このページでは「VILTROX AF 35mm F1.2 LAB」のレビューを掲載しています。
製品提供について
このレビューは映像嵐株式会社より無償提供された製品を使用しています。
金銭の授受やレビュー内容の指示は一切ないことを最初に明言しておきます。購入した製品ではないことに対する無意識のバイアスは否定できませんが、できるだけ客観的な評価を心がけています。
VILTROX AF 35mm F1.2 LABのレビュー一覧
- VILTROX AF 35mm F1.2 LAB レンズレビュー完全版
- VILTROX AF 35mm F1.2 LAB レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- VILTROX AF 35mm F1.2 LAB レンズレビューVol.5 ボケ編
- VILTROX AF 35mm F1.2 LAB レンズレビューVol.4 諸収差編
- VILTROX AF 35mm F1.2 LAB レンズレビューVol.3 解像チャート編
- VILTROX AF 35mm F1.2 LAB レンズレビューVol.2 遠景解像編
- VILTROX AF 35mm F1.2 LAB レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
レンズの評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | 安くないが高くもない | |
サイズ | シグマよりも小型 | |
重量 | シグマよりも軽量 | |
操作性 | 絞りの操作が独特 | |
AF性能 | 拡大AF以外は問題無し | |
解像性能 | 近距離周辺以外は優れる | |
ボケ | 欠点少ない優れた描写 | |
色収差 | 良好な補正状態 | |
歪曲収差 | 軽微だが複雑 | |
コマ収差・非点収差 | 軽微 | |
周辺減光 | 絞りによる改善は限定的 | |
逆光耐性 | 比較的良好 | |
満足度 | 堅実な性能のF1.2レンズ |
評価:
レンズの評価
堅実な性能のF1.2レンズ
「比較的安価」「小型軽量」なF1.2 AFレンズなので、多少の妥協を伴うと予想していましたが…、良い意味で裏切られてしまった。AFは高速かつ正確で、光学性能はF1.2から非常にシャープで良好な収差補正を実現。ボケは綺麗だし、逆光耐性も良好。
敢えて言えば、至近距離で周辺部に画質低下の兆候が見られるものの、指摘するとしたらそれくらい。付け加えると、絞りリングの操作性が独特で、Aポジションにロックできる機能があったら良かった。
全体的に見て、コストパフォーマンスの高いレンズ。互換性の観点から完璧とは言えませんが、競合製品も少なく、積極的に検討する価値があると思います。
Given that this is an F1.2 AF lens that is relatively inexpensive and compact, I expected some compromises, but I was pleasantly surprised. The AF is fast and accurate, and the optical performance is very sharp with excellent aberration correction from F1.2. The bokeh is beautiful, and it handles backlighting well. If I were to nitpick, there are signs of image quality degradation in the peripheral areas at very close distances, but that's about it. Additionally, the aperture ring operation is unique, and it would have been nice if it had a lock function for the A position.
Overall, this is a lens with excellent cost performance. While it's not perfect in terms of compatibility, there are few competing products, so it's definitely worth considering.
Index
まえがき
- 発売日:2025.4.16
- データベース
- 管理人のFlickr
「VILTROX AF 135mm F1.8 LAB 」に続く二本目のLABシリーズレンズ。LABシリーズはVILTROXブランドの最高級ラインで高画質・高規格のレンズ。販売価格は高めながら、多数のEDレンズや非球面レンズを使った贅沢な光学設計に加え、防塵防滴や情報パネル、VCM駆動のAFが特徴的。
また、VILTROXとしては初となる、フルサイズ対応のF1.2 AFレンズ。ソニーEマウントにおける競合製品はほとんど存在しておらず、唯一のライバルだったシグマ「35mm F1.2 DG DN」は既にディスコン。現在はVILTROXが唯一無二の選択肢となっています。(ただし、シグマは後継モデルの開発を発表しています)
主な仕様
シグマの競合製品よりも小型軽量で、フィルター径も1段階小さなサイズ。また、ニコンの35mm F1.2よりも軽量で短め。シグマやニコンと比べると最短撮影距離がやや長めです。
発売日 | 2025.4.16 |
初値 | 169,200円 |
レンズマウント | E |
対応センサー | フルサイズ |
焦点距離 | 35mm |
レンズ構成 | 10群15枚 EDレンズ5枚 高屈折率レンズ3枚 非球面レンズ2枚 |
開放絞り | F1.2 |
最小絞り | F16 |
絞り羽根 | 11枚 |
最短撮影距離 | 0.34m |
最大撮影倍率 | 不明 |
フィルター径 | Φ77mm |
手振れ補正 | - |
テレコン | - |
コーティング | 不明 |
サイズ | Φ89.2mm×121.8mm |
重量 | 約920g |
防塵防滴 | 対応 |
AF | HyperVCM |
絞りリング | あり (クリック切替対応) |
その他のコントロール | AF/MF Fn1/Fn2 |
付属品 | レンズキャップ リアキャップ フ-ド 収納袋 |
価格のチェック
入手ルートは限られていますが、国内代理店経由では約16万円。シグマの実勢価格と比べるとやや高め。とはいえ、シグマよりも多くのEDガラスを使用しており、光学性能次第では価格差も許容範囲内となることでしょう。
レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
これまでのVILTROX製品の箱は白を基調としたデザインでしたが、LABシリーズは重厚感のある黒を基調としたデザインを採用。外箱に余分な装飾は無く、高級感のある見栄え。
レンズ本体のほか、レンズフードやポーチ、保証書などが付属します。
外観
135mm F1.8 LABとは異なり、外装は金属製(だと思われます)。フォーカスリングと絞りリングはどちらも金属製で、ゴム製カバーは無し。
レンズを前後に倒すと「カタカタ」と音がしますが、これは通電していない時にボイスコイルモータ駆動のフォーカスレンズが固定されていないため。他社でよく見る仕様であり、特に不思議なことではありません。
コントロール以外の意匠は最小限。側面に「LAB」のバッヂを配置しているのみ。マウント付近にはシリアルナンバーなどのシールが張り付けられています。
ハンズオン
重量は約920g。35mmレンズとしては間違いなく重い。しかし、F1.2の開放F値を考慮すると、今のところ最軽量のAFレンズ。頑丈な金属外装や機能的で豊富なコントロール、防塵防滴を加味すると、よく1Kg未満に抑えたなと感心します。
前玉・後玉
前玉にフッ素コーティングが施されているという記載はありません。水滴や油汚れの付着、ダメージが予想されるシーンでは保護フィルターを装着しておくと良いでしょう。フィルターサイズはニコンやシグマの35mm F1.2よりも小さな77mm径を使用。
前玉周辺にはレンズ銘やイメージサークル、撮影距離などを白字で記載。個人的に、白字はフィルター装着時に反射で写りこむ可能性があるので好きではありません。ちなみに、135mm F1.8 LAB は前面にロゴ無し。このあたりは統一してほしかったところ。
金属製のレンズマウントが5本のビスで本体に固定されています。周囲には耐候性を確保するシーリングあり。また、ファームウェアアップデート用のUSB-Cポートも備えています。
フォーカスリング
適度な幅の金属製フォーカスリングを搭載。
回転の抵抗感はソニーと同程度で、やや緩め。バイワイヤですが応答性は良好で遅延は目立ちません。
ピント位置の移動速度はリングの回転速度に依存。素早く回転する場合、ピント全域を約180度のストロークで操作できます。逆にゆっくり回転させると、(ピントの全域の移動に)2回転ほど必要となり微調整が可能。
絞りリング
ソニーEマウント用としては珍しい無印の絞りリング。抵抗感はソニー純正ほど強くないものの、フォーカスリングと比べると強い。
一般的な絞りリングは「1クリック=1/3step」の目盛り付きで動作しますが、このレンズは異なる。リング操作時のレスポンスは「ノンリニア」となっており、回転速度によって動作が操作スピードが異なります。
ゆっくり回転すると、1/3stepの絞り調整に2~3クリックが必要。逆に素早く操作すると1~2クリックで操作することが出来ます。従来の絞り操作に慣れていると癖の強い操作と感じるはず。側面のスイッチで「クリックレス」に切り替えて使ったほうがしっくりときます。
スイッチ類
Fn1は初期設定でカメラ側のAFLボタンとして動作。Fn2はアプリ経由で事前に設定したレンズのカスタマイズが優先されます。テストした個体は初期設定でA-Bフォーカスがセットされていました。
レンズフード
プラスチック製の花形レンズフードが付属。135mm F1.8 LABと異なり、先端のゴムカバーや内側のフェルト生地はありません。とはいえ、VILTROXのレンズフードとしてはしっかりとした作り。
ソニー製レンズ・フードの装着しやすさと比べると見劣りしますが、135mm F1.8 LABよりも良好。フードは逆さ付けに対応。ただし、フォーカスリングがほぼ隠れてしまうので、MFによる微調整が難しくなります。
情報パネル
AF 16mm F1.8 FE あたりから導入が始まった情報パネルを搭載。絞り値・ピント位置を同時に表示できるほか、Fnボタンの動作状況も確認可能。面白い機能として、起動時のロゴを任意の画像に差し替えることができます。(スマートフォンアプリ経由)
VILTROX Lens App
AndroidとiOSに対応。レンズがBluetooth接続に対応しており、スマートフォンと連携することでアプリによるカスタマイズが可能となります。画期的ですが、レンズが通電状態でないと接続できない点に注意。
135mm F1.8 Zでは、フォーカスリングの校正やFnボタンのカスタマイズ、情報パネルのカスタマイズに対応。また、最新ファームウェアにアップデートすることも可能となっています。
装着例
α7R Vに装着。
35mmの単焦点レンズとして間違いなく大きいものの、F1.2の大口径を考慮すると許容範囲内。とはいえ、1Kg近い重量があるのは間違いないので、左手でレンズを支えるのはほぼ必須。片手で保持できなくもないですが、水平や構図を維持するのは難しい。
グリップとレンズの間には十分なスペースがあります。ただし、厚手のグローブを装着すると窮屈と感じるかもしれません。
AF・MF
フォーカススピード(FW Ver1.0)
VILTROX独自のHyperVCMで動作。F1.2のレンズとしてはキビキビとAFが動作します。AF-Sモードでは合焦直後にピントが前後するものの、AF-Cモードでは迷いがなくなり、VCM駆動らしい初速の速いAFが利用できます。
注意点として、拡大AF利用時は合焦率が目に見えて低下します。成功しないこともないですが、失敗する回数が予想よりも多い。(下部の動画最後でテストしています。)
ファームウェアでの改善に期待。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
他の35mm単焦点レンズと同じく、ピント移動による画角の変動が強い。特にAF-Sモードのようにピント面が前後するとフォーカスブリージングが目立ちます。この特性のためか、フレーム周辺部でピントを合わせようとすると苦労しました。
精度
前述したように、拡大AFでピントの山を外す場合があります。また、低照度・低コントラストな撮影でも苦労しました。日中屋外で拡大AFを使わない限り、問題なく動作。AF-Cでの被写体追従でも問題ありませんでした。
MF
ゆっくりとフォーカスリングを操作することで微調整に対応。これと言って大きな問題はありませんでした。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:ILCE-7RM5
- 交換レンズ:VILTROX AF 35mm F1.2 LAB
- パール光学工業株式会社
「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
中央から広い範囲は絞り開放から非常にシャープ。周辺部もF1.4からF2.0まで絞ると、中央に近い良好な結果が得られる。フレーム隅は出遅れるものの、2~3段絞ることで改善可能。
中央
F1.2から色収差や球面収差が良く抑えられた良好な結果。コントラストが高く、特に絞る必要性を感じません。少し絞るとごく僅かに改善したように見えますが、基本的にはF1.2から実用的な画質と見てみて間違いない。
周辺
絞り開放における細部のコントラストは中央よりも若干低め。しかし、解像性能はF1.2から非常に良好で、F2-2.8まで絞ってしまうと中央との差はほぼありません。倍率色収差の影響はよく抑えられています。
四隅
中央や周辺と比べると絞り開放がややソフト。絞りによる改善速度も遅く、ベストの結果を得る場合はF4まで絞った方が良いでしょう。それ以降は中央や周辺に近い性能を発揮しますが、倍率色収差の影響が若干残っています。
数値確認
Center | Mid | Corner | |
F1.2 | 4747 | 3838 | |
F1.4 | 4747 | 4203 | 2343 |
F2.0 | 4798 | 4856 | 2900 |
F2.8 | 4711 | 4747 | 4175 |
F4.0 | 4708 | 4860 | 4525 |
F5.6 | 4742 | 4822 | 4406 |
F8.0 | 4730 | 4825 | 3953 |
F11 | 4540 | 4370 | 3548 |
F16 | 4269 | 3993 | 3678 |
競合製品との比較
これまでテストしてきた中で最も優れているのは「FE 35mm F1.4 GM」。特にフレーム隅まで非常に高い開放性能で、F2.0からF2.8まで絞れば均質性の高い非常に高い性能を発揮する。
VILTROXはF1.2の大口径を実現しつつ、中央から広い範囲で非常にシャープな結果。フレーム隅は出遅れるものの、十分に絞ることでシグマ「35mm F1.4 DG DN」以上の結果を得ることができました。超大口径のAFレンズとしては十分な結果。純正品と比べて、低価格のレンズは特に近距離での解像性能は低下する傾向があり、その点でVILTROXは妥協が少なく健闘していると言えるでしょう。
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2025.4.13 くもり 微風
- カメラ:α7R V
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:BA BAFANG BCA-01
- 露出:ISO 100 絞り優先AE
- RAW:Adobe Lightroom Classic
・シャープネスオフ
・ノイズ補正オフ
・レンズ補正オフ
中央
F1.2の絞り開放から、球面収差や色収差が良く補正されています。(F1.2のサンプルがやや明るめなのは、NDフィルター無しで1/8000秒では適正露出に出来なかったため)
さらにF2.0まで絞ると細部のコントラストが改善、非常にシャープな結果を得ることが出来ます。F2.8でさらに改善しますが、見比べないと分からない程度。
周辺
中央と同じくF1.2から非常に良好。中央から画質低下の兆候はありません。F4まで絞ると細部まで際立つ結果を得ることが可能。
四隅
フレーム隅でも顕著な画質低下はありません。倍率色収差の影響も少なく、コントラストが少し低下したかな?くらい。絞ることで画質は徐々に改善し、F2.8-F4付近でピークに達します。この際の画質はとても良好で、中央と見比べても遜色ありません。
像面湾曲
像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
フォーカスを合わせる位置に関わらず、フレーム全域でピントが合っているように見えます。像面は平坦で、特に大きな問題はありません。ただし、解像チャートのような至近距離では、若干の像面湾曲が発生します。
- ピント中央合わせ
- ピント隅合わせ
- ピント中央合わせ
- ピント隅合わせ
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
- 良好な補正
- 倍率色収差あり
実写で確認
隅を拡大することで、残存するごく僅かな色収差を確認可能。しかし、これが実写で問題となる可能性は低く、現像ソフトなどで簡単に補正することもできます。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
絞り開放付近で僅かに残存する色収差を確認できます。F1.2の大口径を考慮すると非常に良好な補正状態であり、実写で問題となることは少ない。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
- 糸巻き型歪曲
- 適切な補正
- 樽型歪曲
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
陣笠状(口ひげ状)を伴う樽型の歪曲収差。影響は軽微ですが、複雑な歪み方のため、手動補正が難しい。完璧に補正したい人はVILTROXが公開するであろうレンズプロファイルを適用することになりそうです。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
- 良好な補正状態
- 悪い補正状態
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
F1.2の大口径ながら、点像再現性はまずまず良好。点像が僅かに変形していますが、全体像からすると許容範囲内。F2-2.8まで絞るとほぼ抑えることが出来ます。
球面収差
前後にボケ質の偏りがなく、球面収差が良好に補正されていることが分かります。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
ニュートラル寄りですが、後ボケのほうが僅かに柔らかい描写。色収差の影響は軽微で、問題ない程度に抑えられています。
前ボケ
後ボケと比べると少し硬めですが、全体像で見るとニュートラル寄りの使いやすい描写。色収差など悪目立ちする要素が良く補正されているので、過度に心配する必要はありません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
- 影響が強い
- 影響が弱い
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
- 前ボケ
- 後ボケ
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
薄っすらと同心円状のムラ(玉ねぎボケ)が見られるものの、影響は軽微で目立ちません。ボケの縁取りは弱く、色収差の影響も少なめ。口径食はあるものの、小型軽量な35mm F1.2としては良く抑えられているように見えます。口径食はF2-2.8でほぼ解消。
ボケ実写
至近距離
至近距離では被写界深度が浅く、大きな後ボケが得られます。ボケが大きすぎてボケを判断することはできませんが、ピント面直後でも滑らかな描写に見えます。
近距離
撮影距離が少し長くなっても後ボケは全体的に滑らかな描写。35mmレンズはフレーム隅の描写が荒れがちですが、今のところ問題ありません。
中距離
撮影距離がさらに長くなっても滑らかな描写を維持。フレーム隅も良好で、特に問題はありません。色収差は目立たず、口径食などの影響も軽微。
中距離2
安価な35mm単焦点の場合、この撮影距離でボケが騒がしくなる傾向があります(特に隅)。しかし、本レンズは良好な描写を維持しており、フレーム隅においても縁取りの弱い滑らかなボケ質。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F1.2)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。F1.2の大口径らしく、全身を入れるような撮影距離でも背景をぼかすことが出来ます。この際も広い範囲で滑らかな後ボケ。フレーム端や隅が少し騒がしいものの、大きく拡大しないと分からない程度に抑えられています。
膝上、上半身くらいまで近寄ると、ボケ質で気になる部分が無くなります。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
- 良好
- 周辺減光
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
最短撮影距離
隅に向かってやや目立つ周辺減光が発生。F2.0-F2.8まで絞ると改善しますが、以降は絞っても大きな変化がありません。減光を完全に修正したい場合はカメラ・現像ソフトでの補正が必須。
無限遠
最短撮影距離と似たような結果ですが、絞った際の改善効果がやや薄い。
逆光耐性・光条
中央
VILTROX初期のレンズと比べると良好な結果。光源付近のフレアは良く抑えられ、絞った際のゴーストも適度。改善の余地はあるものの、純正品と比べて大幅に見劣ることはありません。
隅
光源が隅にある場合も特に問題無し。ゴースト・フレア、共に良く抑えられています。
光条
F5.6付近から光条が発生。ただし、主張の弱い光条であり、実写で目立つような撮るのは難しい。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 選択肢の少ない「35mm F1.2」
- 小型軽量(2025.4 現在)
- 金属製の頑丈な鏡筒
- 防塵防滴
- 複数のFnボタン
- 機能的な情報パネル
- Bluetooth接続によるカスタマイズ対応
- キビキビと動作するAF
- 遠景ではF1.2から隅まで非常に良好
- 像面湾曲の問題無し
- 倍率色収差が良好な補正状態
- 軸上色収差が良好な補正状態
- 歪曲収差が軽微(ただし手動修正が難しい)
- コマ収差の影響が軽微
- 球面収差の補正状態が良好
- ニュートラルで扱いやすいボケ質
- 逆光時のフレアが抑えられている
高品質・高性能のLABシリーズの名に恥じない優れた結果。中国レンズメーカーの中では抜群の光学性能であり、日本メーカーに匹敵すると言っても過言ではありません。これまではコーティングなど、逆光耐性の面で見劣りする部分があったものの、このレンズでは特に問題無し。名実ともにコストパフォーマンスの高い大口径レンズ。
悪かったところ
ココに注意
- 独特な操作性の絞りリング
- 拡大AFの動作が良くない(FW 1.00時)
- フォーカスブリージングが目立つ
- 近距離時に隅のパフォーマンスが低下(絞ると大幅に改善)
- 周辺減光が目立ち、絞っても解消しない
シグマやタムロンに近い存在となりましたが、まだ気になる点があるとすればカメラの互換性。ほぼ問題ありませんが、拡大AF時は信頼性が大幅に低下します。このあたりはファームウェアアップデートで改善することを期待。
フォーカスブリージングは目立ちますが、他社の35mmレンズでも目立つ製品が多い。VILTROXの弱点とまでは言えないです。周辺減光も同様。
結論
「比較的安価」「小型軽量」なF1.2 AFレンズなので、多少の妥協を伴うと予想していましたが…、良い意味で裏切られてしまった。AFは高速かつ正確で、光学性能はF1.2から非常にシャープで良好な収差補正を実現。ボケは綺麗だし、逆光耐性も良好。敢えて言えば、至近距離で周辺部に画質低下の兆候が見られるものの、指摘するとしたらそれくらい。付け加えると、絞りリングの操作性が独特で、Aポジションにロックできる機能があったら良かった。
全体的に見て、コストパフォーマンスの高いレンズ。互換性の観点から完璧とは言えませんが、競合製品も少なく、積極的に検討する価値があると思います。
競合製品について
35mm F1.2 DG DN
直接競合する唯一のレンズ。価格も似ているので要検討ですが、既に生産完了品。後継モデルの開発が発表されており、どのような価格・サイズ・光学性能のレンズとなるのか気になるところ。
35mm F1.2 DG DN Leica L | |||
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FE 35mm F1.4 GM
「F1.4」で問題ないのであれば、小型軽量ながら優れた光学性能のレンズ。VILTROXとの違いは、AFの信頼性や接写時でも安定した画質を実現していること。正直に言うと無難な選択肢ですが、「F1.2」にロマンを感じる場合はVILTROXへ行くしかない。
35mm F1.4 DG DN
10万円以下で購入することができる35mm F1.4。出来るだけ安く大口径の35mmを使いたい場合におススメしやすいレンズ。最高級のレンズと比べると見劣りする部分があるものの、価格と性能のバランスが良く、究極を求めなければおススメしやすい製品となっています。
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購入早見表
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作例
関連レンズ
- NIKKOR Z 35mm f/1.2 S
- Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
- FE 35mm F1.4 GM
- 35mm F1.2 DG DN
- 35mm F1.4 DG DN
- AF 35mm F1.4 FE II
- AF 35mm F1.4 FE
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