銘匠光学「TTArtisan 10mm F2 C」のレビュー第四弾を公開。いつものTTArtisanらしく逆光時のフレアやゴーストは要注意。いっぽうでシャープな光条は強みとなり、ボケも玉ボケさえ入れなければ悪目立ちしない結果を得ることができます。
はじめに
今回は焦点工房から期間限定で無償提供していただいた製品を評価しています。レビューにあたり、金銭の受け取りやテスト結果・評価への指示は一切ありません。無意識のバイアスがかかっている可能性を否定できませんが、これまでに様々な製品をレビューしてきた経験をもとに、出来る限り客観的な評価を心がけています。
TTArtisan 10mm F2 Cのレビュー一覧
- 銘匠光学 TTArtisan 10mm F2 C レンズレビュー 完全版
- 銘匠光学 TTArtisan 10mm F2 C レンズレビュー Vol.4 ボケ・減光・逆光編
- 銘匠光学 TTArtisan 10mm F2 C レンズレビュー Vol.3 諸収差編編
- 銘匠光学 TTArtisan 10mm F2 C レンズレビュー Vol.2 遠景解像 編
- 銘匠光学 TTArtisan 10mm F2 C レンズレビュー Vol.1 外観・操作性 編
Index
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
以下のサンプルは絞り開放における玉ボケの隅をクロップしたもの。お世辞にも綺麗な描写とは言えず、「10mm F2」のレンズに期待する部分とは言えません。
ボケ実写
至近距離
10mm F2でも接写時は背景をぼかすことが可能。ただし、玉ボケには悪目立ちする”ムラ”があり、心地よい描写とは言えません。幸いにも色収差の影響が少ないので、フレーム端に向かって目立つ色づきは無し。
近距離
接写と同じく、少し騒がし描写。これなら目立たない程度に絞ってしまったほうが良いかもしれません。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。
人物の撮影で顔のクローズアップ以外でボケを得ることは難しい。ボケが得られたとしても、好ましい描写からはほど遠い。ボケが小さいので悪目立ちしないかもしれませんが、積極的に使いたいとは思いません、
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
最短撮影距離
やや目立つ傾向ではあるものの、F2と明るい超広角レンズとしては健闘しているように見えます。特に酷いとは感じません。ただし、絞っても影響が残るので、必要に応じて手動補正が必要。
無限遠
最短撮影距離よりも少し強めに減光が発生するものの、基本的には同じ傾向。
逆光耐性・光条
中央
このレンズにおける弱点の一つ。TTArtisanらしく、逆光時のフレアは強めに発生します。これはこれでインパクトのある描写ですが、フレアが必要ない人にとっては邪魔でしかありません。開放でも小絞りでも目立ちます。
端
光源をフレーム隅に移動した場合でもフレアやゴーストの影響が強く発生します。もしもフレアやゴーストの影響を回避したいのであれば、逆光や斜光を避けるしかありません。
光条
絞ることで8本の綺麗な光条が発生します。F2.8の段階でシャープな光条が発生するため、このような描写が必要な人にとって面白いレンズとなることでしょう。解像性能とバランスを取るのであればF4~F8あたりがおススメ。
まとめ
正直に言うと綺麗なボケではありませんが「そもそもボケが小さい」「悪目立ちする色収差が良く抑えられている」の2点から酷くはありません。玉ボケさえ入れなければ、十分に満足のいく結果。(粗い描写の)玉ボケが目立つ場合は絞ってしまったほうが良いでしょう。周辺減光は確かに目立ちますが、このクラスのレンズとしては良くも悪くもありません。敢えて言えば、絞っても減光が残り、自動補正には対応していないので事後の修正が必要となる場合あり。
逆光耐性はこのレンズの泣き所。前述したように悪くないフレアの描写ですが、そもそもフレアが必要ない場合にこれを回避する手段がほとんどありません。強い光源がフレーム内に入らないようにするか、逆光シーンを避ける必要があります。手ごろな価格のTTArtisanですが、そろそろコーティングなど反射対策は要改善。その一方で光条はこのレンズの強みと言っていいほど綺麗でシャープな結果が得られます。逆光時のフレア・ゴーストに対処する必要があるものの、F2.8からシャープな結果となるのは魅力的。フォクトレンダーのような描写。
購入早見表
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作例
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