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TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH. 徹底レビューVol.1 外観・操作性編

銘匠光学「TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH.」のレビュー第一弾を公開。今回はレンズの外観や操作性、カメラに装着してMFの使いやすさなどを確認しています。

TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH.のレビュー一覧

はじめに

今回は焦点工房から期間限定で無償提供していただいた製品を評価しています。レビューにあたり、金銭の受け取りやテスト結果・評価への指示は一切ありません。無意識のバイアスがかかっている可能性を否定できませんが、これまでに様々な製品をレビューしてきた経験をもとに、出来る限り客観的な評価を心がけています。

まえがき

中国レンズメーカー銘匠光学がリリースしたライカMマウント用の交換レンズだ。TTArtisanシリーズとしては珍しくアポクロマート設計を示す「APO」をレンズ名に冠している。電子接点が存在しない完全なマニュアルレンズで、今のところ対応マウントはライカMのみである。

概要
レンズの仕様
マウント Leica M 最短撮影距離 0.7m
フォーマット フルサイズ 最大撮影倍率 不明
焦点距離 35mm フィルター径 52mm
レンズ構成 9群12枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F2 テレコン -
最小絞り F22 コーティング 不明
絞り羽根 10枚
サイズ・重量など
サイズ φ60×77mm 防塵防滴
重量 510g AF MF
その他 電子接点なし
レンズ構成
付属品
レンズフード

9群12枚の複雑な光学設計には3枚のEDレンズと1枚の非球面レンズを使用。最短撮影距離はライカMマウントでは一般的な0.7mとなっており、ここ最近登場した「APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical VM(0.5m)」や「LEICA APO-SUMMICRON-M f2/35mm ASPH. (0.3m)」などと比べるとクローズアップ能力に制限がある点に気を付ける必要がある。また、レンズ全長が長いのでレンジファインダーがケラれやすく、35mm F2としては重量級である点も考慮しておきたい。

価格のチェック

日本国内での販売価格は7~8万円台だ。TTArtisanブランドのレンズとしては少し高めだが、ライカ純正レンズよりもずっと安く、コシナのフォクトレンダーよりも数万円は安く手に入れることが出来る。価格に見合う価値があるかどうかはレビューで確認していきたい。

TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH.
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外観・操作性

箱・付属品

TTArtisanではお馴染みの箱。外装にはファブリック調のカバーが施されており、一般的な段ボールと比べてひと手間かかっている。レンズ本体は箱に敷き詰められた緩衝材に包まれているしっかりとした作りだ。

レンズ本体の他にレンズフード、説明書などが付属している。連動計を調整するための工具も付属しており、使い方も専用の説明書が用意されている。

外観

TTArtisanらしく総金属製のしっかりとした作りだ。表面は少し光沢を残したブラックで塗装され、各種表示は白色と黄色を使い分けている。手ごろな価格のTTArtisanと異なり、どちらの色の表示もエッチング加工したうえでペイントが施されている。全体的にライカMレンズと非常によく似た外観だ。デザインにも力が入っている。

ハンズオン

フルマニュアルの35mm F2レンズとしては長く、そして重い。前述したように、レンジファインダーでケラれやすい点に注意が必要だ。グリップのあるミラーレスに装着して使う分には問題ないが、α7R IVとの組み合わせで1?を超える。

前玉・後玉

ほぼフラットな前玉の周囲には白字でレンズ名やフィルター径がプリントされている。フィルターを装着すると状況によっては白文字が反射して写りこむので個人的には好みではないデザインだ。(ライカのデザインを模倣する流れで言えば正しい選択だが)

レンズ前玉にフッ素コーティングは施されていないので、汚れや水滴の付着が予想できるシーンではプロテクトフィルターを装着しておいたほうが良いだろう。フィルター径は52mmの一般的なサイズを使用できる。

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レンズ先端に装着するレンズフードは脱着が可能だ。バヨネットではなくねじ込み式で、奥までしっかりねじ込むと固定用のゴムリングで脱落や緩みを防ぐ面白いつくりとなっている。レンズフードの脱着は抵抗こそあるものの、非常に滑らかに取り扱うことが出来る。

レンズフードにはかぶせ式のゴム製キャップが付属する。単純なかぶせ式の場合は脱落しやすく好みではないが、このキャップはフードの一端に引っ掛けるように被せるので誤って脱落する可能性をよく抑えたデザインとなっている。これはとてもいいアイディアだと思う。

金属製のレンズマウントは4本のビスで固定されている。レンズは全群繰り出し式のため、フォーカス操作で後玉から前玉まで前後する。

フォーカスリング

金属製のフォーカスリングは0.7mから無限遠までのストロークが約120°だ。トルクは絶妙に調整されており、ピントレバーを使った微妙な力加減をうまく作用してくれる非の打ち所がない操作性だ。素早い操作と精度を両立している。

ピントレバーは最初からフォーカスリングに固定されている。パッと見た限りでは、ピントレバーを簡単に取り外す手段は無い。

絞りリング

金属製の絞りリングはF2からF22まで1/2段刻みで動作する。フルレンジで1/2段刻みとなっているので絞りを調整しやすいのはGood。APS-C F1.4シリーズほどクリッキーではないが、クリック感のある滑らかな回転操作が可能である。なおクリックを解除する機能は無い。

装着例

TTArtisanブランドのマウントアダプター経由でα7R IVに装着した。もともと35mm F2としては長めのレンズだが、さらにマウントアダプターが全長に追加されているのでとても長く感じる。レンズフードが必要なければ取り外すのも一つの手だが、フードを外したとしてもシステムサイズ感に大きな変化はない。

MF

フォーカス速度

前述したとおり、120°の適度なストロークで0.7m~無限遠の範囲で回転する。微細な調整も可能な滑らかで程よいトルクを備えているが、素早く回転させる際に重すぎることもない。本当に絶妙なトルク感である。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

0.7mの長い最短撮影距離を考慮すると画角の変化はやや目立つ。

精度

適度なストロークとトルクで回転するのでピント合わせは非常に簡単だ。

まとめ

ライカ純正レンズよりも遥かに安く、フォクトレンダーよりも手ごろな価格で入手できる35mmのアポクロマート設計レンズだ。比較して手ごろな価格だが「安かろう悪かろう」で敬遠するのは勿体ない作りとなっている。「中国レンズメーカー」だからと言って使わずに決めつけるのは良くない。

フルマニュアルのレンズで重要となるフォーカスリングは特に良くできている。ケチのつけようがないトルクと滑らかさを備え、非常に心地よいフォーカシングが可能となっている。素早い操作から微妙なピント調整まで問題なし。個人的にはストロークがもう少し長いと良かったが、一般的な撮影ではこれくらいのストロークに抑えておいたほうが使いやすいと思われる。

レンズフードの脱着やキャップもよく考えられている。機能性や実用性は兎も角、「所有する喜び」を感じられる作りである。なかなか、ツボを心得ているなと感じた。ただし、レンジファインダーカメラで使う際は全長が長く、光学ファインダーがケラレやすい点には注意が必要である。

最短撮影距離が非常に長く、接写性能の観点で競合レンズよりも見劣りする。リセールバリューが有名・老舗メーカーほど維持できない。現状で入手できるルートが限られている。などなど、いくつか懸念すべき点もあるが、それでも一度は実物を手に取って評価して欲しいレンズに仕上がっている。光学性能はテスト中だが、「APO」を冠しているのは伊達じゃないと感じている。

購入早見表

TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH.
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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