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M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO レンズレビュー 完全版

このページではOMデジタル「M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO」のレビューを掲載しています。

90mm F3.5 Macro IS PROのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 安くはない
サイズ フルサイズの90mm F2.8と同程度
重量 望遠2倍マクロとしては軽量
操作性 機能的だがMFリングのストロークが短い
AF性能 2倍マクロとしては高速
解像性能 一貫性があるもののピークはそこまで高くない
ボケ 中距離以降の後ボケが騒がしい
色収差 状況によって軸上色収差が目に付く
歪曲収差 良好な補正状態
コマ収差・非点収差 良好な補正状態
周辺減光 ほぼ問題なし
逆光耐性 望遠マクロとしては良好
満足度 世にも貴重な望遠2倍マクロ

評価:

世にも珍しい望遠2倍マクロのAFレンズ

2倍の撮影倍率に対応した高性能な望遠マクロレンズ。光学性能だけで言えば60mm F2.8 Macroも遜色ないものの、防塵防滴、テレコン、操作性、手振れ補正など、豊富な機能は流石のPROレンズ。換算180mmのワーキングディスタンスが必要な最新の望遠マクロを探しているのであれば唯一の選択肢。2倍マクロや望遠マクロが必要なければ無用の長物となる可能性あり。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 焦点距離が長すぎ、後ボケが騒がしい
子供・動物 同上
風景 均質性が高いもののピークは高くない
星景・夜景 逆光耐性・収差は悪くないが焦点距離とF値に注意
旅行 換算180mm一本で旅行はおススメしません
マクロ 唯一無二の望遠2倍マクロ(テレコン対応)
建築物 均質性が高く、歪曲が小さい

まえがき

オリンパス時代からレンズロードマップに記載されていた「望遠マクロ」がついに登場しました。2023年2月に正式リリースされ、「オリンパス」の映像事業が「OMデジタル」に移ってからリリースされた5本目のレンズとなります。マイクロフォーサーズ用のマクロレンズとしては焦点距離が最も長く、最近では他社のフォーマットでも見無くなった換算180mmの望遠域をカバーするマクロレンズです。

概要
レンズの仕様
発売日 2023年2月24日 初値 166,320円
マウント MFT 最短撮影距離 0.224m
フォーマット 4/3 最大撮影倍率 2.0倍
焦点距離 90mm フィルター径 62mm
レンズ構成 13群18枚 手ぶれ補正 搭載
開放絞り F2.8 テレコン 対応
最小絞り F22 コーティング Zero
絞り羽根 7枚
サイズ・重量など
サイズ φ69.8×136mm 防塵防滴 対応
重量 453g AF STM
その他 S Macro・AFリミッター・L-Fn
付属品
レンズフード

2倍の撮影倍率までAFに対応しており、35mm判換算で4倍となるクローズアップ性能を備えています。これまで他社を含めて多くのAFマクロレンズが1.0倍、それ以上でも1.4倍止まりだったことを考慮すると、驚くべき撮影倍率と言えるでしょう。ただし、AFリミッターによる制限があり、通常は等倍(換算2倍)まで。「S-MACRO」モードに切り替えることで、2倍(換算4倍)まで利用可能。

一般的なマクロレンズと同じく、接写時は実効F値はかなり暗くなるので注意が必要です。0.5倍(換算1倍)では通常でF4、S-MACROモード時はF5.6が絞り開放となります。1.0倍ではF4.5/F6.3、2.0倍ではF8まで実効F値が上昇します。シャッタースピードを維持するのが難しくなるので、マクロフラッシュやマクロライトを用意しておいたほうが良いでしょう。

テレコンバージョンレンズに対応していることも魅力の一つ。開放F値や実効F値の上昇は理解する必要があるものの、焦点距離や撮影倍率を拡張することができ、クローズアップ性能を高めることが出来ます。ミラーレス用マクロレンズでテレコンバージョンレンズに対応している製品は珍しい。

PROシリーズのレンズらしく、鏡筒は防塵防滴仕様で、IP53の規格に準拠しています。レンズ交換式カメラシステムでIP53に対応と明言しているのはOMデジタル製品のみ。

価格のチェック

売り出し価格は安いところで166,320円。マイクロフォーサーズ用のマクロレンズとしては非常に高価ですが、今のところミラーレス用の「望遠マクロ」を探すと本レンズ一択となります。フルサイズ用の100mm F2.8 マクロのほうが安かったりしますが、その多くは等倍までで、4/3センサーサイズのクロップに耐えることができる製品は少ないはず。

同システムの「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」は4-5万円台で入手することができ、大部分のマクロユーザーは60mm F2.8で事足りると思います。ただし、ワーキングディスタンスやより高い撮影倍率、高度な防塵防滴が必要な場合は90mm F3.5を選ぶしかありません。

M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

従来の黒を基調としたデザインではなく、非常にシンプルで味気のないデザインに切り替わっています。これがコストダウンなのか、環境対策を意識したデザインであるのかは不明。このような取り組みを理解できるものの、10万円以上の商品に対する購入体験としては少し残念な印象を受けます。箱に対してプリントが少し傾いて見えるのは気のせいでしょうか?(画像で箱が少し傾いているのは別にして)

レンズ本体のほかに、レンズフード、前後のキャップ、ソフトケース、説明書、保証書が付属します。従来のPROレンズと同じで、特に大きな変化はありません。

外観

パッと見た外観はPROシリーズらしいものですが、従来のPROシリーズと比べて外装にプラスチックパーツを多用しています。軽量化やバランスを重視するうえでプラスチックの採用は理にかなっています。しかし、手に取った際の質感は従来の金属外装と比べるとかなり劣るのは確か。

マウント付近や三脚リングを装着できる箇所は金属製パーツで堅牢な作り。頑丈であるうえ、マウント付近に金属パーツを採用することでフロントヘビーの重心を回避し、バランスの良さに一役買っているように見えます。レンズのロゴを含めて、外装の表示は刻印なしのプリント。製造国はベトナムと印字されています。

ハンズオン

全長136mmと細長いレンズですが、重量は453gと抑えられています。フルサイズ用の100mm F2.8 マクロレンズと比べると一回りコンパクトな印象を受けます。このサイズで2倍マクロに対応しているのだから凄い。

前玉・後玉

インナーフォーカス仕様のため、フォーカシングによるレンズの繰り出しはありません。固定された前玉にはフッ素コーティング処理が施されているので、水滴や油汚れが付着した際のメンテナンスは容易。とは言え、事前に汚れや傷が予想されるシーンではプロテクトフィルターを検討したほうが良いでしょう。フィルターサイズは62mmで、オリンパス・OMデジタルのレンズで互換性のある製品は多い。

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金属製のレンズマウントは4本のビスで固定されています。周囲は防塵防滴用のシーリングを配置。電子接点にはテレコンバージョンレンズ用と思われる追加の接点があり、後玉はテレコン装着用のスペースを確保するために奥へ隠れています。

フォーカスリング

従来のPROレンズなら金属製だったプラスチック製の(寒冷地で触ってみたら金属製の質感でした)幅広いフォーカスリングを搭載。滑らかに回転しますが、40-150mm F2.8 PROほどではなく、わずかなざらつきや若干の緩さを感じます。この状態でのMFは回転速度に応じたピント移動に対応しており、素早く回す場合は1回転、ゆっくり回す場合は3~4回転以上のストロークで操作可能。

フォーカスリングを手前にスライドすることで、強制的にMFへ切り替えることが可能。この際は内筒に表示しているピント距離表示に従いフォーカスレンズが駆動します。ストロークは他のPROレンズにおけるMFクラッチと同じ90度ほど。直感的で素早い操作に対応していますが、2倍マクロのストロークとしては短いです。特に無限遠側にしわ寄せが及び、遠側の微調整はかなり厳しい。フォーカスクラッチを動作させずに、通常MFモードで操作するのがおススメ。というか必須と感じます。それでも遠側のストロークはとても短いので操作時は注意が必要。

スイッチ類

側面にはフォーカスリミッターのスイッチ・ISのスイッチ、L-Fnボタンを搭載。全体的に水平よりも少し高い位置となっており、どのコントロールも左手で操作しやすくなっています。特にPROレンズとしてはL-Fnボタンが押しやすい。

フォーカスリミッターはフルレンジ「0.25m-∞(~1.0倍まで)」、近側「0.25m-0.5m(~1.0倍まで)」、S-MACRO「0.224m-0.33m(0.5-2.0倍)」に対応。マクロレンズとしては使いやすいレンジをカバーしていますが、一般的な撮影ではマクロ域を制限する遠側の設定が欲しかったです。ただし、この場合はカメラ側のフォーカスリミッター機能を利用することで代用可能。

三脚リング

公式に推奨されていませんが、マウント付近の金属パーツ部に三脚リング(40-150mm F2.8 PRO用)を装着可能。「偶然にも装着できる」わけではなく、三脚リングに適したサイズとデザインです。残念ながら、40-150mm F2.8のような脱落防止機能が無いので、リングを緩めすぎると脱落しやすい点に気を付ける必要があります。また、三脚リングは個別に販売していません(海外では購入可能)。

手持ちの三脚リングを90mm F3.5に装着。装着時はカチッと所定に位置にはまり、バランスは良好。ただし、リングの設置個所が40-150mm F2.8 PROよりもマウント側にあり、OM-1装着時に三脚座と干渉しないギリギリの配置となっています。E-M1Xなどグリップが大きなカメラやバッテリーグリップ装着時は干渉するかもしれません。

テレコンバージョンレンズ

既存のテレコンバージョンレンズ「MC-14」「MC-20」に対応。126mm F5.0・180mm F7.1として使うことが出来ます。最大撮影倍率はそれぞれ2.8倍・4.0倍で、他社のシステムでは実現できないようなマクロ撮影が可能。マクロでの実効F値が非常に大きくなるので、マクロフラッシュなど光量を増幅するツールが必要となります。

装着例

OM-1とGM1Sに装着。前述したようにレンズの重心が後ろ側にあるので、カメラ装着時もバランスは良好。GM1Sのようにコンパクトなカメラと組み合わせても良さそう。ただし、前述したように三脚リング・三脚座とグリップの干渉には注意が必要です。

AF・MF

フォーカススピード

ステッピングモーター駆動による2つのフォーカスレンズ群を使ったフローティング構造を採用。近接時の収差変動を効果的に抑えつつ、フォーカスレンズ群の小型化で高速で滑らかなAFを実現。このような構造のレンズはM.ZUIKOの中でも少なく、40-150mm F2.8 PROや60mm F2.8 Macroのみ。

OM-1と組み合わせてチェックしてみると、近距離から遠景まで非常に高速な合焦速度を実現しています。デュアルVCM駆動の40-150mm F2.8 PROほどではありませんが、一般的な撮影では非常に快適と言えるフォーカス速度です。

ただし、近側から遠側へピントを移動する場合、マクロ側に大きく振れてしまうことがあります。このような場合は復帰が遅く、瞬間的なシャッターチャンスに間に合わない可能性あり。個人的には、近側のフォーカス範囲を狭くする「遠側」のリミッターが欲しかったです。ただし、一部のOM-D・OMカメラにはフォーカスリミッター機能があるので代用可能。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・0.5倍(0.33m)・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

最短撮影距離はボケが大きいのでブリージングは目立ちませんが、0.5倍ほどの撮影距離から無限遠まででも目立つ画角の変化が発生します。マクロレンズとしては一般的なことであり、特に驚くべき内容ではありません。

精度

OM-1との組み合わせで良好な精度を維持しています。ただし、これはマクロ域や近距離での話。無限遠に近い遠景では微妙にピントが甘いと感じる場合があります。また、レンズの開放F値が暗く、低照度やテレコンバージョンレンズ装着時などは合焦に失敗する場合があり。

MF

前述したように、MFクラッチを動作させた状態はストロークが短いので微調整には不向き。素早く操作できますが、この場合はフォーカスリングの動きにフォーカスレンズが追い付いていない場合もあるので注意が必要です。微調整であればクラッチを利用せず、通常のMF操作がおススメ。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:OM-1 / LUMIX G9 PRO
  • 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 200 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

通常モード

マクロレンズらしく中央から隅まで非常に均質性の高い結果を得ることができます。少なくとも2000万画素の通常撮影では隅までほとんど画質差がありません。絞りによる改善はありませんが、F3.5からピークの性能がF8まで持続し、F11もいつ用的な結果を得ることが可能。F16以降は回折の影響で急速に低下するので、被写界深度が必要な場合を除いて避けたほうが良いでしょう。

ハイレゾモード

LightroomのRAW現像と相性の良いLUMIX G9 PROでテスト。中央は絞り開放から良好な性能を発揮し、F8まで安定した結果を得ることができます。周辺部と隅は中央と比べると数値が低いものの、2段絞ることで残存収差が収束し、画質の向上が可能。

ピークの性能は他のPROレンズ(ズーム・単焦点)と比べて大きな差はありません。PROマクロレンズに他のPROレンズを圧倒する切れ味を求めていた場合は少しがっかりする可能性あり。とは言え、フローティング構造による近接能力や2倍マクロ、テレコンバージョンレンズとの互換性など機能的なレンズに仕上がっている点を考慮する必要があります。

中央

LUMIX G9 PROの80MハイレゾモードのRAWをLightroomで現像した結果が下のとおり。

F3.5の絞り開放からF8まで一貫した解像性能を発揮。絞ることで細部のコントラストが僅かに改善しますが、等倍で見比べてみないと判断できない程度の差です。一部の超高解像レンズほどではありませんが、「普通に良好」と言えるレベル。

周辺

F3.5-F4では若干のソフトさが見られるものの、全体的には安定感のある結果が得られます。絞りを調整する余裕があるのなら、F5.6まで絞ると細部のコントラストが改善。中央に近いシャープな結果を得ることが可能。

四隅

フレーム隅でも画質の顕著な低下はありません。傾向は周辺部と全く同じで、F5.6まで絞ると中央に近い解像性能を得ることができます。ただし、通常モードでは見られなかった倍率色収差の影響が僅かに残っているように見えます。

数値確認

通常モード

中央 周辺部 四隅
F3.5 3131 2818 2838
F4.0 3168 3034 3115
F5.6 3141 3384 3168
F8.0 3141 3179 3115
F11 2899 2818 2683
F16 2251 2278 2304
F22 1781 1792 1873

ハイレゾモード

OM-1 中央 周辺部 四隅
F3.5 3704 3492 3209
F4.0 3512 3699 3438
F5.6 3908 3935 3803
F8.0 3722 3637 3632
G9 PRO 中央 周辺部 四隅
F3.5 4116 3573 3664
F4.0 4196 3774 3672
F5.6 4289 4248 4032
F8.0 4032 4088 3870

実写確認

ハイレゾショットのピークはF5.6付近ですが、通常の2000万画素であればF3.5から最小絞りまで、隅から隅まで一貫したパフォーマンスの結果を得ることができます。これぞマクロレンズ。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroとの比較

おそらく、マイクロフォーサーズユーザーの本格的なマクロレンズとして重宝されているであろう「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」のテスト結果と比較したのが以下の通り。60mmのテストはE-M1Xを使用していますが、同じ2000万画素センサーであり、OM-1のテスト結果と大きな違いはありません。

どちらも通常の撮影では均質性が高く、マクロレンズとしては優れた光学性能に仕上がっています。60mmの画角で問題なければ「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」のコストパフォーマンスは良好。ただし、ハイレゾモード使用時は周辺部の立ち上がりが遅く、隅に至っては絞っても大幅な改善は期待できません。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2023年2月27日:快晴・無風・陽炎の影響あり
  • カメラ:OM SYSTEM OM-1
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:ISO 200 絞り優先AE
  • RAW現像:
    ・Adobe Camera RAW
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズ補正 オフ
    ・レンズ補正 固定

テスト結果

絞り開放から、中央から隅まで画質差が目立たない一貫性のある性能です。大口径のPROレンズと比べると細部の切れ味は見劣りしますが、絞り値による画質の変動が少なく、被写界深度の調整に利用しやすい。F11までほぼ同じパフォーマンスで、F16-F22で回折の影響による低下が見られます。

中央

F3.5から良好な結果が得られますが、大口径レンズと比べると細部が若干ソフトでコントラストが低い。陽炎の影響を考慮して、他のスポットでも確認してみましたが、同程度の結果が得られています。絞りによる大幅な改善は見られず、回折の影響があるまで安定感のある結果を得ることが可能。

周辺

中央と似たような結果。絞り開放から良好な結果となり、絞りによる改善はほとんどありません。F8まで絞ると僅かに改善しているようにも見えますが、シャッタースピードやISO感度を犠牲にするほどでもないのかなと思います。

四隅

フレーム隅でも画質の極端な低下は見られませんが、細部がややソフト。絞ると僅かに改善し、画質のピークはF5.6-F8あたり。マクロ撮影でフレーム隅の画質を気にする必要はないと思いますが、風景撮影などで絞れる環境であればF5.6-F8まで絞ったほうが良い結果が得られます。と言っても、細部を拡大して違いが僅かにわかる程度であり、F3.5で撮影した写真を心配するほどではありません。

マクロ解像

  • OM SYSTEM OM-1
  • Leofoto LM-363C
  • Leofoto G4
  • LED照明 6灯
  • 絞り優先AE ISO 200固定
  • RAW Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズ補正オフ
  • クロップ位置でピント合わせ

1.0倍

中央は絞り開放からとても良好ですが、隅は非点収差のような甘さが見られます。細かいこと言わなければ十分に良好ですが、シャープな結果を得たい場合は少なくともF8、F11まで絞るのがおススメ。F22まで絞るとソフトな画質となりますが、F16くらいまではバランス良好。

やはりF11くらいまで絞ったほうがフレーム隅まで良好な結果が得られます。

2.0倍

1.0倍と同じくF11くらいまで絞ったほうが安定します。この際に顕著な画質の低下はありません。AF対応の2倍マクロレンズとしては優れた性能と言えそうです。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

中央・フレーム端それぞれにピントを合わせて撮影したところ、結果に大きな違いはありませんでした。像面湾曲は良好に補正されているようです。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

ゼロではないものの、良好な補正状態。これと言って問題はありません。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

遠側の微ボケで目につく場合もありますが、接写、近距離における軸上色収差は良好に補正されています。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

前後にボケ質の大きな違いはありませんが、わずかに後ボケの色収差による影響が目立つように見えます。実写でもボケが色づくと感じる機会があるので、これは少し残念なポイント。ボケの色づき以外では、縁取りが少し硬いことを除けば特に問題ないように見えます。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

非球面レンズを使用していないため、玉ボケの内側は滑らかで綺麗。ただし、ボケの縁取りが強めで極上の質感からは程遠い。中途半端なサイズのボケでは少し騒がしく見えるかもしれません。

また、開放F値がF3.5であるにも関わらず、口径食の影響が目立ちます。F5.6くらいまで絞るとほぼ解消し、この際は円形をよく維持しています。

ボケ実写

接写

玉ボケのアウトラインが少し気になる場合もありますが、焦点距離が長く、ボケも大きいので基本的に悪目立ちすることはありません。被写界深度の調整で多少絞っても良好な描写を維持。ただし、F11を超えた付近で背景が騒がしくなります。

近距離

やや硬めで口径食もありますが、ボケが大きく悪目立ちしません。色収差の影響も軽微。F5.6まで絞ると口径食の影響を回避できますが、コントラストの高い背景では騒がしさを少し感じます。

中距離

ボケがさらに小さくなる中距離では縁取りの硬さ、口径食、色収差の影響が目立ち始めます。悪くはありませんが、マクロレンズっぽさのある硬めの描写。絞っても描写に大きな変化はありませんが、被写体と背景の距離、絞り値(被写界深度)のバランス次第と言ったところ。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立て、F3.5の絞り開放で撮影した作例が以下の通りです。

フレームに全身を入れても背景から分離可能。ただし、この際の後ボケは縁取りが強く、場合によって色収差も発生するので、好ましい描写には見えません。膝上くらいまで近寄っても厳しく、上半身くらいまで近寄って許容範囲内と言ったところ。バストアップや顔のクローズアップまで近寄ったほうが良いかもしれません。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

目視では知覚できないくらいには良く補正されています、

球面収差

前後ともにアウトラインがやや目立つものの、質感に差はありません。良好な補正状態と言えるでしょう。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

絞り開放で僅かな減光が発生しているものの、ほぼ気にならないレベルに抑えられています。F5.6まで絞ると完全に解消。

無限遠

最短撮影距離と比べると周辺減光が少し強い。とは言え、大口径レンズと比べると全く問題のないレベルで、開放から実用的なパフォーマンス。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

望遠レンズらしく、隅まで良好な点像を維持しています。絞りによる大きな変化は無し。

逆光耐性・光条

中央

複雑な光学設計のレンズですが、逆光耐性は思っていたよりも良好。フレアを抑えてコントラストが高く、間面反射と思われるゴーストもほとんど目立ちません。絞ってもゴーストの顕著な増加は無く、かなり良好な結果。このような望遠レンズで光源をフレームに入れる機会は多くないと思われ、実写ではほぼ完璧な結果が得られるのではないかなと。

光源を周辺部や隅に移動させると僅かにゴーストの影響あり。影響は顕著ではなく、絞ることで改善します。

光条

明瞭な光条が得られるのはF16-F22。マイクロフォーサーズシステムでこれら絞り値は回折の影響が強く、解像性能に大きな影響を及ぼします。解像性能とのバランスを取りたい場合は、クロスフィルターなどを装着したほうが良いかもしれません。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 2倍(換算4倍)マクロまでAFに対応
  • テレコンバージョンレンズに対応
  • IP53対応の防塵防滴
  • フッ素コーティング
  • MFクラッチ構造
  • 非常に高速なAF
  • 隅まで一貫性の高い解像性能
  • マクロ撮影でも絞れば一貫性の高い解像性能
  • やや硬めだが滑らかな前後ボケ
  • 良好な歪曲収差の補正状態
  • 周辺減光の影響がほとんどない
  • 良好なコマ収差補正
  • 逆光耐性

珍しい2倍の撮影倍率に対応したマクロレンズであり、フルサイズ判換算で4倍となるクローズアップの撮影が可能。さらにワーキングディスタンスを稼ぎやすい換算180mmの望遠マクロであることを考慮すると、それだけで検討する価値のあるレンズと言えるでしょう。さらに、効果的なAFや手振れ補正を搭載。三脚リングやMFクラッチ、IP53の防塵防滴、テレコン対応など機能的なレンズに仕上がっています。

抜群の光学性能とは言えないものの、マクロレンズらしい一貫性のあるパフォーマンスを発揮。オールラウンダーと言うよりはマクロに特化した性能。マクロ撮影以外でも使いたい、ボケも重視したい、という場合は60mm F2.8 Macroがおススメ。

悪かったところ

ココに注意

  • マイクロフォーサーズ用レンズとしては高価
  • やたらシンプルな外箱
  • 三脚座は付属していない(公式で互換性を示していない)
  • 従来のPROレンズよりもプラスチッキー
  • MFクラッチ時のストロークが短い
  • 遠側固定のフォーカスリミッターがない
  • ハイレゾ時のピークがPROレンズとしては低め
  • 遠距離のボケが騒がしい

光学性能だけで言えば、60mm F2.8 Macroと比べて劇的な差は感じないと思います。他のPROレンズなどと比べてハイレゾショットを使った際の伸びしろは少ない。ボケはピント位置によっては60mm F2.8 Macroよりも騒がしいと感じる部分あり。40-150mm F2.8 PROと比べて中~遠景でのアドバンテージはほとんどありません。

オールラウンドな90mmと言うよりは、マクロ特化の90mmです。このレンズの特徴である2倍マクロやワーキングディスタンスの長い望遠マクロを活かせないとコストパフォーマンスが悪い

総合評価

満足度は90点。
兎にも角にも撮影倍率 2倍に対応したAF望遠マクロであることが魅力となるレンズ。1~2倍の接写時もしっかりと絞ることでフレーム周辺部まで安定した結果を得ることができます。OM-1のような最新のAFシステムを搭載したカメラと組み合わせることで、マクロ時でも手持ち撮影で十分な追従性を発揮するAF性能を備えています。画質低下は否めませんが、テレコンバージョンレンズ装着でさらに撮影倍率を高めることも可能。高い撮影倍率の望遠マクロが必要な人にとって唯一無二であり、このようなレンズが必要な人って期待に応えてくれる一本となるはず。

大部分の人(とりあえずマクロ撮影をしてみたい人)は手ごろな価格で小型軽量な「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」が最適。90mm F3.5は機能的にオーバースペックであり、十分に活かせない可能性あり。60mm F2.8も優れた解像性能を備え、ボケもなかなか綺麗なレンズです。AF性能や手振れ補正非搭載である点は見劣りしますが、それでも許容範囲内と言えるでしょう。もしもこのレンズのマクロで不足を感じたら、90mm F3.5に乗り換えるのが良いのかなと。

購入早見表

M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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