キヤノン「RF16mm F2.8 STM」のレビュー第二弾を公開。今回はレンズの外観や操作性をチェックし、実際にカメラに装着してフォーカス速度などを確認しています。
Index
まえがき
2021年9月14日に正式発表されたキヤノンRFマウント初となる超広角単焦点レンズ。「16mm F2.8」というパラメータからは想像も出来ないほど小型軽量なレンズで、レンズサイズは「RF50mm F1.8 STM」とほぼ同じ。価格も4万円未満とフルサイズ用広角レンズの純正品としては抑え気味で、導入しやすい。言ってしまえば新世代の広角撒き餌レンズ。
概要 | |||
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レンズの仕様 | |||
マウント | RF | 最短撮影距離 | 0.13m |
フォーマット | フルサイズ | 最大撮影倍率 | 0.26倍 |
焦点距離 | 16mm | フィルター径 | 43mm |
レンズ構成 | 7群9枚 | 手ぶれ補正 | - |
開放絞り | F2.8 | テレコン | - |
最小絞り | F22 | コーティング | SSC |
絞り羽根 | 7枚 | ||
サイズ・重量など | |||
サイズ | φ69.2×40.1mm | 防塵防滴 | - |
重量 | 約165g | AF | STM |
その他 | レンズフード別売り | ||
付属品 | |||
前後キャップ |
前述したようにレンズサイズはRF50mm F1.8 STMとほぼ同じ。レンズ重量も165gと非常に軽量で、フルサイズの超広角レンズをこの携帯性で利用できるのは魅力的。小型軽量なだけでなく、最短撮影距離が0.13mと短く、最大撮影倍率も0.26倍と非常に良好。オートフォーカスはステッピングモーター駆動で、動画撮影時は滑らかに動作する。
レンズ構成は7群9枚で、そのうち1枚の非球面レンズを使用している。RF50mm F1.8 STMと同じくPMo非球面レンズなのか国内のウェブサイトには明記はされていない。ただし、国内の商品ページに記載は無いが、海外のウェブサイトを確認すると、PMo非球面レンズであることが明記されいている。PMoとは「プラスチックモールド」を意味しており、個人的な経験則から言うと、透過率が少し悪いかもしれない。
また、小型軽量な超広角レンズの妥協点として、MTFで見て分かるほど周辺画質の落ち込みがある。「最新設計のミラーレス用レンズ」として高画質を期待していると肩透かしとなる可能性あり。この辺りは今後のテストで要検証。
価格のチェック
売り出し価格は3万7千円ほど。純正のフルサイズ用超広角レンズとしては非常に安い。特に高価なレンズが多かったRFレンズの中では極めて安い部類に属する。「RF50mm F1.8 STM」と共にキットレンズに加える面白い選択肢となる。
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外観・操作性
箱・付属品
RFレンズらしい黒を基調とした非常にシンプルなデザインの箱。Lレンズでは無いので、レンズ名に赤色は使われていない。レンズの製品画像がプリントされている面を除いて、基本的に黒と白のツートンカラーに仕上がっている。
中は間仕切りしておらず、レンズ本体は緩衝材で包まれている。
レンズ本体の他に付属品は説明書と保証書のみ。レンズフードやケースは付属していない。レンズフードは今のところ社外製の互換品も存在しないので、純正フードを手に入れるしかない。とは言え、(2021年11月現在)供給不足が続いており、納品まで時間がかかってしまうのが悩ましいところ。
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外観
外装は他のRFレンズと同じく高品質なプラスチックパーツを使用。プラスチック製ながらしっかりとした作り。外装に継ぎ目も見えて高級感は無いが、低価格なレンズとしては極端に安っぽい印象もない。全体的なデザインは「RF50mm F1.8 STM」とほぼ同じで、マットブラックの塗装を基調として、アクセントとなるシルバーラインが装飾されている。意匠はシンプルで必要最小限だが、一見してキヤノンレンズと分かる。
フォーカスリングはローレット加工が施されたプラスチック製。リングの側面のスイッチで機能を「フォーカス」と「コントロール」に切り替えることが出来るが、ローレット加工から分かるように、キヤノンは「コントロール」として使うことを想定しているのかもしれない。
その他に過度な装飾は見られず、必要最低限。表面の印字は「Canon」のロゴとCEマークなどに加工が施され、ピント範囲やシリアルナンバーなどは表面に直接プリントされている。ちなみに製造国は台湾。
レンズサイズはRF50mm F1.8 STMとほぼ同じ。このサイズで16mmの単焦点レンズを実現したのは本当に凄い。形状がほぼ同じであるため、カメラバッグ収納時に取り違える可能性がある点には気を付けたい。
ハンズオン
全長40.1mm、重量165gの小型軽量な単焦点レンズ。まさに手のひらサイズで16mmの超広角を扱えるのは凄い。小型軽量で低価格なレンズだが、手に取った際の質感は良好で、特に安っぽい印象は無い。
前玉・後玉
レンズは繰り出し式フォーカスを採用しており、ピント距離によってレンズが前方へ繰り出す仕組み。繰り出す内筒の先端には43mmフィルターに対応したソケットを搭載。広角レンズ用のフィルター径としては非常に小さく、手ごろな価格でフィルターを揃えることが出来るのは強い。ただし、フィルターサイズが小さすぎて、対応するブランドが限られてしまうのが悩ましいところ。
小さな前玉とは打って変わって大きな後玉を搭載。大口径マウントのミラーレスシステムらしい設計。また、周囲の金属マウントは4本のビスで固定されている。
フォーカスリング
小さなフォーカスリング(兼コントロールリング)を搭載。はこの価格帯のレンズとしては驚くほど滑らかに回転する。トルクは思っていたよりも少し強めだが、適度なストロークと相まって使いやすく感じる。
ピントの移動距離は「回転量」「回転速度」の2パターンをカメラ側で設定可能。回転量の場合、ピント全域の操作に必要なストロークは約180度ほど。回転速度の場合はゆっくり回転すると180度、素早く回転すると90度ほどで操作可能となっている。個人的に静止画で使う場合は「回転速度」の設定が使いやすいと感じる。
スイッチ
「AF/MF」スイッチの代わりに「FOCUS/CONTROL」スイッチを搭載している。このスイッチを操作することで「フォーカスリング」と「コントロールリング」の役割を切り替えることが可能。このレンズでMFを使うことが無いのであれば、常時コントロールリングとして使うのもあり。
ただし、一般的なコントロールリングと異なりノッチが無いので、慣れるまでは使い辛い。リングの強めのトルクがかかっているので、RF50mmよりは少し操作しやすい。
レンズフード
残念ながら供給不足の純正フードを手に入れ損ねてしまった。
RF50mm F1.8 STMのフードを装着することは可能。この状態でも静止画のライブビューでケラレることは無いが、(無修正の)RAWを確認するとガッツリケラレるので注意が必要。
注意
このレンズは巨大な歪曲収差をボディ内で後処理している。この過程で周辺部が大きく引き伸ばされるため、結果的にフードでケラレる四隅がトリミングされている状態。
装着例
EOS R5に装着。このレンズが16mmの超広角レンズであることを考えると驚くほど小型軽量で、気軽に持ち出すことができるレンズサイズと分かる。片手でカメラを扱うのもやぶさかでは無く、バリアングルモニタを活かして縦横無尽のアングルで撮影が可能。光学性能を抜きにして、このレンズサイズは強みとなる。
AF・MF
フォーカススピード
レンズ繰り出し式フォーカスを採用し、駆動系にはステッピングモーターを使用。電光石火とは言えないが、十分高速なAF速度を実現しているように見える。サーボ時でも良好な追従性能を見せるが、被写体が近側から遠側へ高速移動する際に追いかけ損ねる場合あり。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。
ピント距離による画角変化は非常に目立つ。これは至近距離のみならず、中距離や遠距離まで一貫して画角変化が発生。特に最短撮影距離と無限遠は特に画角の違いが大きく、接写時にピントを外すとかなり煩わしく感じる。
精度
EOS R5と組み合わせる限りフォーカスの精度は良好。ピント位置の再現性も一貫しているように見える。前述したようにフォーカスブリージングが目立つので、周辺部や隅のフォーカスエリアを使用していると誤検出する場合があるかもしれない。(画角の変化で意図しない位置にピントを合わせてしまう)
MF
この価格帯としては使いやすいフォーカスリングを実装している。前述したように近距離でピントが迷う場合はMFを積極的に活用するのも一つの手。ただし、AF/MFの切替はカメラのメニュー画面を使った操作が必須となる。
今回のまとめ
光学性能を抜きにして、このサイズの16mm超広角と言うだけで検討する価値のあるレンズ。低価格ながら、しっかりとした作りで、コントロールリングの感触も良好。オートフォーカスも静止画で使うぶんには十分実用的なパフォーマンスだと思う。画角変化が大きいので、ピントが前後に移動するような動画撮影では使い辛いはず。
手ごろな価格設定もあり、超広角のエントリーレンズとして最適。
もちろん光学性能にはいくつか妥協が必要なので、画質を追求するのであれば他を検討するべき。とは言え、F4広角ズーム・F2.8広角ズームのユーザーだったとしても、RF16mmは携帯性の良さもあってカジュアルな撮影に面白い選択肢だと思う。
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