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TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH. 徹底レビューVol.5 諸収差編

銘匠光学「TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH.」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。

TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH.のレビュー一覧

はじめに

今回は焦点工房から期間限定で無償提供していただいた製品を評価しています。レビューにあたり、金銭の受け取りやテスト結果・評価への指示は一切ありません。無意識のバイアスがかかっている可能性を否定できませんが、これまでに様々な製品をレビューしてきた経験をもとに、出来る限り客観的な評価を心がけています。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

上の作例はそれぞれ中央にピントを合わせた写真と、隅にピントを合わせた写真の右上をクロップしたものだ。大きな違いは見られず、像面湾曲は適切に補正されていることが分かる。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

アポクロマート「APO」とは軸上色収差の高度な補正状態を指ししているが、このレンズは倍率色収差も良好に補正している。絞り値全域で色収差の痕跡は目立たず、快適に利用することが可能だ。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

よく見ると僅かに軸上色収差の痕跡を見ることが出来るものの、これが実写で問題となるケースは限られている。基本的には絞り開放のF2から良好な補正状態だ。遠景解像テストからも分かるように、F2からコントラストの高いピント面を得ることが出来る。

球面収差

球面収差そのものは良く抑えられているように見える。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

僅かな樽型だが、直線的な被写体をフレームに入れてもほとんど認識することが出来ないような量に抑えられている。35mmレンズとしては非常に良好な補正状態だ。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

完璧ではないが、この価格帯の35mm単焦点レンズとしては良好な補正状態だ。ソニーFE 35mm F1.8よりも遥かに良好である。僅かに残る影響も少し絞れば改善することが出来る。絞っても改善しない放射方向の光の筋は収差と言うよりもフレアの一種ではないかと予想している。Phillipreeveでは非球面レンズの研磨状態が悪さをしているのではと言及しているが定かではない。

まとめ

色収差の影響はゼロと言い切ることは出来ないが、「APO」を冠しているだけのことはある良好な補正状態だ。大部分のシーンで絞り開放のF2を快適に利用することができ、フレーム周辺部の倍率色収差も良く抑えられている。

像面湾曲やコマ収差が抑えられているので開放付近を使った遠景や夜景、天体撮影も快適である。とは言え、周辺部の解像性能は少し低下するので、最適かと言うとそうでもない。それでも一般的な撮影でF2を使うぶんには不満を感じることは少ないと思う。

電子補正の自動適用が出来ないレンズだが歪曲収差も光学的に補正されているので特に心配する必要は無い。直線的な被写体をフレームに入れたとしても目立つことはまず無いだろう。

諸収差に関して、これと言って致命的な欠点は抱えていないように見える。敢えて言えば非球面レンズのムラと思われる周辺部の筋状フレアや逆光耐性が問題となる場合はあるだろう。その辺りは次のテストで紹介したい。

購入早見表

TTArtisan APO-M 35mm F2 ASPH.
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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