オリンパスのハイエンドモデル「OM-D E-M1X」が発売され1週間ほどが経ちました。今回はE-M1Xのオートフォーカス(C-AF)について確認してきたいと思います。
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OM-D E-M1X AFレビュー
AFシステムを確認する
OM-D E-M1 Mark II比で追加された新機能は以下の通り
- 「AF+MF」でPROレンズに限り「オン」にてAF-C+MF対応
- C-AF中央スタート
- C-AF中央優先
- 新ターゲットモード
・グループ25点
・カスタムターゲット4枠 - カスタムターゲットモード設定
- 縦位置・横位置切替(ターゲットモード・AFターゲット位置)
- 追尾被写体設定(インテリジェント被写体認識AF)
- マルチセレクター搭載
イメージセンサーはE-M1 Mark IIと同じであり、121点オールクロス像面位相差AFに違いはありません。
しかし、新ターゲットモードや新しいC-AF設定など使いやすさは大きく向上。無駄と感じる新機能は無く、E-M1Xのコンセプトに合わせてよく考えられたAFシステムと言う印象。
それでは一つ一つ見ていきましょう。
マルチセレクター
まず大きな変更点がマルチセレクター、AFジョイスティックの導入。
OM-Dのみならず、オリンパスユーザーの悲願。
カメラをグリップすると自然と親指を添える場所に配置されているのでとても使いやすい。ナナメ方向の操作に対応しているため、非対応のLUMIX G9と比べるとかなり快適。
ミラーレスに実装されたAFジョイスティックは各社全て使ってきましたが、その中でも使いやすいデザイン。陥没したソニーαや形状とサイズは良いけど配置がやや悪いNikon Z、そもそもスティックが小さすぎるフジXシリーズと比べると良好。
動作速度は遅くもなく、速くも無くと言ったところ。操作速度の変更は出来ないのでカスタムターゲットモードでステップ数を変えるしかない。(後述)
C-AFモードでAF動作中でもマルチセレクターでAFエリアを移動可能。ソニーαやニコンZは非対応だったりするので地味に嬉しいポイント。ちなみにLUMIXは対応しています。
LUMIXのようにポジションの微調整が可能で滑らかな動作(コントラストAFのため測距位置に制限が無い)やα7 IIIのような超多点測距と比べると、小さな被写体や細部へのピント合わせで少し物足りなさを感じる。
中央スタート・中央優先
中央スタート
中央スタートは読んで字のごとく。ALLやグループエリアモードだったおしても、「最初にAFを開始するのは中央1点(フレームの中央)」という機能。特にエリアが広いALLやカスタム7×7と言った設定時に便利。
C-AFのみならず、C-AF+TRでも利用可能でターゲットモードごとにオン・オフの設定が可能。
中央優先モードと違いフレーム中央に枠が表示されないので注意。また、中央優先モードがオンとなっている場合は中央スタート機能は適用されません。(中央優先モードがスタート機能を兼ねているとも言えますが…。)
比較的フレームが広く、中央優先では捉え続けることができない激しい動きの被写体で有効と言えるでしょう。
中央優先
基本的にフレーム中央1点で被写体を捕捉し、中央で捉えきれない場合に周辺測距点が動作する。
他社で言うところの「領域拡大AF」や「拡張フレキシブルスポット」と似た機能。
オリンパスの中央優先で面白いのは拡大領域に制限が無いこと。
例えば、カスタムターゲットモードで「11×11(ALL)」に設定した状態で中央優先モードを適用すると121点中、120点を拡大領域とすることも可能。これがC-AF+TRと比べて有効かどうかは未検証ですが、極論を言えばそのような使い方もできる。
AFフレームの種類
従来のALL・1点・スモール1点・グループ5点・グループ9点に加えてグループ25点が追加されました。
他社で言うLサイズのゾーンエリアに近い設定なので近距離・クローズアップで激しく動く被写体などに適しています。
従来通り、クラスター表示(C-AF動作中における合焦点の多点表示)に対応しているのはALLのみ。グループエリアやカスタムターゲットモードはクラスター表示非対応なのは残念。もちろんカスタムターゲットモードで「ALL状態」に設定したとしても表示される合焦点は1つのみ。
枠の色変更
広いエリアのターゲットモードに対応したため、従来のAFエリア表示(黒色で四隅のみ表示)だと非常に見えづらい。
このため、表示設定から枠を見やすい色に変更するのがおススメ。私は赤色に設定しました。
カスタムターゲットモード
ついにオリンパスもカスタムAFエリアモードを実装。
LUMIXのように菱形やストライプなど変態AFエリア設定は出来ませんが、11×11の枠で縦・横のサイズを自由に変更可能。
設定によっては横一文字やグループ36点・グループ49点などと言った使い方ができる。
ニコンZのように移動ステップ数を制限することも可能。さらにステップ数を刻むことが出来るのでラージエリアとの相性が良い。例えばキヤノンEOSの「ラージゾーン」と似た使い勝手を実現することも出来る。
追従感度設定
従来通りですが、C-AFで重要なポイントなのでピックアップ。
追従感度はE-M1 Mark IIと同じ±2で設定可能。小動物や激しく動く被写体の場合はプラス方向へ、鉄道など横方向の動きが多かったり、スポーツなど前後を遮蔽物が横切るシーンが多い場合にはマイナス方向へ設定。
個人的な感覚で言うと、背景や前景にピントを持っていかれることが無い限り0?+2の設定で良いのでは無いかなと感じています。
インプレッション
C-AF+TRの使い勝手はそこまで変わらないかなと感じたものの、9点グループや新25点グループの使いやすさは飛躍的に向上した感触が得られた。
まだ完璧では無いものの、α7 IIIやD850など手持ちのカメラと比べても使いやすい。18コマ秒の追従連写と組み合わせることで、突進して撮影距離を一気に詰めてくるウサギの成功率が高くなった。
特に一度ピントを外してから復帰するまでの時間が短縮されており、そのまま地面を掴んで離さないE-M1 Mark IIと比べるとかなり良好。
中央スタートや中央優先、そして追従感度を調整することでより成功率を高めることが出来そうな印象。
接写性能が高く、オートフォーカスがピュン速な「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」が成している部分も大きい印象。α7 III+「FE 70-200mm F4 G OSS」の組み合わせだとあっと言う間に最短撮影距離を割られるのです(特に200mm側で)。
PROレンズあってのOM-D E-M1Xですねえ。改めて「レンズありきのボディ」と感じるのでした。
クラスター表示が「ALL」のみなのがやはり残念。25点やカスタムモードでの広いフォーカスエリアの場合に1点表示ではどこにピントが合っているのか判断出来ない。このため撮影中での仕切り直しが難しく、撮影後に拡大してピントを確認するが手間と感じてしまう。確認すると確かにピントは正確で問題無いのですが、「安心感」がイマイチ物足りない。
追記:バッファクリア中のカメラ操作について
連写後SDカードへ書き込み中でもカメラ操作や撮影が可能。
しかし、とあるタイミングでカメラ操作のレスポンスが極端に遅くなり遅延やプチフリーズが発生します。
この現象の再現は比較的簡単で、連写後に結構な頻度で発生。SDカードをUHS-IIに切り替えても発生するため、SDカードに起因する現象と言うよりはバッファクリア中のE-M1X側の問題と感じます。
シャッターチャンスが目まぐるしく訪れるようなシーンで撮り逃すことがあったので、この問題はファームウェアアップデートで修正して欲しいポイント。
OM-D E-M1XのC-AFまとめ
OM-D E-M1XのC-AF
Good
- カバーエリアの広いAFグループに対応
- サイズ・ステップ可変のカスタムターゲットモード
- 9点や25点でのC-AF精度・レスポンス
- 中央スタート・中央優先による撮影中の操作性向上
- AF動作中でも使用可能なマルチセレクター搭載
Bad
- C-AF+TRの追従精度に変化なし
- クラスター表示に対応しているのが「ALL」のみ
- 初期設定でAFフレームの枠が見づらい
- 顔検出時のC-AF
- バッファクリア中にカメラ操作が固まる
121点オールクロスセンサーとしてはE-M1 Mark IIと同じですが、他はほぼ別物と考えて問題無いでしょう。
まだ完璧ではありませんが、かなり使いやすくなっています。私の使用環境では一眼レフ以上となった印象。野鳥でじっくり撮影はまだですが、パッと使った感じでは背景に抜けにくくなったように感じます。
一からシステムを構築するとしたら他にソニーα9と言う選択肢もありますが、既にPROレンズを多数所持しており、レンズパフォーマンスを最大限発揮したいと思うのであればおススメのカメラ。
顔検出・瞳検出は要改善
今回はピックアップしませんでしたが、顔検出・瞳検出の精度は今まで通り。特に横顔や上向き・下向きの場合に検出し辛く、ロストしやすい。
正直に言うと、人体認識のLUMIXや次元を超えた瞳AFのソニーαと比べるとかなり使い辛い。
顔検出から検出ロスト時の動作も今まで通りなので頭部を掴み続けないのが輪をかけて痛いポイントとなり、これはキヤノンやニコンよりも悪い感じ。C-AF+TRを併用することで捕捉し続けるものの、ピント精度がイマイチだったりする。
C-AF+TRは「インテリジェント被写体認識AF」に人体検出が加わると変わるかもしれませんが、現段階では娘や家族写真で快適に使うのは厳しい。
E-M1Xの潜在的なポテンシャルは感じるのでファームウェアアップデートに期待したいところ。
今回使用した機材
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