ソニー「α7R IV」のレビュー第四弾を公開。今回はカメラのドライブモードの機能や連写速度・バッファ・バッファクリア速度を実際にテストして確認しています。
Index
α7R IVレビュー記事一覧
- ソニー「α7R IV」徹底レビュー 完全版
- ソニー「α7R IV」レビュー オートフォーカス編
- ソニー「α7R IV」レビュー メニュー編
- ソニー「α7R IV」レビュー ドライブ・連写性能編
- ソニー「α7R IV」レビュー ISO/ダイナミックレンジ画質 編
- ソニー「α7R IV」レビュー 解像性能編
- ソニー「α7R IV」レビュー 外観・操作編
まえがき
カメラのおさらい
カメラの特徴
- 商品ページ/仕様表/説明書/ヘルプガイド
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- 発売日:2019年 9月 6日
- 売り出し価格:?387,827
- イメージセンサー:Exmor R CMOS
ー有効画素数:約6100万画素
ーローパスフィルタ:なし
ー裏面照射型:〇
ー手ぶれ補正:5軸5.5段分 - プロセッサ:BIONZ X
- AF:
ーAF方式:ファストハイブリッドAF
ー測距点:567点(位相差検出方式)/425点(コントラスト検出方式)
ーカバーエリア:面積約74%
ー検出機能:瞳・顔・動物瞳 - 動画:
ー4K:30p(全画素読出し時はSuper35mm)
ーFull HD:120p - ファインダー:0.5型OLED 576万ドット
- モニター:3.0型 144万ドット タッチパネル
- 通信機能:Wi-Fi 2.4/5GHz・Bluetooth・NFC
- 対応メディア:SD UHS-II×2
- バッテリー:NP-FZ100
- サイズ:約128.9(幅) x 96.4(高さ) x 77.5(奥行き)mm
- 重量:約665g
2019年に登場した第4世代のフルサイズソニーα7シリーズです。フルサイズミラーレスとしては最も高解像センサーを搭載しつつ、秒間10コマの高速連写や5軸5.5段のボディ内手ぶれ補正に対応しています。ファインダーは576万ドットと高解像化し、背面のチルトモニターは引き続き144万ドットのパネルを使用。
ハイライトは超高画素センサーですが、カメラの使い勝手にも改善が見られるのは注目ポイントといえるでしょう。カメラスペックの強化のみならず、グリップやボタンの形状の改善などエルゴノミクスにも手が加えられています。さらにオートフォーカスには AI を活用したリアルタイムトラッキング機能を搭載、 色や模様空間情報などを利用して簡単に被写体を追尾することが可能。
ボディは従来通りフルマグネシウム合金を採用。高い堅牢性と軽量化を実現しています。目に見えない点としてはボディの防塵防滴仕様が許可されています。外装の随所に様々な工夫が施され、想定外の浸水にも耐えられるような構造に変化しています。
価格をチェック
発売当初の価格はα7R IIIと比べて2?3万円ほど高くなっていますが、現在はキャッシュバックの恩恵もあり、安く買えれば30万円ほどで手に入れることができます。
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連写・ドライブ
ドライブモード・連写速度
初期設定では方向ボタン「左」に登録されているドライブモード機能で設定を変更することが可能。この機能はボタンカスタマイズで配置を変えることができ、個人的にはドライブダイヤルのように、カメラ左肩「C3」に登録して使用。ドライブモードで設定できるモードは以下の通り。
- Hi+:最高10コマ秒
- Hi:最高8コマ秒
- Mid:最高6コマ秒
- Lo:最高3コマ秒
- セルフタイマー:2/5/10秒
- セルフタイマー連続:2/5/10秒・3/5枚
- 1枚ブラケット:0.3~3.0EV・3?9枚
- 連続ブラケット
- ホワイトバランスブラケット:Lo/Hi
- DROブラケット:Lo/Hi
通常の連続撮影のほかにセルフタイマー、ブラケットなども設定可能。ブラケットは露出の間隔や撮影枚数を変えることができるものの、一つの項目を右へ左へ動かす必要があるので非常に面倒くさい。他社のように前後のコマンドダイヤルで柔軟に設定を変えることが出来ると良かった。
ホワイトバランスブラケットは設定値を起点として色温度を上下に変動して3枚の画像を出力する機能。この際に使用するカットは1枚のみで、最初に撮影したRAWデータを使って色温度の異なるJPEGを出力する。この際にRAWも複製されるので、RAW現像時もホワイトバランスの設定を引き継ぐことが可能。基本的にDROブラケットも同じような仕組み。
Tips
α7R IVは連写時のまとまった画像群を再生時に一つにまとめるグループ表示機能に対応。初期設定はオフとなっているので、「再生メニュー」から設定を切り替えておくのがおススメ。
シャッター方式
メカニカルシャッター
「サイレント撮影」「電子シャッター」がオフの状態で機能するシャッター方式。
前後2枚のメカニカルシャッターが駆動することでシャッターショックが最も大きくなる。しかし、ローリングシャッター歪み(後述)や大口径レンズ使用時の露出ムラの影響が非常に少ない。
電子先幕シャッター
先幕シャッターを電子式にきりかえ、後幕シャッターのみメカニカルシャッターを使う。低速シャッタースピード時にシャッターショックを抑えた撮影が可能。ただし、大口径レンズ使用時に高速シャッターを使用すると露出ムラでボケが欠ける可能性あり。ソニー製カメラはこのような現象を回避するための「電子先幕・メカニカルシャッターの自動切換」機能に対応しておらず、前述した影響を避けるには手動でシャッター方式を切り替える必要がある。
電子シャッター
メカニカルな先幕シャッター・後幕シャッターを使わず、どちらも電子的なシャッター方式を利用。メカニカルな動作がないので、無反動・無音での撮影を実現可能(レンズの絞り羽根が動作音となる可能性はある)。ただし、後述するローリングシャッターの影響で動体に歪みが生じたり、人工灯でのバンディングが発生しやすい点に注意が必要。フラッシュ使用時や蛍光灯下での撮影時は避けたいシャッター方式。また、アンチフリッカー機能を使う場合はサイレント撮影をオフにする必要あり。
シャッタースピードの上限はメカニカルシャッター時と同じく1/8000秒まで。
通常、メカニカルな動作のない電子シャッターで連写速度が向上するものの、このカメラでは逆に連写速度が低下するので注意が必要。
ISOオート設定
ISOオート時に使用するISO感度の下限と上限を設定可能。設定したISO感度の中で適正露出を維持するようにISO感度が変動する。ISO感度の範囲限定は拡張ISO感度を含めて設定可能。
さらにこのカメラは絞り優先モードなどでISO AUTO時のシャッタースピード下限を設定することが可能。これにより絞り優先AEでも手ぶれ・被写体ぶれを効果的に抑えることが可能。例えば、ポートレートにおいて、絞り開放を維持しつつ、被写体ぶれを抑える最低限のシャッタースピード下限を設定しておけば適正露出が変化しやすいシーンにも柔軟に対応することができる。
バッファ
カメラは連写撮影時にSDカードへ書き込むまでの空間にバッファがあり、SDカードに書き込むまでの間は一時的にバッファに撮影データが記憶される。カメラの解像性能やバッファサイズによって溜め込むことが出来る撮影枚数には差があり、メモリーカードの種類や性能によってバッファから書き出す速度にも差が発生する。α7R IVの仕様表に記載されている数値は以下の通り。
- JPEG L Exfine:68枚
- RAW:68枚
- RAW+JPEG:68枚
- 非圧縮RAW:30枚
- 非圧縮RAW+JPEG:30枚
このカメラはSD UHS-IIに対応。UHS-Iやそれ以下のメモリーカードでは仕様表通りの結果を得られない可能性がある。UHS-IIは高速書き込みに対応しているものの、UHS-Iなどと比べて少し高価なメモリーカード。個人的にはそれでも使う価値があると思うものの、連写を重視しないのであればSD UHS-Iなどを使うのも一つの選択肢。
とは言え、6100万画素の高解像機としては予想以上の大容量バッファであり、頻繁に連続撮影するシチュエーション以外は十分な性能と感じるはず。
バッファクリア
テスト環境
スマートフォンのストップウォッチ機能を使用。5秒スタートで10秒まで・15秒まで・20秒までの連続撮影を実施し、それぞれ5秒間・10秒間・15秒間で撮影出来た枚数をカウントします。今回は「ソニー 32GB UHS-II Tough G-Series SDカード」を使用。
RAW出力時の14bit対応表
ソニー公式ウェブサイトの早見表を見る限り、14bit/12bit RAWとなる条件は以下の通り。連写時の圧縮RAWは自動的に12bitとなり、連続撮影時のコマ数を稼ぐことが出来る。一方で非圧縮RAWは連写時でも14bitを維持しているので、圧縮RAW時と比べると連続撮影枚数は大きく低下する。
一枚撮影時 | 連続撮影時 | BULB撮影時 | 長秒時NR動作時 | |
圧縮RAW | 14bit | 12bit | 12bit | 12bit |
非圧縮RAW | 14bit | 14bit | 12bit | 12bit |
圧縮RAW出力の場合
このテストはシャッター回数が必然的に多くなるので、メカニカルシャッターを傷めない電子シャッター使用する。前述したように電子シャッター時は連写速度の上限が7コマ秒の制限がある(今回はテスト後に気が付いた)。ご覧のように電子シャッター時はHiとHi+で僅かに差が発生しているものの、基本的に「10コマ秒」には及ばず、概ね「7コマ秒」と仕様通り。
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
Hi | 33 | 68 | 96 |
Hi+ | 36 | 73 | 95 |
HI メカ | 40 | 80 | 95 |
Hi+ メカ | 48 | 83 | 95 |
メカニカルシャッターを使用したところ、概ね仕様通りの連写速度を実現していることを確認。バッファは仕様通り60枚を超えたところで詰まりはじめ、その後は毎秒2.4コマ程度の連写速度となる。最終的(15秒連写)に7コマ秒の電子シャッター時と同程度の撮影枚数となるのは面白い。
つまり、集中的に連続撮影する場合、どの連写モードでもSD UHS-IIがボトルネックとなり70枚以上の連続撮影が難しい。この辺りは次世代モデルでCFexpress Aカードを採用することで改善するはず。
圧縮RAW+JPEG Lの場合
RAW+JPEGを利用してもバッファの詰まり方に大きな変化は無し。
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
Hi | 35 | 67 | 92 |
Hi+ | 38 | 74 | 92 |
非圧縮RAWの場合
電子シャッター使用時は連写速度がさらに低下し、最大でも4コマ秒と遅くなる。さらに30コマを超えたところでバッファがつまりはじめ、15秒の連続撮影でも52枚しか撮影することが出来ない。
メカニカルシャッターを使用した際は概ね仕様通りで、30枚以降で連写速度が急速に低下する。10秒から15秒の連写枚数を考慮すると、毎秒1.4コマ程度。SD UHS-IIカードで処理するには非常に重いデータファイルだと分かる。やはり次世代メディアへの対応が急務。
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
Hi | 21 | 41 | 52 |
Hi+ | 21 | 43 | 52 |
HI+ メカ | 32 | 40 | 47 |
非圧縮RAW+JPEG Lの場合
非圧縮RAW時もJPEG併用で悪影響は無し。
5秒 | 10秒 | 15秒 | |
Hi | 21 | 41 | 51 |
Hi+ | 21 | 43 | 50 |
ローリングシャッター
「ローリングシャッター」とは電子シャッター使用時にセンサーが撮像する方式を指している。センサー全体を一度に露光出来るグローバルシャッター方式が理想的だが、発熱や消費電力など技術的な課題が多いらしい。現在の仕様ではイメージセンサーの上から下まで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的。言葉で説明しても難しいので、以下の動画で分かりやすく解説されている。
現在、コンシューマー向けのデジタルカメラでローリングシャッター方式を採用していないモデルは非常に少ない。海外企業が「PIXII」のようなカメラでグローバルシャッターを採用しているものの、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは存在しない。(キヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)もちろん、このα7R IVもローリングシャッター方式。
ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となってしまう。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生する。
では他のカメラではどのような影響があるのか?と言うのは以下の通り。羽根がコマ切れになっているほどローリングシャッターの幕速が遅く、悪影響が出いやすい性能ということが出来る。
α7R IVはフルサイズセンサーの中でもローリングシャッターの速度が遅く、影響を受けやすい。電子シャッター使用時の動体撮影は避けたほうが無難。
APS-Cクロップ時は富士フイルム「X-S10」のような2600万画素センサーとして利用できるものの、比較してローリングシャッターの影響は遥かに大きい。APS-Cクロップでも電子シャッターは静止体に限定したいところ。
参考
電子シャッター利用時に蛍光灯下で高速シャッターを使うと以下のような影響がある。
蛍光灯は1秒間に120回点滅(西日本)を繰り返している。毎秒120回の点滅中、撮像時に12回の点滅がフレームに写りこんでいるため、単純計算でローリングシャッターの幕速はざっくり100ms。同じ高画素機の「EOS R5」が約16msであることを考慮すると非常に遅い。基本的にローリングシャッターの速度は一定で、RAWが14bit・12bitに関係なく約100msとなる。
今回のおさらい
6100万画素と高解像ながら10コマ秒の高速連写に対応し、余裕のある大容量バッファを搭載。今でこそ「α1」や「EOS R5」「Z 7II」のように、より高速連写に対応した高画素機が存在するものの、まだまだ現役で使うことが出来る連写性能を備えたカメラ。
最速10コマ秒で問題無いのであれば十分に満足のいく性能ではあるものの、バッファフル後のSDカードへの書き込み速度が非常に遅い。特に連写撮影がメインとなる場合は不満と感じるかもしれない。
UHS-II対応カードを使用したとしてもバッファクリアには時間がかかり、毎秒1.4?2.4コマ秒まで低下する。特に非圧縮RAW使用時はバッファが詰まりやすいので、RAW現像時の柔軟性を重視しない限り「圧縮RAW」の使用がおススメ。
前述した通り、次世代モデルでは「CFexpress A」を使用した高速バッファクリアが可能となるはず。さらに「ロスレス圧縮RAW」にも対応することで、柔軟性のあるRAWを連写しやすくなるのではと期待。特に高画素機で連写したい場合はα7R IVではなく、α1やα7R Vを検討するのが良いかもしれない。
参考情報
購入早見表
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