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ソニー「α7R IV」徹底レビュー 完全版

このページではソニー「α7R IV」のレビューを掲載しています。

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 貴重な61MP機
サイズ 比較的小さい
重量 比較的軽い
グリップ 従来機から改善
操作性 従来機から改善
応答性 改善必須
AF性能 あとは検出機能の強化
画質 高解像・高画質
カスタマイズ 圧倒的な自由度
メニュー 後継機に期待
レンズ 圧倒的なラインアップ
ファインダー 非常に良好
モニター 悪くは無いが…
バッテリー 比較的良好
満足度 磨きがかかった第四世代

ココがポイント

比類なき6100万画素と改善したAF・コントロール

6100万画素の超高解像センサーモデル。APS-Cクロップでも2600万画素相当の解像性能を有し、高画素ながらダイナミックレンジや高感度ISOもまずまず良好。さらにオートフォーカスはリアルタイムトラッキングなどに対応して追従性能が大幅強化されている。グリップやコントロールも全体的にブラッシュアップされており、操作性が良くなっているのは地味ながら好印象。

レスポンスがイマイチ

その一方、メニューシステムは依然として複雑で使い辛く、カメラのレスポンスは競合他社と比べてモッサリしているのは気になる部分。また、AFは良好だが、被写体認識機能を搭載したキヤノンやパナソニックと比べると使い勝手の面でもう少し改善が欲しい。

まえがき

カメラのおさらい

カメラの特徴

  • 商品ページ/仕様表/説明書/ヘルプガイド
  • データベース
  • 管理人のFlickrアルバム
  • 発売日:2019年 9月 6日
  • 売り出し価格:?387,827
  • イメージセンサー:Exmor R CMOS
    ー有効画素数:約6100万画素
    ーローパスフィルタ:なし
    ー裏面照射型:〇
    ー手ぶれ補正:5軸5.5段分
  • プロセッサ:BIONZ X
  • AF:
    ーAF方式:ファストハイブリッドAF
    ー測距点:567点(位相差検出方式)/425点(コントラスト検出方式)
    ーカバーエリア:面積約74%
    ー検出機能:瞳・顔・動物瞳
  • 動画:
    ー4K:30p(全画素読出し時はSuper35mm)
    ーFull HD:120p
  • ファインダー:0.5型OLED 576万ドット
  • モニター:3.0型 144万ドット タッチパネル
  • 通信機能:Wi-Fi 2.4/5GHz・Bluetooth・NFC
  • 対応メディア:SD UHS-II×2
  • バッテリー:NP-FZ100
  • サイズ:約128.9(幅) x 96.4(高さ) x 77.5(奥行き)mm
  • 重量:約665g

2019年に登場した第4世代のフルサイズソニーα7シリーズです。フルサイズミラーレスとしては最も高解像センサーを搭載しつつ、秒間10コマの高速連写や5軸5.5段のボディ内手ぶれ補正に対応しています。ファインダーは576万ドットと高解像化し、背面のチルトモニターは引き続き144万ドットのパネルを使用。

ハイライトは超高画素センサーですが、カメラの使い勝手にも改善が見られるのは注目ポイントといえるでしょう。カメラスペックの強化のみならず、グリップやボタンの形状の改善などエルゴノミクスにも手が加えられています。さらにオートフォーカスには AI を活用したリアルタイムトラッキング機能を搭載、 色や模様空間情報などを利用して簡単に被写体を追尾することが可能。

ボディは従来通りフルマグネシウム合金を採用。高い堅牢性と軽量化を実現しています。目に見えない点としてはボディの防塵防滴仕様が許可されています。外装の随所に様々な工夫が施され、想定外の浸水にも耐えられるような構造に変化しています。

追記

α7R IVは既に生産を終了しており、モニターがスペックアップした「α7R IV A」が流通しています。

価格をチェック

発売当初の価格はα7R IIIと比べて2?3万円ほど高くなっていますが、現在はキャッシュバックの恩恵もあり、安く買えれば30万円ほどで手に入れることができます。

ILCE-7RM4A
ソニーストア icon
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α7R IV ILCE-7RM4
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カメラレビュー

外観・箱

箱・付属品

ソニーらしい従来通りのデザインです。インターナショナルオレンジが特徴的ですね。

付属品

箱の中にはカメラ本体のほか、ストラップ、バッテリー、充電器、 USB、 ケーブル、説明書、保証書が同梱されています。無印と比べて外部充電器が付属している点で異なります。

外観

デザイン

全体的なデザインは従来どおりのソニーα7シリーズです。比較的コンパクトなカメラデザインで、ファインダー部など角ばったデザインが特徴的です。カメラのロゴは従来通りの位置、マウント部にはブランドカラーのインターナショナルオレンジを採用。?

各種コントロールのエルゴノミクスは改善しているものの、ボタン配置は従来通りです。古いカメラからの乗り換えで違和感なく使うことができるでしょう。ただし、カメラサイズは徐々に大きくなっており、初代や第2世代のカメラと比べると少し大きい印象。

質感

全体的にマグネシウム合金を使用していることもあり、高剛性で堅牢なボディと感じます。

ハンズオン

サイズ

前述した通り過去のモデルと比べるとカメラサイズは少し大きく感じます。とは言え競合他社と比べるとまだまだ小さく軽量なモデルです。 コンパクトボディは操作性を犠牲にしている場合もありますが、携帯性を重視する場合は強みとなります。

もちろんレンズ交換式カメラにおいて、小型レンズの存在も欠かせません。ソニー純正レンズは比較的大きなレンズが多いですが、最近登場したコンパクトなGレンズや、社外製のレンズが充実しています。

重量

重量は665g。初代Rが465g、R2が625g、R3が657gであることを考えると、徐々に重量が増えています。それでも競合他社と比べると少し軽量。

カメラグリップ

カメラグリップは世代を重ねるごとに大きくなり、そして持ちやすくなっています。この第4世代は特に中指でしっかりとグリップを握ることができるくぼみができています。 後述しますがフロントのコマンドダイヤルの角度も調整され、カメラをしっかりとグリップしたままダイヤルを操作しやすい。

第3世代までのグリップはあまり力が入っていないと感じるデザインでしたが、この第4世代では操作性やエルゴノミクスを意識した設計。言ってしまえば、「撮影デバイス」が「カメラ」に変化してきたように感じます。

コンパクトボディのため依然として小指が余るので、もう少し大きなカメラ大きなグリップが好み。残念ながら、ソニーは第4世代用のエクステンショングリップを用意していません。グリップの形状に自信を持っているのだと思いますが、個人的には用意して欲しかったところ。

グリップは大きく改善したと思いますが、大きなレンズを装着するにはまだ不十分です。特に親指を置く場所(サムレスト)に力をかけづらく、片手でレンズを保持する場合などでカメラが不安定となる場合があります。

また従来どおりのデザインのため、レンズとグリップの間のクリアランスは十分に取れていません。この辺りのデザインは改善が必要と強く感じます。

SmallRigのL型プレートを入手。全高が高くなるもののカメラグリップ性は向上。L型プレートは縦位置部分を取り外すことができるか、側面ポート類にアクセスしやすくするために伸ばすことが可能。脱着用の金具をマグネットで貼り付けておくこともできます。

コントロールレイアウト

正面

従来通りファンクションボタンはありません。レンズリリース用のボタンのみ。競合他社は少なくとも一つのファンクションボタンを搭載しているので、できればソニーを導入して欲しいところ。

前述した通りフロントコマンドダイヤルは角度が調整され操作しやすくなっています。小さな変化ですが、ソニーが操作性を改善しようとする意志が強く表れているポイント。

背面

基本的には従来通りのボタン配置です。特に大きな変化はありません。ただしそれぞれのボタンは大きくなったりストロークが深くなったりとエルゴノミクスが改善しています。

ジョイスティックは従来の埋没式ではなく、使いやすい質感の表面形状のジョイスティックを導入。従来と比べると非常に操作しやすくなり、競合他社と比べて遜色のない使い勝手を実現。

上面

背面のAF-ONボタンが大きくなったことで、リアコマンドダイヤルはカメラ上部へ移動。質感が若干プラスチッキーながら、なめらかで快適に操作できます。

他の部位と同じくボタンレイアウトに大きな変化はありません。 カスタムボタン1・2はグリップしたまま押すには少し後ろ過ぎるのも従来通り。もう少しシャッターボタン側に寄せていると使いやすいように感じました。

露出補正ダイヤルにはトグル式のロック機構を搭載しています。コマンドダイヤルで操作したい場合やそもそも使わない場合の誤操作を防ぐことができます。モードダイヤルはトグル式ではなく、ロック解除ボタンを押しながらダイヤルを回す必要があります。このためグリップしたまま操作するのは難しく、右手でつまむように回転しなければなりません。

底面

カメラの形状に変化があるため、第3世代用の縦位置グリップやエクステンショングリップには対応していません。専用の縦位置グリップを用意する必要があります。第4世代用のエクステンショングリップがないのは残念です。

備考:カメラのレスポンス

第三世代と同じく、レスポンスはあまり良くありません。 特に露出設定などをコマンドダイヤルで変更する時に設定値の反映がわずかに遅延する時があります。ゆっくり落ち着いて撮影する時は問題ありませんが、素早く操作をしたい時に不満を感じることがあります。さらに起動時間が非常に長く、突然のシャッターチャンスに間に合わない場合があります。BIONZ XR搭載モデルでは大幅に改善していると言われているので、新型に期待したいところ。

ファインダー

解像度・発色

576万ドットと高解像なOLEDファインダーパネルを使用しています。これはα1などに使用している944万ドットと比べると低解像ですが、競合他社のトップクラスのがインナーパネルと同程度の仕様。解像度発色ともに不満はありません。

アイポイント

接眼枠から18.5mm、接眼レンズから23mm。通常のアイカップであれば問題ありませんが、社外製の大型アイカップなどを使用すると隅がケラレやすくなります。メガネ装着時も同様。

光学系・アイセンサー

Z 7ほどの感動はありませんが、不自由なく利用することができます。

ファインダー上部にアイセンサーを搭載。ファインダーに目を近づけることで自動的にモニター表示からファインダー表示へと切り替わります。アイセンサーの動作距離はアイカップを外した状態で、接眼枠から約3cmで固定。この設定を変更することは出来ませんが、程よい距離なので設定変更の必要はありません。モニターが上方向または下方向へチルトしている時は、アイセンサーが自動的にオフとなり誤作動を予防。

アイカップ

従来通りの薄くて小さいアイカップが付属します。遮光性は十分ではなく、ゴミがつきやすいのが難点。ソニーα7シリーズには豊富な社外製アクセサリーが存在するので、探せばいくらでも大型アイカップは存在します。

標準装備のアイカップを取り外して、社外製の大型アイカップを装着可能。今回はAmazonにて一般的なスタイルの大型アイカップを用意。この他にもフードマンのような形状をしたアイカップも存在するので、好みのアイカップを用意すると良いでしょう。ただしフ人によってはファインダー像が見えづらくなる可能性あり。

モニター

解像度・発色

従来通り144万ドットのパネルを使用しています。旧型や無印で使用している92万ドットのパネルと比べると発色がよく、色被りも無く、視野角も広いので見やすい。

可動方式

上下に可動するチルトモニターを採用。残念ながらセルフィーには対応していません。

タッチパネル

フォーカスエリアの指定などに使えるタッチ機能を搭載しています。ただし機能は従来通りで、競合他社のように柔軟性のあるライブビュー操作やメニュー画面の操作には対応していません。

SDカードスロット

SD UHS-II対応のメモリーカードスロットを二つ搭載。相変わらず差し込み方向は他者と逆を採用していますが、スロット1とスロット2の位置は一般的な配置となっています。従来までのカメラに慣れている場合は少し戸惑うかも。そして SD カードのフォーマットや管理ファイル作成などには相変わらず時間がかかります。 他社だと1秒か2秒で済む作業がソニーではその2?3倍時間がかかることも。少なくとも従来機と比べて改善している印象は無し。

ドアのロックは従来のスイッチ式開閉からスライド式開閉に変更。防塵防滴用のシーリングはSDカードスロットの周囲にぐるっと一周施されています。防塵防滴仕様が強化されているように見えますが、このシーリングはカバー内の全てを保護しているわけではない点に注意が必要です。

拡張

カメラ左側面のボート類を保護するカバーの形状に一部変更があり、マイク端子がシンプルソケットからヘッドフォン端子側へ移動。USBポートは従来通りC端子とMicro-B端子に対応。最新モデルと異なりどちらのモードでも給電が可能。 基本的にはC端子で給電、Micro-B端子を有線リモコンなどで使うことになると思います。競合他社のようにUSB PD限定の充電給電対応と比べると柔軟性がある。

硬質なゴム製ポートカバーをしっかりと装着する事で防塵防滴仕様。古い世代のα7・α9と比べるとかなり改善した印象。

バッテリー

従来通りNP-FZ100を使用。比較的大容量で競合他社と比べて優れたバッテリーライフを実現しています。前述通り2系統のUSBから充電・充電できるほか、外部充電器も同梱しています。電源周りの自由度の高さは評価できるポイント。

従来機で指摘されていたバッテリースロットのドアの防塵防滴仕様も評価されていますサイズこそ小さいものの、カバーの周囲に密閉用シールを使用しています。?

解像度

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:α7R IV
  • 交換レンズ:SIGMA 70mm F2.8 DG HSM
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • α7R IVの非圧縮RAWファイルを使用
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

この解像力チャートは基本的に4800で打ち止めとなるため、絞り開放からチャートの限界値まで解像できていることがわかります。 F8までは解像力チャートの限界値を叩き出し、F11から回折の影響が発生、F16で大きく低下し、F22でさらにワンランク性能が低下。少なくともF11までは高解像センサーの特性を存分に生かした写真が撮影できると思われます。F16でも満足のいく解像度を得られると思いますが被写体深度に問題がなければF11までの使用がおすすめです。

A7R4
F2.8 4705
F4.0 4722
F5.6 4758
F8.0 4705
F11 4689
F16 3640
F22 2842

非常に高解像のセンサーですが、レンズ側の光学性能が良くなければセンサー性能を十分に生かすことができません。特に大口径レンズやズームレンズの絞り開放では、周辺部まで満足のいく改造性能が得られない可能性があります。

実写で確認

F8まで良好なコントラストを維持しています。しかし、F11からわずかにコントラストが低下し始め、F16?F22で目に見えるコントラスト低下が発生

同じ環境で異なるセンサーをテストしてみたところ以下のようなグラフの結果となりました。この解像力チャートでは、基本的に4000~5000万画素の高画素センサーと似たような結果ですが、 F11を見ると分かるようにアドバンテージは間違いなくあります。おそらく解像力チャートの上限値以上の領域で6100万画素の優位性があると思います。とはいえ大きくクロップしなければ、その差を目で確認することは難しいかもしれません。

F16以降は回折の影響が強くなり、4000万画素センサーどころか、2400万画素センサーと同等の結果です。絞り値で一貫した解像性能を欲しい場合、2400万画素のような低画素センサーのほうがコスパが酔いと感じるかもしれません。

モアレ・偽色

前述した解像力チャートを部分的に切り取ったものが以下の画像です。非常に高解像ですが、部分的にモアレや偽色が発生しています。高解像センサーとはいえ、ローパスフィルターレスによる悪影響は避けられないようです。 同じくローパスフィルターレスの4500万画素センサーと比較すると影響は少ないですが、 大きく拡大した際には偽色やモアレが目立つ可能性あり。

ローパスフィルタ搭載の4500万画素センサーを使用している「EOS R5」とに比べると偽色・モアレはどちらも多い。個人的に高画素センサーでもローパスフィルターは必須であると考えています。画像処理でいくらか改善するものの、補正できていない部分も多く、光学的に問題を回避している方が画質は良好。

ちなみに、似たような6100万画素センサーを搭載する「SIGMA fp L」はローパスフィルターを搭載。シグマは「原理的に偽色が発生しないFoveonセンサーの画質を踏襲し、fp Lにはローパスフィルターを搭載することでモアレの発生を極小まで抑えています。このローパスフィルターの実装も、膨大な画素数を持つfp Lだからこその選択です。」と述べています。

ソニーが「RX1RII」に搭載している「光学式可変ローパスフィルター」が最適解と思うのですが、ソニーEマウントへの実装は難しいのかもしれませんね。

ISO感度ノイズ

ベースISO感度は100で、最大102400まで利用可能。
ISO 1600まではノイズが少なく良好な画質。ISO 3200から徐々にノイズが増え始め、ISO12800でコントラストに影響を及ぼすノイズが発生。ISO 25600で目に見えるカラーノイズが画質を低下させ、ISO 51200でノイズは増大し、最終的にISO 102400でハイライトまでノイズまみれとなる。
個人的にベストを尽くすのであればISO 1600まで、日常的な撮影の許容範囲はISO 6400、緊急用でISO 12800を使用。ISO 25600は極力避けたい。

色の再現性だけで言えばISO 25600までは良好。と言ってもコントラストは低下しているので、状況によってはシャドウが緩い画質となる可能性あり。

α7Cとの比較

ダイナミックレンジ

いつものカラーチャートを使用し、適正露出から-5EVのアンダー、+5EVのオバーまで11枚の作例を撮影。撮影後にRAW現像ソフトで全ての作例を適正露出に補正し、シャープネスやノイズ処理をオフにした状態で現像しています。撮影時はベースISO感度の「100」に固定。

注意

前回の失敗から「ホワイトバランスは固定しよう」と決めていたのに失念していました。露出オーバーの作例で色がずれているのは無視してください。

非圧縮RAW

モノクロ

-5EVから復元すると、シャドウでに近い領域でノイズが発生するものの、まだまだ良好な画質に見えます。基本的に-3EVまでの増感はノイズフリー、-4EVの増感で僅かにノイズが発生し、-5EVの増感でディテールに影響を及ぼす可能性が出てきます。-4?-5EVにおける増感時のシャドウ持ち上げは避けたほうが良さそう。

ハイライトは+4EVまで諧調が保たれていますが、+5EVで強い白飛びが発生しているように見えます。α7Cやα7 IIIの2400万画素CMOSセンサーと比べると、ハイライト側が少し狭く、シャドウ側が少し広い。

参考:α7C

カラー

露出アンダー時の増感が快適に復元できる反面、露出オーバー時は+3EVの時点で情報が失われているように見えます。やはり2400万画素CMOSと比べて、ベースISO感度のダイナミックレンジはシャドウ寄りとなっている模様。

参考:α7C

圧縮RAW

モノクロ

非圧縮RAWと比べて、-4?-5EVの増感時に明らかなノイズが発生。画質に影響を与えることは間違いないので、極端な増感は避けたほうが良いでしょう。その一方でハイライトの情報は非圧縮RAWと同等に見えます。シャドウの情報が欲しければ非圧縮RAW、必要無ければ圧縮RAWでOK。特に6100万画素のα7R IVは非圧縮RAWのファイルサイズが巨大なので、積極的に切り替えて対応したい。個人的にシャドウの情報を残したままファイルサイズを小さくできる「ロスレスRAW」の選択肢がほしいところ。

カラー

実写ではよほどシャドウを極端に増感しない限り圧縮RAWでも問題無さそう。例えば逆光時にハイライトの情報を残しつつ、日陰に隠れた部位を増感したい場合は非圧縮RAWを選びたい。

参考:EOS R5

4500万画素センサーを搭載するキヤノン「EOS R5」と比べると、ハイライトはソニー有利でシャドウは同等に見えます。

オートフォーカス

カバーエリア

α7R IVは567点の像面位相差検出AFと425点のコントラスト検出AFに対応。像面位相差AFのカバーエリアは垂直99.7%、水平74.0%に対応しており、キヤノンやニコンと比べて水平のカバーエリアが少し狭い(それぞれ100 %・90%)ものの、広範囲で像面位相差検出が可能となっている。

カバーエリアの種類

  • ワイド
  • ゾーン
  • 中央
  • フレキシブルスポット L/M/S
  • 拡張フレキシブルスポット L/M/S
  • トラッキングAF

オーソドックスなAFフレームに幅広く対応しているが、競合他社のほうな「ゾーン垂直・水平」「菱形」など、少し変わったAFエリアには対応していない。
まず使わないフォーカスエリアはメニューの設定で呼び出し画面から表示を消すことが可能。これによりAFフレーム変更時の時間を短縮することができる。必要無いと感じたフレームは積極的に消しておきたいところ。

フォーカスエリアの循環設定があり、これをオンにしておくことで、フレーム左端から右端へ瞬間的に移動することが可能となる。被写体がダイナミックに動く際は設定しておくと便利。

AF-S・AF-C

組み合わせるレンズにもよるが、基本的に高速かつ正確。ただし、純正レンズと社外製レンズで挙動が少し異なっている。

  • 純正:AF-SでのAF速度が速く、AF-Cは僅かに遅いが滑らかに動作する。
  • 社外製:AF-Sでウォブリングが混じりやすく、合焦時間が遅くなる。AF-Cはウォブリングが無くなり、見違えるようにAFが高速になる。

特に社外製レンズはAF-SとAF-Cで印象がガラッと変わるケースが多いので使用時に気を付けたい。

ソニーαのライブビューは基本的に実絞り(設定した絞り値まで絞り羽根が動作する)である。絞りの状態によってはそのままAFが動作したり、小絞りの場合は少し開けた状態でAFを動作する場合がある。フォーカスシフトの影響を回避できたり、実際の被写界深度を確認しながら利用できるのは便利だが、絞りが動作することによりセンサーに届く光量が少なくなるのは避けられない。特に低照度の環境ではAF性能の低下に繋がる可能性もある。
ここ最近のソニー製カメラは「AF時の絞り駆動」設定に「フォーカス優先」項目が追加され、絞りの挙動をユーザー側で設定できるようになった。(サイレント優先は以前からある)

  • 標準:標準的な絞り駆動方式を使用する。
  • フォーカス優先:レンズの絞り駆動方式を変更して、オートフォーカス性能を優先する。電子シャッターで連続撮影を行う場合に、絞り値がF11より大きくてもフォーカスを合わせ続けることができる。
  • サイレント優先:レンズの絞り駆動方式をサイレント優先にし、絞り駆動音を[標準]より抑えることができる。

ソニー:フォーカス設定ガイドより

特にフォーカスを重視したい場合は「フォーカス優先」を選択することで開放測距を利用することが可能。

優先設定は3種類あるが、基本的にAF-C時はバランス重視が良さそう。「フォーカス優先」は被写体やレンズのAF性能によって撮影枚数が大きく変動するので避けたほうが良いかもしれない。連写が不安定でも打率を高めたいのであればフォーカス優先も一つの手か?

  • フォーカス優先
    ピントが合うまでシャッターは切れないので、連続撮影の速度よりもフォーカスを重視するときに設定します。
    (シーンよって、連続撮影の速度が低下したり、撮影間隔が不均等になる場合があります。)
  • レリーズ優先
    タイミングを逃さずに撮影できますが、ピントの合わない写真が多数撮影されてしまうことがあります。連続撮影の速度を確保したい場合に有効です。
  • バランス重視
    ピントはレリーズ優先よりも合う可能性が高くなります。連続撮影の速度はレリーズ優先よりやや劣ります。レリーズ直前の状況を判断して動作を決めるため、動体撮影時の設定として推奨していますが、タイミングを重視する場合はレリーズ優先をご使用ください。
  • バランス重視とレリーズ優先の比較
    レリーズ優先のメリットは、連続撮影中に被写体が大きく動いた場合でも、連続撮影の間隔が維持できることです。連続写真を合成したり、動画作成用として撮影するのに適しています。
    例を挙げると、サッカーでシュートを決めるシーンを撮影する場合、フォーカス優先だとシュートの瞬間が撮れない、レリーズ優先だと撮影は出来るが全部ピンボケの写真となる、しかしバランス重視だと多少救える写真がある、というイメージが近いです。

ソニー:フォーカス設定ガイドより

静止画におけるAF-Cのカスタマイズは「追従感度」の変更のみ。他社のように「乗り移り特性」「速度変化に対する追従性」など細かいカスタマイズは無い。と言ってもソニーのトラッキング性能は優れているので、特に細かい設定が必要無いのかもしれない。

フォーカスモードがAF-Cの場合に、ピントの追従性を5段階で設定できます。

  • 1(粘る)?2:追従性は低い(安定性重視)
    ピント位置が安定し、捉えた被写体を粘り強く追従し続けます。
  • 4?5(敏感):追従性は高い(即応性重視)
    1つの被写体に追従し続けず、近くの被写体に素早くピントを合わせます。

アメリカンフットボールのように選手が密集するスポーツで特定の選手を追い続ける場合は2、被写体の前を人一人が横切る程度なら3(標準)ぐらいが目安です。
サッカーは一般的には選手の密集度が低いので、粘りよりも敏感度を優先させた4の設定が適しています。4に設定すると、被写体の前に他の選手の腕がかかった程度だとピントは維持されますが、他の選手の体全体が被写体に被ってしまうとそちらにピントが引かれるイメージです。

ソニー:フォーカス設定ガイドより

設定項目がシンプルなので、複雑なカスタマイズで頭を抱える必要が無いのはメリットと言えるかも。フォーカス設定ガイドの解説も分かりやすい。

検出機能

他社のように身体の検出には対応していないものの、人物・動物の顔・瞳検出に対応。人と動物は切り替える必要があるので、頻繁に切り替える場合はFnメニューなどショートカットコマンドを利用したい。

素顔

検出精度は非常に良好で、瞳が見える場合は常に瞳を追従し続け、左右の瞳で最適なほうを自動的に選んでくれる。残念ながら人体認識には対応していないため、瞳や顔が隠れてしまうと通常のフォーカスモードへと移行する。この際の追従性は人体認識に対応しているキヤノンやパナソニックと比べると不安定だが、「トラッキング」AFの場合はそのままトラッキングへと移行して安定感のある追従が可能。

帽子

帽子をかぶった際の検出は他社も苦戦するポイント。ソニーも検出能力は完璧から程遠く、瞳がしっかり現れないと顔や瞳を検出できない。さらに人体認識機能が無いので初動のピント位置が不安定となりやすい。この点でキヤノンやパナソニックは遥かに安定しやすい。さらにパナソニックは瞳の検出精度も優れている。

眼鏡

顔は検出するものの、眼鏡越しの瞳AFは不安定。瞳がフレームに隠れていると検出から外れてしまう。今回は顔をクローズアップしているものの、被写体から離れていた場合、検出が外れたタイミングで他の物体に乗り移ってしまうことがある。このような場合に頭部認識のキヤノンや人体認識のパナソニックは比較的安定したフォーカスが可能。

動物瞳

α7R IVは動物瞳検出に対応。AFメニューで「動物瞳」を設定することで検出が可能となる。使い勝手は基本的に人物の瞳と同じだが、顔検出には対応していないので瞳の検出が外れると動作が不安定となる。このため、トラッキングAFとの併用が望ましい。
しかし、動物瞳に設定しているとトラッキングAFが使えなくなるのが非常に残念。ゾーンやフレキシブルスポットなど、検出範囲を狭めて自分で追いかけるしかない。

メニューシステム

ソニーα7R IVのメニューシステムはα7S IIIやα1に採用されている新開発のメニューシステムではなく、従来通りページ数の多い厄介なインターフェース。全てをブログに掲載するのは面倒なので、動画にて一通り確認できるようにYoutubeにサンプルを公開。

この世代のメニューシステムは第一層の下に機能群が配置されており、カテゴリ別のタブが存在しない。このため、特定の設定項目にアクセスし辛く、いちいち探す必要あり。さらに第一層のタブを切り替えると第二層のページが初期化され「1ページに戻る」のがこれまた面倒くさい。

さらにメニューシステムはタッチ操作に対応しておらず、全てにおいてカメラのボタン操作が必須。メニュー時の「戻る」機能はMENUボタンのみにも関わらず、ボタンが左肩に配置されているので左手での操作が必須。これはストレスフル。
ただし、カメラのボタンカスタマイズで自由な位置に「MENU」機能を配置出来るので、ボタンに余裕があればMENUボタンを配置することで負担が軽減する。個人的には今まで「C4(ゴミ箱ボタン)」に設置していたものの、α7R IVはC4に「ヘルプ機能」が付いてしまい、従来通り「戻る」機能を使えなくなってしまったのは残念。

撮影メニュー1

ページ数が多すぎる

撮影に関係する基本的な設定項目を15ページに分けてリスト化されている。カテゴリ別のタブは存在せず、目的の設定項目を見つけるために15ページの中からいちいち探す必要あり。面倒だと思ったら積極的にマイメニュー機能を活用したい。
さらに、設定項目の中には1つにまとめることが出来そうな内容まで細分化されており、非常に効率の悪さを感じる。例えば…

  • RAW記録方式・ファイル形式
  • 長秒NR・高感度NR
  • AF-S/AF-C優先設定
  • JPEG画質・サイズ
  • ホワイトバランス・AWB優先設定

などなど、簡略化できそうな項目はいくつも存在する。少なくと第一層の下にカテゴリ別に分けられた第二層のタブがあるけでも便利そう。この辺りは新型メニューシステムで改善されているようなので、α7R Vに期待したい。

ただ、操作が非常に面倒ではあるものの、それは機能性や自由度の高さを裏付けているとも言える。複雑なメニューシステムは自由度の高いボタンカスタマイズやFnメニューで補うことが可能で、実際にメニューシステムが不便と感じる機会は少ない。

柔軟性の高い設定呼び出し機能

 

ソニーのメニューシステムで特徴的なのはメモリー機能。モードダイヤル3枠のユーザーモード以外に、メモリカードに記憶できる4つの設定枠(デュアルスロットで計8枠)でカメラの設定を記憶可能。風景・動物・家族・MFレンズ・モノクロ写真などなど、シチュエーションに合わせた設定を分けて登録できるのは非常に便利。

さらに「押す間カスタム設定呼び出し」が3枠存在し、基本的なカメラ設定を瞬間的に呼び出すことも可能。瞬間的に訪れるシャッターチャンスに対して柔軟に対応することが出来るのは魅力的。キヤノンはEOS R5やRで電子的なモードメニュー機能を実装しているにも関わらず、このような柔軟性の高いシステムを備えていないのが残念なのです。

インターバル撮影復活

α7R IIIがファームウェアアップデートで対応したインターバル撮影を初期装備。撮影開始時間や間隔、回数など基本的な設定のほか、AFやサイレント撮影などを設定可能。ただし、競合他社のようにタイムラプス動画の生成機能は存在しない。動画を生成するにはパソコンを使った専用ソフトウェアでの処理が必要。

動画メニュー2

撮影メニュー1に引き続き、11ページと操作が面倒なメニュー項目。動画撮影の設定や撮影の補助、カスタマイズに役立つ設定項目が揃っている。特筆すべき項目は無く、カスタマイズについては後述する。

通信メニュー

ネットワークカテゴリを第一層に配置しているカメラメーカーはそう多くない。手持ちの機材で確認する限り、キヤノンとソニーのみ。しかも、ソニーは3ページもある。
よく見ると機能的で、一度設定したら使わなくなる「Wi-Fi」「Bluetooth」はページ2に引っ込め、ちょいちょい設定を変えるであろうリモート時の設定項目をページ1に配置しているあたりは工夫が見られる。

ただし、PCリモートとスマートフォンのリモート機能は干渉する存在らしく、どちらかがオンの場合はどちらかをオフにしておく必要がある。自動的に切り替われば良いものの、今のところ手動設定しか方法が無いように見える。

スマートフォンとの接続

Wi-Fiによる接続はQRコードで簡単に完了し、Bluetoothを使ったペアリングも正常であれば使用時に簡単操作で完了する。動作は非常に安定しており、接続までの時間は比較的短い。少し前まで「Imaging Edge Mobile」は機能不足で物足りないアプリと感じていたものの、今は特に不満を感じない水準まで仕上がっているように思える。

Bluetoothでペアリングし、カメラ側が適切な設定であれば、電源オフの状態でもスマートフォン側から起動して画像の閲覧や転送が可能。起動から接続までの所要時間は許容範囲内で、特に不満は感じない。

PCとの接続

PCとUSBやWi-Fi経由で直接接続したり、アクセスポイント経由でのリモート撮影が可能。アクセスポイント経由での接続は自前の環境で上手くいかなかったものの、USBやWi-Fi Directでの接続は比較簡単で安定した動作を確認済み。Wi-Fi接続はケーブルレスで便利とは言え、RAWファイルサイズが大きいので、高速転送が可能なUSB接続が無難な選択肢のように思える。

再生メニュー

これと言って特筆すべき項目は無い。敢えて言えば、連写時におけるひとまとまりの画像群をグループ化する「グループ表示」機能が初期設定でオフとなっているので、必要であれば忘れずにオンにしておきたいところ。また、拡大倍率や拡大位置の設定やインターバル再生速度の設定など芸が細かいので、一通り目を通しておき、自分好みに設定しておくと使いやすくなる。

設定メニュー

他のカテゴリと同じく、セットアップメニューも7ページと多い。ファインダーやモニターの表示や操作など「撮影メニュー2」に入れても良いような内容まで含まれているのが厄介。ファインダーならファインダーで一か所にまとめて欲しいところ。ちなみにBluetoothリモコンが「ネットワーク」に含まれているのに対して、赤外線リモコンは「セットアップ」に存在するのも混乱する要素の一つ。

また、メモリーカード・ファイル関連の設定項目だけで1ページ以上ある。フォーマットや記録メディア設定など基本的な機能から、著作権情報、シリアル番号、静止画/動画それぞれのファイル設定など機能が幅広い。

設定不可の場合

ソニーのメニューシステムは何らかの原因でグレーアウト(=機能しない)項目も選択可能。その際は「なぜ使えないのか?」を干渉する原因まで挙げて通知してくれるのが便利。例えばオリンパスはグレーアウトの項目を選択できず、ニコンは選択肢しても原因まで表示してくれない。

カスタマイズ

ボタンカスタマイズ

α7R IVはカメラ側で12カ所、レンズ側で1カ所の計13か所をカスタマイズ可能。ボタンの位置によって割り当てることが出来る機能に大きな制限があるメーカーと異なり、多くのボタンが自由にカスタマイズできる仕様となっている。(方向ボタン4カ所とホイールはカスタマイズが少し限定される)
登録できる機能は最大で27ページ(1ページで最大6項目)にも及び、機能が制限されるボタンでも22ページの中から選択可能。今回は登録できる機能の紹介を割愛するものの、自由度の高さで言えばキヤノンやニコンよりも遥かに良好。

残念な点があるとすれば、タッチパネルを有効利用できていないこと。例えば、パナソニックや富士フイルムはタッチパネルを操作することでFn登録枠を4?5も増やしている。将来的にこの機能を実装することで、ソニーのカスタマイズ機能は鬼に金棒となるはず。
また、ボタンカスタマイズはカメラ1台につき1つの設定に固定されている。ユーザーモードだけで独自のボタン配置とすることは出来ない。

ファンクションメニュー

カメラ背面のFnボタンで呼び出すことが出来るFnメニュー。静止画・動画で自動的に切り替わる12枠に任意の機能を登録することが可能。やはり登録できる機能が豊富で、静止画では15ページの中から好きな機能を選ぶことが出来る。
残念ながら、メニューシステムと同じくタッチパネルでの操作は出来ない。

マイダイヤル

α9で導入されたマイダイヤル機能をα7R IVも搭載。マイダイヤル設定枠1~3に設定した機能を、ボタンカスタマイズで登録できる「マイダイヤル呼び出し」機能で呼び出すことが可能。ボタンを押している間だけ呼び出すことが出来たり、トグル式で呼び出し・切替も可能。カスタマイズの自由度はボタンやFnほどでは無いものの、フォーカス位置の設定やホワイトバランス、クリエイティブスタイルの変更などに使用可能。
注意点として、カスタマイズの枠はカメラ1台につきだ3枠固定で、モードを切り替えてもカスタマイズの内容は記憶されている。さらに、モード移行時もマイダイヤルの状態は引き継がれるので、使い終わったら通常に戻す癖をつけておきたい(トグル式の場合)

連写・ドライブ

ドライブモード・連写速度

初期設定では方向ボタン「左」に登録されているドライブモード機能で設定を変更することが可能。この機能はボタンカスタマイズで配置を変えることができ、個人的にはドライブダイヤルのように、カメラ左肩「C3」に登録して使用。ドライブモードで設定できるモードは以下の通り。

  • Hi+:最高10コマ秒
  • Hi:最高8コマ秒
  • Mid:最高6コマ秒
  • Lo:最高3コマ秒
  • セルフタイマー:2/5/10秒
  • セルフタイマー連続:2/5/10秒・3/5枚
  • 1枚ブラケット:0.3~3.0EV・3?9枚
  • 連続ブラケット
  • ホワイトバランスブラケット:Lo/Hi
  • DROブラケット:Lo/Hi

通常の連続撮影のほかにセルフタイマー、ブラケットなども設定可能。ブラケットは露出の間隔や撮影枚数を変えることができるものの、一つの項目を右へ左へ動かす必要があるので非常に面倒くさい。他社のように前後のコマンドダイヤルで柔軟に設定を変えることが出来ると良かった。
ホワイトバランスブラケットは設定値を起点として色温度を上下に変動して3枚の画像を出力する機能。この際に使用するカットは1枚のみで、最初に撮影したRAWデータを使って色温度の異なるJPEGを出力する。この際にRAWも複製されるので、RAW現像時もホワイトバランスの設定を引き継ぐことが可能。基本的にDROブラケットも同じような仕組み。

Tips

α7R IVは連写時のまとまった画像群を再生時に一つにまとめるグループ表示機能に対応。初期設定はオフとなっているので、「再生メニュー」から設定を切り替えておくのがおススメ。

シャッター方式

メカニカルシャッター

「サイレント撮影」「電子シャッター」がオフの状態で機能するシャッター方式。
前後2枚のメカニカルシャッターが駆動することでシャッターショックが最も大きくなる。しかし、ローリングシャッター歪み(後述)や大口径レンズ使用時の露出ムラの影響が非常に少ない。

電子先幕シャッター

先幕シャッターを電子式にきりかえ、後幕シャッターのみメカニカルシャッターを使う。低速シャッタースピード時にシャッターショックを抑えた撮影が可能。ただし、大口径レンズ使用時に高速シャッターを使用すると露出ムラでボケが欠ける可能性あり。ソニー製カメラはこのような現象を回避するための「電子先幕・メカニカルシャッターの自動切換」機能に対応しておらず、前述した影響を避けるには手動でシャッター方式を切り替える必要がある。

電子シャッター

メカニカルな先幕シャッター・後幕シャッターを使わず、どちらも電子的なシャッター方式を利用。メカニカルな動作がないので、無反動・無音での撮影を実現可能(レンズの絞り羽根が動作音となる可能性はある)。ただし、後述するローリングシャッターの影響で動体に歪みが生じたり、人工灯でのバンディングが発生しやすい点に注意が必要。フラッシュ使用時や蛍光灯下での撮影時は避けたいシャッター方式。また、アンチフリッカー機能を使う場合はサイレント撮影をオフにする必要あり。
シャッタースピードの上限はメカニカルシャッター時と同じく1/8000秒まで。
通常、メカニカルな動作のない電子シャッターで連写速度が向上するものの、このカメラでは逆に連写速度が低下するので注意が必要。

ISOオート設定

ISOオート時に使用するISO感度の下限と上限を設定可能。設定したISO感度の中で適正露出を維持するようにISO感度が変動する。ISO感度の範囲限定は拡張ISO感度を含めて設定可能。

さらにこのカメラは絞り優先モードなどでISO AUTO時のシャッタースピード下限を設定することが可能。これにより絞り優先AEでも手ぶれ・被写体ぶれを効果的に抑えることが可能。例えば、ポートレートにおいて、絞り開放を維持しつつ、被写体ぶれを抑える最低限のシャッタースピード下限を設定しておけば適正露出が変化しやすいシーンにも柔軟に対応することができる。

バッファ

カメラは連写撮影時にSDカードへ書き込むまでの空間にバッファがあり、SDカードに書き込むまでの間は一時的にバッファに撮影データが記憶される。カメラの解像性能やバッファサイズによって溜め込むことが出来る撮影枚数には差があり、メモリーカードの種類や性能によってバッファから書き出す速度にも差が発生する。α7R IVの仕様表に記載されている数値は以下の通り。

  • JPEG L Exfine:68枚
  • RAW:68枚
  • RAW+JPEG:68枚
  • 非圧縮RAW:30枚
  • 非圧縮RAW+JPEG:30枚

このカメラはSD UHS-IIに対応。UHS-Iやそれ以下のメモリーカードでは仕様表通りの結果を得られない可能性がある。UHS-IIは高速書き込みに対応しているものの、UHS-Iなどと比べて少し高価なメモリーカード。個人的にはそれでも使う価値があると思うものの、連写を重視しないのであればSD UHS-Iなどを使うのも一つの選択肢。
とは言え、6100万画素の高解像機としては予想以上の大容量バッファであり、頻繁に連続撮影するシチュエーション以外は十分な性能と感じるはず。

バッファクリア

テスト環境

スマートフォンのストップウォッチ機能を使用。5秒スタートで10秒まで・15秒まで・20秒までの連続撮影を実施し、それぞれ5秒間・10秒間・15秒間で撮影出来た枚数をカウントします。今回は「ソニー 32GB UHS-II Tough G-Series SDカード」を使用。

RAW出力時の14bit対応表

ソニー公式ウェブサイトの早見表を見る限り、14bit/12bit RAWとなる条件は以下の通り。連写時の圧縮RAWは自動的に12bitとなり、連続撮影時のコマ数を稼ぐことが出来る。一方で非圧縮RAWは連写時でも14bitを維持しているので、圧縮RAW時と比べると連続撮影枚数は大きく低下する。

一枚撮影時 連続撮影時 BULB撮影時 長秒時NR動作時
圧縮RAW 14bit 12bit 12bit 12bit
非圧縮RAW 14bit 14bit 12bit 12bit
圧縮RAW出力の場合

このテストはシャッター回数が必然的に多くなるので、メカニカルシャッターを傷めない電子シャッター使用する。前述したように電子シャッター時は連写速度の上限が7コマ秒の制限がある(今回はテスト後に気が付いた)。ご覧のように電子シャッター時はHiとHi+で僅かに差が発生しているものの、基本的に「10コマ秒」には及ばず、概ね「7コマ秒」と仕様通り。

5秒 10秒 15秒
Hi 33 68 96
Hi+ 36 73 95
HI メカ 40 80 95
Hi+ メカ 48 83 95

メカニカルシャッターを使用したところ、概ね仕様通りの連写速度を実現していることを確認。バッファは仕様通り60枚を超えたところで詰まりはじめ、その後は毎秒2.4コマ程度の連写速度となる。最終的(15秒連写)に7コマ秒の電子シャッター時と同程度の撮影枚数となるのは面白い。
つまり、集中的に連続撮影する場合、どの連写モードでもSD UHS-IIがボトルネックとなり70枚以上の連続撮影が難しい。この辺りは次世代モデルでCFexpress Aカードを採用することで改善するはず。

圧縮RAW+JPEG Lの場合

RAW+JPEGを利用してもバッファの詰まり方に大きな変化は無し。

5秒 10秒 15秒
Hi 35 67 92
Hi+ 38 74 92
非圧縮RAWの場合

電子シャッター使用時は連写速度がさらに低下し、最大でも4コマ秒と遅くなる。さらに30コマを超えたところでバッファがつまりはじめ、15秒の連続撮影でも52枚しか撮影することが出来ない。
メカニカルシャッターを使用した際は概ね仕様通りで、30枚以降で連写速度が急速に低下する。10秒から15秒の連写枚数を考慮すると、毎秒1.4コマ程度。SD UHS-IIカードで処理するには非常に重いデータファイルだと分かる。やはり次世代メディアへの対応が急務。

5秒 10秒 15秒
Hi 21 41 52
Hi+ 21 43 52
HI+ メカ 32 40 47
非圧縮RAW+JPEG Lの場合

非圧縮RAW時もJPEG併用で悪影響は無し。

5秒 10秒 15秒
Hi 21 41 51
Hi+ 21 43 50

ローリングシャッター

「ローリングシャッター」とは電子シャッター使用時にセンサーが撮像する方式を指している。センサー全体を一度に露光出来るグローバルシャッター方式が理想的だが、発熱や消費電力など技術的な課題が多いらしい。現在の仕様ではイメージセンサーの上から下まで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的。言葉で説明しても難しいので、以下の動画で分かりやすく解説されている。

現在、コンシューマー向けのデジタルカメラでローリングシャッター方式を採用していないモデルは非常に少ない。海外企業が「PIXII」のようなカメラでグローバルシャッターを採用しているものの、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは存在しない。(キヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)もちろん、このα7R IVもローリングシャッター方式。

ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となってしまう。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生する。
では他のカメラではどのような影響があるのか?と言うのは以下の通り。羽根がコマ切れになっているほどローリングシャッターの幕速が遅く、悪影響が出いやすい性能ということが出来る。

α7R IVはフルサイズセンサーの中でもローリングシャッターの速度が遅く、影響を受けやすい。電子シャッター使用時の動体撮影は避けたほうが無難。

APS-Cクロップ時は富士フイルム「X-S10」のような2600万画素センサーとして利用できるものの、ローリングシャッターの影響は遥かに大きい。

参考

電子シャッター利用時に蛍光灯下で高速シャッターを使うと以下のような影響がある。

蛍光灯は1秒間に120回点滅(西日本)を繰り返している。毎秒120回の点滅中、撮像時に12回の点滅がフレームに写りこんでいるため、単純計算でローリングシャッターの幕速はざっくり100ms。同じ高画素機の「EOS R5」が約16msであることを考慮すると非常に遅い。基本的にローリングシャッターの速度は一定で、RAWが14bit・12bitに関係なく約100msとなる。

結論:勢いに乗る第四世代

肯定的見解

ココがおすすめ

  • 堅牢なマグネシウム合金製ボディ
  • 以前よりも洗練されたカメラグリップ
  • 第4世代で共有できるカメラアクセサリー
  • 以前よりも洗練されたダイヤル・ボタン・ジョイスティック
  • 良好なファインダー性能
  • 強化された防塵防滴仕様
  • USB-C+Micro USBポート
  • 6100万画素の超高解像センサー
  • 画素数を考慮すると柔軟性のあるRAW画質
  • 追従性能の高いトラッキングAF
  • 強力な瞳検出AF
  • 自由度の高いカスタマイズ
  • まずまず良好なバッファ

6100万画素の超高解像センサーを搭載しているので、APS-Cまでクロップしても現行のα6xxxシリーズより高解像度で撮影が可能。つまりAPS-C用レンズを装着しても普通に使えてしまうのが凄い。当然、フルサイズレンズ装着時のクロップ耐性は凄まじいものがある。高解像ながらダイナミックは良好で、高感度ノイズの耐性もまずまず良好。バッファも十分に大きく、10コマ秒連写で撮影しても十分なコマ数を稼ぐことが出来る。オートフォーカスは新世代のアルゴリズムに対応し、追従性の高いリアルタイムトラッキングを使えるのが大きい。

さらにスペックのみならず、カメラの操作性も所々に改善が見られ、従来機と比べて使いやすくなっているのは評価できるポイント。グリップは握りやすくなり、ボタンはより押しやすくなり、ジョイスティックは使いやすくなった。以前のような「撮像デバイス」と言いたくなるような外観から、だいぶカメラらしくなってきており、キヤノン・ニコンに取って代わる存在として醸成しつつある。

批判的見解

ココがダメ

  • グリップーレンズの空間は依然として窮屈
  • 依然として使い辛いC2・C1ボタン
  • カメラのレスポンスが第3世代と同程度
  • 他社と比べると少し見劣りするモニター解像度
    (α7R IV Aで改善している)
  • タッチパネルの機能が限定的
  • バッファクリア能力がSD UHS-IIでは力不足
  • ローパスフィルターレスによるモアレ・偽色
  • ロスレス圧縮RAWの選択肢がない
  • 被写体認識に対応していない
  • 面倒なメニューシステム
  • ローリングシャッターの影響が強い

洗練されてきた第四世代ながら、まだまだ改善点も多い。個人的に気になるのはカメラのレスポンスで、ダイヤル操作で絞り値の変化が遅かったり、SDカードへの書き込み中に操作の遅延が見られたり、細かいところでフラストレーションが溜まりやすい。
タッチパネルも反応がやや遅く、それ以前の問題としてタッチ操作で出来ることが非常に少ないのが残念。パナソニックのようにタッチFnに対応していなければ、キヤノンのようにメニューやライブビューで設定値の変更が出来る訳でもない。カメラのレスポンスを含めて、次世代モデル「α7R V」はBIONZ XRプロセッサを搭載して改善していると期待したいところ。

大きなバッファを搭載しているのは評価できるとして、そこからメモリーカードへの書き込み速度が遅いのは別の残念なポイント。明らかにSD UHS-IIがボトルネックとなっているので、CFexpress Aカード対応スロットへの換装が期待される。
また、ロスレス圧縮RAWの選択肢が無いので、バッファはストレージに負担がかかりやすい点も気を付けておきたい。

総評

管理人
管理人
満足度は90点。
欠点も目立つが、現状で他に選択肢がほとんど存在しない6100万画素の高解像センサーは貴重な存在。カメラの基本性能も非常に良好で、応答性やインターフェースに目を瞑れば満足できると思う。そして、おそらく第五世代(α7R V)は残る欠点を潰した完成度の高いカメラとなるはず。

参考情報

購入早見表

ILCE-7RM4A
ソニーストア icon
楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo
α7R IV ILCE-7RM4
ソニーストア icon
楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo

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