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ソニー FE 50mm F1.4 GM レンズレビュー 完全版

このページではソニー「FE 50mm F1.4 GM」のレビューを掲載しています。

FE 50mm F1.4 GMのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 このクラスとしては高め
サイズ とても小さい
重量 とても軽い
操作性 非常に機能的
AF性能 高速かつ静かで滑らか
解像性能 全体的にとても良好
ボケ 広い範囲で滑らかな描写
色収差 とても良好な補正状態
歪曲収差 僅かな糸巻き型
コマ収差・非点収差 とても良好な補正状態
周辺減光 このクラスとしては穏やか
逆光耐性 悪くはないが平凡
満足度 高価だがベストな選択肢

評価:

最上級の50mm F1.4

50mm F1.4としては小型軽量ながら、非常に高性能。逆光耐性を除けばこれといった欠点は見当たらず、優れた解像性能と滑らかなボケが得られます。AFは静かで高速、目立つブリージングはカメラ側の補正に対応しています。50mm F1.4としては最も高価な選択肢ですが、ベストを尽くすのであれば価値のある一本と言えるでしょう。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 長い撮影距離でも滑らかなボケ
子供・動物 高速AFと高速連写が役に立つ
風景 F1.4から周辺部まで良好な解像性能
星景・夜景 良好な点像再現性
旅行 画角は狭いものの携帯性が良好
マクロ 撮影倍率が低い
建築物 歪曲収差が穏やか

まえがき

2023年4月発売のソニーEマウント用標準大口径レンズ。F1.4 GMレンズとしては85mm・24mm・35mmに次いで4本目。標準大口径レンズは2021年に「FE 50mm F1.2 GM」が登場していることから、F1.4 GMの登場は無いだろうと予想していた人が多いはず。しかし、ソニーは大方の予想に反して短期間のうちに2本目の大口径標準レンズを投入。比較して小型軽量、安価な選択肢となっているので、F1.2 GMに食指が伸びなかった人にとって面白い選択肢となるかもしれません。

概要
レンズの仕様
発売日 2023年4月21日 初値 186,120円
マウント E 最短撮影距離 0.41m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 0.16倍
焦点距離 50mm フィルター径 67mm
レンズ構成 11群14枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.4 テレコン -
最小絞り F16 コーティング NanoAR II
絞り羽根 11枚
サイズ・重量など
サイズ φ80.6×96mm 防塵防滴 対応
重量 516g AF XDリニア
その他 絞りリング・AFL×2
付属品
レンズフード・レンズケース・キャップ

特筆すべきはレンズサイズ。F1.2 GMはもとより、F1.4 ZAと比べても小型軽量なレンズに仕上がっています。携帯性の良いα7シリーズと相性が良さそうなレンズですね。小型化しているにも関わらず、AFLボタンを2か所に搭載し、絞りリングはAポジションのロックやデクリック機能に対応。さらにAFはXDリニアモーターによる高速化を実現。小型軽量化と同時に高機能・高性能なレンズに仕上がっています。

価格のチェック

売り出し価格は18.6万円。F1.4 GMとしては予想の範囲内で、高くも安くもない印象。少し前であれば競合レンズも少なく、必要であれば選ばざるを得なかったかもしれません。しかし、現在はより低価格でバランスの良いシグマ「50mm F1.4 DG DN」や、ソニーよりも携帯性の良いサムヤン「AF 50mm F1.4 II FE」など選択肢が増えています。それにも関わらず、敢えて高価なソニーを選ぶとしたらどのようなポイントになるのか?今後のレビューでチェックしていきたいと思います。

FE 50mm F1.4 GM
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

ソニーらしい黒とインターナショナルオレンジを使用した従来通りのデザイン。レンズの焦点距離やF値を分かりやすく表示し、G Masterのロゴも確認することができます。

レンズ本体は緩衝材のかわりに付属のキャリングケースに収納。レンズフードやケース用のストラップもこの中に入っています。

レンズ本体のほか、フード、キャリングケース、ストラップ、説明書、保証書が付属。この価格帯のレンズにしっかりとしたケースが付属するのはソニーとシグマくらい。G Masterらしい高級感のある付属品だと思います。

外観

外装は全体的にプラスチック製で、質感が異なるのはゴム製フォーカスリングのみ。G Masterらしい実用性を重視したデザインで、金属外装を採用したZAシリーズと比べると質感は劣ります。とは言え、堅牢さに不安はなく、しっかりとした作り。

G Masterのバッヂとレンズロゴは凹凸のあるしっかりとした加工。他の表示は全て加工なしのプリントです。シリアルナンバーがシールではないので脱落する可能性は低い。製造国は中国。

ハンズオン

全長96mm、重量516g。最新設計の50mm F1.4としては小型軽量で、これ以上の携帯性を実現しているのはサムヤン「AF 50mm F1.4 II FE」のみ。しっかりとした防塵防滴、豊富なコントロールなどを考慮すると、驚くほどコンパクトにまとまっています。

前玉・後玉

レンズ前面はフッ素コーティングに対応。水滴や油汚れに強く、メンテナンスが容易。物理的なダメージが想定される場合は保護フィルターを装着すべきですが、水滴程度であれば装着する必要性は低そう。フィルター径は50mm F1.4としてはコンパクトな67mmを採用。このフィルター径に対応するレンズは数多く、C-PL・NDなどを揃えると使いやすくなりそう。

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金属製レンズマウントは4本のビスで固定。周囲は防塵防滴用のシーリングあり。カメラへの装着はきつ過ぎず、緩すぎず。最後尾のレンズはマウント付近で固定されているように見えます。

フォーカスリング

ゴム製の滑らかに回転するフォーカスリングを搭載。ただし、抵抗感はほとんどなく、個人的には「ゆるゆる」と感じます。リニアレスポンスで再現性が良好。ピント全域のストロークは135-180度くらい。

絞りリング

マウント付近にはプラスチック製の絞りリングを搭載。フォーカスリングと異なり抵抗が強く誤操作の可能性は低い。回転には少し力が必要ですが、しっかりとグリップすることができるので回しづらいと感じることはありません。右側面にはクリック感を解除するスイッチあり。

スイッチ類

側面にはAF/MFスイッチと2か所のAFLボタンを搭載。操作性は従来通りで、特に問題はありません。

右側面には絞りリングのクリック・デクリックを設定できるスイッチと、絞りリングをAポジションで固定できるスイッチを搭載。絞りをカメラ側で操作したい場合はAポジションでロックしておくと良いでしょう。

レンズフード

プラスチック製の円筒型レンズフードが付属。先端には滑り止め用のゴムコーティングが施され、内面には反射防止用のマットブラックで塗装されています。逆さ付けに対応していますが、この際はフォーカスリングにアクセスすることができません。

レンズ本体に装着すると自動的に固定され、外す場合は側面のリリースボタンを操作する必要あり。

装着例

α7R IVに装着。50mm F1.4としてはコンパクトで、過度なフロントヘビーとならずバランス良好。片手での操作もなんとか可能。レンズフードを装着すると全長が伸びてしまいますが、収納時は逆さ付けにすることで問題なし。

AF・MF

フォーカススピード

2基のXDリニアモーターでフォーカスレンズを駆動。大口径レンズながら接写から無限遠まで快適なフォーカス速度を実現しています。パフォーマンスはAF-S・AF-Cで一定。積層型CMOSセンサー搭載モデルの高速連写にも対応。全く問題ありませんが、ライバルのシグマ「50mm F1.4 DG DN」は同じくリニアモーター駆動でより高速なフォーカス速度を実現しています。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

ご覧のように、最短撮影距離と無限遠で画角が大きく変化します。動画撮影で気になる場合は「ブリージング補正」に対応しているカメラで電子的に補正する必要あり。静止画では補正する手段がなく、特に周辺部を使ったAF時は注意が必要です。

精度

α7R IVとの組み合わせでAF精度に問題なし。低照度・低コントラストでも快適なピント合わせが可能でした。

MF

前述したように、フォーカスリングが緩すぎると感じるものの、ストロークが長いのでピントの微調整にも問題なく使うことが出来ました。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:α7R V
  • 交換レンズ:FE 50mm F1.4 GM
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズプロファイルオフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

F1.4から非常に良好な解像性能が得られるレンズです。驚くべきは接写時も中央からフレーム端まで一貫性した解像性能が得られる点であり、これは競合他社のシグマやサムヤンと明らかな差が発生するポイント。ピント距離に関わらず、一貫した結果が必要となる使い方には最適な一本と言えるでしょう。同シリーズの「FE 35mm F1.4 GM」と比べた場合、絞り開放のパフォーマンスや周辺部の解像性能で見劣りします。

中央

F1.4から良好な結果が得られますが、絞り開放のみパフォーマンスが少し低下。F2以降は非常に良好となり、4800本まで測定可能なチャートテストの上限に達しています。F8までチャート上限に達し、F11-F16は回折の影響で低下。それでも絞り開放付近に近い結果を得ることができます。絞り値全域で優れた性能と言えるでしょう。

周辺

絞り開放から中央に近い結果を得ることができますが、絞っても画質に大きな変化はありません。

四隅

F1.4から優れた結果を得ることができます。興味深いことに、F2.0-4.0あたりでパフォーマンスの低下を確認。フォーカスシフトの影響を考慮して再テストしましたが、影響を受けるのは隅の結果のみ。謎。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 3802 4142 3852
F2.0 4819 4298 3517
F2.8 4956 4457 3289
F4.0 4908 4563 3282
F5.6 4908 4616 3894
F8.0 4929 4563 4082
F11 4418 4404 3903
F16 3881 3521 3332

実写確認

他のレンズとの比較

F1.4の中央こそシグマが良好ですが、周辺部や隅の結果はシグマやサムヤンと比べて圧倒的に良好。ただし、絞ると隅までぐんぐん伸びるシグマはF4~F5.6付近で巻き返します。サムヤンは絞っても隅の性能がかなり厳しい。同シリーズのFE 35mm F1.4 GMは絞り開放から驚きべき性能で、比較すると50mm GMはF1.4がやや軟調で、主に細部のコントラストに差があるように見えます。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2023年4月21日
  • カメラ:α7R V
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 ・ 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Camera RAWで現像
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズ補正オフ
    ・レンズ補正オフ

テスト結果

絞り開放のF1.4から、隅から隅まで優れた解像性能を発揮。F2.8くらいまで絞るとさらに切れ味が増すものの、6100万画素のα7R Vでも違いは微々たるもの(それだけF1.4から優れている)。以降はF8くらいまで同じパフォーマンスが続き、F11以降は回折の影響で低下します。

中央

F1.4から優れた解像性能を発揮していますが、よく見るとF1.4からF2.8にかけて絞りによるコントラストの改善が見られます。右側の白い屋根の部分を見ると分かるように、残存する軸上色収差の影響と予想。特に問題視するような要素ではなく、無視してもOK。ベストを尽くすのであればF2.8-8あたりの使用がおススメ。

周辺

周辺部でも解像性能の低下はほとんどなし。やはり軸上色収差の影響がごく僅かに残っているため、ベストを尽くすのであればF2.8くらいまで絞るのがおススメ。

四隅

フレーム隅を大きくクロップしても良好な解像性能を維持していることが分かります。とはいえ、中央や周辺部と比べるとコントラストが低く、細部が若干ぼやけています。細部までディテールにこだわるのであれば、少なくともF2.8~F4まで絞ったほうが良いでしょう。とは言え、これはあくまでも6100万画素のイメージセンサーモデルを使用した場合です。2400万画素や3300万画素のイメージセンサーであれば、中央との画質差はほとんど気にならないはず。

遠景解像 シグマとの比較

テスト環境

  • 撮影日:2023年4月21日
  • カメラ:α7R V
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 100 ・ 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Camera RAWで現像
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズ補正オフ
    ・レンズ補正オフ

中央

リサイズ前のオリジナルデータはFlickrにて公開

ほぼ互角。6100万画素のα7R IVで大きくクロップした画像を見比べても大きな差は無いように見えます。違いがあるとすれば細部のコントラストで、この点でソニーGMが僅かに有利。F4以降にこれと言った違いは見当たりませんが、F16付近の回折による画質低下はシグマのほうが顕著。

周辺部

リサイズ前のオリジナルデータはFlickrにて公開

開放から細部までシャープなソニーGMと比べるとシグマArtは若干ソフト。この差はF2で縮まり、F2.8からF4で互角となる。

リサイズ前のオリジナルデータはFlickrにて公開

F1.4からほぼ互角。どちらも50mm単焦点レンズのフレーム隅としては非常に良好な結果が得られます。よく見るとシグマのほうが色収差が少なめに見えます。どちらも絞ると僅かな画質向上が見られ、じっくり見比べるとシグマのほうが僅かに良好。ただし、回折による影響はシグマのほうが強め。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

フレーム端までとても良好に補正されています。もしも実写で目立つ色づきが発生しているのであれば、倍率色収差ではなく軸上色収差を疑ったほうが良いでしょう。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

良好な補正状態ですが、ピント面前後にわずかな色づきが発生しています。これが問題と感じるシーンはそう多くないものの、微ボケ領域が広がる中距離や遠距離でのF1.4で目に付く場合はあるかもしれません。F2-2.8まで絞ると解消します。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

近距離は後ボケが滲みを伴う柔らかい描写であるのに対し、後ボケは少し硬めで縁取りのある描写。接写で前ボケが重要となるシーンは少ないと思うので、後ボケよりの良好なボケ質はバランスが良いと言えるでしょう。軸上色収差の補正状態が完璧とは言えず、場合によってはボケに色づきが発生する可能性あり。ただし、柔らかい後ボケは色づきも滲むため目立ちにくくなっています。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

小型軽量なF1.4の標準大口径レンズらしく、隅に向かって口径食の影響を受けています。目立つ口径食ですが、このクラスとしては一般的。F2.8まで絞ると口径食の大部分は改善します。ボケの縁取りはわずかで、内側は滑らかな描写。非球面レンズを複数使用していますが、玉ねぎボケはまったく目立ちません。

ボケ実写

接写

ボケが非常に大きく、被写体は背景から完全に分離しています。ピント面の直後は滲みを伴う柔らかい描写となり、全体的に見栄えの良いボケ質。絞ると球面収差が収束してコントラストが向上、ピント面の切れ味が増加します。ただし、背景のコントラストも向上するので、状況によっては少し騒がしくなります。

近距離

撮影距離が少し長い場合も柔らかい後ボケを得ることができます。絞るとコントラストが上昇、縁取りも少し強くなります。後ボケの柔らかい質感は絞り開放のF1.4がベスト。ただし、絞っても極端にボケ質が荒れることはなく、絞り値全域で使いやすいボケと言えそうです。

中距離

ボケは小さくなるものの、基本的には絞り開放で滑らかなボケを得ることができます。フレーム隅に向かって描写の破綻もなく、使い勝手のよい50mm F1.4と感じます。

中距離2

滑らかな描写が続きますが、接写時と比べるとボケが小さく、コントラストがやや強め。滲みを伴うエッジが立ちにくいボケではないので、極上のボケ質とは言えません。と言っても、軸上色収差・倍率色収差による色づきが目立たず、フレーム周辺部のコマ収差や非点収差による描写の悪さは無し。

撮影距離ごと

全高170cmの三脚を人物に見立ててF1.4の絞り開放で撮影した写真が以下の通り。

フレームに全身を入れても背景から分離する程度にはボケが大きい。この際のボケ質は「柔らかい」と表現するほど滑らかな描写ではないものの、弱点と感じるような収差の影響は見られず、使い勝手が良さそう。被写体に近づくと徐々にボケ質が向上。

シグマとの比較

シグマ「50mm F1.4 DG DN」と比較すると、ほぼ同じ結果が得られます。ただし、よく見るとソニーのほうがボケの縁取りが弱く、比較的滑らかな描写。個人的にはソニーG Masterのほうが好みですが、価格差を正当化できるほどの差ではありません。

球面収差

全体的に見ると良好な補正状態です。じっくり確認すると、前後のボケ質にわずかな違いが発生していることに気が付きます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

補正無しの場合はわずかな糸巻き型歪曲が発生。競合するシグマ DG DNと比べると良好な補正状態です。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

絞り開放付近は隅に向かって目立つ減光が発生。ただし、小型軽量な50mm F1.4として特に減光が強いとは言えません。シグマDG DNのほうがやや目立つくらい。

無限遠

最短撮影距離と比べると減光が僅かに強くなるものの、極端な変化はありません。ただし、絞っても隅にしつこい減光が残存します。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

コマ収差

絞り開放でも点光源の変化はほとんどありません。シグマDG DNよりも良好な補正状態です。

逆光耐性・光条

中央

強い光源をフレーム中央付近に配置すると、やや目立つゴーストが発生します。開放付近で目に付くゴーストは絞ることで収束するものの、一方で隠れていたゴーストが顕在化。絞り全域で逆光の影響が目立ちます。このカテゴリはシグマ DG DNのほうが優れています。

フレーム中央と比べると遥かに良好な結果が期待できます。絞るとゴーストが少し強くなるものの、基本的には問題ありません。

光条

F5.6あたりから光条が発生し始めます。F8~F11でシャープとなり、ピークはF16の最小絞り。回折とのバランスを考慮するとF10前後がおススメ。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 頑丈なレンズケース付属
  • 防塵防滴
  • 小型軽量
  • 機能的な絞りリング
  • XDリニアモーターによる高速AF
  • ブリージング補正に対応
  • 近接時に周辺解像性能
  • ピントに関わらず良好な中央解像性能
  • 倍率色収差の補正状態
  • 軸上色収差の補正状態
  • 滑らかな後ボケ
  • 滑らかな玉ボケ
  • 穏やかな歪曲収差
  • 適度な周辺減光
  • 良好なコマ収差補正
  • 綺麗な光条

50mm F1.4としては小型軽量ながら、全体的に高性能なレンズに仕上がっています。ピント全域で大部分がシャープな結果を得ることができ、中距離でも滑らかな後ボケや後処理不要と感じるほどの色収差補正を実現しています。XDリニアモーターによる高速AFや豊富なコントロールなど、ビルドクオリティも非常に良好。

解像性能もさることながら、ピント距離を選ばない滑らかなボケは必見。撮影距離が長い場合でもピント後方が騒がしい描写とはならず、自然で滑らかな後ボケを得ることができます。軸上色収差による顕著な色づきもなし。シグマ 50mm F1.4 DG DNも良好ですが、ベストを尽くすのであればG Masterがおススメ。

小型軽量ですが、周辺減光もよく抑えられています。F1.4から問題がないとは言いませんが、過度な減光ではないので味付け程度に利用することも可能。

悪かったところ

ココに注意

  • 50mm F1.4としては高価な選択肢
  • ZAシリーズほどの質感ではない
  • やや緩めのフォーカスリング
  • フォーカスブリージングが目立つ
  • 平凡な逆光耐性

光学的に最も目立つ弱点は逆光耐性。強めの光源をフレーム内に配置すると目立つゴーストが発生する可能性があります。とは言え、決して酷評するほど悪いのではなく、あくまでも「シグマよりは悪かった」という話。抜群に良いわけではありませんが、極端に悪くもありません。

接写時は周辺部や隅の解像性能が僅かに低下するものの、シグマやサムヤンと比べると性能低下は穏やか。

総合評価

満足度は99点。50mm F1.4で妥協しない選択肢としては要検討の一本。高性能ながら小型軽量で、普段使いもやぶさかではない携帯性は間違いなく強みとなるでしょう。価格がネックとなりますが、F1.4 GMシリーズとして極端に高価なわけでもなし。

悩ましいのはシグマ 50mm F1.4 DG DNの存在。ソニーと比べると大きく重いものの、GMに近い光学性能をより手ごろな価格で入手することが出来ます。AF速度や逆光耐性に関してはより良好。ただし、ソニー純正レンズと異なり、α1やα9などの高速連写に非対応で、フォーカスブリージング補正も利用することができません。

購入早見表

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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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