キヤノン「RF28mm F2.8 STM」のレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
RF28mm F2.8 STMのレビュー一覧
- キヤノン RF28mm F2.8 STM レンズレビュー 完全版
- キヤノン RF28mm F2.8 STM レンズレビュー Vol.6 周辺減光・逆光 編
- キヤノン RF28mm F2.8 STM レンズレビュー Vol.5 諸収差 編
- キヤノン RF28mm F2.8 STM レンズレビュー Vol.4 ボケ 編
- キヤノン RF28mm F2.8 STM レンズレビュー Vol.3 遠景解像 編
- キヤノン RF28mm F2.8 STM レンズレビュー Vol.2 解像チャート 編
- キヤノン RF28mm F2.8 STM レンズレビュー Vol.1 外観・操作・AF 編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
実写で確認
後ボケが滑らかで綺麗。比較して前ボケは縁取りが硬く、二線ボケの兆候が見られます。28mmレンズで前ボケを入れる機会は少ないと思われるため、後ボケ寄りの質感は肯定的に評価できます。軸上色収差の補正が完璧ではなく、若干の色づきが発生していますが、特に大きな問題ではありません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
ボケの縁取りが若干見られるものの、表面は滑らかで綺麗。フレーム端・隅に向かって口径食の影響あり。口径食は1段絞ると改善しますが、絞りの形状が少し角ばります。大口径のポートレートレンズなどと比べると見劣りしますが、小型軽量なF2.8パンケーキレンズとしては予想以上にまともな結果が得られました。
ボケ実写
至近距離
全体的に滑らかで柔らかい描写の後ボケ。口径食の影響はあるものの、ボケが大きく、悪目立ちしていません。1段絞ると口径食の影響は小さくなるものの、全体的に少し描写が硬く、アウトラインが目に付くようになります。
近距離
撮影距離が長くなると、当然ながらボケは小さくなります。それでも全体的に滑らかで綺麗な描写を維持。フレーム隅に向かってアウトラインや色収差が目立つこともなく、写真に取り入れやすいボケ質。同じパンケーキレンズのニコン「Z 26mm F2.8」よりも遥かに良好な描写。
中距離
撮影距離がさらに長くなると、そもそも「28mm F2.8」では大きなボケが得られません。背景の輪郭がしっかりと残っているため、被写界深度のみで被写体を分離するのは難しいでしょう。この際のボケは悪くありませんが、周辺部や隅はコマ収差の影響で少し騒がしくなる可能性あり。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立てて、F2.8の絞り開放で撮影した結果が以下の通り。
全身をフレームに入れた状態で背景をぼかすことは難しい。少なくとも膝上や腰上くらいまでは近寄りたいところ。バストアップから顔のクローズアップでは満足のいくボケ量が得られ、この際の質感も十分に良好。
まとめ
サイズや価格、焦点距離・F値を考慮すると、思ったよりも綺麗なボケが得られるレンズ。非球面レンズで効果的に収差を補正しつつ、製造方法にPMo(プラスチックモールド)を採用することで研磨ムラのない滑らかなボケを実現しているように見えます。(収差による2線ボケやボケの縁取りはゼロではありません)
口径食や軸上色収差などボケ質に作用する要素は全体的によく抑えられています。これらについて絞る必要性は感じません。F2.8からピントの切れ味と滑らかなボケを両立したパンケーキレンズと言えるでしょう。
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