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ニコン Z 8 徹底レビュー Vol.5 ドライブ・連写編

ニコン「Z 8」のレビュー第五弾を公開。今回はカメラの連続撮影速度やバッファ、ドライブ性能などをチェックしています。

Z 8のレビュー一覧

連写・ドライブ

仕様の確認(ニコンZ 8 仕様表を引用

装着レンズNIKKOR Z 50mm f/1.8 S、ニコン製メモリーカードCFexpress Type B メモリーカード 660GB MC-CF660Gを使用した場合(2023年3月現在)

撮影速度

  • 低速連続撮影:約1~10コマ/秒
  •  高速連続撮影:約10~20コマ/秒
  • ハイスピードフレームキャプチャー+(C30):約30コマ/秒
  • ハイスピードフレームキャプチャー+(C60):約60コマ/秒
  • ハイスピードフレームキャプチャー+(C120):約120コマ/秒
  • 全速 AF/AE 追従
  • ハイスピードフレームキャプチャーはJPEG NORMALに固定
  • 60fpsのみAPS-Cクロップ

JPEG固定ながら最大120fpsの超高速連写に対応しているほか、20fpsまでのRAW出力に対応した連続撮影が可能。Z 7やZ 6は高速連続撮影時に「RAW 12bit」となることを考慮すると、高速&高画質で連写可能なZ 8のアドバンテージは大きい。

連続撮影可能コマ数

  • RAW(ロスレス圧縮RAW):81コマ
  • RAW(高効率★):599コマ
  • RAW(高効率):1000コマ以上

高性能なCFexpress Type Bカードを使用することで高解像センサーながら一度の大量の連続撮影が可能。最近は手ごろな価格のCFexpress Type Bカードも増えてきたので、連写メインならばSD UHS-IIからの移行がおススメです。

シャッタースピード

  • 1/32000~30秒
  • ステップ幅:1/3、1/2、1ステップに変更可能
  • 撮影モードMでは900秒まで延長可能
  • 電子シャッターのみ
  • 1/250秒または1/200秒以下の低速シャッタースピードで同調

メカニカルシャッターレスのため、シャッター方式は電子シャッターのみ。ただしローリングシャッターが高性能(後述)で電子シャッターながら最大で1/250秒での同調が可能となっています。

初期設定では最長30秒までですが、カスタムメニューd5「Mモード時のシャッタースピード延長」をオンにすることで、Mモード時に900秒まで利用可能。

撮影速度の調整

  • ハイスピードフレームキャプチャー+:30/60/120fps
  • 高速連続撮影:20/15/12/10 コマ秒
  • 低速連続撮影:10/8/6/5/4/3/2/1 コマ秒

高速連続撮影と低速連続撮影は撮影速度を細かく調整可能。後述しますが、20fpsでは最終的にバッファが詰まりやすいため、15fpsまで速度を落とすと安定して撮影枚数を稼ぐことができます。一眼レフ程度の撮影速度で良い場合は低速連続撮影を調整するのがおススメです。なぜか7コマ秒はありません。

バッファ・バッファクリア

撮影環境

  • Z 24-120mm F4 S
  • MF
  • 1/8000秒・F4・ISO 64
  • 3種類のRAWをそれぞれテスト
  • 5秒/10秒/15秒の連続撮影で得られた枚数を計測

Nextorage B1Pro 165GB CFexpress Type B

20fps 5秒 10秒 15秒
ロスレス 95 171 243
高効率★ 100 201 288
高効率 100 201 296

5秒まではロスレス圧縮でもバッファがほとんど詰まることなく20fpsの撮影が可能。瞬間的に4500万画素で最高画質のRAWを大量に得ることができるのは魅力的ですね。10秒の連続撮影では2つの高効率RAWでパフォーマンスを維持。ロスレス圧縮RAWはバッファが詰まり始めています。15秒の連続撮影ではロスレス圧縮・高効率★・高効率で若干の差が生じているのが分かります。決定的瞬間を遅延なく撮影したい場合は高効率★か高効率を選択しておくのがおススメです。

Nextorage B1Pro 165GB CFexpress Type B

ロスレス圧縮 5秒 10秒 15秒
20fps 95 171 243
15fps 74 154 224

撮影速度を15fpsまで落とすとロスレス圧縮RAWでも一定の撮影速度で連続撮影を続けることが出来ます。ただ、画質低下の少ない高効率★で20fpsを利用したほうが撮影枚数を稼ぐことが可能。

ProGrade Digital Cobalt SD UHS-II 32GB

20fps 5秒 10秒 15秒
ロスレス 45 78 102
高効率★ 71 112 148
高効率 94 156 215

CFexpress Type Bと比べると書き込み速度が圧倒的遅いSD UHS-IIでテスト。ファイルサイズが大きいロスレス圧縮RAWは5秒も持たずにバッファが詰まり始めます。高効率★も健闘していますが、5秒は厳しい。ただし、圧縮率が最も高い高効率を使用すると、5秒までなら20fpsのパフォーマンスを最大限に近い形で発揮することが出来ます。どのRAWにしても、5秒以降はSD UHS-IIの書き込み速度に依存することとなります。

参考:EOS R5(Nextorage B1Pro 165GB CFexpress Type B)

20fps 5秒 10秒 15秒
RAW 100 153 184
C-RAW 103 201 278

EOS R5は電子シャッター使用時にZ 8と同じ20fpsの連続撮影に対応しています。同じメモリーカードと撮影条件で得られた結果が以下の通り。まずまず良好な結果ですが、EOS R5は電子シャッター時にダイナミックレンジが低下していることを考慮するとZ 8ほど良好なパフォーマンスとは言えません。Z 8は連写時に積層型CMOSセンサーと高効率RAWが強みになると言えるでしょう。

CFexpress2種類の比較

高効率★・20fps 20秒
Nextorage B1Pro 382
ProGrade Digital Cobalt 352

現在出回っているCFexpress Type Bの中では最高クラスのメモリカードを比較。 最大書き込み速度1900MB/sに対応しているNextorage B1Proで若干良好な結果を得ることができました。ProGradeと比べると販売価格も安く、コストパフォーマンスは良好。(少なくとも静止画における撮影枚数のテストでは)

瞬間的に大量の4500万画素 RAWデータを記録できますが、膨大な量の画像データは後処理に困ります。そんな時はカスタムメニューd2で連続撮影可能な枚数を制限しておくと良いでしょう。

撮影タイミング表示

前述したようにZ 8はメカニカルシャッターレスのため、撮影を認識する手段は「電子音」と「ライブビュー上の表示」のみ。メカニカルシャッターのような振動や低音は発生しません。電子音の音量を上げることで大部分の状況は対応可能ですが、メカニカルシャッターと比べると高音で耳障りとなる可能性があります(静粛性が求められる場合、状況に似つかわしくない奇妙な電子音)。

電子音が不適な場合はライブビュー上に「撮影タイミングの表示」が可能。利用できるモードは3種類。

  • A:瞬間的にブラックアウト
  • B:ライブビュー上下左右に枠表示(白色)
  • C:ライブビュー左右に枠表示(黒色)

撮影シーンによって適する表示方法が異なるため、素早く切り替えることが出来るようにマイメニューに設定しておくのがおススメです。どの設定でも表示する枠やブラックアウトの色を変更することは出来ません。(個人的には目立つ赤枠が良かったです)

Type B/Cの場合、シャッタースピードが遅くなった際にType Aに切り替わるタイミングを調整可能です。設定値は「1/6秒~1/200秒」の間で設定できますが、設定をオフにすることは出来ません。

白背景

Type Bの白枠表示時は、背景が明るいと見づらくなる可能性があります。このような場合はType AかCに切り替えると良いでしょう。

黒背景

Type Cの黒枠表示は背景が暗い場合にほとんど識別できません。

プリキャプチャー

ハイスピードフレームキャプチャー+限定で「プリキャプチャー」機能を利用可能。競合他社の「プロキャプチャー」「プリ連写」に近い機能で、シャッター半押し時から静止画を内部で記録し始め、全押しする(最大)1秒前までの画像を保存することが可能。残念ながらJPEG出力限定であり、RAWを保存することは出来ません。惜しい!

プリキャプチャー動作中(半押し状態)はライブビュー右端のドライブモードアイコンに緑色の点が付きます。

ローリングシャッター

CMOSセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的ですが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から実現に至っていません。現在はイメージセンサーの上から下まで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的。言葉で説明しても難しいので、下部の動画で分かりやすく解説しています。

コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分がローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用しています。海外企業で「PIXII」(旧モデル)のようなカメラがグローバルシャッターを採用していますが、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは存在しません。(キヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)

実際にこのカメラのローリングシャッターの影響を調べた結果が以下の通り。

扇風機の羽根がやや不自然な描写となっているものの、大部分のミラーレスよりも良好な状態を維持しています。メカニカルシャッターに近いパフォーマンスを発揮しており、大部分の撮影でメカシャッターレスをデメリットと感じることは無いでしょう。今回のテストはあくまでも「センサー全域を高速移動する被写体」を撮影した場合のテスト結果であり、フレーム上でさらに小さく写る場合は影響も小さくなります(例えば飛行機のプロペラ・車のホイールなど)。

参考までに、他のカメラではどのような影響があるのか?は以下の通り。

同じ4500万画素の「Z 7」よりも遥かに良好であり、ライバルモデルとなる「EOS R5」と比べても良好であることが分かります。

まとめ

基本的には上位機種となるZ 9と同等のパフォーマンスを発揮。高性能なCFexpress Type Bカードを使用することで、ミラーレスカメラの中でも驚異的な連写性能と持続力となります。特に画質低下が少なく、圧縮率の高い高効率RAWがZ 8(Z 9)の特徴と言えるでしょう。Z 9との違いはサブスロットがSD UHS-IIとなっているため、バックアップしながら撮影する場合はSD UHS-IIスロットが足かせとなること。ただし、この場合も高効率RAWを使用することで(ある程度は)コマ数を稼ぐことは可能です。

ローリングシャッター性能は積層型CMOSセンサーらしく非常に良好。動体撮影時に歪みが発生しにくく、メカニカルシャッターと同じように使うことが出来ます。Z 9の初期に問題とされていた高周波フリッカーも対策されているため、これと言って大きな問題は無いように見えます。歪み問題以外にも、蛍光灯で発生するフリッカーを回避することも可能(従来のセンサーで電子シャッターを使うと横縞が入る)。

唯一問題と感じたのは撮影の認識方法。現状で「電子音」と「ライブビュー上の枠表示」のみで、高音の電子音では聞き取りづらかったり、耳障りだったりすることが多いと感じました。「心地よいシャッターサウンドではない」という以外にも課題は残されているのかなと。

枠の表示も可能ですが、色やサイズを変えることが出来ず、背面モニターを見ながらの撮影では見づらく感じる場面がありました。シャッターボタンを押した際に撮影できたのか不安になることがしばしば(結果的に撮れている事が多いものの、AFに失敗すると撮れていない場合あり)。このあたりは将来的にファームウェアアップデートで柔軟性が高まることに期待。

参考情報

購入早見表

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作例

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