ニコン「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」のレビュー第三弾を公開。今回は恒例の解像力チャートを使い、Nikon Z 8と組み合わせた際の近距離解像性能をチェックしています。
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8のレビュー一覧
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビュー 完全版
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.5 諸収差編 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.4 ボケ 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.3 解像チャート 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.2 遠景解像 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF 編
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:Nikon Z 8
- 交換レンズ:NIKKOR Z 70-180mm f/2.8
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・レンズプロファイルオフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
70mm
テスト結果
絞り開放付近のパフォーマンスは全体的に悪く、ソフトな結果が得られます。フレームの広い範囲はF4~F5.6で急速に改善するものの、フレーム隅はかなり絞らないとシャープな結果が得られません。
中央
F2.8はピントの山こそ判断できるものの、球面収差が残存するソフトな描写。ボケを中心として撮影する場合は強みとなりますが、AFの精度やピント面のシャープな描写を期待する場合はF4くらいまで絞ったほうが良好な結果を期待できます。ピークはF8前後。
周辺
基本的には中央と同じ傾向ですが、F4でも僅かにソフトさが残ります。切れ味が必要であればF5.6まで絞ったほうが良いでしょう。
四隅
中央や周辺部と比べると非常にソフトで、F4~F5.6まで絞っても実用的な画質とは言えません。少なくともF8まで絞りたいところ。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 2869 | 2223 | |
F4.0 | 3885 | 3225 | |
F5.6 | 4477 | 4439 | 2492 |
F8.0 | 4668 | 4131 | 3408 |
F11 | 4267 | 4227 | 3534 |
F16 | 3625 | 3476 | 3217 |
F22 | 3058 | 2936 | 2669 |
実写確認
85mm
テスト結果
70mmと同傾向ですが、フレーム隅のパフォーマンスが周辺部に近いところまで上昇。F4~F5.6まで絞ると全体的にシャープな結果を得ることが出来ます。
中央
70mmほどではないものの、F2.8はソフトな描写。パンチのあるピント面を得たい場合はF4まで絞りたいところ。絞れるのであればF5.6-8のピークまで絞るのがおススメ。
周辺
中央と同傾向で、70mmと比べると均質性が向上しています。F5.6で満足のいくシャープネスが得られる印象。
四隅
70mmほどではありませんが、F4までややソフトな結果。F5.6でだいぶ改善しますが、満足のいく結果を得たい場合はF8までしっかりと絞ったほうが良いでしょう。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 2817 | 2320 | 2950 |
F4.0 | 3828 | 2669 | 3275 |
F5.6 | 4690 | 4479 | 3895 |
F8.0 | 4731 | 4184 | 4145 |
F11 | 4247 | 4381 | 3973 |
F16 | 3765 | 3525 | 3370 |
F22 | 3950 | 3019 | 3039 |
実写確認
105mm
テスト結果
引き続きF2.8は低調ですが、F5.6まで絞ると均質性の高い結果を得ることが出来ます。
中央
広角側と同じく、F4まで絞るとシャープな結果を得ることが可能。それ以降に大きな変化はありません。
周辺
F2.8-4は広角側ほどソフトではないものの、細部の切れ味はイマイチ。F5.6まで絞ると見違えるようにシャープな結果を得ることが出来ます。
四隅
フレーム隅も周辺部と同じ傾向。F5.6以降は均質性が高い。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 2340 | 2628 | 2511 |
F4.0 | 3977 | 2416 | 1954 |
F5.6 | 4362 | 4362 | 3914 |
F8.0 | 4324 | 3977 | 3623 |
F11 | 3733 | 3803 | 3611 |
F16 | 3294 | 3681 | 3322 |
F22 | 3007 | 3000 | 2879 |
実写確認
135mm
テスト結果
ズーム中間では全体的にF2.8のパフォーマンスが改善。完璧ではありませんが、F2.8から良好な結果を得ることが出来ます。ピークはF4からF8あたり。
中央
105mmまでと比べるとF2.8のコントラストが向上。ただし、完璧ではなく、F4でピークに達します。
周辺
F2.8から中央に近い結果を得ることができます。絞り値による改善傾向も同じ。
四隅
周辺部と比べると若干ソフトですが、良好な結果を得ることが出来ます。ピークはF5.6-8あたり。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 2994 | 3311 | 3870 |
F4.0 | 4187 | 4067 | 3895 |
F5.6 | 4245 | 4712 | 4322 |
F8.0 | 4324 | 4440 | 4342 |
F11 | 3973 | 4089 | 4027 |
F16 | 3534 | 3477 | 3467 |
F22 | 2744 | 2888 | 2883 |
実写確認
180mm
テスト結果
安定感はあるものの、135mmと比べるとF2.8の性能が全体的に低下。
中央
悪くない結果ですが、これまでの焦点距離と比べて色収差が目に付きます。倍率色収差と思われ、簡単に補正可能ですが細部のコントラストが低下する可能性あり。
周辺
中央と比べると若干ソフト。倍率色収差がさらに拡大する兆候は見られません。
四隅
周辺部と同傾向。シャープな結果を得たい場合はF5.6くらいまで絞りたいところ。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F2.8 | 3649 | 2903 | 2455 |
F4.0 | 4693 | 3233 | 3039 |
F5.6 | 4420 | 3733 | 3968 |
F8.0 | 4031 | 4735 | 3856 |
F11 | 4051 | 4126 | 3837 |
F16 | 3649 | 3418 | 3078 |
F22 | 2782 | 2844 | 2825 |
実写確認
360mm
テスト結果
テレコンバージョンレンズ装着時は全体的にパフォーマンスが低下。それでも中央や周辺部は良像と言えなくもないですが、隅はかなり絞る必要があります。
中央
180mmと比べて色収差の影響がさらに高まります。絞り開放における細部の描写はマスターレンズの広角側より悪くないものの、2~3段絞った場合における高周波成分の解像性能は見劣りします。
周辺
中央と同じく、まずまず安定した結果を得ることができます。ピークはF11付近ですが、特にこだわりがなければF5.6から実用的な画質。
四隅
中央や周辺部と比べると1~2グレード低い結果。絞ると改善しますが、良像を得るにはF11~F16まで絞る必要あり。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F5.6 | 2927 | 2825 | 1937 |
F8.0 | 3389 | 2986 | 2515 |
F11 | 3589 | 3486 | 2966 |
F16 | 3245 | 3222 | 3183 |
F22 | 2981 | 2947 | 2908 |
F32 | 2339 | 2200 | 2163 |
F45 | 1690 | 1682 | 1611 |
実写確認
まとめ
遠景解像テストではズーム全域で良好な結果を得ることが出来ましたが、近距離の解像チャートテストでは状況が一変。F2.8の絞り開放付近は球面収差の影響が残り、明らかにソフトな結果となります。これがプラスとなる撮影シーンもあると思いますが、解像性能やコントラストの高いパンチのある描写が必要な場合は明らかにマイナス。少なくとも1~2段は絞る必要があります。最短撮影距離が短く、クローズアップ性能の高いレンズですが、必ずしもシャープな結果が得られるわけではありません。同じ撮影倍率であれば、ワーキングディスタンスが長くなる望遠側を使ったほうがシャープな結果となる可能性があります。
余談ですが、球面収差が増大することでフォーカスシフトの影響も顕著。F2.8でピントを合わせて固定後、F4やF5.6まで絞るとピントの山から外れます。幸いにもニコンZのAFはF5.6まで実絞りで動作するため、一般的な使用では問題なし。低照度やNDフィルター装着時、F2.8の明るさでピント合わせが必要な場合は気を付けたほうが良いでしょう。
購入早見表
NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 | |||
楽天市場 | Amazon | キタムラ | Yahoo |
ビックカメラ | マップカメラ | ECカレント | eBEST |
キタムラで中古在庫を探す |
作例
関連レンズ
関連記事
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビュー 完全版
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.5 諸収差編 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.4 ボケ 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.3 解像チャート 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.2 遠景解像 編
- NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF 編