富士フイルム「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」のレビュー第四弾を公開。今回は前後のボケ質差や玉ボケの形状と絞り羽根の影響、撮影距離を変化した場合のボケ質などをチェックしています。
XF30mmF2.8 R LM WR Macroのレビュー一覧
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー 完全版
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.6 周辺減光・逆光編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.5 諸収差編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.4 ボケ編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.3 遠景解像編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.2 解像チャート編
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro レンズレビュー Vol.1 外観・操作・AF編
Index
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。
描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滑らかなボケ描写を実現しているレンズも存在する。
実写で確認
前後のボケ質に大きな変化が見られないニュートラルな描写です。滲むような柔らかい描写ではありませんが、軸上色収差もよく抑えられており、悪目立ちせずに使い勝手は良さそう。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。
逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。
実写で確認
円形を維持しているので中央と周辺部のみで、隅に向かって口径食の影響を受けていることが分かります。絞ると徐々に改善しますが、口径食が解消するころにはボケがかなり小さくなります。ある程度のところで妥協する必要あり。
非球面レンズを3枚も使用していますが、玉ボケへの影響は目立ちません。縁取りが若干見られるものの、色づきが少ないので不快と感じることは少ないはず。
ボケ実写
至近距離
接近時はボケが大きく、ボケの粗はほとんど目立ちません。この距離でも口径食の影響は僅かに見られますが、特に心配する必要は無いでしょう。絞ると口径食は改善しますが、玉ボケや背景の輪郭が少しシャープになるので騒がしく感じる可能性あり。
近距離
撮影距離が長くなると、当然ながらボケが小さく、状況によって口径食が目立ちやすくなります。ボケのアウトラインが強調される場合もあり、いつものテストシーンでは少し騒がしさを感じる描写となります。と言っても依然として滑らかな描写に違いはなく、大口径レンズのボケを期待しなければ十分良好かなと思います。
中距離
撮影距離がさらに長くなる(1.5mくらい)と、背景のボケがやや騒がしい描写となります。特に複雑な背景の場合はアウトラインが重なり、主張が激しくなる可能性あり。このような場合、ボケが多少小さくなったとしても、少し絞ったほうが良いかもしれません。
少し離れた距離で奥行き感のある描写を比較したのが下の作例です。絞り開放のボケは大きいものの、ハイライトなどが騒がしくなりがち。個人的には2段ほど絞ってしまったほうが見栄えの良い描写に見えます。
撮影距離
全高170cmの三脚を人物に見立てて、F2.8の絞り開放で撮影距離を変えながら撮影したのが下の作例です。
フレームに全身を入れても多少のボケが得られます。ただし、よく見ると騒がしい描写なので、いっそ絞ってしまったほうが良い場合もあるはず。上半身くらいまで近寄るとボケが大きくなりますが、やはり少し騒がしさがあるので絞ったほうが良くなる可能性あり。顔のクローズアップくらいまで近寄るとボケの粗さは特に気になりません。
今回のまとめ
ボケが見苦しいわけではないものの、大口径の柔らかいボケと比べるとやや硬調です。色収差や前後のボケ質に差がないニュートラルな描写であり「悪くはないけどマクロレンズだね」と言った印象。弱点ではありませんが、強みとは感じません。
開放F値は中口径ですが、マクロレンズらしく接写性能が高い。しっかりと近寄ることでボケ量が大きな場合は綺麗なボケが得られます。とはいえ、接写時以外ではボケ量が少なく、引きの撮影では騒がしい微ボケの領域が目立ちます。大きな被写体でもボケが得たいのであれば、高価で大きなレンズですが「XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro」がより適した選択肢と言えるかもしれません。
購入早見表
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作例
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