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RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM レンズレビュー 完全版

このページではキヤノン「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」のレビューを掲載しています。

RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 手ごろな価格設定
サイズ クラス最小
重量 クラス最軽量
操作性 必要最低限
AF性能 全体的に良好
解像性能 ズーム全域で良好
ボケ 倍率色収差の影響あり
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 補正必須
コマ収差・非点収差 まずまず良好
周辺減光 広角側で目立つ
逆光耐性 状況によって目立つ
満足度 コスパ良好な小型軽量ワイドズーム

評価:

手のひらサイズの広角ズームレンズ

手ごろな価格で手のひらサイズのコンパクトなズーム。光学性能は思いのほか良好で、歪曲収差などの自動補正を許容できるのであれば致命的な弱点はありません。防塵防滴などには対応していないものの、広角ズームのエントリーモデルとしては絶妙な価格設定で優れた光学性能のレンズ。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 背景をぼかせるレンズではない
子供・動物 沈胴構造で素早く展開するのが難しい
風景 優れた解像性能
星景・夜景 明るいレンズではない
旅行 携帯性は強みになる
マクロ 接写性能が良好
建築物 歪曲収差の処理が必須

RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STMのおさらい

2023年冬に発売されたキヤノンRF-Sシリーズ4本目となるレンズ。ズームレンジは「EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STM」と同じですが、全長は約30mmほど短く非常にコンパクトなレンズに仕上がっています。ただし、沈胴構造のため使用時は鏡筒を伸ばす必要があり、開放F値は望遠側が若干暗くなっている点に注意。注意点はあるものの、「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」と同じサイズで携帯性は魅力的と言えるでしょう。

  • 発売日:2023.12.8
  • 商品ページ
  • データベース
  • 管理人のFlickr
  • フォーマット:APS-C
  • マウント:キヤノンRF
  • 焦点距離:10-18mm
  • 絞り値:F4.5-6.3 ~ F32
  • 絞り羽根:7枚
  • レンズ構成:10群12枚
  • 最短撮影距離:AF時:0.14m (10mm~18mm時)、MF時:0.086m(10mm時)
  • 最大撮影倍率:AF時:0.23倍(18mm時) 、MF時:0.5倍(10mm時)
  • フィルター径:49mm
  • サイズ:約φ69mm×44.9mm(収納時)
  • 重量:約150g
  • 防塵防滴:-
  • AF:STM
  • 手ぶれ補正:搭載
  • その他機能:
    ・沈胴構造
    ・MF0.5倍マクロ

APS-Cミラーレス用のレンズは数あれど、その中でも最もコンパクトなレンズはRF-S10-18mm。サイズと重量以外は平凡なスペックですが、小型軽量なR50などと組み合わせると携帯性の高い広角システムとなりそうです。光学手振れ補正も搭載しているので、ボディ側に手振れ補正がなくとも動画撮影やスローシャッターを使いやすくなっています。

価格のチェック

小型軽量であると同時に、控えめな販売価格も魅力的。妥協点もいくつかあるものの、EOS Mシリーズが空いた穴を埋めるには十分な選択肢と言えるでしょう。

レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

従来通り、黒を基調としたRFレンズらしいデザイン。表面にはレンズの製品画像とロゴがプリントされています。中は段ボールで間仕切りされていますが緩衝材はありません。レンズ本体の他、前後のキャップと説明書・保証書が付属。レンズフードは付属していないため、必要であれば別途用意する必要があります。

レンズフード EW-53B
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外観

全体的にプラスチッキーで、キットレンズを彷彿とさせる質感です。極端に安っぽいわけでもありませんが、安っぽい印象は否定できません。実際(広角ズームとしては)安いので文句を言う筋合いもありませんが…。しかし、それでも5万円に近いレンズではありますので、せめてレンズマウントは金属製が良かったところ。

外装にはキヤノンのロゴや焦点距離などがプリントされています。目立たない色でシリアルナンバーの表示あり。フィルター装着時に写りこみにくいロゴとなっているのがGood。
フォーカスリングとズームリングはどちらもプラスチック製。表面の加工は異なっており、触覚で識別可能。フォーカスモードを切り替えるスイッチなどはありませんが、EOS R7やR10はカメラ側に切り替えスイッチを搭載しています。ズーム操作でプラスチック製の内筒が1cmほど伸びる。最も伸びるのは焦点距離が10mmの時で、ズーム中間域で短くなり、望遠端の18mmで再び少し長くなる。内筒を伸ばした際に顕著ながたつきはありません。

ハンズオン

全長44.9mm、重量150gは「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」とほぼ同じ。他社を含めて、APS-C用の広角ズームレンズの中では特にコンパクトで軽量なモデル。高級感はありませんが、携帯性が良く、カメラバッグの隙間にねじ込むことができる収納性は強み。

前玉・後玉

前面には広角ズームとは思えない小さな前玉を配置。周辺は49mm径のフィルターソケットを搭載。前面にはレンズ名などが記載されているものの、光の反射を抑えるためか白色プリントではなくエッチング加工が施されています。前玉にはフッ素コーティング処理がされておらず、比較して傷や汚れに強くありません。もしもダメージが予想されるシーンならば、フィルターを装着しておいたほうが良いでしょう。

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レンズマウントもプラスチック製。長期的な使用における耐久性が気になるところですが、今のところ問題なし。マウントは4本のビスで固定され、周囲に防塵防滴用のシールはありません。
マウント部にはレンズがマレーシア製造であることが分かる表示あり。レンズ後玉はマウント付近に固定されています。ズーム操作やフォーカシングで前後に動くことはありません。カメラのセンサー付近で空気の移動が少ないのはメリット。

フォーカスリング

細かいローレット加工が施された小さなプラスチック製フォーカスリングを搭載。回転は少し緩めですが滑らかに操作可能。

ズームリング

フォーカスリングと比べると幅が広いズームリングを搭載。沈胴構造となっているため、レンズ格納状態で撮影をすることは出来ません。使用時は10mmまでズームリングを操作する必要あり。沈胴構造にロック機能は無し。

レンズフード

プラスチック製の別売りレンズフードを入手。シンプルな作りで、特にこれと言った特徴はありません。フード内側の反射防止対策も最小限。逆さ付けにも対応していますが、フォーカスリングは完全に見えなくなり、ズームリングも操作し辛くなります。

ケラレ耐性

10mm F16の状態でフィルター無しから重ね付けでケラレるまでを確認。結果として3枚目まではケラレることなく装着することができました。4枚目の装着でケラレが発生するものの、望遠側にズームすると4枚でもケラレを回避することが可能。ただし、これは強制的に歪曲収差が補正されるカメラ出力のJPEGにおける話です。(未補正のRAWではより早くケラレの影響が発生する可能性が高い)

装着例

EOS R7に装着。
ボディサイズが大きめながら、バランスは良好。広角ズームとは思えない携帯性であり、気軽に持ち出すことが出来そうです。EOS R50など普及価格帯のミラーレスと組み合わせることで、さらに携帯性の高いシステムとなりそう。

AF・MF

フォーカススピード

フォーカスは静かで高速なステッピングモーターで動作。最短撮影距離から無限遠まで良好なAF速度を実現し、EOS R7と組み合わせた限りでは非常に快適。大部分のシーンでストレスフリー。後述するフォーカスブリージングが良く抑えられていることも関係しているのかなと予想。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

10mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

驚いたことに、接写性能が高いわりにフォーカスブリージングはほとんどありません。広角ズームレンズは画角変化が大きな製品も多く、これは嬉しい誤算となりました。ただし、接写時に樽型の歪曲収差が強くなり、レンズプロファイルでは補正しきれない収差が目立つようになります。

14mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

10mmと同じ傾向ですが、歪曲収差の変動が少なく、フォーカスブリージングはほとんど目立ちません。

18mm

スライドショーには JavaScript が必要です。

14mmと同じ傾向が続きます。

精度

EOS R7との組み合わせで日中・夜間どちらでも問題なし。カメラの測距輝度範囲を下回るような低照度ではパフォーマンスが低下するものの、精度には問題が無いように見えます。

MF

前述のとおり、フォーカスリングは少し緩めですが滑らかに回転。応答性や回転速度はカメラ側で調整できるため、好みの操作性に設定しやすくなっています。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:EOS R7
  • 交換レンズ:RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

10mm

予想していたよりもはるかに良好な結果。広角レンズはテスト時に定型チャートにかなり近寄る必要があり、近接時の収差変動で特に周辺部や隅の性能が低下する傾向があります。このレンズはF4.5の絞り開放から全体的に良好な結果が得られ、周辺部や隅も中央に近い性能。手ごろな価格の小型軽量なAPS-C用ズームレンズとしては驚異的な性能。

中央

数値通り、絞り開放からピークの結果が得られています。絞りによる画質が向上する余地はほとんどなく、絞り過ぎると回折により画質の低下が発生。F8を超えると急速に性能が低下します。

周辺

フレーム周辺部もF4.5から中央に近い結果。絞りによる改善の余地はほとんどありません。

四隅

中央や周辺部と比べると細部の解像性能が低下するものの、収差が良く抑えられ、非常に安定した描写に見えます。ただし歪曲収差が強いため、補正時に画質が低下する可能性あり。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F4.5 3834 4145 3130
F5.6 4087 3898 3463
F8.0 3720 3912 3797
F11 3283 3348 3167
F16 2616 2722 2722
F22 2202
実写確認

12mm

10mmと同じく非常に良好。隅のパフォーマンスも改善し、フレーム全体で絞り開放から優れた結果を得ることができます。少なくとも3000万画素のEOS R7では絞りによる改善の余地はほとんど無いように見えます。

中央

開放からとても良好であり、これと言って書くことがありません。

周辺

中央と同じく非常に良好。

四隅

フレーム隅ですら中央や周辺部と同程度の結果を得ることができます。やはり歪曲収差が強めのため、補正時に画質がいくらか低下する可能性あり。

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.0 3734 3752 3761
F5.6 3712 4187 3822
F8.0 3622 3779 3455
F11 3363 3480 3242
F16 3375 2664 2573
F22 2656 1794 1685
F25 2049
実写確認

14mm

12mmと同じくフレーム全体が絞り開放から非常に良好。絞っても画質が向上することはなく、F5.6からピークの性能と言えるでしょう。絞りは被写界深度の調整で使えばよいと思いますが、回折の影響を受けやすい点に注意する必要があります。
(これと言って書くことが無いので中央・周辺・隅の詳細は省略)

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F5.6 3795 3773 3669
F8.0 3659 4032 3641
F11 3341 3100 3089
F16 2795 2815 2526
F22 2136 1980 1857
F29 1735 1535
実写確認

16mm

望遠側でも良好なパフォーマンスを維持しています。小型軽量なズームレンズながら、ここまで弱点が見当たらないとは予想していませんでした。ただし、開放F値がF6.3と大きいため、絞ると性能が急速に低下する点には注意が必要です。
(これと言って書くことが無いので中央・周辺・隅の詳細は省略)

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 3773 4072 3670
F8.0 3614 3693 3764
F11 3218 3105 2923
F16 2656 2605 2636
F22 2114 2156 2053
F32 1582
実写確認

18mm

14mmや16mmほどではありませんが、中央や周辺部は非常に良好な性能を維持しています。隅の画質低下も驚くほどのものではなく、わずかな低下に抑えられているように見えます。
(これと言って書くことが無いので中央・周辺・隅の詳細は省略)

中央

周辺

四隅

数値確認
中央 周辺部 四隅
F6.3 4068 3886 3451
F8.0 3577 3992 3221
F11 3273 3270 3204
F16 2682 2798 2480
F22 2114 1963 1841
F32 1477
実写確認

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2023.12.11 晴天 風あり
  • カメラ:EOS R7
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
  • 露出:絞り優先AE ISO 100固定
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC 現像
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ
    ・その他初期設定

10mm

周辺部に倍率色収差の影響こそ残っているものの、全体的にとても良好。絞り開放のF4.5でも中央から隅までシャープ。絞ると周辺部が少しシャープになるものの、絞り開放とほとんど差が無いように見えます。注意点として、これはあくまでも歪曲収差を補正前であること。強めの歪曲収差を補正することで周辺部の画質が低下する可能性があります(Lightroomで検証したいところですが、今のところ補正データがありません)。

中央

F4.5から非常にシャープでほぼピークの状態。絞っても大きな改善はありませんが、コントラストが僅かに改善しているようにも見えます。回折の影響でF11は既に画質が低下し始めているので、被写界深度に問題がなければF8までの使用がおススメ。

周辺

中央と同じくF4.5からピークの状態。絞っても大きな変化はありませんが、5.6-8で少しシャープな結果が得られます。

四隅

小型軽量で低価格な広角ズームの妥協点、かと思いきや意外にも良好。倍率色収差は僅かに残存していますが無視できる範囲内。非点収差やコマ収差の影響は小さく、シャープでコントラストの高い結果が得られているように見えます。絞ってもほとんど変わりませんが、ピークはF5.6-8。

12mm

全体的に10mmと同じ傾向。絞り開放のF5.0から全体的にシャープで、絞りによる改善はわずか。歪曲収差が大きいので補正時に画質低下は避けられないものの、元の画質が良好であれば良い結果を期待できそうです。

中央

10mmと同じく非常にシャープ。何も言うことがありません。

周辺

中央と同じく問題なし。

四隅

中央・周辺部と同じくらいシャープ。

14mm

ズーム中間域も引き続き全体的に良好。F5.6からシャープな結果が得られ、絞る必要性はほとんどありません。回折が発生するまでの絞り値は狭いものの、困ることは無いでしょう。

中央

じっくり観察すると、F5.6の絞り開放がピークであり、絞ると回折の影響で画質が徐々に低下しているように見えます。

周辺

中央と同じく画質のピークは絞り開放付近。

四隅

ズーム中間域でも隅までシャープ。画質の乱れは全くありません。

16mm

中央や周辺部の広い範囲は絞り開放から引き続き良好。ただし、隅が僅かにソフトな画質となっているように見えます。と言っても極端な画質低下は見られず許容範囲内。全体のバランスを整えるならF8がおススメ。

中央

これまで通り絞り開放から非常に良好。

周辺

中央と同じく非常に良好。

四隅

14mmまでと比べるとコントラストがやや低めに見えます。細部のシャープさも若干低下しており、絞っても大幅に改善することはありません。これ以上が必要であれば、カメラ側の画像処理で改善が必要な部分。

18mm

引き続き中央は非常に良好ですが、周辺部から隅に向かって緩やかな画質低下が見られます。絞りによる改善効果が得られる前に回折の影響が強くなるため、F6.3から大きな向上は期待できないように見えます。

中央

シャープでコントラストも高めですが、広角や中間域と比べると精細を欠いているように見えます。細かいこと言わなければ全く問題なし。

周辺

中央と比べると僅かに画質が低下しています。F8まで絞ると僅かに改善。それ以上は回折の影響が強くなります。

四隅

低価格の小型軽量な広角ズームとしては悪くない結果だと思いますが、このレンズで最もパフォーマンスが低下するポイント。ややソフトな画質となり、絞りによる改善は僅か。ピークはF11付近ですが、中央や周辺部は回折の影響で画質の低下が発生します。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

10mm

ゼロではないものの、3000万画素のEOS R7を使って大きく拡大しても色収差がほぼ分からない程度に抑えられています。この価格帯の小型軽量な広角ズームレンズとしては非常に良好な補正状態に見えます。

14mm

10mmと同じく非常に良好な補正状態。

18mm

他の焦点距離と同じく、望遠端でも良好な補正状態です。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

10mm

絞り開放から色収差はほぼ完璧に抑えられています。絞る必要はありません。

14mm

10mmと同じく良好な補正状態です。

18mm

広角や中間域と比べると僅かに増えてようにも見えますが、それでも全く問題ありません。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

10mm

魚眼レンズかと見間違えるほどの大きな樽型歪曲が残っています。カメラ内で補正すると、四隅に向かって引き延ばすように周辺部がクロップされます。当然ながら画質は低下します。とは言え、光学的な補正にこだわるよりも、価格とサイズとのバランスは取れているのかもしれません。

注意点はレンズの補正用プロファイルが無いと綺麗に修正するのが難しいこと。純正品(DPP4)やAdobe Camera RAWは既に対応していますが、マイナーな現像ソフトだと補正に対応するのが遅くなる可能性あり。

12mm

10mmと比べると良好な補正状態。それでも顕著な樽型であり、補正時に大きなクロップ・引き延ばしを伴います。

14mm

12mmよりも少し良好ですが、陣笠状の歪みを伴うので修正には補正用プロファイルが必須となります。

スライドショーには JavaScript が必要です。

16mm

比較的穏やかな歪曲収差ですが、引き続き目に見える歪みを伴います。

スライドショーには JavaScript が必要です。

18mm

このレンズで最も歪曲収差の影響が小さい焦点距離。それでも目立つ樽型歪曲が発生します。

スライドショーには JavaScript が必要です。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

10mm

フレーム隅で点光源の変形があります。F5.6-F8で改善傾向ですが、F11まで絞ると回折の影響が発生。バランスを取るのであればF5.6-10あたり。

14mm

絞り開放からほぼ問題ありません。

18mm

広角端に近い影響度合い。絞ると改善しますが、回折発生までの絞りに余裕がありません。

球面収差

前後のボケ質に大きな違いは無いように見えます。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

前後のボケ質に顕著な差は見られず、ニュートラルな描写。ボケを大きくできるレンズではないものの、使い勝手は良いようです。軸上色収差による色づきはありません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

10mm

1枚の非球面レンズを使用していますが、いわゆる玉ねぎボケの影響はありません。これはPMo非球面レンズを使用しているためと思われます(他のPMo非球面使用のRFレンズもボケが綺麗)。滑らかな描写ですが、玉ボケの周辺にわずかな縁取りがあり、フレーム周辺部では倍率色収差の影響が目立ちます。あくまでもこれはカメラ出力のJPEGであり、補正をオフにしたRAW現像では以下の通り。歪曲収差の補正がオフになると、トリミングされるはずの四隅を確認することが出来ます。口径食は穏やかですが、イメージサークルの端では強めの変形が見られます。
面白いことに、JPEGでは見られたフレーム周辺部の色ずれがありません。なぜこのような結果となるのか不明。

14mm

基本的に10mmと同じ傾向。ボケは綺麗で縁取りは目立ちません。手ごろな価格のコンパクトな広角ズームの描写としては評価できる結果。

18mm

縁取りがやや強めですが、その他はまずまず良好。

ボケ実写

10mm

「10mm F4.5」では質感を評価するほどボケが大きくなりません。細部をよく見ると少し騒がしいと感じるかもしれませんが、全体像からすると無視できる範囲内。どうしても気になる場合はF8くらいまで絞るとほぼ問題ありません。撮影距離が長くなると、さらにボケが小さくなります。

18mm

焦点距離は10mmと比べて長くなるものの、開放F値「F6.3」では接写時でもボケが小さい。やはり質感を評価するほどの規模ではないように見えます。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。10mm F4.5で全身をフレームに入れると背景までピントが合っているように見えます。十分なボケを得るには顔面に近寄る必要があります。
18mm F6.3でもフレームを全身に入れる場合は後ボケがほぼ皆無。少なくともバストアップ、できれば顔のクローズアップまで近寄りたいところ。

10mm
18mm

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

10mm

(極端な)歪曲収差を含めると実際の撮影と大きく乖離した結果となるため、今回は周辺減光の補正をオフにしたカメラ出力のJPEGを使用しています。10mmのテスト結果は最短撮影距離と無限遠で大きな違いはありません。どちらもF4.5の絞り開放では減光効果が目立つため、カメラ側の補正をオンにするか、F8程度まで絞って撮影すると良いでしょう。

14mm

10mmほどではないものの、ズーム中間域で周辺減光が目立ちます。極端ではないものの、減光効果を回避したい場合は常にカメラ側の補正をオンにしておくのがおススメです。

18mm

このズームレンズで最も減光効果が緩和される焦点距離。F6.3の絞り開放でも問題は軽微で、F8まで絞るとほぼ解消します。補正無しでも問題と感じることは少ない。とは言え、他のズーム域は補正必須と感じる場合が多いため、このレンズを装着している間は減光補正を適用しておくのが良さそう。

逆光耐性・光条

10mm

完璧からは程遠いものの、RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STMやRF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMと比べると良好な結果が得られているように見えます。小絞りを使うとレンズ間の反射が多くなってしまうものの、絞り開放付近は光源周辺以外のコントラストが良く維持されています。

18mm

10mmよりも良好であり、ゴーストやフレアが良く抑えられています。絞った際にゴーストが増えているものの、酷い結果ではありません。

光条

最小絞り付近で綺麗な光条が発生。この価格帯のレンズとしては良好な描写に見えますが、光条の発生が遅く、絞り過ぎると回折の強い影響を受けてしまうのが悩ましいところ。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 小型軽量
  • 手ごろな価格
  • 光学手振れ補正搭載
  • 対応フィルター径が小さく経済的
  • ケラレ耐性が高い(JPEG)
  • 高速で静かなAF
  • フォーカスブリージングが目立たない
  • 接写時でも非常に良好な解像性能
  • 全体的に良好な遠景解像性能
  • 倍率色収差の補正が良好
  • 軸上色収差の問題なし
  • 球面収差の補正状態
  • 滑らかなボケ
  • 接写性能
  • 絞った際の光条

手ごろな価格で驚くほど小型軽量な広角ズームレンズですが、光学性能は非常に良好。部分的にカメラ側の補正に丸投げの収差があるものの、そのあたりを加味しても優れた性能と言えそうです。高速かつ静かで画角変化の目立たないAF性能や、光学手振れ補正の搭載も含めると、コストパフォーマンスの高いレンズ。

悪かったところ

ココに注意

  • 全体的にプラスチッキー
  • レンズフードが別売り
  • 沈胴構造で使用時は要展開
  • 防塵防滴に非対応
  • 最短撮影距離側の歪曲収差が補正不足(JPEG)
  • 魚眼レンズのような歪曲収差(広角側)
  • 大きくぼかせるレンズではない
  • 広角側の周辺減光

光学的な問題は広角側の「巨大な歪曲収差」および「イメージサークルが足りない」に絞ることができます。どちらもカメラ側の補正で対応できるものの、社外製のRAW現像ソフトなどで補正用プロファイルが無い場合は修正に苦労すると思います。
また、価格を考慮すると妥協する点かもしれませんが、全体的にプラスチッキーでフード別売りである点は事前に理解しておいた方が良いでしょう。

総合評価

満足度は95点。
大口径でなければ防塵防滴仕様でもなく、外装はプラスチッキーで安っぽい作りのレンズです。しかし、小型軽量で携帯しやすく、光学性能は補正込みで非常に良好。販売価格は他社の広角ズームレンズよりも安く、エントリーしやすいモデルとなっています。「広角レンズとはなんぞや?」を手ごろな価格で体験することが可能。他の選択肢がないことも事実ですが、防塵防滴や大口径が必要なければ必要十分なレンズと言えます。

外装の質感にこだわらなければEOS R7のような高解像モデルでも満足のいく光学性能。歪曲収差の補正時に四隅の画質低下は避けられませんが、そのあたりを考慮しても良好な結果に違いありません。携帯性が良く、日常的に持ち歩くことができる魅力的なズームレンズになると思います。

購入早見表

作例

オリジナルデータはFlickrにて掲載

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