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LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH. 徹底レビュー 完全版

このページではパナソニック「LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.」のレビューを掲載しています。

LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.のレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 手ごろな価格設定
サイズ M43らしい携帯性
重量 とても軽量
操作性 フォーカスリングのみ
AF性能 爆速・画角変化が無い
解像性能 周辺部が低下しやすい
ボケ 広角としては良好
色収差 広角としては良好
歪曲収差 カメラ補正に依存
コマ収差・非点収差 隅で目立つ
周辺減光 やや目立つ
逆光耐性 場合によって目立つ
満足度 近距離向けの超広角レンズ

評価:

携帯性重視の明るい超広角レンズ

超広角の大口径レンズながら小型軽量で明るいレンズだ。携帯性に優れているうえ、マクロ性能も良好なので、汎用性の高い超広角としてテーブルフォトや旅のお供に最適だ。その一方で、解像性能の均質性やコマ収差の補正状態などで気になる部分があり、遠景や星景に最適なレンズとは言い難い光学性能となっている。あくまでも至近距離・近距離が主戦場の超広角レンズである。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 パースが強いので難しい
子供・動物 超広角・高速AF・F1.7が役に立つ
風景 絞れば使えなくもない
星景・夜景 コマ収差の補正・逆光耐性が完璧と言えない
旅行 邪魔にならない携帯性が強み
マクロ 楽しい超広角マクロライフ
建築物 RAWの歪曲収差は要注意

まえがき

2022年に登場したパナソニック製のLEICA DGシリーズのレンズ。売り出し価格は「55,096円」と安く、このような価格設定のLEICA DGシリーズは「LEICA DG SUMMILUX 15mm/F1.7 ASPH.」「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.」以来となる。久しぶりの小型軽量なLEICA DGレンズだ。

マイクロフォーサーズシステム全体として見ても画期的なレンズだ。12mm以下のAFに対応する単焦点はこれまで存在していなかった。11mm以下でAFを利用する場合はズームレンズを導入する必要があり、サイズやF値に制限があったのだ。12mmよりも広い画角で、開放F1.7を利用できる魅力的なレンズである。

概要
レンズの仕様
マウント MFT 最短撮影距離 9.5cm
フォーマット 4/3 最大撮影倍率 0.25倍
焦点距離 9mm フィルター径 55mm
レンズ構成 9群12枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.7 テレコン -
最小絞り F16 コーティング 不明
絞り羽根 7
サイズ・重量など
サイズ φ60.8×52mm 防塵防滴 対応
重量 130g AF STM
その他
付属品
レンズフード

レンズ構成は9群12枚で、非球面レンズ2枚とEDレンズ2枚、そしてUHRレンズ1枚を含んでいる。小型軽量ながら本格的な光学設計だ。さらにレンズは5点にシーリングが施された防塵防滴仕様で、天候に左右されることなく撮影を継続することが出来る。おまけに-10℃までの耐低温設計だ。

 

防塵防滴仕様ながら重量は130gと非常に軽量で、レンズサイズは60.8×52mmとコンパクトだ。最近はAPS-Cやフルサイズ用の小さな広角レンズが増えてきたものの、マイクロフォーサーズほどの小型軽量は実現していない。ボディ側のサイズ・重量も考慮するとその差は大きいと言える。

さらにこのレンズは超広角ながら最大撮影倍率0.25倍を実現しており、これは35mm判換算で0.5倍、つまりハーフマクロに相当する驚きの接写性能だ。この際のワーキングディスタンスは無いに等しいが、照明環境が許すのであれば、大胆な構図の超広角撮影が可能となる。

価格のチェック

現状でこのレンズに取って代わる超広角レンズは存在しないため、必要であれば選択の余地が無い。しかし前述したように、売り出し価格は「55,096円」と非常に手ごろな値付けである。時間の経過でさらに安くなる可能性があり、実際にショッピングモール(楽天やYahoo!ショッピング)などではポイント還元を活用することで実質的に4万円台前半での購入が可能だ。

LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

他のLEICA DGシリーズと同じく黒を基調としたデザインでブランドカラーとなるイエローを強調している。レンズのサイズが非常に小さいので、箱もかなり小さくなっている。

付属品はレンズフードと前後キャップのみと最低限。レンズポーチやケースは付属していない。

外観

コンパクトかつシンプルなデザインのレンズだ。外装は少しグレー味のあるマットな塗装で、僅かに光沢が残っている。鏡筒の文字は大部分が印刷だが、9mmの焦点距離のみエッチングが鉾されている。コントロールはフォーカスリングのみで、操作に迷うことは無い。個人的には15mm F.7のような絞りリングを搭載して欲しかったところだが、価格設定や防塵防滴仕様を考えると難しいのだろうか。

外装は25mm F1.4IIと同じく主にプラスチックパーツで構成されている。25mmと異なりフォーカスリングもプラスチック製だ。触った限りで高級感は無いものの、しっかりとした作りで安っぽさは感じない。レンズマウントは金属製、カメラに滑らかな装着が可能だ。装着時にガタツキなど精度に問題は見られない。ちなみに製造国は中国だ。

ハンズオン

130gと非常に軽量なレンズであり、手に取ってもほとんど重量を感じない。LEICA DGシリーズとしては少しプラスチッキーな印象を受けるが、しっかりとした作りで堅牢性に不安はない。

前玉・後玉

フィルター径は55mm。マイクロフォーサーズ用レンズは数あれど、55mmのフィルター径を採用するレンズは本当に少ない。AFレンズだと、9mm F1.7の他に「56mm F1.4 DC DN」くらいである。このため、55mm径でC-PLフィルターやNDフィルターを揃えたとしても、他のレンズと共有することができない。ステップアップリングで62mmや72mm径のフィルターを揃えたほうが良いだろう。

Amazonで55mmフィルターを探す

レンズマウントは金属製で、3本のビスで固定されている。光学系最後尾のレンズは固定され、完全なインナーフォーカスに見える。後玉周辺は反射防止のため黒塗りされており、光を強く反射するようなパーツは見当たらない。

フォーカスリング

15mm F1.7と比べると幅広いフォーカスリングは電子制御で動作する。最新のLUMIXボディではフォーカスリングの操作性を「リニア」・「ノンリニア」レスポンスから選ぶことが可能だが、古いボディやオリンパスボディの場合は「ノンリニア」固定となる。この際は回転速度に応じたレスポンスでフォーカスレンズを駆動するが、ストロークは少し長めで良好な精度で操作が可能である。

レンズフード

プラスチック製の浅い花形レンズフードが付属する。遮光性・機能性は最小限だが、浅い形状であるがゆえに装着したままでもC-PLフィルターを操作しやすい。逆さ付け可能だが、元々小さいので反転させる必要性は低い。

装着例

マイクロフォーサーズでは最小クラスのGM1Sに装着。さすがにレンズが大きく見えるものの、使えないことはないシステムサイズだ。18mm換算の明るい超広角をこのサイズで使えると考えると非常に魅力的だ。ただし、15mm F1.7と違って絞りリングが無いので、できれば使いやすいコマンドダイヤルを搭載した機種で使いたいと感じる。OM-1に装着するとバランスを損なうことなく利用可能である。外装の塗装が思いのほかOM-D・OM-1と相性がいい。

AF・MF

フォーカススピード

ステッピングモーター駆動のAFは高速かつ静かで滑らかに動作する。OM-1のC-AFと組み合わせることで、無限遠からハーフマクロまでピントを瞬時に移動可能だ。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

最短撮影距離から無限遠まで大きな画角の変化は見られない。特に0.25倍までの撮影倍率に対応していることを考えると立派な性能だ。実写でフォーカスブリージングに悩まされる機会はほとんど無いと思われる。

精度

OM-1・LUMIX G9 PROの組み合わせで精度に関する問題は見られなかった。

MF

前述した通り、リニアレスポンス対応モデル以外はノンリニアで動作する。それでもフォーカスリングのストロークは十分に長く、良好な精度のマニュアルフォーカスが可能だ。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:LUMIX G9 PRO
  • 交換レンズ:LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 200 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

中央

絞り開放から3500に近い非常に良好な結果だ。絞ってもこれ以上の向上はなく、F5.6まで同程度のパフォーマンスが維持される。F8以降は回折の影響によって性能が徐々に低下するが、最小絞りであるF16でも周辺部や隅のパフォーマンスと同程度である。

周辺

実写作例を見ると絞り開放から安定しているように見えるが、細部の解像性能は中央と比べて2ランクほど低下する。F4まで絞ると全体的に少し改善するが、解像性能が劇的に向上することはない。

四隅

中央や周辺部と比べるとコントラストが低下し、解像性能さらに低下する。これは本来の光学性能と共に歪曲収差の強い補正が強制的に適用されていることも原因として挙げることが出来るだろう。また、ISO 200にも関わらずカラーノイズが発生しているので、周辺減光を強めに補正している可能性も考えられる。複数の要素が合わさって画質低下に繋がっている。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 3407 2385 2199
F2.0 3228 2412 2226
F2.8 3177 2622 2599
F4.0 3279 2569 2625
F5.6 3407 2679 2710
F8.0 3177 2652 2599
F11 2837 2545 2278
F16 2509 2228 2039

実写確認

中央から隅に向かって解像性能が低下していると共に、コントラストが低下していることが分かる。ただし、9mmの超広角レンズで定型の解像力チャートを撮影した時の結果としては安定した解像性能と言える。少なくとも隅に向かって顕著な描写の粗は見られず、細部の解像性能に妥協すると良好な結果とさえ言えるだろう。実写では十分に満足のいく結果が得られると思う。
注意点として、フレーム隅の端はさらに描写が甘くなる。

競合レンズ比較

厳密にはこのレンズと競合する製品は存在しない。しかし、焦点距離やF値が少し異なるズームレンズ、単焦点などが存在するので見比べてみたい。

ご覧のように、9mm F1.7は中央が抜群の性能を発揮する一方、中央と隅の性能の均質性で見劣りする。これは絞っても改善しないので、パンフォーカス時の解像性能を重視する人には少し気になる画質となるかもしれない。ズームレンズと比べると良好だが、最高の結果を得たい場合はMFレンズのLAOWA 10mmがおススメだ。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2022年6月23日
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • カメラ:LUMIX G9 PRO
  • 露出:絞り優先AE ISO200
  • RAW:Lightroom Classic CCで現像
    ・シャープネスオフ

テスト結果

中央のみを重視する場合は絞り開放から非常に良好だが、周辺部や隅までシャープな風景写真を求める場合は厳しい評価となる。周辺部はまだ許容範囲内となるものの、隅はF5.6前後まで絞らないと安定した結果が得られない。F1.7の明るいレンズを活かした夜景・星景での使用を検討しているのであれば注意が必要である。

中央

80MPハイレゾモードで撮影しても、中央は絞り開放から非常に優れた解像性能を発揮する。絞っても結果はほとんど変わらない。

周辺

中央とくらべると随分甘くなるが、それでも隅の画質よりは良好だ。絞ると改善するかと思いきや、寧ろ低下しているように見える。

四隅

中央や周辺部と比べると遥かに甘く、F1.7ではコマ収差か非点収差の影響で結果が非常にソフトだ。絞ると改善するが、F4~F5.6まで絞っても中央や周辺部と同等の結果になることはない。

像面湾曲

像面湾曲を簡単に言うと、平面の被写体に対してピント面が平面にならないことを指す。つまり、フレーム中央で遠景にピントが合うシーンでも、隅にピントが合っていない場合がある。逆に隅にピントを合わせると中央はピンボケ写真となるようば場合に像面湾曲の影響が強い。

このレンズはピントを合わせる場所に関わらず、結果はほぼ一定に見える。つまり像面湾曲が影響している可能性は低い。

撮影倍率

最短撮影距離は9.5cm、この際の撮影倍率は0.25倍だ。35mm判換算で0.5倍、つまりハーフマクロに相当する撮影倍率をAFで利用可能である。さらに接写時も画角の変化がほとんど無く、超広角そのままにハーフマクロを楽しむことができるのはGood。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

遠景をF1.7で中央・隅どちらのピントで撮影したとしても結果はほとんど同じだ。このことから、実写で像面湾曲の影響は少ないと思われる。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

絞り値全域で倍率色収差の強い影響は見られない。Lightroom CCのプロファイルで強制的に補正している可能性もあるが、補正が効かないRAW Therapeeを使用しても似たような結果が得られるため、光学的に良く抑えられているのだと思われる。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

絞り開放付近でピント面前後にわずかな色付きが見られるものの、特に大きな問題は無く、無視できる程度に抑えられている。ハイコントラストな状況でも問題が発生するシーンは少ない。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

僅かに前ボケに重心があるようなボケ質だが、基本的にはニュートラルで前後のボケ質に大きな変化は見られない。軸上色収差による色づきも見られず、悪目立ちすることは少ないと思われる。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

コンパクトな超広角レンズだが、思っていたよりも口径食は強くない。絞り開放から十分満足のいく描写が得られる。作例のようなハイコントラストな状況ではボケの縁取りに色づきが見られる。中央で色ずれが目立たず、隅に向かって影響が大きくなることを考慮すると残存する倍率色収差だと思われる(このような場合は自動補正されない)。

色付きは残念だが、玉ボケの内側は広角レンズとしては滑らかだ。F2.8まで絞るとボケが角ばってしまうので、玉ボケを意識する場合は絞り過ぎに注意。

ボケ実写

至近距離

被写体に近寄りやすいレンズであり、マイクロフォーサーズの広角レンズながら「接写+F1.7」を活かすことで後ボケを大きくすることが可能だ。この際のボケは極上とは言えないが、広角レンズとしては滑らかなボケ質であり、大部分は心地よい描写が得られる。ハイコントラストな領域で僅かに騒がしくなる兆候が見られるが、接写時は特に問題を感じない。接写時は絞っても十分なボケが得られるので、パンフォーカスを優先して絞るのもアリ。

近距離

撮影距離が長くなるとボケが小さくなり、ハイコントラストな領域のボケ質が少し騒がしくなる。色付きが少ないのが幸いして悪目立ちはしないが、状況によっては少し気になるかもしれない。この影響は絞っても大きく改善しないように見える。

中距離

さらに撮影距離が長くなると、必然的にボケが小さくなる。決して滑らかなボケではないが、全体的にボケが小さく目立たない。

撮影距離ごとの比較

全高170cmの三脚を人物に見立て、全身~顔のアップを想定した撮影距離で絞り開放を使って撮影した。

フレームに全身を入れるとF1.7の絞り開放を使っても背景をぼかすのは難しい。背景は僅かにピントが外れているものの、背景から被写体を切り離すには不十分だ。膝上くらいまで近寄ると背景が少しボケるが、浮かび上がってくるのはバストアップくらいからだ。顔のクローズアップであれば十分なボケが得られるだろう。

球面収差

前後のボケ質テストと同じく、ボケ質に顕著な差は見られない。敢えて言えば前ボケに2重の縁取りが薄っすらと発生しているが、実写で問題と感じるシーンは今のところない。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

最近のミラーレス用レンズらしく、歪曲収差は強めの樽型が残っている。歪曲収差を残して他の収差補正を優先するのはミラーレスで一般的であり、これは驚くような結果ではない。むしろ、そのような設計の超広角レンズとしては比較的穏やかな樽型歪曲に見える。
自動補正後は綺麗な直線が得られるものの、フレーム周辺部が僅かにクロップされていることが分かる。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

実写で確認 無限遠:最短撮影距離

このレンズはハーフマクロに対応する接写性能を備えているが、無限遠と最短撮影距離で周辺減光の強度に大きな変化は見られない。どちらもF1.7では目立つ光量落ちがあり、F4まで絞っても隅に僅かな光量落ちが残る。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

歪曲補正後

補正は完璧とは言えず、点光源に明らかな変形が見られる。これは少し絞っても改善せず、F2.8でも僅かに影響が残る。夜景や星景など点光源が多いシーンで再現性を重視する場合はベストなレンズと言えない。

歪曲補正前

補正後のフレームより外側の領域では収差がより目立つ。

逆光耐性・光条

中央

強い光源が正面にある場合はセンサー面の反射に加えて、多くのゴーストが発生。さらにレンズフレアが全体的にコントラストが低下しているのが分かる。絞るとフレアが収束するがゴーストが目立つようになる。

絞り開放付近は良好だが、絞ると隠れていたフレアが徐々に収束する過程で画質に影響を与えるフレアやゴーストが発生する。ここまで強い光源は稀かもしれないが、真夏の太陽やイルミネーションなど夜景撮影では気を付けたほうが良いだろう。

光条

光条がシャープになるのはF8付近から。F11~F16でキレのある光条が得られるものの、回折で解像性能の低下が顕著となるので気を付けたい。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • インナーフォーカス・防塵防滴
  • 小型軽量
  • 手ごろな価格設定
  • 高速かつ静かで正確なAF
  • フォーカスブリージングがほぼ無い
  • ハーフマクロ対応の接写性能
  • ピント距離に関わらず一貫した解像性能
  • 良好な色収差補正
  • ニュートラルなボケ味
  • 玉ボケに口径食の影響が少ない
  • 9mm F1.7としては穏やかな周辺減光
  • 綺麗な光条

「9mm F1.7」のパラメータを考慮すると、驚くほど小型軽量なレンズだ。APS-C・フルサイズのコンパクトな広角レンズも増えてきているが、ボディを含めて超コンパクトなシステムを組むことが出来るのはマイクロフォーサーズならではと言えるだろう。

さらに、しっかりとした防塵防滴仕様となっているので、対応するボディと組み合わせることで悪天候でも撮影を継続することができる。風景撮影に最適な解像性能とは言えないが、十分に絞ることで隅まで十分に解像した結果を得ることができる。F値の管理を出来るのであれば、携帯性の良い旅のお供になる。

このレンズを魅力的にしている要素の一つがハーフマクロの接写性能だ。広い画角そのままに、フルサイズ判換算で0.5倍のハーフマクロに対応している。ワーキングディスタンスはほぼ無いに等しいが、それでも撮り方次第でパースの効いた面白いマクロ写真を撮ることができるかもしれない。この際の解像性能は良好で、中央から周辺部まで”ピントが合えば”シャープな結果を得ることができる。

前述した2つの魅力を補完するフォーカス性能も特筆すべき項目だ。超広角レンズで超高速AFは貴重な存在と言えないものの、超高速AFに対応しつつ、ハーフマクロやフォーカスブリージングを抑えた特性は注目に値する。接写時も高速AFで被写体を追従しつつ、被写体が最短撮影距離を割ることは無い。この特性は特に水族館や昆虫館で便利だと感じた。

悪かったところ

ココに注意

  • M43では珍しい55mmフィルター径
  • コントロールはフォーカスリングのみ
  • 中央と周辺部・隅の解像性能に差がある
  • 撮影距離が長いと周辺部のボケが騒がしくなる
  • 歪曲収差はカメラ補正に依存
  • 周辺部の点像再現性があまり良くない
  • 強い光源をフレームに入れた際の逆光耐性

最も気を付けたいのはレンズの解像性能だ。決して悪い性能ではないが、単焦点に期待する「均質性の高い解像度」は得られない。中央は間違いなくシャープだが、特に隅や周辺部で性能の低下が顕著となる。ハイレゾモードの恩恵も少ないので、1600~2000万画素で普通に撮影するのがおススメだ。もしも携帯性を重視しないのであれば、「LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.」のほうが使い勝手は良い。

次に注意したいのが点像再現性だ。明るい広角レンズと言うことで星景・夜景での使用を検討している人がいると思う。しかし、このレンズはコマ収差の補正が完璧と言えず、隅に向かってやや目に付く変形が見られる。ウェブや小さなプリントサイズであれば特に気にならない程度の変形だが、大きく拡大したり、隅まで完璧を求めるのであれば別の選択肢を検討したほうが良いかもしれない。この辺りは好みが分かれると思うので、各所の作例やサンプルを見て許容範囲内か十分に確認して欲しい。

総合評価

満足度は85点。
個人的にはオールラウンドの明るい広角レンズを期待していたのだが、どちらかと言えば近距離・Vlog向けのレンズという印象が強い。風景や建築物に使えないこともないが、F1.7を活かした夜景・星景に最適とは言い難い。

とは言え、携帯性が抜群に良いレンズに違いは無い。換算18mmの広い画角を手のひらサイズのコンパクトサイズで利用することが出来る。F1.7とは言え、マイクロフォーサーズでは被写界深度が深く、「明るさ」を活かしたスナップ撮影も面白いと思う。特にGM・GFシリーズなど携帯性の良いカメラと組み合わせた際の機動力は注目に値する。

と言うわけで、OM-1やLUMIX G9など、大きなボディで気張った撮影を試みる場合におススメするレンズでは無い。どちらかと言えば、PEN・GF・GMシリーズなど、コンパクトなボディと組み合わせて、撮影機会を増やしたり、撮影の柔軟性を高めたほうが良い結果が得られる。

Vlogなど動画撮影の用途で使う場合もおススメだ。オートフォーカスは静かで高速、そしてフォーカスブリージングが皆無で目障りではない。さらに、動画のアスペクト比により、静止画「4:3」ではソフトで甘い隅の画質が結果的にクロップされ、レンズのスウィートスポットを利用することが出来る。個人的には家族写真などで活躍するレンズとなりそうだ。

併せて検討したいレンズ

LAOWA 10mm F2 Zero-D MFT

MF限定ながら、LEICA 9mm F1.7よりもコンパクトなレンズだ。MF限定にも関わらず、LEICA DGよりも高価だが、光学性能はより良好で風景撮影向きと言える。光学的にも歪曲収差をしっかりと補正してあるのはGood。ただし、周辺減光が少し強く、カメラとの互換性が100%問題無しとは言えない。

LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 ASPH.

無難な選択肢。8mm F2.8を利用できる円形フィルター対応のズームレンズだ。比較してレンズサイズは遥かに大きいが、良好な解像性能を備えている。ズーム操作で前玉が前後するものの、外装の内部で前後するだけであり、フィルターを装着すると実質的にインナーズーム状態になる。

購入早見表

LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.
楽天市場 Amazon キタムラ Yahoo
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作例

オリジナルデーはFlickrにて公開

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