ニコン「Z f」のレビュー第六弾 フォーカス編を公開。EXPEED 7世代でミラーレスらしいシステムが整ったAFと、外観こそレトロスタイルながらレトロレンズに対する愛やロマンと言ったものは感じないMFをレビューしています。
Z f のレビュー一覧
- ニコン Z f レビュー 完全版
- ニコン Z f レビュー Vol.6 フォーカス編
- ニコン Z f レビュー Vol.5 ISO感度編
- ニコン Z f レビュー Vol.5 メニュー・カスタマイズ編
- ニコン Z f レビュー Vol.4 ドライブ編
- ニコン Z f レビュー Vol.3 ダイナミックレンジ編
- ニコン Z f レビュー Vol.2 ピクチャーコントロール 編
- ニコン Z f レビュー Vol.1 外観・操作性 編
- ニコン Z f ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
Index
オートフォーカス
カバーエリア
静止画撮影における選択可能なAFエリアモードは以下の通り。
- ピンポイント
- シングルポイント
- ダイナミック S/M/L(AF-C時)
- ワイドエリア S/L/C1/C2
- オートエリア
- 3D-トラッキング(AF-C時)
EXPEED 6世代と比べて大きく異なる点は「3D-トラッキング」に対応していること。旧世代でも「ロックオンAF」を利用可能ですが、あくまでもオートエリアAFの付随機能なので使い勝手が悪い(いちいちボタンを押して呼び出さなければならない)。3Dトラッキングは一眼レフ時代のシステムと同じように使うことが可能となっています。追従性能は完璧と言えないものの、追従する被写体を素早く選択して追いかける状況では重宝します。さらにワイドエリアAFには自分でサイズを調整することができるカスタム枠が2つ追加されています。菱形など特殊な形状には対応できないものの、従来よりも柔軟性の高い設定が可能。使わないAFエリアは表示から消しておくことで任意の設定を素早く選ぶことが可能。
AF-S
基本的にZ 9やZ 8と同世代のAFシステムであり、これと言って不満はありません。一般的な撮影環境ではストレスフリー。EXPEED 6世代でもAF-Sは困っていませんでしたが、被写体検出が使いやすくなっているのがGood。ようやく他社と同じ使いやすさになったと感じます。
敢えて言えば、大デフォーカス時に合焦速度がキヤノンやソニーと比べると遅め。これがレンズのフォーカス性能なのか、カメラ側の制御が問題なのか断言はできません。
低照度AF
明るいレンズと組み合わせることで-10EVにまで対応すると言われています。実際のところ、確かに非常に暗い環境でもピントを合わせようとカメラが動作します。ただし、光量が少ない環境ではコントラストAFに切り替わるためか、AF速度が非常に遅くなります。動く被写体を追いかけるのは難しい状態。似たような環境ではEOS R8やR5のほうが良好で、ソニーの高解像モデルほど悪くはありませんん。
AF-C
柔軟性のある被写体検出や3Dトラッキングに対応したことで、他社並みの快適なフォーカスが可能となっています。被写体の検出精度は改善の余地を残しているものの、応答性に不満はありません。追従性はまずまず良好。被写体検出と組み合わせたほうが上手くいくシーン、組み合わせないほうが上手くいくシーンがそれぞれあるため、自信の状況に合わせて使い方を切り替えていきたいところ。積層型CMOSのZ 8と比べると反応速度が遅め。しかし、EXPEED 6世代と比べると遥かに快適。AFロックオン設定は横切りへの反応のみ調整可能。背景の色や輝度によってはAFエリアのマーカーが見えづらくなるため、色を変更することが出来ます。また、MF時のポイント表示やダイナミックAF時のアシスト表示が切り替え可能。
検出機能
他社が続々と被写体検出に対応しており、ニコンZシリーズもEXPEED 7世代でついに実装。ソニーのように昆虫こそ対応していないものの、人物から動物、車両、航空機まで対応しています。動物は陸上生物と鳥のどちらも検出の対象となっているので、動物園やサファリなど、複数の動物が混在するシーンでは誤検出が頻発するかもしれません。
幸いにも、EXPEED 7では全てのAFエリアで被写体検出を利用可能。AFエリアモードを狭めて、狙いたい被写体にAFエリアを近づけると自動的に検出して対応することが出来るようになっています。
フレーム全体に対して、顔・瞳の検出できるサイズを表したのが上の図。検出できる距離はどちらも従来通りと言った印象。ソニーの瞳検出と比べるとやや見劣りするポイント。後述しますが、検出できる距離であればソニーよりも瞳を検出しやすいのはGood。
瞳を検出できる環境であれば、良好な精度と追従性。両目がフレームにある場合は近いほうの目にフレームが移動します。瞳や顔の検出が外れた場合に頭部の検出へ移行しません。このため、検出が外れたタイミングでAFエリアが他に乗り移る可能性あり。このあたりは3Dトラッキングや小さめのAFエリアを使用することで回避可能。試しに3Dトラッキングを使ってみたのが以下のサンプル。
オートエリアAFよりも粘ってくれますが、やはり検出が途切れる場合あり。ピント位置が妙にぶれる場合もあるため、不安定な印象を受けます。
眼鏡装着時でも比較的安定感のある検出精度を維持。両目がフレームに入った場合でも、適切な瞳にピントを合わせ続けています。裸眼と比べると不安定ですが、他社と比べて良好な部類。
眼鏡装着時でもピントは眼鏡ではなく瞳にピントを合わせています。メーカーによっては眼鏡にピントが引っ張られてしまう場合もあるので、これは良い傾向と言えるでしょう。
帽子をかぶった際の顔検出は意外と苦手なメーカーが多い印象。ニコンもやや不安定となりますが、それでもキヤノンやソニーと比べて瞳の検出頻度が高く、健闘しています。
動物検出を鳥でテスト。人物と同じく瞳の検出が良好で、安定感のある追従性能を発揮。少なくとも瞳が見えている間に不安定となることはありませんでした。瞳が隠れても頭部を検出しているように見えますが、瞳検出時ほど安定はしていません。
瞳検出時の追従性能は良好で、他の被写体に乗り移る可能性は低い。ただし、瞳の検出が途切れる場合、他の被写体の瞳に乗り移りやすい印象あり。AFロックオン設定を調整することで動作に違いが見られるかどうかは未検証。
検出が乗り移ってしまうと、元の被写体に復帰する可能性は低い。この際はAF-Cの動作を止めて、元の被写体を捕捉する必要あり。オートエリアAFだともたつく可能性があるので、3Dトラッキングを使うと良いでしょう。もしもフレーム内の限られたエリアに収めることが出来るのなら、ダイナミックAFやワイドエリアAFを使うのも一つの手。
マニュアルフォーカス
フォーカスエイド
(画像は過去のZ fcレビュー時のもの)
フォーカスエイドとは一眼レフ時代から存在するMFアシスト機能。ライブビュー左下に三角と丸で現在のピント位置を表しています。拡大中でもこの機能を利用することが可能
- 丸の場合:合焦
- 三角左側の場合:合焦よりピント位置が近側にある
- 三角右側の場合:合焦よりピント位置が遠側にある
- 三角両側の場合:デフォーカスが大きすぎて判断不可
正直に言うと使い辛いです。そもそも論として、目線を被写体から外せない場合はフォーカスエイドをフレーム左下に表示されても見ることが出来ません。キヤノンのようにフォーカスフレーム上に表示できたらいいのにと感じます。(合焦時にフォーカスエリアが緑色に点灯するので識別は可能)
一眼レフの時代は光学ファインダーである以上、フレーム左下に表示するしかなかったと思いますが…。制限が無いミラーレスのライブビューで、あえて見にくいフレーム左下に表示する必要は無いのかなと。
フォーカスアシスト
カスタムメニューa12の設定項目から、ピーキングのオン・オフ、そして感度と色の調整が可能。ただし、これは従来通りで、特に大きな変化はありません。また、FマウントAFレンズ使用時はフルタイムマニュアル時のピーキングも利用不可(Zマウントレンズは可能)。
MFレンズを組み合わせる機会も多いと思われるZ fが、MF時の被写体検出に対応した意外でこれといった改善点は見当たりません。
他社のモノクロライブビュー(実際にはカラー写真だけど、ライブビューのみモノクロ)がMF時にとても便利。特にピーキングとの相性が良く、将来的に似たような機能が実装されることに期待。
ライブビュー拡大
他社に存在する「フォーカスリングを操作すると自動拡大」機能はありません。拡大するにはボタンカスタマイズに対応する機能を割り当てるか、右下の拡大ボタンを押す必要があります。拡大中に倍率を下げたい時は縮小ボタンを利用します。
厄介なことに、拡大ボタンは拡大しかしません(押し続けると等倍まで拡大して止まる)。縮小ボタンを押すと縮小しますが、等倍まで拡大していると一発で全画面まで復帰できず、何回かボタンを押す必要があります。(ボタンカスタマイズに割り当て時は同一ボタンで復帰可能)
また、シャッター半押しで復帰する機能は見当たらず、レリーズまで拡大しっぱなしです。そのくせレリーズ後は強制的に全画面へ戻り、拡大を維持する機能は見当たりません。
まとめ
ニコンミラーレスも20万円台の普及価格帯に被写体検出が下りてきました。競合他社が10万円台のAPS-Cにも実装していることを考えると、決して早いとは言えないものの、歓迎すべき一歩のように感じます。
(この価格帯のフルサイズミラーレスに限定して言えば、パナソニック・キヤノン・ソニーについで4社目)
実際の使い勝手はどうか?というと、普通に使うことができるレベル。他社と比べて被写体の全体像を捕捉するのは苦手のように見えますが、瞳の検出性能は良好。EXPEED 7で登場した3D-トラッキングと組み合わせることで、前世代のZカメラよりも遥かに使い勝手の良いシステムとなっています。連写時の追従性能も悪くありません。しかし、ローリングシャッターの影響が大きいことを考慮するとメカニカルシャッターの必要性が高く、連写時は必然的にブラックアウトが発生。結果的に動体へのレスポンスは積層型CMOSセンサーと比べると分が悪い。
ただし、同価格帯の(非積層型の)他社製品も同様。もしもスポーツや野生動物の撮影で高性能なAFを期待しているのであれば、腹をくくって高価なZ 8やZ 9を検討したほうが良いのかなと。とは言え、最初の一枚、最初の数枚は積層型CMOSのZ 8と比べてそう見劣りしない結果が得られます。個人的にイマイチだったのがマニュアルフォーカスの操作性。ハッキリと言えば、ほぼ従来通りであり、改善点はMF時の被写体検出くらい。と言っても、ニコン独自の機能とも言えず、拡大時に拡大フレームが被写体に追従するわけでもないので、使えるシーンは限られてきます。
また、拡大機能には何の変化もありません。シャッター半押しで復帰する機能がなければ、拡大レリーズ後に復帰を防ぐ手段もありません。さらに、拡大ボタンと縮小ボタンを使い分ける必要があるのは苦痛で、貴重なボタンカスタマイズ枠を割いて拡大機能を割り当てるかどうか苦慮することになるかもしれません。新機能となるタッチFnにも拡大操作を割り当てることは出来ますが、誤操作で急に拡大することもあるので注意が必要です。MFレンズを使ってみたくなる外観のカメラですが、基本的にはZマウントレンズ用のカメラなのかなと。アダプター経由のMFレンズに対する愛情やロマンと言ったものは、このカメラからは感じませんでした。必要最低限のことは可能ですが、「+α」はありません。LUMIXのように「レンズ情報」としてレンズ名を記録することはできず、便利な拡大機能やモノクロライブビューも無し。MFカメラとしては期待に及ばないものの、小型軽量なAFレンズでサクサク撮るには面白いカメラ。あとはZ fと相性の良いZ 40mm F2やZ 28mm/26mm F2.8のようなレンズが増えることを祈るばかり。
参考情報
購入早見表
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