません。また、水準器は従来通り1軸(水平)のみとなっており、垂直方向には対応していません。
INFOボタンはC-RAW・RAWの切り替えやAWB(雰囲気・白優先)の切り替えなどで使用するため、出来れば右手で操作できる配置が良かったですねえ。
カメラ右下
EOS 80Dと比べて少しボタン配置が変わったポイント。スティック型マルチコントローラーを実装したため、場所が無くなった再生ボタンが移動しています。ゴミ箱ボタンとセットで使う機会の多いボタンなので、使いやすくなった印象。
ロックレバーの位置やサブ電子ダイヤルの質感は従来通り。
絞りプレビュー
従来通りカスタマイズ対応ボタンがレンズマウント右下に備わっています。カスタマイズできる機能は相変わらず。絞りプレビューの必要性が無ければワンショットAFとサーボAFの一時切り替え機能が役に立つはず。
ダイヤル
メイン電子ダイヤル
ゴムのような質感だったEOS 80Dからローレット加工の施された樹脂製ダイヤルに変化しています。指の掛かりはEOS 90Dのほうが良好に感じます。
サブ電子ダイヤル
フロントダイヤルと同じく、こちらもローレット加工に変化しています。質感は相変わらず樹脂製。
モードダイヤル
EOS 80Dからクリエイティブオートと発光禁止モードが無くなりました。ただし、カスタマイズモードは以前と同じ2枠となっています。余裕が出来たのだからカスタマイズ枠は3枠か4枠にして欲しかったところ…。
ファインダー
ファインダーの仕様はEOS 80Dと全く同じ。ミラーレスの電子ビューファインダーと比べると小さく感じ、同じ一眼レフの中では平凡なファインダー倍率となっています。やはり透過型液晶を挟んでいるのでバッテリーを挿入していないとファインダー像が暗く見えてしまうので注意が必要。
モニター
ファインダーと同じく従来通りの仕様となっています。解像度や操作性は従来通りですが、タッチパネルのレスポンスや機能性は競合他社と比べてトップクラス。
サブ液晶モニタ
特にこれと言った変更点は無し。
インターフェース
SDカードスロット
従来通りシングルSDカードスロットですが、UHS-IIに対応しています。バッファクリア速度は目に見えて違いがあるので連写重視であればUHS-II対応カードを用意しておくと良いでしょう。
防塵防滴仕様は完璧と言えず、シーリングが施されていないように見えます。
USBポート等
リモートレリーズ用端子、ヘッドホン・マイク端子、USB Micro-B端子、HDMI C端子を搭載。ポートに関してEOS 80Dと比べて大きな変更点はありませんが、この周囲に備わっていたNFC端子が無くなっています。
SDカードスロットと同様、防塵防滴仕様は少し心もとない印象。
バッテリー
従来通り、広く普及しているバッテリー「LP-E6N」を使用。残念ながら未だにボディ内充電には対応していません。
雑感
EOS 80Dと比べた際の主な変更点は基本的にスティック型マルチコントローラーのみ。確かに使いやすくなったものの、光学45点AFで必須とは感じず、ライブビュー時はタッチAFを利用する頻度のほうが高いかも。方向ボタンを別枠でカスタマイズできるとマルコンを搭載する意義がより大きくなったと思うのですが…。
良く言えば堅実な進化、悪く言えば地味。2000年から続くEOS 2桁シリーズの正統な最新モデルとしては確かな1台だと思います。このカメラの注目ポイントは別のところにあるので、その辺は次回以降に紹介したいと思います。
MENUシステム
動画で確認
EOSシステムらしいメニュー画面なので、従来のEOSユーザーなら迷わず利用出来るはず。当然ながらタッチ操作が可能でレスポンスはバッチリ。
各種メニュー項目の配置はミドルレンジモデルらしいデザインとなっています。上位機種のような「AF」タブは存在せず、「C-Fn II」に統合されています。また、エントリーモデルのようにカスタマイズやC-Fnに強い制限が掛かっていることはありません。多少不便ではありますが、機能的なメニューシステムとなっています。
撮影メニュー
Tip:EOS 80Dとの違い
- 記録画質に「C-RAW」が追加され「M/S RAW」が無くなっている
- ライブビュー時のシャッター方式「電子シャッター」利用可能
- フォーカスBKT機能の追加
- ライブビュー時のAF方式「スポット1点」追加
- ライブビュー時に「瞳AF」のオン・オフ追加
Tip:AFの詳細設定は「C-Fn II」に格納されている
光学ファインダーやAFの詳細設定は「C-Fn II」に格納されています。少なくとも連写性能はEOS 7D Mark IIに匹敵し、ライブビューAF性能も高い本機の用途を考慮すると上位機種のように「AF」専用タブを配置しても良かったのではと思うところ。
Tip:メニュー項目が変化する
ファインダー時とライブビュー時で撮影メニューの項目に多少変化があるので注意が必要。
ライブビュー時のみ「測光タイマー」「シャッター方式」や「AF方式」「瞳AF」などを設定することが可能。光学ファインダー時にメニュー画面を開いても「非表示」となって画面から見えなくなってしまいます。
ファインダーとライブビューを駆使するユーザーには少々ややこしい仕様。ファインダー・ライブビューどちらかを使うユーザーにとって、使わない機能が非表示となるのは理解できるのですが…。出来れば設定で「常時表示」して欲しかったところ。
ちなみに「マイメニュー」に登録するとで可視化するは可能。ただし、グレーアウトして機能を利用することは出来ません。
Tip:光学ファインダー時の測光タイマーが調整できない!
測光タイマーとはカメラを操作しなくなってからAEが動作しなくなるまでの時間。測光タイマーの時間を過ぎるとカメラの一部操作を受け付けなくなります。例えばフォーカスポイントの移動もその一つ。
EOS 90Dはスティック型マルチコントローラーに対応していますが、測光タイマーオフ後はスティックを操作してもフォーカスポイントが動かなくなってしまいます。再び操作するにはシャッターボタンなどで測光タイマーをオンにする必要があるのです。
EOS 90Dの測光タイマーはおよそ6秒前後となっており、これを過ぎると再び測光タイマーをオンにしなければなりません。これが結構面倒くさい。ライブビュー時は測光タイマーを「4秒」から「30分」までの間で設定可能となっていますが、光学ファインダー時は変更不可。ライブビュー時の設定は光学ファインダー時に引き継がれません。つまり6秒固定。
再生メニュー
特にこれと言って注意すべき点は無し。
通信メニュー
Bluetooth 4.1に対応しており、電源オフ時でもスマホとの常時接続が可能となっています。一部機種のように「電源オフ時はBluetooth接続しない」と言う項目が無いので、おそらく初期設定で常時接続状態となっているはず。
設定メニュー
最新EOSミラーレスのようにモニター画面を一時的に明るくするショートカット機能が無いため、「画面の明るさ」をマイメニューに登録しておくと便利。特にライブビューが使いやすい本機では大事なポイント。
カスタマイズ
C-Fn I:露出
EOS 90Dの測光は「マルチ評価測光」時、自動的にAFポイント連動測光となります。AFフレームが「ALL」以外、ゾーンや1点・スポット1点であればAFエリアの露出を重視した測光となるので注意が必要。
逆に「スポット測光」「部分測光」の場合はAFエリアに連動せず、連動させる設定は存在しません。この特性はファインダー・ライブビューどちらも似たような傾向を示しています。
C-Fn II:AF
Tip:マイメニューに登録しておくと便利
前述したように、AFの詳細設定は「C-Fn II」からアプローチする必要があるので若干面倒くさい。
AFを調整する場合に多用する設定項目がので、出来れば個別にマイメニューへ登録しておきたいところ。
Tip:サーボ特性はライブビューにも適用可能
C-Fn II AF1?3ページの「速度変化に対する追従性」「測距点乗り移り特性」「被写体追従特性」はライブビューAFでも効果を発揮します。5ページ目の「AIサーボ中AF連続撮影中レリーズ」を同時に調整することで快適な撮影ライフを楽しめるはず。
Tip:サーボAF開始測距点を変更するとロックオンAFとして利用可能
C-Fn II AF11ページ「追従・顔検出優先モード」時は初期設定だと、ワイド&顔検出モードとなっています。しかし、この設定だと顔以外の検出で追従開始位置を決めることが出来ません。
C-Fn III:操作・その他
基本的にEOS 80Dと同程度。ジョイスティック型マルチコントローラーが増えているものの、ボタンと同じ役割しかないのでカスタマイズボタン数に変化がありません。
ここ最近のEOSミラーレスはボタンカスタマイズに寛容となってきましたが、一眼レフシリーズは従来通りとなっています。
ボタンカスタマイズ
カスタマイズ対応ボタン
(拡大ボタンはカスタマイズ不可だったので削除)
カスタマイズ可能なボタンは基本的にEOS 80Dと同じ。EOSシステムでもミラーレス「EOS M」「EOS R」はボタンカスタマイズに寛容なカメラとなってきましたが、一眼レフのこのシリーズは依然として最低限のカスタマイズ性。ミラーレスと比べて自由度は低いと言わざるを得ません。
特にシャッターボタン横に配置してある「測距エリア/AF方式選択ボタン」がカスタマイズ非対応なのが痛い。非常に押しやすい配置となっているにも関わらず、多用するボタンを割り当てることが出来ないのは残念。「EOS Kiss M」のような比較的エントリー寄りのミラーレスですら「M-Fnボタン」となっているのだから90Dも踏襲して欲しかったところ。
シャッターボタン
の3種類から選択可能。特にこだわりが無ければ初期設定の「1」で問題無いはず。「親指AF」など特殊なカメラ操作が必要ならば、これを「2」や「3」に設定するのが良し(基本は「2」だと思いますが)。
AF-ONボタン・AEロックボタン
初期設定ではAF-ONボタンに「測光・AF開始」が、AEロックボタンに「AEロック/AFロック」が割り当てられています。割当可能な機能はどちらも同じ。このあたりのボタンは親指で操作しやすいので、割当可能なボタンにもう少し自由度が欲しかったところ。
「親指AF」を利用したい場合にはどちらかに「測光・AF開始」を配置しておくと良いでしょう。
個人的におススメは「ワンショットAF/サーボAF切替」、これは押している間のみ設定したAFモードとは反対のAFモードに切り替わる機能です。サーボAFで被写体を追いかけている最中、風景や静止物へピントを合わせる場合などに重宝します。しかし、親指でこのボタンを押している間はスティック型マルチコントローラーを操作するのが難しくなります。そのような場合が多いのであれば、この機能は「絞り込みボタン」のほうに割り当てておくと良い感じ。
「ISO感度設定」はボタンを押しながらダイヤルを操作することでISO感度の変更が可能。ただし、この機能からでは「A=ISO感度オート」に設定することが出来ません。元の設定値を「オート」にしておくと、カメラ上部の「ISOボタン」を一回押せば「ISO感度設定」で変更したISOから一気にオートまで回帰することが出来ます。「ISO感度設定」はカメラ上部のISOボタンとセットで活用するのが良いでしょう。
「露出補正」の使い勝手はISO感度設定と似ています。ただし、AvモードやTvモードであればサブ電子ダイヤルで露出補正を操作することが出来るので特に必要なボタンとは感じないはず。その一方、マニュアルモード(M)でISO感度オートを使う場合はコマンドダイヤルで露出補正を直接操作することが出来なくなります。このような場合に「露出補正(押しながら)」が役に立つと思います。
絞り込みボタン
AF-ONボタンやAELボタンと似ていますが、「絞り込み」や「手ぶれ補正機能作動」はコチラのみ。基本的にカメラを下から支える左手で操作することになると思うので、右手で操作しきれない機能を登録しておくと便利。初期設定は「絞り込み」ですが、これが必要であれば「SET」ボタンにも割当可能となっているので別機能を割り当てちゃってもOK。
ここにしか割り当てるこの出来ない「手ぶれ補正機能作動」はボタンを押し込んでいる間のみ手ぶれ補正ユニットを動作させる機能です。ライブビュー時は常時手ぶれ補正が有効となるため関係ありませんが、ファインダー使用時は(一部のレンズを除き)露光時のみ手ぶれ補正が有効となるのでファインダー像が安定しません。そんな時にこの機能を使うとファインダー像が安定してフレーミングしやすくなります。マクロレンズや望遠レンズで活用したい機能。
SETボタン
他のボタンは「撮影設定」に関する項目が多いものの、このボタンのみ「カメラ設定」に関わる機能を呼び出すことが可能となっています。「Qボタン」とやや被る役割となっていますが、アクセスする頻度の高い項目を登録しておくのも一つの手。
マルチコントローラー
「マルチコントローラー」はスティック型・方向ボタンどちらも指しており、それぞれに別の機能を割り当てることはできません。非常にモッタイナイと思うポイント。例えば、AFフレーム移動やメニュー画面はスティックで操作できるので、EOS MやEOS Rシリーズのほうに方向ボタンをFnボタン化して使えると自由度がぐんと向上するのですが…。
ちなみに初期設定は「OFF」となっているのでファインダーAFフレーム選択モード(フレームが赤く光っている状態)じゃないと操作できません。「あれ?」と思った人はこの設定を「OFF」から「AFフレームダイレクト選択」に変更してみましょう。ただし、設定を変更しても測光タイマーが切れるとファインダー時はダイレクト選択が無効となります。
逆にライブビュー時は測光タイマーが切れようが、AFフレームダイレクト選択がOFFだろうが、マルチコントローラーで操作可能。ファインダーとライブビューでこのような操作性のギャップは残念。
メイン電子ダイヤル・サブ電子ダイヤル
これと言ってカスタマイズできるわけでは無く、Mモード時に絞りとシャッタースピードのどちらを操作するか変更できるのみ。自分のスタイルに合わせて選べば良いでしょう。
C-Fnカスタマイズ
C-Fn I 露出
露出設定ステップ | 絞り・シャッタースピード・露出補正・調光補正の設定ステップ変更 |
ISO感度設定ステップ | ISO感度の設定を1/3段刻みか、ざっくり1段刻みかに変更可能。オート時は1段設定でも小刻みに変動します。 |
ブラケティング自動解除 | 読んで字のごとく。ブラケット重視なら「しない」推奨。 |
ブラケティング順序 | 読んで字のごとく。自分の撮影・編集スタイルの合わせれば良し。個人的に失敗した時にキャンセルしやすい「-→0→+」がおススメ。 |
ブラケティング時の撮影枚数 | 読んで字のごとく。 |
露出補正の自動解除 | 電源の入り切りで設定した露出補正を初期値に戻すかどうか。カスタムモードではこの設定に関わらず登録時の補正値が有効となります。 |
合焦後AEロックする測光 | 読んで字のごとく。 |
C-Fn II AF
被写体追従特性 | 被写体へのピントを粘るか、粘らないか。 |
速度変化追従性 | 読んで字のごとく。レンズのフォーカス駆動が超高速なら初期値で良いかも。ごり押しでいけちゃう。レンズのフォーカス駆動がモッサリしているなら要検討。 |
測距点乗り移り特性 | 特に激しく動く被写体を捕捉する場合には有効かも。あまり数値を挙げるとピーキーなAFの挙動となる印象。基本は「被写体追従特性」で調整するのが良さそう。 |
AIサーボ1コマ目挙動 | 読んで字のごとく。レンズが超高速ならピント優先で掴みを良くした方が連写時の良い繋がりを期待できるかも。 |
AIサーボ連写中挙動 | 同上。ただし、「ピント優先」にするとナノUSMレンズでも多少の連写速度低下は覚悟するべし。恩恵としてピント精度はかなり良い。 |
AF測距不能時挙動 | ピントに迷った際に再度フォーカス駆動をさせるか、そこで止めるか。基本は「サーチする」で良いはず。 |
測距エリアの限定 | 読んで字のごとく。 |
AF方式の限定 | 読んで字のごとく。ライブビュー時のAF方式に限った話であり、ファインダー時のAF方式には影響しません。 |
測距エリア/方式の切り替え | 測距エリア切替をボタン連打か、ダイヤル操作にするか選択可能。正直なところ、ダイヤル操作にするメリットがあまり思い浮かばないので、気にならない限り初期設定でOK。 |
縦位置/横位置のAFフレーム | 垂直・水平でカメラを保持する際に測距エリアと位置の切り替えが可能。ただし、ライブビュー時は測距エリアの変更が無効となり、位置の切り替えのみ対応。 |
オートエリア時のサーボ開始点 | 「自動」の場合、顔検出で自動的にAFフレームを合わせて追従開始、それ以外の場合は任意に選択した1点フレームから追従開始。動物やモータースポーツなど顔以外で追従AFを利用するなら「自動」以外を選んでおきたいところ。ただし、「自動」でもタップAFで指定したポイントから追従開始することが出来ます。 |
EOS iTR AF | ファインダー使用時にEOS iTR AFシステムを使った顔優先・追従機能を利用するかどうか。基本はオンで問題無いと思いますが、顔を優先したくない場合はオフにしておくと良いでしょう。検出精度がなかなか良いので、肌色に引っ張られることがあります。 |
AFフレームの循環 | ファインダーのみ有効。AFフレーム移動時に端まで突き当たった際に反対側へジャンプするかどうかを設定することが出来ます。 |
測距時のフレーム表示 | 読んで字のごとく。 |
ファインダー情報の照明 | 撮影シーンの明るさに関係なく、赤色発光させるか、させないかを設定できます。 |
AFマイクロアジャストメント | 読んで字のごとく。 |
C-Fn III 操作・その他
ファインダー内表示 | 読んで字のごとく。 |
ダイヤル回転方向 | 読んで字のごとく。 |
ボタンカスタマイズ | 前述済み、動画時に機能を分けることは出来ません。 |
電源オフ時のレンズ収納 | 主にSTMやナノUSM駆動のレンズで所定の位置にフォーカスレンズを戻す動作をするかどうか。無限遠に固定して撮影したい場合にはこれをオフにしておきたいところ。 |
音声圧縮 | 読んで字のごとく。 |
雑感
カスタマイズの満足度は70点。
冒頭でも述べた様に、基本的にEOS 80Dのカスタマイズを踏襲しており、光学ファインダーを活用した一眼レフとしては特に問題を感じないはず。EOS 90Dの価格設定を考慮すると、7D Mark IIに寄せたカスタマイズ性を実現して欲しかったところ。また、目新しい改善点が無く「おお、凄い」と言った感動はありません。EOSミラーレスのカスタマイズ性が良くなっているだけに、一眼レフであるEOS 90Dの不自由さが際立っているように感じます。
さらにファインダー使用時とライブビュー使用時で設定できる項目に制限があったり、ちぐはぐしているのは残念。まぁ、どちらも細かく設定しようとすると、メニュー画面が煩雑になるのは目に見えていますが…。ここはハイブリッド一眼カメラの悩みどころですねえ。
少し辛口となってしまいましたが、基本的に80Dに満足していれば気軽に乗り換えることができる機種となっています。
ISO感度ノイズ
テスト環境
- 自宅のミニスタジオで撮影
- EOS 90D+EF-S 35mm F2.8 IS マクロ STM
- AvモードでF8固定
- ピント面は中央で固定
- セルフタイマー+電子シャッターで反動を抑制
- ISO100?25600までをRAW出力で撮影
- Adobe Lightroom CCCの初期設定からノイズをオフ、色ノイズをオン・オフで現像
色ノイズ補正オフ
APS-Cとしては非常に高解像な3250万画素CMOSセンサーを搭載しています。ベースISO感度で撮影すると細部までとても鮮明に写っていることが分かります。レンズ側の解像性能が要求されるセンサーだとは思いますが、少なくとも、このマクロレンズでは良好なパフォーマンスを発揮しているように見えます。
色ノイズ補正をオフの状態だと、ISO100?400まで良好な画質ですが、ISO800から僅かに色ノイズが発生し始めます。ISO3200まではまずまず良好なディテールを維持しているように見えますが、ISO6400では色ノイズが多くディテールを損失している印象。ISO12800とISO25600は出来るなら避けたい感度ですね。
色ノイズ補正オン
色ノイズをLightroomで除去すると、ISO100?3200の間は良好な画質を維持しているように見えます。やはりISO6400ではディテールの損失が目に付くものの、まだ実用的な画質。ISO12800も使えないことは無さそうですが、彩度が低下するので状況を選らぶ必要はあるでしょう。
全体的な彩度低下の確認
細部を確認すると彩度が低下していると感じますが、全体的に見るとISO25600までまずまず良好な発色を維持しているように見えます。ただし、ハイライトはちょっと厳しそうですが…。
雑感
低照度でのテストは後日トライします。(本日は娘の運動会でEOS 90Dを使ってみる予定なので忙しいのです)
発売日の夜にちゃちゃっとISO感度別ノイズをチェックしてみましたが、まずまず良好な画質という印象です。APS-Cとしては非常に高解像で画素ピッチに無理が掛かっていると思うのですが、従来までと同様、ISO3200程度までは快適に使える画質だと思います。高画素となっているぶん、ディテールの再現性はEOS 80Dより良好と言えるかもしれません。
ただし、JPEG出力のノイズリダクションがやや強めです。初期設定だとディテールが潰れがちなので、オフか弱設定が個人的にはおススメ。
ダイナミックレンジ
撮影環境
- EOS 90D+EF-S 35mm F2.8 IS Macro STM
- 三脚で固定+セルフタイマー
- マニュアル露出 F8・ISO 100固定
- シャッタースピードを操作し適正露出から-5EV?+5EVの作例を用意
- RAWをAdobe Lightroom CCCで中央をクロップし現像
- 現像時に適正露出へ戻す処理に加え、シャドウ、ハイライトをさらに復元
適正露出
-5EV
シャドウは流石にノイズまみれですが、その他はまずまず良好。
-4EV
-5EVよりも全体的にノイズが緩和。
-3EV
シャドウのディテールを考えると実用的な画質を維持しているのはこのあたりまで。
-2EV
ほぼ問題無く回復が可能。
-1EV
同上。
+1EV
適正露出と比べると、ハイライトの諧調が若干悪くなります。
+2EV
一部の白飛びが目立ち始めます。
+3EV
白飛びする領域はさらに拡大。白飛びスレスレの領域が広がり、諧調が悪くなっています。
+4EV
実用的な画質とは言えないレベル。
+5EV
同上。
EOS Rとの比較
-5EV
ノイズはEOS 90Dのほうが多いものの、同程度の復元力を備えています。ノイズ処理次第ではほぼ同等の画質と感じるかもしません。
+5EV
ほぼ同等。
雑感
Photons to Photosのテスト結果通り、ベースISO感度ではフルサイズセンサーと比べてダイナミックレンジに大差ありません。EOS RやEOS 5D Mark IVと比べてより高画素で、同程度のダイナミックレンジを持っているようです。三脚に載せて風景撮影するには良いAPS-Cカメラと言えそうですね(レンズの解像性能が必要ですが)。C-RAWとRAWの画質差は後日チェック予定です。
JPEG画質
高感度ノイズリダクション
EOS 90Dの高感度ノイズリダクションは従来通り「オフ・弱め・標準・強め」の4つから選択可能。
標準?強めはコントラストの低いディテールに影響しやすく、3250万画素の高解像が活かせないので個人的には「弱め」を推奨。
オフにすると輝度・色どちらのノイズも低減されず、ISO3200前後で色ノイズがやや目立つでため「オフ」は非推奨。
「弱め」と「標準・強め」でディテールの再現に差が出始めるのはISO1600あたり。そこから徐々に低コントラストなディテール再現に差が出始めます。
ピクチャースタイル
シャープネス
シャープネスの設定値は3種類あり、それぞれ…
- 強さ:輪郭強調の強弱
- 細かさ:輪郭線の太さ
- しきい値:処理を施す閾値の設定
細かい話は後述するとして、シャープネスの設定は基本形が「強さ(4)・細かさ(2)・しきい値(4)」となっています。この数値を採用しているのは「スタンダード」「オート」「モノクロ」の3種。
- 基本形から僅かに「強さ」を弱めたのが「ポートレート」
- 基本形から僅かに「強さ」を強めたのが「風景」
- 基本形から大きく「しきい値」を弱めたのが「ディテール重視」
- 基本形から「強さ」「しきい値」を大きく弱めたのが「ニュートラル」「忠実設定」
となっています。特に「ニュートラル」「忠実設定」は基本形と比べて癖が強いので注意が必要。必要に応じて基本形に近いシャープネス設定値へ戻すと良いでしょう。
色・コントラスト
- スタンダード:基本形、後処理不要で使いやすい仕上がり設定。
- ポートレート:マゼンダ?黄色が赤色寄りに調整。肌色が健康的な色合い。最も低コントラストでシャドウの持ち上がりが強い。
- 風景:彩度マシマシだがコントラストはバランス派。
- ディテール重視:スタンダードと比べると高コントラストだが彩度は同等。
- ニュートラル:コントラスト・彩度の強調は控えめ。白飛びや色飽和を抑える。
- 忠実設定:基本はニュートラルと一緒だが、晴天下で忠実な発色。
各プリセットの初期設定だと、コントラスト差は他社と比べてかなり控えめ。必要に応じて手動で調整したいところ。シャドウが持ち上がった感じがするのは「ポートレート」のみ。
基本は作りたい色の傾向から仕上がり設定を決定し、シャープネスやコントラストを調整するのが近道なように感じます。
マクロや風景を撮影することが多いので、個人的にはニュートラルやディテール重視が好み。
全体像
クロップ
シャープネス
正直に言うと、絶妙な設定値に追い込むにはカメラの背面液晶が小さいうえに低解像で力不足。HDMI出力の大きな外部モニターでも使わないと現地でシャープネスを追い込むのは難しいはず。
パソコンで純正現像ソフト「DPP4」に同じ設定値があるので、イメージしているシャープネス処理の数値を確認しておくと良いでしょう。
強さ(0:7)
輪郭線の強調を調整する設定値。数値が大きくなるほど硬調となります。シャープネスで特に深く考えたくない場合はこの設定値を操作するだけで良いかも。
細かさ(1:5)
輪郭線の細かさを調整する設定値。数値が小さいと繊細な描写となりますが、レンズの解像性能によっては甘く感じるかも。レンズの解像性能が高いのであれば低く抑えておきたいところ。もちろん、数値を大きくして力強い描写にするのもアリ。
しきい値(1:5)
シャープネス処理を適用するコントラスト差を調整する設定値。数値が小さいほど低コントラストの輪郭線を強調しやすくなります。
ただし、この数値を小さくするとノイズもディテールとして処理されやすいので注意が必要。(作例でフラットな領域における輝度ノイズの変化を確認できます。)
デジタルレンズオプティマイザ(DLO)
ボディ内で3本までレンズデータを格納可能。初期設定だと…
が登録されています。変更する場合は「Digital Photo Professional 4」で適用したいレンズデータをダウンロードしたうえ、「EOS Utility 3」で90Dに割り当てる必要があります。
「効果はどうよ?」というと、シチュエーションによってまちまちな印象。レンズによって回折や色収差が適切に補正され、見違えるような描写となることがあります。逆に元から良いパフォーマンスのレンズはDLOを適用しても変化はあまり無い。
EF-S35mm F2.8 マクロ IS STMの例
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMの例
雑感
いつも通りのEOSシステム。特にこれと言った変化はありません。
敢えて言えば、EOS 90Dの高解像センサーを活かすためにノイズリダクションは「低」がおススメ。さらに、高解像なレンズと組み合わせる場合はシャープネス設定値を追い込んでおくと良いでしょう。
より個性のあるJPEG出力をしようと思うと、90Dの背面モニタではちょっと苦しい。パソコンで「Picture Style Editor」を使い、あらかじめ自分好みのピクチャースタイルを作っておくと良さそう。
連写・バッファクリア
仕様の確認
連続撮影速度
- ファインダー撮影時 最高約10コマ/秒
- ライブビュー撮影時 最高約11コマ/秒
連続撮影可能枚数
- JPEGラージ/ファイン:約57枚(約58枚)
- RAW:約24枚(約25枚)
- C-RAW:約39枚(約39枚)
- RAW+JPEGラージ/ファイン:約23枚(約24枚)
- C-RAW+JPEGラージ/ファイン:約37枚(約36枚)
実写テスト
ライブビューとファインダーをそれぞれ「サーボAF」「ワンショットAF」を使い高速連写Hで撮影。SDカードはUHS-II対応の「Lexar Professional 1000x SDXC(昔から使ってる少し古いカード)」を用意。
- EOS 90D
- EF-S 35mm F2.8 IS STM
- C-RAW+JPEG
- シャッタースピード 1/320秒固定
- フリッカー低減オフ
- C.Fn II AF設定は初期値
連続撮影枚数(連写速度低下まで)
AF-S | AF-C | |
ファインダー | 40コマ 約4秒 |
44コマ 約5秒 |
ライブビュー | 32コマ 約3秒 |
37コマ 約5秒 |
AF-S時は高速連続撮影の仕様通り。EOS 80Dより高速連写になっていると感じます。
AF-Cは若干ながら仕様より遅く、ライブビューで7.5コマ秒、ファインダーで8.8コマ秒くらいと言ったところでしょうか?ただし、これはカメラの初期設定で撮影しているため。AIサーボAFの設定(C.FnII 5ページ)の設定を「連続撮影優先」に変更すると改善し、ワンショットAFと同程度の連写速度が期待できます。(連写速度向上を体感したのはファインダー時のみでしたが…)
バッファクリア(連写が詰まってから書き込み完了まで)
ファイルサイズ
- JPEG L:10?12MB
- C-RAW:28MB前後
AF-S | AF-C | |
ファインダー | 約14秒 | 約13秒 |
ライブビュー | 約16秒 | 約11秒 |
まずまず早いかな?という印象です。3250万画素とEOS RやEOS 5D Mark IVより高画素機となっており、2400万画素のEOS 80Dや2000万画素の7D Mark IIとは比べちゃいけない気がします。
とは言ってもUHS-II対応カードを使えば、よほど連続撮影を続けない限りストレスフリー。C-RAWならRAWのファイルサイズはEOS 80Dと同程度。JPEGは最高画質で4MBほどファイルサイズが大きい印象。
ちなみにSanDiskのUHS-I対応カードで試してみたところ、バッファクリア時間は約24秒ほどでした。書き込み時間が倍近くなるので、コマ数重視ならUHS-II対応カードを用意しておくべきでしょう。
雑感
EOS 80Dユーザーからすると申し分の無い連写速度とバッファクリア。連写速度を最高まで高めたいのであれば「C.Fn II AF 5ページ」の設定は調整しておくべきだと思います。ちなみにM6 Mark IIのように電子シャッターを使った連写撮影には対応していません。メカニカルシャッターか電子先幕シャッターのみ。
3250万画素と高画素モデルなのでUHS-IのSDカードだと辛いかも、出来ればUHS-IIカードがおススメ。以前は高価で買い辛かったですが、今ならTranscendが(比較的)お手頃な価格設定のUHS-IIカードを投入しています。
AF
仕様の確認
EOS 90D | EOS 80 | |
ファインダーAF方式 | TTL二次結像位相差検出 | |
ライブビューAF方式 | DP CMOS AF | |
測距点(ファインダー) | 45点 | |
測距点(ライブビュー) | 143点 5481ポジション |
35点 |
クロスセンサー | 45点 | |
F8対応 | 27点 | |
LVカバーエリア | 100%×88% | 80%×80% |
測距輝度範囲 ファインダー | ?3?18 | |
測距輝度範囲 ライブビュー | -5?18 (F1.2 レンズ) |
0?18 |
測距エリアモード ファインダー |
スポット1点 1点 ゾーン ラージゾーン オート |
1点 ゾーン ラージゾーン オート |
測距エリアモード ライブビュー |
顔+追従優先 1点 スポット1点 ゾーン |
顔+追従優先 ライブ多点 ライブ1点 |
顔検出 | 対応 | |
瞳検出 | 対応 瞳セレクト |
- |
追従特性カスタマイズ | 被写体追従特性 速度変化追従性 測距点乗り移り特性 |
|
被写体認識 | EOS iTR AF | |
備考 | 流し撮りアシスト 縦/横位置切替 |
光学ファインダー時のAFはEOS 80Dとほぼ同じ仕様。「スポット1点AF」「EOS iTR AF」に対応していますが、位相差AFセンサーは従来通り45点オールクロスセンサーを採用しています。AF精度やカバーエリアの向上はありませんが、EOS iTR AFの採用で被写体認識や追従性能は向上。実際、EOS iTR AFをオンの状態にしておくと、ファインダーAFで粘り強い追従性能を発揮していると感じます。
大きく強化されているのはライブビューAF。EOS 80Dとは全くの別物となっており「カバーエリアの拡大・被写体認識能力の強化・表示レスポンスの改善・AFアルゴリズムの改善」などなど全体的に改善しています。
EOS 80Dから乗り換えてファインダーAFで違いを感じるのは難しいですが、ライブビューAFは明らかに進化していると感じるはず。
ライブビューAF
まずは著しく強化されたライブビューAFについて見てみましょう。
ワンショットAF
EOS 90Dの強化ポイントは主にサーボAF関連なのでワンショットAFではほぼ同じパフォーマンス。ナノUSM駆動のレンズと組み合わせると80Dの時点で超高速AFなので特に問題はありません。
像面位相差AFなのでフォーカス精度も非常に良好です。
スティック型マルチコントローラーの実装やスポット1点・ゾーンAFに対応しているので使い勝手は良くなっています。
サーボAF
かなり良くなっていると思います。
まず第一に表示レスポンスが大きく改善している点。以前のように被写体の動きからワンテンポ遅れたフォーカスフレームの表示が無くなり、ほぼシームレスなフォーカス表示となっています。ライブビュー中の視認性が高まり、リカバリーもしやすい。
次に被写体認識能力の強化、これが大きい。「遠方の被写体=フレーム上の小さな被写体」を正確に認識し、フォーカスフレームが外れることなく追従します。接近する被写体、離れていく被写体どちらでも良好に追従します。EOS Kiss Mあたりから追従性能は高くなっていたと感じていますが、EOS 90Dはさらに一皮むけた印象。
サーボAF時の追従連写は5.0コマ秒だった80Dと比べて7.0コマ秒まで向上しています。80Dのファインダーを使った連写速度と同等まで向上、動体追従の連写撮影で使いやすいと感じるはず。
高速で接近する小動物に対しても見事な追従性能を発揮。鼻先にピントが食いついて追従し続けているのはかなり凄い。像面位相差AFで定評のあるソニー(RX100 Vやα7 IIIの使用経験あり)やオリンパス(E-M1 IIやE-M1Xの使用経験あり)と比べても安定感のある追従性能だと感じます。
これはセンサーとプロセッサーのパフォーマンスだけでなく、キヤノンが培ってきたAFアルゴリズムも一役買っているような印象。C-Fn AFの設定次第でもう少し良くなりそう。さらにレンズパフォーマンスも関連していると思われ、ピュン速ナノUSM駆動の18-135mm USMもキヤノンの強みと感じます。EOS 90Dと同じAF仕様、かつ14コマ秒連写が可能なEOS M6 Mark IIと18-135USMの組み合わせで使ってみたいところ。
瞳AF
素材の撮影を忘れていたので後日更新予定!現在撮影環境を整えています。
ソニーαシリーズほどレスポンスの良い検出と食いつきではありませんが、十分実用的な瞳AF性能だと思います。また、横顔や復帰時の瞳検出精度は(第3世代の)ソニーより良好と感じる時もあります。たまに猫の瞳も検出する謎仕様、個人的には便利なのですけども。
光学ファインダー
AFフレーム中央の精度
中央1点はデュアルクロスセンサーと言うこともあり非常に良好。特に浅い被写界深度となる場合は中央1点が安定かも。
AFフレーム端の精度
キットレンズを使う限りでは特に大きな問題は無し。再現性は良好で特に不安定な印象はありません。社外製大口径レンズなどでは別途調整が必要となる場合があるかもしれません。
EOS iTR AF
家族写真で使用するとが多いのでサンプルイメージは掲載しません。
検出精度はまずまず良好。ミラーレスや90DのライブビューAFで検出できないような顔の向き、遮蔽物があっても肌色めがけてAFフレームを配置してくれる感じ。ワイドエリアにおけるサーボAF使用時の追従性能も良好。
雑感:光学ファインダーはおまけ
「光学ファインダー付きミラーレスカメラ」と言っても過言では無い程、ライブビューAFのパフォーマンスが向上しています。2019年の最新ミラーレスと戦っても健闘出来るほど良く仕上がっており、連写性能がEOS M6 Mark IIと同じ10コマ秒以上だったら言うことはありませんでした。ただし、ライブビューAFのパフォーマンスを最大限に活かすのであれば「ナノUSM」「STM」フォーカス駆動のレンズをチョイスしたいところ。
ここまでライブビュー性能が強化されると光学ファインダーのおまけ感が強くなってしまいます。確かにEOS iTR AFで強化されていますが、ライブビューの顔・瞳検出がかなり良くなっているので大半はライブビューで事足りるはず。
敢えて言えばファインダー時の連写性能が10コマ秒なので、コマ数を稼ぎたいはファインダー撮影がおススメ。連写時の視認性もファインダーのほうがまだ良好と言えるでしょう。
ローリングシャッター
動画編
4K・FHDどちらも水平フル画角で利用でき、同程度のローリングシャッターによる影響を受けるようです。
EOS 90DとEOS RのFHD 60pが同等に見えてしまうのは、EOS 90Dが遅いと言うよりはEOS RのFHD 60pが割と優秀と言ったほうが良いかもしれません。今回は参考動画を用意していないものの、EOS Rの4KやFHDクロップ時はローリングシャッターの影響が大きくなります。
静止画編
APS-Cセンサーとしてはなかなか良好なパフォーマンスだと思います。もちろん、完璧からは程遠いですが、高速移動する物体を高速シャッターで撮影するような使い方以外なら普通に使えそう。
手持ちの機材で撮り比べている限りでは、マイクロフォーサーズのLUMIX G9 PROに近い印象。当然、EOS Rのようなフルサイズセンサーより優秀です。3250万画素センサーでのこのパフォーマンスなら個人的には及第点を超えていると思います。
残念なことに、ローリングシャッターのパフォーマンスはまずまず良好ですが電子シャッターの連写撮影には非対応。シングルショットのみとなるのであまり活かせるシーンは無さそうです。とは言え、シャッター音を極力抑えたい動物園や静かなシーンでの撮影にはある程度使えるかも。ライブビュー時はフリッカーに対応していないため、屋内人工灯下の撮影では注意が必要。
シャッター音
それではまいります。
う?ん、気持ち良し。
EOS 80Dと比べて少しキレが増している気がする(個人の印象です)。
EOS 90Dの解像性能テスト
2019年秋に登場したキヤノン製一眼レフカメラ「EOS 90D」は新開発の3250万画素APS-Cセンサーを搭載しています。これは同じAPS-Cフォーマットセンサーの中では最も高い解像性能となっています。他社を含めて1世代前まで2400万画素が主流であり、中には2000万画素のカメラがあったことを考えると3250万画素がとても高解像なセンサーであると言えるでしょう。
その一方、1画素あたりの占有面積が狭くなり、フルサイズで言うところの7600万画素くらいの密度となっています(キヤノンAPS-Cは他社と比べて少しセンサーが小さいのでもう少し高密度かも…)。その結果、ISO感度ノイズや回折の影響などで不利となることが予想できます。今回はそのような影響がどのように現れるか検証してみたいと思います。
単焦点で90Dの真価を発揮する
「恐らく純正EF-Sレンズの中では最も高解像で高画素センサーと相性の良いレンズ」と考えEOS 90Dと同時に調達したのが「EF-S35mm F2.8 マクロ STM」。国内外のレビューでも評価が高いレンズだったので、EOS 90Dを買ったら使おうと思っていました。近距離解像チャートとの相性が良いマクロレンズと言うこともあり、今回の検証には最適な一本と言えるでしょう。いつもの解像力チャートを使ってテストした結果が以下の通り。滅茶苦茶解像するレンズであることが判明しました。
このナイスなレンズについては後日じっくりとレビューしましょう(今回の主なテーマはEOS 90Dのセンサーについてなので)。
テスト結果を確認すると「センサーの性能を十分に活かせる解像性能を持つレンズ」であることが分かります。今回のテスト結果は同じ3000万画素センサーのフルサイズミラーレス「EOS R」と「RF35mm F1.8 IS マクロ STM」を組み合わせた際の解像性能とほぼ一致しており、特にF2.8~F4の絞り値ではこの組み合わせを上回る解像性能を発揮しています。
ご覧のように、中央解像はEOS Rよりも良好で、周辺解像性能も非常に良好でEOS R以上の結果を出しています。レンズ次第では3250万画素の解像性能はが伊達じゃない事が分かりました。
ただし絞った際は回折による画質への影響が顕著に表れ、特にF11以降は目に見えて解像性能が低下しEOS Rに逆転されてしまいます。マクロレンズは被写界深度を深くするため絞るシーンが多いものの、F8以上に絞る時は注意が必要です。
今回使用したチャートテストの結果を実際のイメージで比較してみましょう。
(今回はレンズの解像性能比較では無いため、RF35mm F1.8の絞り開放は割愛しています。)
やはりF8以降で影響が出始め、F16?F22で顕著となっています。EOS Rとの差は1段程度と言ったところでしょうか?APS-Cとフルサイズセンサーの関係を考えると1段差はやむなし、むしろそれ以上の差は無いと言えるかもしれません。
回折を避けて被写界深度を深くしたいときはF5.6~F8に抑えてフォーカスブラケットで深度合成を利用するのも一つの手。
キットレンズは90Dの解像性能に耐えうるのか?
単焦点レンズが高性能であるのは当然として、EOS 90Dのキットレンズである「EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USM」はEOS 90Dの解像性能に耐えうるレンズなのか?と言うことで該当レンズを調達してテストを実施しました。中古レンズなので個体差があるかもしれませんが、実写で特に目立った問題は見当たらなかった個体です。
単焦点と比べると見劣りするものの、個人的には悪く無い結果かなと思います。中央は絞り開放からそこそこ良好な解像性能を発揮しており、四隅はやや甘いもののF5.6~F8では良好なパフォーマンスを発揮しています。数値で言えば「2500本」を超えたあたりから良像と言える画質なので、十分実用的なレンズキットと言えるでしょう。
EOS RのF4Lズームレンズと見比べてみると…。
思っていたよりもかなり良いという印象。ただし、これは近接解像テストの結果なので遠景ではF4Lがもう少し良くなる可能性あり。トップスピードは敵わないものの、F5.6~F11の絞り値では満足のいく画質のように感じます。やはりF16~F22における回折の影響は大きいので注意する必要あり。
注意:このキットレンズは広角側の四隅がそもそも甘い(2000?2400万画素でも甘く感じるレベル)なので18?23mmあたりを使うと上記のような印象を受けないかもしれません。
ISO感度ノイズの影響
今度はF値をスウィートスポットに設定し、ISO感度別の解像力を測定。測定に用いる領域はパフォーマンスの安定した中央領域をチョイス。縦軸は機種によって若干ムラがあるので横軸方向への推移に注目してください。
(RAWをLightroom CCを使いシャープネス0・カラーノイズ初期設定・ノイズ低減オフで現像)
EOS 90Dがベストのパフォーマンスを維持しているのはISO100?400付近。ISO800から徐々にノイズの影響を受け始め、ISO3200でワンランク画質が低下し、ISO12800以降は避けたほうが良い画質となっています。(ISO 25600はどう頑張っても測定不能だったので「0」表記しています)
その反面、EOS RはISO100からISO3200まで良好な解像性能を維持。ISO6400においても顕著なディテール損失は無く、ISO12800~ISO25600でも実用的なパフォーマンスを発揮しています。
EOS 90Dの3250万画素のパフォーマンスを活かすのであれば、ISO1600程度までに抑えると良いでしょう。それ以降は徐々に画質が低下するため、出来るのであれば三脚や大口径レンズの使用でISO感度を維持するのがおススメ。
今回は「ISO感度が解像性能に及ぼす影響」のみを数値化しています。色再現性も重要なポイントだと思うので、別の機会でチェックしてみる予定。
雑感:低感度番長・レンズ次第でハイパフォーマンス
…と言うのは言い過ぎかもしれませんが(高感度もAPS-Cとして良好な部類なので)、最も高いパフォーマンスを期待するならISO400程度までに抑えると良い感じ。「出来ることならISO400、次のラインがISO1600、許容範囲はISO6400」と言った具合に抑えたいところ。低感度に抑えることが出来れば、”レンズ次第で”フルサイズEOS RやEOS 5D Mark IVを上回る解像性能を得られるのは間違い無さそうです。
問題はそのレンズ。
特にキヤノンEF-S専用レンズは純正・社外製ともに新製品・リニューアルの製品投入が少なく、光学設計の古いモデルが多いです。古いレンズでも単焦点レンズならば3250万画素に耐用出来るかもしれませんが、ズームレンズはかなり厳しいかも。シグマ「18-35mm F1.8 DC HSM」「50-100mm F1.8 DC HSM」あたりは良いかもしれませんが、大きく重く、ちょっぴり高価なレンズなので悩ましい。特に四隅までシャープな画質を得たいと思ったら、イメージサークルが大きく画質に余裕のあるフルサイズ用を使うのも一つの手。
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