パナソニック「LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.」のレビュー第四弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェック。明るい広角レンズで気になるコマ収差も作例を掲載。
LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.のレビュー一覧
- LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー 完全版
- LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー Vol.6 周辺減光・逆光編
- LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー Vol.5 ボケ編
- LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー Vol.4 諸収差編
- LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー Vol.3 解像チャート編
- LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー Vol.2 遠景解像編
- LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー Vol.1 外観・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。
実写で確認
遠景をF1.7で中央・隅どちらのピントで撮影したとしても結果はほとんど同じだ。このことから、実写で像面湾曲の影響は少ないと思われる。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。
実写で確認
絞り値全域で倍率色収差の強い影響は見られない。Lightroom CCのプロファイルで強制的に補正している可能性もあるが、補正が効かないRAW Therapeeを使用しても似たような結果が得られるため、光学的に良く抑えられているのだと思われる。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。
軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。
実写で確認
絞り開放付近でピント面前後にわずかな色付きが見られるものの、特に大きな問題は無く、無視できる程度に抑えられている。ハイコントラストな状況でも問題が発生するシーンは少ない。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。
比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。
実写で確認
最近のミラーレス用レンズらしく、歪曲収差は強めの樽型が残っている。歪曲収差を残して他の収差補正を優先するのはミラーレスで一般的であり、これは驚くような結果ではない。むしろ、そのような設計の超広角レンズとしては比較的穏やかな樽型歪曲に見える。
自動補正後は綺麗な直線が得られるものの、フレーム周辺部が僅かにクロップされていることが分かる。
球面収差
前後のボケ質テストと同じく、ボケ質に顕著な差は見られない。敢えて言えば前ボケに2重の縁取りが薄っすらと発生しているが、実写で問題と感じるシーンは今のところない。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。
歪曲補正後
補正は完璧とは言えず、点光源に明らかな変形が見られる。これは少し絞っても改善せず、F2.8でも僅かに影響が残る。夜景や星景など点光源が多いシーンで再現性を重視する場合はベストなレンズと言えない。
歪曲補正前
補正後のフレームより外側の領域では収差がより目立つ。
今回のまとめ
色収差はまずまず良好に補正され、大部分のシーンで色ずれが目立つことは少ないはずだ。パープルフリンジなどを心配する必要は無く、F1.7を活かしやすい大口径レンズである。ピント位置に関わらず、大きな収差変動は見られない。
像面湾曲の影響は少なく、絞り開放から遠景のパンフォーカスを狙っていける。明るい超広角レンズの特性を活かして、夜景や星景などでシャッタースピードの長秒化を抑えることが可能だ。
ただし、コマ収差の補正状態が不完全で、フレーム隅に向かって少し目に付く点光源の変化が発生する。驚くほどの影響量では無いが、単焦点だからと言って過度な期待は禁物と感じた。この影響は夜景や星景のみならず、木漏れ日の点光源などにも作用する場合がある。
歪曲収差は光学的に補正されていると言えない状態だが、カメラ側で自動的に補正され、LightroomではRAWに格納されたプロファイルを利用可能だ。ただ、歪曲収差を犠牲として、他の収差を優先した割にはコマ収差の補正状態や解像性能が期待に及ばないと感じた。どちらかと言えば、光学性能ではなく、レンズ小型化・軽量化や接写性能、フォーカスブリージングの抑制などにウェイトを置いた設計のように見える。
購入早見表
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作例
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