ソニーα7 IIIを使い始めて約1年(間3か月のブランクあり)、ニコンZ 7・キヤノンEOS Rを使い始めて約半年。ある程度使い込んだので腰を据えてじっくり比較レビュー。全てを1ページに詰め込むと凄まじい量となるため、細分化して徐々に掲載していこうと思います。
第5回はカメラ背面モニターについて。解像度や見やすさ、強度や操作性などをじっくり見ていきましょう。
Index
徹底比較 背面モニター編
仕様のおさらい
R | Z 7 | α7 III | |
形式 | TFT液晶 | TFT液晶 | TFT液晶 |
解像度 | 210万ドット | 210万ドット | 92万ドット |
サイズ | 3.15型 | 3.2型 | 3.0型 |
可動方式 | バリアングル | チルト | チルト |
タッチパネル | 対応 | 対応 | 対応 |
リフレッシュレート | 30-60fps? | 60fps? | 60fps? |
明るさ調整 | 7段階 | 11段階 | 5段階 |
色合い調整 | 4段階 | 10×10通り | - |
輝度変更 | 一時モード | - | 屋外晴天モード |
ヒストグラム | 対応 | 対応 | 対応 |
水準器 | 2軸 | 2軸 | 2軸 |
ファインダー撮影用 | 対応 | 対応 | 対応 |
2018年に新シリーズとして誕生したEOS RやZ 7(Z 6も同仕様)はファインダーのみならず、モニターも(この価格帯としては)良好な仕様となっています。
一方のα7 IIIは第2世代のα7 IIと比べてタッチパネルこそ実装されているものの、従来の「WhiteMagicディスプレイ(RGB+白画素)」では無くなっています。ちょっと古いタイプのモニタなのかなと勘ぐってしまうところ。
これら仕様の違いを踏まえてじっくり見比べていきましょう。
可動機構と操作性
R | Z 7 | α7 III | |
サイズ | 3.15型 | 3.2型 | 3.0型 |
可動方式 | バリアングル | チルト | チルト |
EOS R:貴重なバリアングルモニタ搭載モデル
3機種中では唯一バリアングルモニターを採用。
増えつつあるフルサイズミラーレスでもバリアングルモニタを搭載しているのはキヤノン製EOS RとEOS RPのみ(2019年7月現在)。あのパナソニックですらLUMIX Sシリーズでは3Wayチルト方式を採用しています。バリアングルモニタが必須であるならば、今のところEOS Rシリーズを選ぶほかありません。
可動範囲は横方向に175度に展開可能、そして手前側に約90度、奥側に約180度までの回転動作に対応しています。様々なアングルに対応できるため、上下にしか動かないチルトモニタより様々な状況へ対応可能。
その一方、チルト式と異なりモニタを傾けるには横方向への展開が必須。あまりスペースに余裕が無い撮影環境ではバリアングルモニタの可動方式が邪魔になると感じるかもしれません。
Z 7
ソニーα7 IIIと同じく上下へ傾けることが出来るチルト方式。可動領域に関する具体的な仕様は公開されていないものの、使った限りではα7 IIIとほぼ同じ。
バリアングルモニタのように自撮りすることは出来ませんが、モニタを傾けるだけの省スペースで素早く対応できるのがチルトモニタの魅力。
横方向には無力なので、カメラを縦位置で構える場合は使い辛いと感じるシーンがあります。また、下方向への可動領域は狭いので手を掲げて撮影するハイアングルも厳しい。
α7 III
Z 7と同じチルト式モニタを採用。可動領域は上に約107度、下に約41度となっています。
見解は基本的にZ7と同じなので割愛。
モニタの作り
可動部位の固定
バリアングルモニタのEOS Rは2カ所のヒンジ部がどちらも金属パーツとなっており頑丈な質感。ギミックが多いチルト機構のZ 7やα7 IIIと比べるとシンプルですね。
Z 7とα7 IIIは同じチルト機構なのでパッと見の仕組みはほぼ同じ。
電子回路
モニタからフレキが露出しているZ 7やα7 IIIと比べると、EOS Rはバリアングル機構に内包されているので外から回路を確認することは出来ません。
保護性や防塵防滴について言及は出来ないものの、フレキが剥き出しのチルトよりはバリアングルのほうが保護性が高そうに見えます。とは言え、チルトモニタ・バリアングルモニタでトラブルに遭遇したことはありません。
モニター
最も薄くて小さいのはα7 III。3.0型液晶であることに加えて、フレームが狭いのでより一層小さく感じます。じっくり観察するとZ 7と同じクオリティのように見えますが、一見するとちゃっちく見えてしまう不思議。
Z 7は3機種の中で最もモニターが大きく、フレームが広いのでしっかりとしている印象。
EOS Rはバリアングルモニタながら、サイズはZ 7とα7 IIIの中間(ややZ 7寄り)。前述した通り、電子回路が露出しておらず最も壊れにくそうな見た目となっています。チルトモニタの裏側が薄い金属パーツで構成されているのに対し、EOS Rのバリアングルは裏側もプラスチックパーツ。
ファインダーとの切替
どの機種もアイセンサーをファインダー上下に備えており、センサーの手前数センチに物体が近づくと自動的にモニターからファインダー表示へと切り替わります。
ファインダー編でも指摘したように、モニター展開時にアイセンサー(ファインダーとモニターを自動切換えするセンサー)が自動的にオフ設定となるのはα7 IIIのみ。モニター展開時の誤反応を防いでくれる便利機能なのでキヤノン・ニコンは是非ともこの機能を実装して欲しい。
「EVF/LCD切替ボタン」「ファインダー優先」を備えるZ 7
EOS Rやα7 IIIはEVF/LCD切替機能をボタンカスタマイズでどこかに配置しなければならないのに対し、Z 7はファインダー側面に専用ボタンを用意しています。ボタン数が少ないミラーレスにとって有難い仕様。
さらにZ 7は他2台は対応していない「ファインダー優先」モードが存在します。
これは基本的にライブビュー像はファインダー限定で、ファインダーから目を離してもモニターには投影されません。ただし、メニュー画面やアイボタンメニュー時は背面モニタでも表示可能となっています。言ってしまえば一眼レフのような使い勝手を楽しめるモードですね。実にニコンらしく、ユーザー視点に立ったモードのように感じます。
さらに、このモード中はDISPボタンを押すことで背面モニターのINFOパネル表示をオンオフ操作が可能となっています。まさに一眼レフような仕様と言って過言では無いでしょう。
解像度
R | Z 7 | α7 III | |
形式 | TFT液晶 | TFT液晶 | TFT液晶 |
解像度 | 210万ドット | 210万ドット | 92万ドット |
サイズ | 3.15型 | 3.2型 | 3.0型 |
上の写真は同じ撮影距離からカメラの背面モニタを撮影して同じサイズにクロップしたもの。
やはり92万ドットのα7 IIIはモニター像が多少粗く、210万ドットのEOS RやZ 7と見比べてしまうと厳しい。我慢できない程度のモニター画質ではありませんが、より良質なモニターを見慣れてしまうと「うーん」と感じてしまうのは確か。
明るさ・発色
R | Z 7 | α7 III | |
明るさ調整 | 7段階 | 11段階 | 5段階 |
色合い調整 | 4段階 | 10×10通り | - |
輝度変更機能 | 一時モード | - | 屋外晴天モード |
個人的には解像度以上に差を感じるポイント。
明るさ
LUMIX G9+12-100mm F4 IS PROを使い、それぞれの背面モニタを露出固定(F4・SS 1/80・ISO 1250)で撮影したのが以下の写真です。
最も細かく、そして幅広く調整できるのはZ 7。反対にα7 IIIは前後2段階と少なく、そして調節幅は狭い。EOS Rは設定値こそ少ないものの、輝度差はZ7に近い。
この設定値の差は特に明るい屋外での視認性に違いが出ていると感じます。屋外晴天モードを使ってもα7 IIIはギリギリ感のあるモニター像となっています。
一方でEOS Rは輝度を大きく変えることができる他、ボタンカスタマイズでボタン一発で高輝度モードを入り切りすることが出来るので特に屋外での利便性が高いと印象。
発色
色の捉え方には個人差があるものの、打つ手なしのα7 IIIやざっくりとした色温度の設定のみであるEOS Rと比べると10×10通りで調整できるZ 7は優秀。
タッチパネル
R | Z 7 | α7 III | |
タッチAF | 対応 | 対応 | 対応(AF動作無) |
タッチシャッター | 対応 | 対応 | - |
メニュー | 対応 | 対応 | - |
クイックメニュー | 対応 | 対応 | - |
タッチパッドAF | 対応 | - | ‐ |
?操作領域変更 | 対応 | - | 対応 |
?再生時操作 | 対応 | 対応 | 対応 |
ライブビュー拡大? | 専用ボタン | - | - |
再生時拡大 | ピンチイン ダブルタップ |
ピンチイン ダブルタップ |
ダブルタップ |
α7 IIIはタッチフォーカスのみと限定的、Z 7は従来機と比べると大幅に進化しているものの洗練されていない。このため、タッチパネル使い勝手は圧倒的にEOS Rが優秀。
EOS R
タッチパネルの操作性はパナソニックと並んでトップクラス。まあとにかく使いやすい。
カメラの基本的なタッチ機能は完備しており、タッチ操作時のレスポンスは上々。さらにタッチ操作に適したボタンのサイズと配置は流石と言わざるを得ない。他社のベンチマークとなるレベル。
Z 7
EOS Rと見比べてしまうと機能的に物足りず、洗練さでも見劣ってしまいますが、従来のニコン製一眼カメラを考えると頑張っているほう。そして非常に限定的なα7 IIIのタッチパネルと見比べるとまだまだ使いやすいと感じます。
ほぼ完璧なEOS Rと見比べて感じる見劣りポイントは…
- メニュー操作時のレスポンスがあと一息
- カメラ設定値の操作がスライドでは無くタップ限定
- アイメニュー操作時のパネルがタッチ操作するには少し小さく見づらい
(もう少し画面上部に表示するべきだったのでは?) - タッチパッドAF非対応
- ワイドAF時のタッチフォーカスがロックオン固定
(ワイド時にタップ操作で一時的な1点AFになると良かった)
ニコンとしては意欲的で機能的ではあるものの、やはり洗練さに欠けるかなと。
α7 III
実装している機能はタッチフォーカスと再生時のタップ・スライド操作・タッチパッドAFのみ。最低限の機能は備えているものの、他社と比べて応答性が良くありません。
2018年のミラーレスに実装されるタッチパネル機能としては論外と感じます。
あのフジフイルムですらタッチFnを実装し、リコーイメージングですらGR IIIで高レスポンス・高機能なシステムを実装したというのに、天下のソニーでこれは無い。
92万ドットの解像度といい、やや時代遅れのモニター仕様という印象。
INFOパネル機能
全体的なコンセプトはどのカメラも似たり寄ったり。主要なカメラ設定に加えてクイックメニューのファンクション機能一覧を表示することが出来ます。
EOS RやNikon Z 7はカメラ露出設定をタップすることでタッチ操作に対応、さらにクイックメニューを呼び出せば各種機能もタッチ操作が可能となっています。
一方のα7 IIIはタッチ操作に全く対応していないものの、他2台では対応していない2軸電子水準器とヒストグラムの表示が可能。
α7 IIIが見劣りしてしまうモニター比較
酷くは無いけど、EOS RやNikon Z7と比べてしまうと「最低限」の3文字しか浮かんでこないのが残念。実用に耐えないモニターとまでは行きませんが、背面モニターでの撮影を重視するのであればEOS RやZ 6、ソニー製カメラであればα7R IIIやα9を選んだほうが良いのかなと思いました。
一方のEOS Rは過去のキヤノン機を見渡してもハイグレードな仕様のモニターが搭載されているのでかなり見やすいと感じるはず。Z 7・Z 6も同様。特に20万円台のEOS RとZ 6は同価格帯のカメラの中でも良好。
タッチパネルも考慮するとベストはEOS R。発色などモニターの正確性を重視するのであればZ 7やZ 6でカラーカスタマイズを煮詰めるのがおススメ。
今回使用した機材
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