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XF23mmF1.4 R LM WR レンズレビュー 完全版

このページでは富士フイルム「XF23mmF1.4 R LM WR」のレビューを掲載しています。

XF23mmF1.4 R LM WRのレビュー一覧

管理人の評価

ポイント 評価 コメント
価格 高価だがそれだけの価値あり
サイズ 性能なりのサイズ
重量 性能なり重量
操作性 大きな問題なし
AF性能 速度・画角変化の点で良好
解像性能 周辺部まで一貫した性能
ボケ 滑らかで綺麗な描写
色収差 良好に補正
歪曲収差 状況によって補正必須
コマ収差・非点収差 良好に補正
周辺減光 F1.4らしく目立つ
逆光耐性 平凡
満足度 優れた23mm F1.4レンズ

評価:

Xマウント 23mmの頂点

優れた光学性能・ビルドクオリティを備え、フォーカス性能も非常に良好。いくつか欠点はあるものの、23mmの大口径レンズとしては間違いのない選択肢。

被写体の適正

被写体 適正 備考
人物 引いても綺麗なボケ
子供・動物 高速AFが役に立つ
風景 良好な解像性能
星景・夜景 良好な収差補正
旅行 適度な携帯性で高性能
マクロ そこそこ寄りやすい
建築物 歪曲の補正必須

まえがき

2022年2月に発売された富士フイルムXマウント用の準広角の単焦点。従来の「XF23mmF1.4 R」実質的な後継モデルで、新しい光学系、新しいAF駆動方式、防塵防滴などを特徴とした全く新しいレンズに仕上がっています。前モデルよりも大型化していますが、より現代的で高性能なレンズ設計を採用。高解像な静止画から滑らかな動画撮影まで幅広く対応できるようです。

概要
レンズの仕様
発売日 2022年 2月24日 初値 ¥108,899
マウント X 最短撮影距離 19cm
フォーマット APS-C 最大撮影倍率 0.2倍
焦点距離 23mm フィルター径 58mm
レンズ構成 10群15枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.4 テレコン -
最小絞り F16 コーティング EBC
絞り羽根 9枚
サイズ・重量など
サイズ φ67mm×77.8mm 防塵防滴 対応
重量 375g AF リニア
その他
付属品
レンズフード・キャップ

レンズ構成は10群15枚と複雑で、そのうち3枚がEDレンズ、2枚が非球面レンズと贅沢な仕様。フレーム隅まで極端な画質低下のない安定感のある光学性能を実現しているようです。同時にリニアモーターを使ったインナーフォーカス仕様でAFを高速化・静穏化。また、最短撮影距離は前モデルよりも大幅に改善し、最大撮影倍率もかなり高くなっています。光学性能と使い勝手の両面で大幅な性能向上を期待できそうです。

価格のチェック

売り出し価格は10.8万円。現在は円安や世界情勢の影響で1万円ほど高くなっています。どちらにせよ前モデルより数万円高く、APS-C用の単焦点レンズとしては手を出しにくい価格設定。とは言え、他社のAPS-Cシステムにはない高水準な単焦点レンズに違いないので、価格に見合う価値があるかどうか、一連のレビューで確認してみたいと思います。

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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

富士フイルムらしい黒を基調としたシンプルなデザイン。焦点距離を大きく、目立つようにプリントしています。箱をいくつも保管している人にとって分かりやすいデザインですね。レンズ本体のほか、花形レンズフード、キャップ、ラッピングクロス、説明書、保証書が付属します。

外観

外装は従来通り、金属パーツが多めで質感が良い。レンズマウント・外装・絞りリング・フォーカスリング・フィルターソケットまで金属製。プラスチック外装と比較した際の長所・短所はあるものの、「持つ喜び」の観点で言えば良くできていると思います。

意匠は非常にシンプルで飾り気はありません。落ち着いたデザインのカメラボディと相性が良さそう。残念な点はシリアルナンバーを含めた表示がプリントや刻印ではなくシールであること。簡単に剥がれないと思いますが、経年で剥がれ落ちる可能性は否定できません。(実際、XF35mmF2で剥がれかかっていました)
ちなみに製造国はフィリピン。

ハンズオン

全長77.8mm、重量375g。
前モデルよりも大きく重いレンズに間違いありません。光学性能やフォーカス、防塵防滴などを考慮すると許容範囲内ですが、小型軽量ボディとの相性は悪化しています。

前玉・後玉

レンズ前面にはレンズ名やコーティングなどが白字でプリント。この面の白字は光りで反射しやすく、前面に装着したフィルターに写りこむ可能性があるので個人的には否定的です。

前モデルよりも大型しているものの、フィルター径は58mmと少し小さくなっています。小さくなっていますが、Xマウントレンズ数あれど、58mm径に対応するレンズはそう多くありません。幸いにもXF14mmF2.8やXF33mmF1.4とは共有可能。

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前玉にフッ素コーティング処理が施されている記述は見当たらないので、水滴や汚れの付着が想定される場合は保護フィルターを装着しておいたほうが良いでしょう。

金属製のレンズマウントは4本のビスで固定されています。最後尾のレンズはマウントから突き出るようにギリギリの配置。バックフォーカスが短いミラーレスの特性を活かした光学設計のようです。

レンズマウント周囲は防塵防滴用のシーリングあり。比較的柔らかい素材で、カメラ脱着時の抵抗感はほとんどありません。

フォーカスリング

電子制御式の幅広いフォーカスリングを搭載。メカニカルなフォーカスリングよりも少し緩めですが、適度な抵抗感で滑らかに回転します。リニアレスポンスかそれに近い応答性で、マニュアルフォーカス時の再現性は高い。ストロークは270度近くあり、フルマニュアルには煩雑ですが、微調整はしやすい。

絞りリング

適度なクリック感のある絞りリングを搭載。1/3段刻みで動作し、F1.4からF16、そしてAポジションまで操作できます。クリックの抵抗感はソニーよりも緩く、シグマと同程度。個人的にはもう少し強めの抵抗感が好みですが、絞りリングでこまめに調整する人ならば好ましい感触と言えるかもしれません。ロック機能はAポジションとF16の相互の行き来で有効。クリックを解除する構造はありません。

装着例

X-S10に装着。やや重めの単焦点レンズですが、グリップの大きなX-S10との組み合わせではバランス良好。長時間の撮影も苦になりません。X-E4のようにグリップが全くないカメラの場合はストラップや追加グリップが欲しくなると思います。

AF・MF

フォーカススピード

リニアモーター駆動のAFはX-S10との組み合わせで非常に高速。一般的な撮影距離でほぼ瞬間的にピントを合わせることが可能です。カメラ側のAF性能が向上することで、AFCの追従性能や、低照度・低コントラストでの動作も改善が期待できるはず。それだけのポテンシャルがあると感じました。後述しますが、フォーカスブリージングがよく抑えられているので、フレーム周辺部を使ったピント合わせも安定感のある動作が期待できます。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

スライドショーには JavaScript が必要です。

完全ではないものの、目立たない程度に良く抑えられています。最短撮影距離を改善しつつ、ここまで目立たないのであれば御の字と言えるでしょう。

精度

X-S10との組み合わせで大きな問題には遭遇していません。無限遠でピントの山を掴み損ねることがありますが、これはカメラ側の問題だと思われます。

MF

前述したように、ストロークが長く、滑らかに操作できるマニュアルフォーカスに大きな問題はありません。素早く操作するにはストロークが長すぎますが、微調整には使いやすい。

問題はカメラ側で、富士フイルムXシリーズはライブビューの拡大倍率が低く、細部のピント合わせが難しい。第五世代(X-H2など)では改善しているのかもしれませんが、少なくとも第4世代のX-S10で遠景や点光源へのピント合わせは不快と感じます。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:FUJIFILM X-S10
  • 交換レンズ:FUJINON XF23mmF1.4 R LM WR
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 160 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・レンズプロファイルオフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

広角レンズは定型チャートに対して接写して撮影する必要があります。接写時は収差の変動が大きく、特に隅に向かってパフォーマンスが大幅に低下する傾向あり。しかし、このレンズは定型チャートを使ったテストでもF1.4の絞り開放からとても良好。隅に向かって顕著な低下は見られず、非常に均質的な解像性能と言えるでしょう。

中央

F1.4から軸上色収差や球面収差がよく抑えられています。コントラストが高く、切れ味が良い。絞っても顕著な改善は見られませんが、2段ほど絞ると残存収差が抑えられてコントラストが僅かに向上。ピークの性能はF8まで続きます。回折の影響でF11~F16は画質が低下するものの、それでも実用的な結果と言えるでしょう。絞り値全域で拍手喝采の優れた結果。

周辺

周辺減光と倍率色収差の影響が僅かにあるものの、基本的には中央と同程度の優れた結果。非常に均質性の高い結果と言えるでしょう。

四隅

中央や周辺部と比べると細部のコントラストが若干低下します。とは言え、細部の再現性はとても良好で、顕著な画質低下はありません。換算35mmのF1.4レンズ近接チャートテストとしては優れた性能です。大幅な画質向上はありませんが、F4まで絞るとコントラストが改善して画質のピークを迎えます。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 3451 3257 3043
F2.0 3352 3325 3225
F2.8 3789 3757 3468
F4.0 3475 3688 3481
F5.6 3514 3454 3399
F8.0 3489 3402 3279
F11 3228 3299 3036
F16 2760 2701 2468

実写確認

F2.8-4以降はどこを切り取っても画質に大きな差はありません。非常に優れた大口径レンズ。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2023.1.23:晴れ・微風
  • カメラ:FUJIFILM X-S10
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:SUNWAYFOTO GG-PRO II
  • 露出:絞り優先AE ISO 160
  • RAW:Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正

テスト結果

絞り開放から全体的にとても良好。中央から隅に向かって僅かな画質低下が見られるものの、23mm F1.4の結果としては高く評価できるパフォーマンスです。全体的なピークは2段絞って(F2.8)達成し、F5.6-F8付近まで同程度の性能を維持。F8以降は回折の影響で画質が徐々に低下するものの、F16以外は許容範囲内に収まっているように見えます。

中央

F1.4から色収差や球面収差の影響が少なく、高コントラストでシャープな結果。絞っても劇的な向上はありませんが、絞り開放からほぼピークの性能と言えるでしょう。少なくとも2600万画素のX-Trans CMOS 4用としては開放から使えるレンズです。

周辺

中央と比べると若干の甘さを感じるものの、細かいことを言わなければ同等の画質。F1.4で細部のコントラストが甘いものの、F2まで絞ると改善します。ベストを尽くすのであればF2.8-4でさらに改善しますが、F2.0の状態でほぼピークと言えるでしょう。

四隅

周辺減光の影響があるものの、解像性能はF1.4から良好。コマ収差の影響か僅かにコントラストの低下が見られます。F2-2.8で画質はほぼピークに達し、F5.6-8まで性能を維持。非常に優れたレンズです。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

フォーカス位置の変化によるピント位置の変動は目立ちません。像面湾曲は問題ないレベルに抑えられています。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

極わずかに収差が残っているものの、とても良好な補正状態。追加補正の必要性は感じません。絞り値全域で良好です。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

実写で確認

僅かな色づきが見られるものの、F1.4の大口径レンズとしては非常に良好。色収差の影響が問題となるシーンは限られています。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

実写で確認

前後の質感の大きな偏りのないニュートラルなボケ。どちらも軸上色収差による色づきが目立たず、ボケの縁取りもありません。球面収差が残る、滲むようなボケ質ではないものの、綺麗で使い勝手の良いボケと言えるでしょう。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

レンズ構成中にいくつか非球面レンズを使用しているにも関わらず、玉ボケの内側は滑らかで綺麗な描写。玉ねぎボケの兆候は見られず、心地よいボケと言えるでしょう。ボケの縁取りは強くありませんが、高コントラストな状況では残存する色収差による色づきが見られます。絞ると解消するため、気になる場合はF2前後まで絞りを調整すると良い感じ。口径食はF1.4-2の間で見られるものの、極端な影響は無し。

ボケ実写

接写

F1.4からピント面はコントラストが高くシャープな描写。ピント面前後に軸上色収差の色づきは少なく、アウトフォーカスまで自然で滑らかなグラデーション。背景のボケも縁取りが目立たない、自然に溶け込む描写ですが、球面収差が残る溶けるような描写ではありません。絞りによるボケ質の変化は目立たず、全域で安定感のある結果が得られます。

近距離

ボケは小さくなりますが、基本的に接写時と同じ傾向。換算35mmのレンズは撮影距離が長くなるとボケが騒がしくレンズが多いことを考慮すると、このレンズのボケ質はとても良好と言えるでしょう。中程度まで絞っても背景ボケが見苦しくないのがポイント。

中距離

さらに撮影距離が長くなると、中央から隅にかけて背景ボケが少し騒がしくなります。残存する非点収差やコマ収差が悪さをしているものと思われます。ただし、軸上色収差や倍率色収差は良好に補正されているため、ボケの縁取りが目立たず、悪目立ちはしていません。ボケは小さくなるものの、F2-2.8まで絞ると残存収差が収束し、背景ボケの騒がしさがマイルドになります。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて、F1.4で撮影したサンプルが以下の通り。

全身をフレームに入れても背景を多少ぼかすことができます。ただし、この撮影距離では隅に向かって描写が少し荒れるので、少しだけ絞ったほうが良さそう。膝上~上半身の撮影もF2くらいまでは絞ったほうが全体の描写が安定します。バストアップや顔のクローズアップ時はF1.4でも周辺部や隅まで満足のいく結果が得られます。

球面収差

前後のボケ質に顕著な差はありません。若干の違いは見られるものの、これが実写で問題となることはないでしょう。御覧の通り、高コントラスト時は軸上色収差の影響あり。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

実写で確認

スライドショーには JavaScript が必要です。

やや強めの樽型歪曲が残っています。風景撮影などは未補正RAWで問題ない場合もあると思いますが、直線的な被写体を撮影する場合は補正必須。

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

最短撮影距離

F1.4でやや目立ちますが、F2からF2.8にかけて解消します。

無限遠

最短撮影距離と比べると影響が強く、F2でもフラットな背景では目立つ可能性あり。F1.4のレンズとして顕著な光量落ちではないものの、絞っても急速には改善しません。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

実写で確認

点像再現性が完璧とは言えませんが、F1.4から良好な補正状態です。F2-2.8で改善し、F4でほぼ完璧に抑えることができます。

逆光耐性・光条

中央

複雑なレンズ構成もあってかレンズ間の反射と思われるゴーストがいくつか発生。絞り開放から目立ち、絞りによる大きな変化はありません。(光源周辺のRGB模様はセンサー面の反射なので、度のレンズにしても回避するのが難しい)

フレーム周辺部に光源を配置した場合、絞り開放付近で顕著な影響はありません。ただし、F8付近まで絞るとゴーストが顕在化するので、光源の位置によっては目立つ可能性あり。

光条

面白いことにF2付近から光条の痕跡を見ることができます。F5.6あたりからシャープとなり、ピークとなるのはF11~F16あたり。回折の影響を考慮するとF8-F11あたりの使用がおススメ。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 金属製の頑丈な構造
  • 防塵防滴
  • ストロークが長いフォーカスリング
  • 適度な操作性の絞りリング
  • リニアモーター駆動の高速AF
  • フォーカスブリージングの補正状態
  • 近距離でも隅まで良好な解像性能
  • 像面湾曲の問題なし
  • 軸上色収差・倍率色収差を良好に補正
  • 滑らかな玉ボケ
  • 滑らかな前後ボケ
  • コマ収差を良好に補正
  • 絞った際に綺麗な光条

良好な解像性能、収差補正、AF、ビルドクオリティの新型F1.4 WRらしいレンズ。少なくとも2600万画素のX-Trans CMOS 4 イメージセンサー搭載モデルで使う限りは欠点が目立たず、絞り開放から快適に利用することが可能。優等生。

悪かったところ

ココに注意

  • AF/MFスイッチがない
  • カスタムボタンがない
  • シリアルナンバーがシール
  • 歪曲収差がやや目立つ
  • F1.4らしい周辺減光
  • 逆光耐性が平凡

重箱の隅を楊枝でほじくるように欠点を探すと、高価なレンズとしてはコントロールが少ないこと、シリアルナンバーがシールで剥がれる可能性があること、(補正可能な)光学的欠点がいくつか存在することを挙げることができます。とは言え、本当に気を付けるべきは逆光耐性くらいで、それも他社と比べて見劣りするようなポイントではありません。

総合評価

満足度は99点。
光学的・メカ的に素晴らしいレンズ。絞り開放 F1.4を使っても、これと言って弱点と呼べるような領域は無く、快適に利用可能。Xマウントの23mmの頂に立つレンズとして相応しい光学性能。もしも資金に余裕があり、最高の23mmを探しているのであれば、このレンズがおススメ。

欠点を挙げるとしたら優秀過ぎること。
「ハハハ!こいつめ!」と言って(愛でるように)許容する欠点はなく、レンズ遊びの一環で購入すると物足りなさを感じるかも。

競合レンズはVILTROX AF 23mm F1.4 XF。半値以下の価格の「23mm F1.4」としてはコストパフォーマンスの高いレンズ。上を見なければなかなか良いレンズですが、コントラスト、周辺解像、ボケ、逆光耐性、AFなどはXF23mmF1.4 R LM WRが良好。

参考:VILTROX AF 23mm F1.4 STM XF 交換レンズレビュー

購入早見表

XF23mmF1.4 R LM WR
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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