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タムロン 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 レビュー完全版

このページでは「16-30mm F/2.8 Di III VXD G2」のレビューを掲載しています。

16-30mm F/2.8 Di III VXD G2のレビュー一覧

レンズの評価

ポイント 評価 コメント
価格 やや高価だが適切
サイズ 実質インナーズーム
重量 軽量クラス
操作性 ほぼ完備
AF性能 高速・ブリージング極小
解像性能 広角側に重心を置いた設計
ボケ 広角ズームとしては滑らか
色収差 良好な補正状態
歪曲収差 補正必須
コマ収差・非点収差 穏やか
周辺減光 補正の必要性が高い
逆光耐性 フレアが良く抑えられている
満足度 バランスの良い広角ズーム

評価:

ポイント

バランスの良い広角ズーム

光学性能と使い勝手、価格設定のバランスが良い広角ズームレンズ。
ソニー純正品ほど高価ではなく、手頃な価格で全体的にバランスが良く高性能なレンズを探している場合は検討すべき選択肢。

まえがき

2025年夏に登場したタムロンの新しい広角ズームレンズ。「G2」を冠しており、実質的には「17-28mm F/2.8 Di III RXD」の後継モデル。比較してサイズはほぼ据え置き、しかし広角側・望遠側にズーム域が広がり使いやすくなっています。またAFはステッピングモーター(RXD)からボイスコイルモーター(VXD)に切り替わっており、高速かつ静かな動作が期待できます。

販売価格は前モデル比で若干高くなりました。競合製品がいくつか存在しますが(下部参照)、16mm始まりでズーム域がそこそこ広い大口径ズームレンズと考えると面白い選択肢となりそうです。

主な仕様

発売日 ソニーEマウント:2025年7月31日
ニコンZマウント:2025年8月22日
初値 128,700円
レンズマウント E/Z
対応センサー フルサイズ
焦点距離 16-30mm
レンズ構成 12群16枚
開放絞り F2.8
最小絞り F16
絞り羽根 9枚
最短撮影距離 0.19m (WIDE)
0.3m (TELE)
最大撮影倍率 1:5.4 (WIDE)
1:7 (TELE)
フィルター径 67mm
手振れ補正 -
テレコン -
コーティング 防汚コート
BBAR G2
サイズ φ74.8 ×104mm
重量 450g
防塵防滴 対応
AF VXD
絞りリング -
その他のコントロール Fnボタン
付属品 花型フード
フロントキャップ
リアキャップ

価格のチェック

売り出し価格は12.8万円。シグマの競合製品と比べると若干高価ですが、30mmまで伸びる焦点距離やインナーズームのような構造の鏡筒、防塵防滴、VXD駆動などの点で優れています。小型軽量を重視するのであればシグマが良い選択肢となるものの、汎用性を考慮するとタムロンも面白い選択肢と言えるでしょう。

16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 Nikon Z
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16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 Sony E
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

従来通り、白を基調としたDi IIIシリーズらしいデザインの箱。
装飾は底部にブランドカラーのルミナスゴールドを配色しているのみ。上部には封印用のシールが一か所張り付けられています。

箱の中にレンズの緩衝材は入っておらず、段ボールによる間仕切りのみ。レンズケースなどは同梱していません。付属品は花形レンズフードに前後のキャップ、説明書・保証書・シリアルナンバーのシールなど。

外観

外装はプラスチック製ながらしっかりとした作り。サムヤンTinyシリーズのような薄っぺらいプラスチック感は無く、頑丈。外装のつなぎ目が少し見えてしまうのが惜しい。

塗装はDi III初期モデルと比べて黒色が強くなっており、一眼レフ用レンズ「SP」シリーズを彷彿とさせるカラーリング。もちろん、金属外装だったSPシリーズと比べると質感は劣ります。

全体的に過度な装飾は施されておらず、マウント付近のルミナスゴールドのリングのみ。相変わらず「日本設計」を大きく表示しており、製造国は非常に分かりづらく記載。製造国はベトナム。

フォーカス・ズームリングはゴム製でグリップは良好。とはいえ、ゴム製は塵や小ゴミを吸着しやすい点がマイナス。リングの抵抗は小さく、ソニー純正のように緩い。ストロークは十分に長いため、初期設定の状態でも微調整には十分。

側面にはUSBポートを搭載しており、パソコンと接続してカスタマイズが可能。ただし、USBポート用のカバーは付属していません(仕様的にはカバー無しでも防塵防滴仕様に問題はなさそうです)。

ハンズオン

サイズ φ74.8 ×104mm
(前モデル:φ73.0×99mm)
(シグマ:φ77.2×100.6mm)
重量 450g
(前モデル:420g)
(シグマ:450g)

ズーム域を広げつつも、前モデルと比べて大幅な大型化・重量増はありません。いずれも鏡筒が伸びない構造を採用しているので収納時の全長は長め。ただし、16mmに設定したままでもカメラバッグに収納したり、垂直に立てたりすることが出来ます。

前玉・後玉

前面には撥水・撥油性のある防汚コートを採用。水滴や油汚れに強く、現地でのメンテナンス性が良好。フィルター径は大部分のDi IIIシリーズと同じく67mmで統一。タムロンレンズを複数使用しているのであれば、NDやC-PLなどを、67mmフィルターで統一するの一つの手。

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前述したように、ズーム操作による伸び縮みは発生しないものの、最前面のレンズは前後に移動します。真のインナーズームとは言えませんが、前面に保護フィルターを装着すると実質的にインナーズームと言えそうです。

 

レンズマウントは4本のネジで固定された金属製プレート。一般的なシルバーカラーのマウントと比べて、ルミナスゴールドのような色味となっています。周囲は防塵防滴用のシーリングがあります。

フォーカスリング

レンズ先端にあるゴム製フォーカスリングは滑らかに回転。抵抗感は少なく、ソニー純正レンズと同程度の緩さ。個人的にはもう少し重めの操作が好みですが、ストロークが長いので問題はありません。初期設定では、リニアレスポンスで、ピント全域を180°で操作できます。再現性は良好で、焦点距離全域で変化無し。

ズームリング

マウント側には小さめのズームリングが配置されています。回転方向はソニーと同じ。抵抗が小さく、指一つで簡単に操作可能。ローアングルやハイアングルのような場合、少ない力でズーム操作ができるのは便利と感じました。

ボタン・スイッチ

従来モデルと異なり、鏡筒側面にFnボタンを搭載。初期設定は カメラ側の「レンズFn」で割り当てた機能に依存。しかし、「TAMRON Lens Utility™」を使ったカスタマイズで「AF/MF切替」「A-Bフォーカス」「フォーカスプリセット」などに使用可能。

レンズフード

このレンズには浅めの花形レンズフードが付属します。他のタムロン製レンズフードと同じく、シンプルなデザインですが、本体にしっかりと固定可能。必要最小限のサイズで、最大径はレンズ本体よりも少し大きい程度。カメラバッグに収納しやすいデザイン。

装着例

α7R Vに装着。
前モデルよりも僅かに大きく重いものの、違和感なく使用できます。「17-50mm F/4 Di III VXD」とも似ていますが、本レンズのほうが1cmほど短いので使いやすい。

片手での保持・撮影も可能。左手はカメラ底部に添える程度で、ズームリングの操作に集中できます。

AF・MF

フォーカススピード

ボイスコイルモーター駆動のAFに対応。
サードパーティ製レンズはAF-S時にAF速度が低下するものの、それでも非常に高速。さらにAF-Cでは電光石火のAFを実現しています。マクロ域から無限遠までのピント移動もストレスが溜まらない程度に高速。ちょっとした動体撮影で安心して使えるくらいに信頼性が高い。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。

ズーム全域でフォーカスブリージングをとても良好に抑制しています。望遠側で少し目立つようになるものの、よく観察しないと分からない程度。

16mm
20mm
30mm

精度

α7R Vと組み合わせた限りで大きな問題は無し。AF-S・AF-Cともに問題無く動作します。

MF

前述したように?TAMRON?Lens Utilityによるカスタマイズが可能。自身の好みに合わせてフォーカスリングの操作性を調整することが出来ます。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:ILCE-7RM5
  • 交換レンズ:16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
  • パール光学工業株式会社
    【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

16mm

中央の解像性能が伸び悩む一方、隅までパフォーマンスが安定。広角レンズと定型解像チャートとの相性が悪い中(接写する必要がある)、隅の画質低下が良く抑えられています。広角レンズとして、フレーム全体の均質性を優先したのかもしれません。

絞っても顕著な改善は見られませんが、周辺・隅のソフトさがなくなり、画質が少し改善しています。

中央

周辺

四隅

数値確認
Center Mid Corner
F2.8 3768 3332 3317
F4.0 4127 3177 3317
F5.6 3879 3577 3515
F8.0 3848 4003 3284
F11 3945 3591 3718
F16 4052 3198 3208

20mm

やはりピーク性能は低いものの、周辺・隅まで安定した結果が得られています。絞っても大きな改善はありませんが、実写を確認するとコントラストが向上していることが分かります。

中央

周辺

四隅

数値確認
Center Mid Corner
F2.8 3768 3332 3317
F4.0 4127 3177 3317
F5.6 3879 3577 3515
F8.0 3848 4003 3284
F11 3945 3591 3718
F16 4052 3198 3208

24mm

中央の解像性能が低下しているものの、周辺・隅が良く維持されています。結果として均質性が高く、バランスの良い画質。絞ると隅の画質が改善するものの、中央や周辺の性能が大きく向上することはありません。

中央

周辺

四隅

数値確認
Center Mid Corner
F2.8 3314 3183 2681
F4.0 3683 3284 2771
F5.6 3329 3582 3116
F8.0 3556 3416 3341
F11 3815 3984 3365
F16 3572 3319 2902

30mm

6100万画素のα7R Vでテストした結果としてはイマイチですが、画質が大幅に低下している部分はありません。絞った際に隅の数値が低下しているものの、実写を確認する限りでは改善しています。

中央

周辺

四隅

数値確認
Center Mid Corner
F2.8 3265 3270 3523
F4.0 3192 3174 3526
F5.6 3309 3607 2842
F8.0 3993 3780 3214
F11 4379 3717 2870
F16 4379 3356 2882

比較

17-50mm F/4 Di III VXD」と比べると…。
中央の性能は全体的に見劣りしますが、周辺・隅の安定感は遥かに良好。絞ると17-50mm F4も健闘しますが、絞り開放から結果が求められるシーンでは16-30mm F2.8のほうが良い選択肢になるでしょう。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2025.7.31 晴れ 微風
  • カメラ:ILCE-7RM5
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:BA BAFANG BCA-01
  • 露出:ISO 100 絞り優先AE
  • RAW:Adobe Lightroom Classic
    ・シャープネスオフ
    ・ノイズリダクションオフ
    ・レンズ補正オフ

16mm

中央

トップクラスの性能ではないものの、絞り開放からシャープで良好な結果。絞っても大きな変化がなく、F8で回折による性能低下が発生。

周辺

中央とほぼ同じ結果ですが、F2.8の細部が若干ソフト。F4以降はほぼ同じ。

四隅

周辺と比べてさらにソフトですが、大きな画質低下ではありません。F4まで絞ると改善します。F4以降に大きな変化はありません。

20mm

中央

引き続きF2.8からシャープな結果。コントラストが僅かに低いものの、F4で解消しています。

周辺

中央とほぼ同じ結果で違いはほとんどありません。

四隅

16mm隅と同じく、F2.8で僅かに画質低下。F4まで絞ると改善します。

24mm

中央

広角側と同じく良好な結果。ただし、球面収差によるコントラスト低下とハイライトの色収差が僅かに強くなったように見えます。いずれもF4で改善。

周辺

広角側と比べて顕著な画質低下は無し。絞っても画質の改善はほとんどありません。

四隅

周辺と同じく大きな画質低下はありません。絞ると細部の画質が若干改善しますが、F2.8でも実用的な結果に見えます。

30mm

中央

24mmと比べて、コントラスト低下と色収差がさらに強くなります。F4まで絞ると改善するので、絞れる環境であればF4まで絞りたいところ。F5.6-8まで絞るとさらに少し改善します。

周辺

中央と同程度の結果と傾向。やはりF4まで絞ると改善。F5.6-8でもう少し良好な結果が得られます。

四隅

このレンズで最もソフトな部分ですが、極端な画質低下ではありません。F5.6まで絞ると細部まで良好ですが、ベストはF8まで絞った時。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。

参考:ニコン 収差とは

16mm

僅かに残存していますが無視できる範囲内。

20mm

16mmと同程度か少し良好。

24mm

16mmと同程度か少し良好。

30mm

16mmと同程度か少し良好。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。

参考:ニコン 収差とは

16mm

絞り開放から色収差はごく僅か。大部分のシーンで問題となる可能性は非常に低い。

20mm

16mmと同じく問題はありません。

24mm

広角側と比べると収差が僅かに強い。しかし、引き続き無視できる程度に抑えられています。

30mm

さらに色収差が強くなるものの、大部分のシーンで問題ない程度に良く抑えられています。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:ニコン 収差とは

比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。

16mm

ミラーレス用の広角ズームレンズとしては「比較的」良く補正されています。しかし、手動では難しい形状の樽型歪曲が発生しているのでプロファイルによる補正は必須。

20mm

16mmと比べるとほとんど目立たない程度の糸巻き型歪曲。

24mm

かなり強めの糸巻き型歪曲が発生。16mmと同じく、レンズプロファイルによる補正を推奨。

30mm

24mmと同じく強めの糸巻き型歪曲。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。

参考:ニコン 収差とは

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。

16mm

開放付近で点像への影響が見られるものの、全体像からすると変形はごく僅か。細部まで重視する場合を除き、問題ない程度に抑えられています。

20mm

16mmと同程度。

24mm

広角側と同程度ですが、放射方向に非点収差が強くなっているように見えます。

30mm

他の焦点距離と比べるとコマフレアの影響が強め。F5.6まで絞っても点像の変形がやや目立ちます。

球面収差

完璧ではないものの、無視できる程度に良く抑えられています。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。

後ボケ

縁どりが弱く滑らかな描写。広角ズームの後ボケとしては綺麗なボケと言えるでしょう。

前ボケ

後ボケと比較してボケの縁取りが強め。16-30mmのレンズで前ボケが目立つシーンは少なく、過度に心配する必要はありません。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。

口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

16mm

同心円状の「玉ねぎボケ」が目立たず、概ね滑らかで綺麗な描写。ただし、フレーム隅に向かって口径食と倍率色収差の影響が発生しているように見えます。

20mm

16mmと同じ傾向が続きます。口径食は減りますが、色収差の影響あり。

24mm

広角側で問題と感じていた口径食と色収差の影響が良く抑えられています。

30mm

24mmと同じく、広角ズームレンズとしては良好な描写。

ボケ実写

16mm

縁どりが弱く、滑らかで綺麗な描写。広角ズームレンズとしては良好なボケ質です。撮影距離が長くなると、フレーム隅に向かって少し雑然とした描写が入り混じるものの、全体的に見ると許容範囲内。

30mm

基本的には16mmと同じ。滑らかな後ボケは縁取りが弱く、使い勝手の良い描写。撮影距離が長い場合でも、不安定な描写はごく僅か。

ポートレート

全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。

16mmで背景を分離するためにはバストアップくらいまでは近づきたいところ。ボケ質は悪くなく、全身から顔のクローズアップまで使いやすい描写。30mmも同じ傾向ですが、焦点距離が長いのでボケを得やすい。

16mm
30mm

周辺減光

周辺減光とは?

フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

16mm

ピント位置に関わらず隅の減光が目立ちます。絞ると改善しますが完璧には解消しません。レンズプロファイルなど撮影後の補正が必要。

最短撮影距離
無限遠

20mm

16mm程ではないものの周辺減光が目立ちます。ピント位置による減光効果の変化はありません。

最短撮影距離
無限遠

24mm

20mmと同程度。

最短撮影距離
無限遠

30mm

ズーム中間域と比べると若干強い。

最短撮影距離
無限遠

逆光耐性・光条

中央

BBAR G2 コーティングを採用。効果的にフレアを抑えているように見えますが、いくらかゴーストが発生しています。特に絞ると目立ちやすく、広角側で影響が顕著。

光源を隅に移動すると、フレア・ゴーストの影響は良く抑えられています。

光条

F11付近からシャープな光条が発生し始めます。回折とのバランスを取るのであればF11を推奨。F16でよりシャープになりますが、回折の影響あり。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • 実質インナーズーム
  • 防塵防滴・撥水防汚コート
  • Tamron Lens Utility 対応
  • 小型軽量ながら16-30mmのズームレンジ
  • VXD駆動の高速AF
  • フォーカスブリージングがほとんどない
  • 広角側に重点を置いた解像性能
  • 色収差の補正状態が良好
  • 穏やかなコマ収差
  • 滑らかな後ボケ
  • 逆光耐性が良好
  • 綺麗な光条

前モデルよりも広いズーム域を確保しつつ、小型軽量なレンズサイズを維持。広角側に重点を置いた光学性能は近距離でも均質性が高い。広角レンズで重要となる逆光耐性も良好。

実質的なインナーズーム仕様により密閉性が高く、VXD駆動によるAFやフォーカスブリージングを抑えた短い最短撮影距離も強みとなる。

悪かったところ

ココに注意

  • 前モデルよりも高価格化
  • 望遠端の絞り開放でパフォーマンス低下
  • ズーム両端で歪曲収差が目立つ
  • 周辺減光が強い

最も気を付けたい部分は未補正のRAWで目立つ歪曲収差と周辺減光。レンズ補正で簡単に修正できるものの、プロファイル非対応の現像ソフトを利用する場合は手動で修正する必要があります。

望遠端の絞り開放付近で周辺・隅の画質が低下していますが、絞れば改善するので許容範囲内。高価格化しているものの、改善点を考慮すると適切な値上げなのかなと。

結論

光学性能と使い勝手、価格設定のバランスが良い広角ズームレンズ。
ソニー純正品ほど高価ではなく、手頃な価格で全体的にバランスが良く高性能なレンズを探している場合は検討すべき選択肢。

より安価なレンズがいくつか存在するものの、広角16mmや広いズームレンジ、高速AFや防塵防滴、カスタマイズ性などを犠牲とする必要があります。(後述)

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16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 Sony E
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競合製品について

FE 16-25mm F2.8 G

未レビューのためコメントできません。
高性能だと思われますが、ズームレンジが狭い点を許容できるかどうか。タムロンよりもコンパクトですが、ズーム操作で鏡筒が伸びる点に注意。

FE 16-25mm F2.8 G
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16-28mm F2.8 DG DN

未レビューのためコメントできません。
小型軽量で低価格ながらF2.8の大口径ズーム。
タムロンよりもズームレンジが少し狭く、防塵防滴やカスタマイズ、操作性で妥協点あり。

16-28mm F2.8 DG DN Leica L
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作例

オリジナルデータはFlickrにて公開

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