銘匠光学「TTArtisan AF 56mm F1.8」富士フイルムXマウント用のレビュー第四弾を公開。後ボケの縁取りは少し硬めですが、色収差の影響が少なく、低価格の大口径レンズとしては使い勝手が良好となっています。
TTArtisan AF 56mm F1.8のレビュー一覧
Index
おことわり
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
やや硬めのボケ質ですが、色収差による色づきが無く、過度に悪目立ちする要素はありません。価格帯を考慮すると十分。
前ボケ
後ボケとは反対に、少し柔らかいボケ質。色収差による色づきも少なく、非常に満足のいく描写。個人的には後ボケに欲しかった描写ですが、ポートレートレンズでは前ボケを入れる機会も多いと思われます。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
実写で確認
色収差の影響が少なく、口径食も穏やか。非球面レンズを使用していないため、玉ボケの内側は滑らかな描写。全体的に欠点の少ない玉ボケ。あえて言えば縁取りが若干硬めですが、それが問題と感じるシーンは少ないはず。9枚円形絞りが功を奏しているのか、絞っても玉ボケが角ばりにくい。ボケが小さくなるまで良好な結果を期待できます。
ボケ実写
至近距離
どちらかと言えば優等生的なボケですが、あたりさわりが無く、使い勝手が良さそうに見えます。F1.8の絞り開放からピント面のコントラストは良好で、特に絞る必要性を感じません。逆に言えば、これ以上の柔らかい描写が得られないため、状況に応じてソフトフィルターやブラックミストなどで対応するといいでしょう。
近距離
被写体との距離が離れた場合でも描写の傾向は同じ。硬調なので背景のコントラストによっては少し騒がしく感じるかもしれません。
中距離
接写や近距離と同じ。撮影距離が長い場合は口径食の影響が強くなります。気になる場合はF2.8-4まで絞ると改善します。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。フレームに全身を入れるような撮影距離では、フレーム周辺部の後ボケが騒がしくなります。状況に応じて少し絞ったほうが良さそう。とはいえ、ボケが小さいので目立たない可能性もあります。膝上・上半身程度まで近寄ると、低価格レンズとしては十分に綺麗なボケが得られます。バストアップや顔のクローズアップは文句なし。
まとめ
後ボケがやや硬調で、撮影距離が長い場合は縁取りの強い描写。柔らかい描写が好みの人は、少し不満と感じるかもしれません。しかし、色収差の補正状態では良好で、悪目立ちする要素は良く抑えられています。価格を考慮すると使いやすいボケ質。絞りによる調節はほとんど必要なさそうですが、口径食と後ボケの縁取りが気になる場合、F2.8-4まで絞ったほうが良好な結果を得られる可能性あり。
購入早見表
作例
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