富士フイルム「XF23mmF1.4 R LM WR」のレビュー第五弾を公開。今回は色収差や歪曲収差など各収差を恒例のテスト環境でチェックしています。
XF23mmF1.4 R LM WRのレビュー一覧
- XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビュー 完全版
- XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビューVol.5 諸収差編
- XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビューVol.4 ボケ編
- XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビューVol.3 遠景解像編
- XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビューVol.2 解像チャート編
- XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
Index
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。
無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。
実写で確認
フォーカス位置の変化によるピント位置の変動は目立ちません。像面湾曲は問題ないレベルに抑えられています。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
極わずかに収差が残っているものの、とても良好な補正状態。追加補正の必要性は感じません。絞り値全域で良好です。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
僅かな色づきが見られるものの、F1.4の大口径レンズとしては非常に良好。色収差の影響が問題となるシーンは限られています。
球面収差
前後のボケ質に顕著な差はありません。若干の違いは見られるものの、これが実写で問題となることはないでしょう。御覧の通り、高コントラスト時は軸上色収差の影響あり。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
やや強めの樽型歪曲が残っています。風景撮影などは未補正RAWで問題ない場合もあると思いますが、直線的な被写体を撮影する場合は補正必須。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
点像再現性が完璧とは言えませんが、F1.4から良好な補正状態です。F2-2.8で改善し、F4でほぼ完璧に抑えることができます。
まとめ
全体的によく抑えられ、これと言って弱点となるポイントは存在しません。あえて言えば残存する歪曲収差が目立つものの、自動・手動で補正しやすい状態となっているので大きな問題ではありません。色収差はF1.4からよく抑えられており、日中でも気兼ねなく絞り開放を使うことが可能。
高性能であることの裏返しとして、「レンズの味」を楽しむには物足りなさを感じるかもしれません。絞りによる描写の変化がごく僅かで、使いこなす楽しみはほとんどないと言っても過言では無いでしょう。よく言えば、最初から写真撮影に集中できるレンズです。高価ですが、それけの光学性能を備えていると見て間違いない。
購入早見表
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