ニコン「NIKKOR Z 50mm f/1.4」のレビュー第五弾 諸収差編を公開。軸上色収差とコマ収差が絞り開放付近でやや目立つため、この点を重視する場合はS-Lineを選んだほうが良さそうです。
本日のおさらい
諸収差における主な弱点は軸上色収差とコマ収差。特に水面や金属面の照り返しによる高輝度の領域で目に付く場合があります。ウェブやSNSでクロップしない場合には問題ありませんが、DXクロップやトリミングを利用する場合は気を付けたほうが良いでしょう。
コマ収差は夜景シーンで絞り開放付近を利用する場合に影響を受けます。イルミネーションや天体撮影時に注意。F2まで絞っても影響が目に付くため、このような用途であればF1.8 S-Lineのほうが適しています。また、ボケの周辺部が騒がしい原因となっている可能性あり。
The main weaknesses in terms of various aberrations are axial chromatic aberration and coma aberration. These are particularly noticeable in areas of high luminance caused by reflections from water or metal surfaces. If you don't crop the image on the web or on social networking sites, there is no problem, but you should be careful if you use DX crop or trimming.
Vignetting is affected when using a wide aperture in nightscape scenes. Be careful when photographing illuminations or celestial objects. Even when the aperture is stopped down to F2, the effect is noticeable, so for these types of applications, the F1.8 S-Line is more suitable. In addition, the periphery of the out-of-focus area may be noisy.
NIKKOR Z 50mm f/1.4のレビュー一覧
- ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4 レンズレビュー 完全版
- ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4 レンズレビューVol.5 諸収差編
- ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4 レンズレビューVol.4 ボケ編
- ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4 レンズレビューVol.3 解像チャート編
- ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4 レンズレビューVol.2 遠景解像編
- ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
少なくとも無限遠側では、F1.4の絞り開放で中央・隅どちらも被写界深度内に収まっています。近距離解像チャートのテスト結果から、撮影距離が近い場合でも影響は目立たないと思われます。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
Adobe Lightroom Classic CCで現像する限り、倍率色収差は全くありません。カメラ出力や純正現像ソフトでも問題なし。遠景実写テストを確認しても、高輝度の領域に大きな影響が無く、光学的に補正しているものと思われます。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
絞り開放で顕著な影響が見られ、2~3段絞ると改善します。実写では良く抑えられているように見えるので、過度に心配する必要はありません。ただし、特に高輝度の領域では若干の色づきが発生しやすく、水面や金属面の照り返し、強い光源をフレームに入れる場合は気を付けたほうが良いでしょう。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
カメラ・現像ソフト側の補正有無に関わらず良好な状態です。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
内向性のコマ収差が非常に目立ちます。フレーム周辺・隅の画質を低下させている主な要素。絞ると急速に改善しますが、F2でもいくらか残存、F2.8でほぼ収束します。
球面収差
前後のボケ質に若干の差があるものの、大きな変化はありません。良好な補正状態に見えるものの、軸上色収差のテスト結果からわかるように、F2-F2.8の間で顕著なフォーカスシフトが発生しています。F1.4でピントを固定した後に絞ると、ピントの山が移動してしまう可能性あり。もちろん、撮影距離によって問題ない可能性もあります。
まとめ
諸収差における主な弱点は軸上色収差とコマ収差。
特に水面や金属面の照り返しによる高輝度の領域で目に付く場合があります。ウェブやSNSなど画像サイズが小さい場合は問題ない程度。ただし、DXクロップやトリミングを利用する場合は気を付けたほうが良いでしょう。高性能なNIKKOR Zレンズが多い中、”比較的”収差が目立つレンズです。コマ収差は夜景シーンで絞り開放付近を利用する場合に影響を受けます。イルミネーションや天体撮影時に注意。F2まで絞っても影響が目に付くため、このような用途であればF1.8 S-Lineのほうが適しています。また、ボケの周辺部が騒がしい原因となっている可能性あり。F2.8まで絞って使えるのであれば、過度に心配する必要はありません。近距離において、F1.4でピント合わせをした後にF2.8まで絞るとフォーカスシフトの影響でピント位置がずれる点にも注意が必要。ただし、ニコンZカメラはF5.6まで実絞り測距を採用しているため、一般的な使い方で問題となることはありません。
その他の収差に関しては無視できる程度に抑えられています。特に歪曲収差の補正状態はS-Lineよりも良好に見えます。
購入早見表
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