ソニー「E PZ 10-20mm F4 G」のレビュー第五弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
E PZ 10-20mm F4 Gのレビュー一覧
- ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビュー 完全版
- ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビューVol.6 周辺減光・逆光編
- ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビューVol.5 ボケ編
- ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビューVol.4 諸収差編
- ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビューVol.3 解像チャート編
- ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビューVol.2 遠景解像編
- ソニー E PZ 10-20mm F4 G 徹底レビューVol.1 外観・AF編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
基本的にニュートラルなボケ質だが、よく見ると後ボケが少し滑らかに見える。と言っても差は僅かで、同じ被写体でじっくり見比べないと判断がつかないような差である。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
10mm
10mmで玉ボケを大きくすることは出来ない。さらに、いびつな口径食の影響があり、玉ボケの内側も決して滑らかな描写とは言えない。10mmで玉ボケが発生するくらいなら、いっそ絞ってパンフォーカスにしたいところだ。
15mm
10mmと比べると許容範囲内の描写に見えるが、それでも綺麗なボケからは程遠い。
20mm
15mmよりさらに改善するが、それでも内側の描写は荒々しく、口径食の影響も見られる。積極的に得たいと思うボケには見えない。
ボケ実写
10mm
玉ボケには少し騒がしさが見られるものの、広角レンズとしては滑らかなボケが得られる。
20mm 接写
広角側と比べると全体的に滑らかで綺麗に見える。周辺部でもボケ質の破綻は無く、扱いやすい描写だ。
20mm近距離
ボケが小さくなると少し騒がしい印象を受けるが、全体的にボケが小さくなるので悪目立ちはしない。目立つ場合は絞ると改善する可能性あり。
撮影距離
全高170cmの三脚でポートレートに見立てて、絞り開放を使って撮影した作例が以下の通りだ。
10mm
全身?上半身くらいまでの撮影距離では被写体を背景から浮かび上がらせることは難しい。バストアップか顔のクローズアップでなんとか背景がボケてくる程度だ。
20mm
20mmの場合は膝上くらいでボケはじめ、上半身をフレームに入れるくらいで背景から浮かび上がる。
まとめ
APS-C用のF4広角ズームでボケは得にくいが、高い接写性能を活かすことで背景を溶かすことが出来る十分なボケを得ることが出来る。ただし、この際はパースが付きやすく、自身の影が写りこみやすいので気を付ける必要がある。
ボケを大きくすることは出来るが、ボケが強みとなるレンズでは無い。後ボケは滑らかで綺麗だが、玉ボケが騒がしくなりやすく、特にハイコントラストな領域には注意が必要だ。内側の描写も綺麗とは言えず、イルミネーションや夜景などのシーンと相性が悪いように感じる。
と言っても、騒がしいと感じるシチュエーションはそう多くない。撮影距離が長い場合はボケを得るのが難しく、接写時はボケが大きくなるので目立たない。中途半端な撮影距離、F値の場合に「おや?」と感じることはあるかもしれないが、その時は距離を詰めるかF値を調整することで回避可能だ。特に心配する必要は無いと思われる。
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