ソニーα7 IIIを使い始めて約1年(間3か月のブランクあり)、ニコンZ 7・キヤノンEOS Rを使い始めて約半年。ある程度使い込んだので腰を据えてじっくり比較レビュー。全てを1ページに詰め込むと凄まじい量となるため、細分化して徐々に掲載していこうと思います。
第8回は同じレンズ「70mm F2.8 DG MACRO」を使った場合の解像性能について。同じ環境で同じレンズを使った場合にどのような変化があるので確認してみたいと思います。
撮影環境
今回は中央領域のみ測定しています。
テスト環境
- カメラボディ:Z 7・EOS R・α7 III
- 交換レンズ:70mm F2.8 DG MACRO
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- 各カメラのRAWファイルを使用
- ベースISO感度で固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ
・格納されたレンズプロファイル(外せない) - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
解像力テスト結果
メモ
- Z 7
絞り開放から解像力チャートの限界値まで解像しています。数値上は「4700」となっていますが、これ以上伸びる潜在的な可能性を秘めています。
F8~F11にかけて回折の影響を受けるものの、センサー解像性能の優位性は絞り値全域で健在。
「ローパスフィルターレス+高画素」と言うこともあり、このカテゴリは強力なパフォーマンスを発揮。 - EOS R
Z 7より低画素ながら良好なパフォーマンスを発揮。ただし、ローパスフィルターを搭載しているため、「ローパス効果が弱い」と言われている2400万画素のα7 IIIと同等の解像性能。
ローパスでモアレ・偽色の影響を落としつつ、2400万画素モデルと同等の解像性能を得ることができる「3000万画素」というのはキヤノンらしい考え方かもしれない。「3000万画素」の解像性能が強みではなく、バランスを考慮した上での3000万画素だったのが分かる結果。 - α7 III
ローパスフィルターレス仕様ではありませんが、比較的効果の弱いローパスを搭載してると言われています。最も低画素な2400万画素センサーですが、解像性能はEOS Rと同等。ただし代償は大きく、被写体と高解像なレンズの組み合わせによっては「モアレ・偽色」がとても発生しやすくなっています。
ほどほどに解像するレンズと組み合わせるのが良し。
どのカメラも回折の影響でF8からF22にかけて徐々に解像性能が低下します。F16?F22を多用するのであれば、高解像センサーである必要性が弱い。とは言え、高画素センサーの絞り開放からF8付近までの優位性は明らか。「大は小を兼ねる」という意味で、お金があるなら高画素センサーがおススメ。(もちろんファイルサイズやバッファなどは考慮する必要ありますが…。)
Z 7 | EOS R? | α7 III | |
F2.8 | 4728 | 4187 | 4160 |
F4.0 | 4687 | 3820 | 3627 |
F5.6 | 4709 | 3911 | 4265 |
F8.0 | 4574 | 3911 | 3333 |
F11 | 4401 | 3475 | 3333 |
F16 | 3784 | 3257 | 3189 |
F22 | 2950 | 2553 | 2533 |
実写確認
メモ
- クロップした画像のサイズをZ 7に統一。
Z 7が搭載している「4500万画素ローパスフィルターレス CMOS」のパフォーマンスは圧倒的。ニコンならZ 7・ソニーならα7R IVかα7R IIIが同傾向となるはず。風景撮影をはじめ、マクロ・建築物・ファッションなどなど…、様々なシチュエーションで活かすことのできる解像性能。 - EOS Rはローパスフィルター搭載の3000万画素センサーなので、Z 7ほどのキレは期待できません。チャートの結果と同様、解像感は2400万画素のα7 IIIとほぼ同じ。
しかし、モアレや偽色の影響が少なく、全体的に安定した使いやすい描写。ローパスが重要と考える人がいるのも納得。 - α7 IIIは細部に偽色やモアレが発生。ボディ内で補正可能な問題ですが、RAW現像時にはかなり目立ちます。
解像力テストの数値に影響は見られないものの、全体的な見た目を損なう可能性あり。特にフレーム全域に高周波成分が想定されるのであれば極力ボディ出力のJPEGで完結したいところ。
モアレ確認
メモ
- 一見してα7 IIIの状態が悪いと判断できます。Z 7やEOS Rで問題の無い領域でも、偽色とモアレが明らかに目立っています。
- ローパスフィルターレスながら、高画素のZ 7はモアレの影響が少ない。ただし、解像限界付近の偽色はEOS Rよりも少し多い印象。
ローパスフィルターレス仕様である以上、遭遇するシーンは少ないと思いますが、「非常に高解像なレンズと非常に複雑なディテールを持つ被写体」相手だとα7 III同様のモアレや偽色が発生する可能性はあります。 - EOS Rは偽色が良く抑えられているものの、限界を超えるとモアレが発生しています。
解像力テストの雑感
当然ながら高画素が有利
当然ながら、4500万画素ローパスフィルターレスのZ 7が最も良好。解像性能の高いレンズを最大限有効に使うのであれば、やはり高画素センサーが一番。(実際の運用では微ブレやピント精度の問題も出てきますが…)。
ただしローパスフィルターレス仕様である以上、高解像レンズで複雑なディテールを撮影するとα7 IIIと同様の結果となる可能性があることは念頭に置いておくべき。
α7 IIIの2400万画素センサーは被写体や使うレンズによってモアレや偽色に弱い点は考慮しておくべき。良い時は低画素ながらキレのある描写ですが、悪い時はモアレや偽色がトコトン足を引っ張るかもしれません。ボディ出力のJPEGで偽色はほぼ補正されますが、RAW現像時は現像ソフト側でなんとかする必要あり。同等のセンサーを使っていると思われるNikon Z 6やLUMIX S1、SIGMA fpでも同等の問題が発生する可能性あり。特に高解像なレンズを使うのであれば、もう少し頑張ってα7R III・α7R IVを購入するのがおススメ。
EOS Rは高画素機の解像性能に及ばないものの、モアレや偽色が出にくいのはやはり強み。解像性能も2400万画素ローパスフィルターレスと同等なので、そこまで不満は感じないはず。「ローパスフィルターはカメラに必要」というキヤノンのスタンスには大いに同意できる(特にα7 IIIの結果を見てしまうと)。
手頃な価格帯(20万円前後)のフルサイズカメラはα7 IIIと非常によく似た「2400万画素 裏面照射型CMOS」を採用しています。そんな中、同価格帯の「3000万画素ローパスフィルターあり」は貴重な存在であり、この特性を重視する人にとっては替えが効かない選択肢と言えるでしょう。
今回使用した機材
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ILCE-7M3 | |||
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α7 III ILCE-7M3K | |||
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