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「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」レンズレビュー ボケ編

キヤノン「RF100mm F2.8 L MACRO IS USM」のレビュー第五弾を公開。今回は前後のボケ質や玉ボケの描写、SAコントロールリング使用時のボケについてチェックしています。

まえがき

2021年4月に正式発表されたキヤノンRFシステム初となる本格的なマクロレンズ。EFマウントの「EF100mm F2.8L IS Macro USM」に相当するレンズであり、比較して「×1.4の撮影倍率」「SAコントロール」「NanoUSM駆動のフローティング構造」に対応しているのが特徴。

概要
レンズの仕様
マウント キヤノンRF 最短撮影距離 0.26m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 1.4倍
焦点距離 100mm フィルター径 67mm
レンズ構成 13群17枚 手ぶれ補正 5.0段
ハイブリッドIS
開放絞り F2.8 テレコン -
最小絞り F32 コーティング フッ素
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ81.5mm×148mm 防塵防滴 対応
重量 約730g AF NanoUSM
フローティング
その他 SAコントロールリング
付属品
レンズキャップ・ポーチ・フード

撮影倍率が1.0倍を超えるマクロレンズでAFに対応している珍しいモデル(MFレンズではいくつか存在します)。特にミラーレス用のAFレンズとしてはこのレンズとオリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」くらいでしょうか。

インナーフォーカスにはフローティング構造を採用しており、撮影距離に応じた適切な収差補正を実現。これにより、×1.4倍のマクロ撮影で収差変動を抑えた高い光学性能を期待できそうですね。
2つのフォーカスレンズ群は駆動系にナノUSMを使用。振動エネルギーを使って直進運動を実現した革新的なAFアクチュエーターであり、静止画・動画での滑らかで静かなAFを実現しているものと思われます。

操作部は従来通りのコントロールリングやフォーカスリングを搭載しつつ、新機能である「SAコントロールリング」を搭載。球面収差を調節することでピント面の滲みや後ボケの描写を変えることが出来ます。過去にニコンが「DC NIKKOR」をリリースしてから久しく新製品を見ていなかったテクノロジーであり、まさか令和の時代にミラーレス用レンズで復活するとは思っていもいませんでした。どのように機能するかは、実際にレンズを使って試してみたいと思います。

フルサイズミラーレス用の100mmマクロレンズとしては珍しく、公式三脚座に対応。別売りなうえに機能性のわりに少し高めですが、三脚座が用意されているのは嬉しいですね。

EFレンズと比べて若干のサイズ・重量増ではあるものの、小型軽量なEOS Rシステムと組み合わせることで総合的なシステムサイズは抑えられていると思われます。基本仕様が似ているものの、最短撮影距離はより短くなり、撮影倍率が向上しています。

RF100 EF100
焦点距離 100mm 100mm
レンズ構成 13群17枚 12群15枚
開放絞り F2.8 F2.8
最小絞り F32 F32
絞り羽根 9 9
最短撮影距離 0.26m 0.3m
最大撮影倍率 1.4倍 1.0倍
フィルター 67mm 67mm
サイズ φ81.5×148mm φ77.7mm×123mm
重量 730g 625g
手振れ補正 5.0段 4.0段
AF NanoUSM×2 リングUSM
エクステンダー 非対応 非対応

価格のチェック

売り出し価格はネット最安値で「163,350円」。EF100mm F2.8L IS Macro USMの売り出し価格が「113,398円」だったことを考えると1.5倍近く高価なレンズです。もちろん、×1.4の撮影倍率やSAコントロール、最新の光学設計を考慮すると避けられない値上がりかもしれませんが、これからRFシステムを導入しようとしている人は手を付けにくい価格設定と言えそうです。(ニコンやソニーの同クラスよりも高い)

このレンズに1.5倍近い価格上昇ぶんの価値があるかどうか、これからじっくりと確認してみたいと思います。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。

実写で確認

SAコントロールリングをニュートラルの状態に固定してチェック。この場合は僅かに後ボケが滑らかで、前ボケが僅かに硬調。NIKKOR Z MC 105mm F2.8 Sと比べると後ボケよりのチューニングが施され、小ボケ領域の背景はより滑らかな表現が可能となっているはず。ただし、ボケ質に差があるのは僅かな領域のみであり、特にボケが大きくなると前後の質感に差は無くなる。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

非球面レンズを使用しておらず、玉ボケの描写は滑らかで綺麗。ボケの縁取りは僅かで、これが問題となることは少ないはず。口径食の影響は少なく、少なくともNIKKOR Z MC 105mm F2.8 Sよりも良好。口径食はF4.0まで絞るとほぼ解消し、F5.6まで絞ると完璧。円形絞りを採用しているので、小絞りを利用しても玉ボケの角張は目立たない。

SAコントロール(-4 - 0 - +4)

SAコントロールリングによる玉ボケの影響は大きい。まず第一に、マイナス側へリングを操作すると画角が広くなり、口径食が非常に強くなる。ボケは滑らかとなるものの、癖が強いのは悩ましい。
逆にプラス側へ回転すると、画角が狭くなり、口径食の影響が小さくなる。ボケは強い縁取りを伴う「バブルボケ」となり、こちも癖の強い描写。
どちらもF4?F5.6で影響は徐々に小さくなり、F5.6に到達するころにはSAコントロールリングの影響が極小となる。SAコントロールリングを活かしたボケを作りたい場合は絞り開放付近がおススメ。

ボケ実写

その1

SAコントロールリングを使わなくても後ボケは滑らかで綺麗。この描写に不満が無ければSAコントロールリングは誤操作を予防するためにもロックしておきましょう。
F2.8からF4までは輪郭が溶けやすい滑らかな描写となり、F5.6まで絞ると背景のコントラストがハッキリとしてくる。F8からF11まで絞ると場合によって騒がしいと感じるかもしれません。

その2

撮影距離が長くなると、わずかに口径食が目立つようになる。それでも全体的なボケ描写は滑らかで綺麗に見えます。色収差による色づきは皆無で、高コントラストによる悪目立ちはしない模様。

その3

撮影距離が長くなっても、マクロレンズとしてはまずまず良好なボケ質を維持。小ボケの表現は良好で隅の騒がしさも目立たない。やはり色収差補正は良好でボケの縁取りに色付きは無し。1段絞るとボケは小さくなるものの、隅まで描写が安定する。F4のほうが好みという人もいることでしょう。

SAコントロールによるボケ質の変化

その1

マイナス側は後ボケが滑らかとなる一方で、口径食やコマ収差が目立つ。特に強烈な効果を狙う必要が無ければ1?2目盛りを使いたいところ。2目盛りの場合はピント面のコントラストに悪影響があるので、全体的なバランスを考慮すると1目盛りで抑えておくのが良し。プラス側も同様のことが言える。

その2

やはりSAコントロールで強烈なコマ収差が発生するの強効果は使いどころを選ぶ。±1に抑えておくのが無難。

その3

接近時はコマ収差や口径食の悪影響が目立ちにくいので、SAコントロールリングの効果を楽しみやすい。とは言え、ピント面への影響を考慮すると±1に抑えるのが無難な選択肢。単純にソフト効果を得たいのであれば、後付けソフトフィルターやブラックミストをおススメします。

今回のおさらい

SAコントロールリングを使わずとも、基本的にボケは綺麗で滑らか。口径食もまずまず良好に抑えられ、程よい後ボケ寄りの描写で使いやすい。同時期に登場したNIKKOR Z MC 105mm F2.8 Sよりも最適と感じる撮影距離が幅広く、特にポートレートのような撮影距離で使いやすさが違うと感じます。

大口径レンズのような柔らかさは無いものの、その辺りはSAコントロールリングを活用することである程度なら補うことが可能。ピント面のコントラストやシャープネスがトレードオフとなるので、SAコントロールの強度には気を付けたいところ。
個人的に前ボケを柔らかくしたり、バブルボケを演出できる「SA+」側が役に立つ印象。

無理にSAコントロールを使う必要はないと思います。SAコントロールが煩わしいと感じたら、右側面のロックスイッチで固定しておくのがおススメ。

購入早見表

作例

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