このページでは七工匠 「7Artisans AF 85mm F1.8」のレビューを掲載しています。
簡易的なまとめ
製品提供を受けている
このレビューはPERGEARより無償提供された製品を使用しています。金銭の授受やレビュー内容の指示は一切ないことを最初に明言しておきます。無料であること、購入した製品ではないことに対する無意識のバイアスは否定できませんが、できるだけ客観的な評価を心がけています。
簡易的なまとめ
主な欠点はAFと絞りの動作で、光学的にはコストパフォーマンスの高いレンズ。将来的にファームウェアアップデートで動作が改善するのであれば、ソニー純正を差し置いて検討する価値があると思います。
7Artisans AF 85mm F1.8のレビュー一覧
- 7Artisans AF 85mm F1.8 レンズレビュー 完全版
- 7Artisans AF 85mm F1.8 レンズレビューVol.6 周辺減光・逆光編
- 7Artisans AF 85mm F1.8 レンズレビューVol.5 諸収差編
- 7Artisans AF 85mm F1.8 レンズレビューVol.4 ボケ編
- 7Artisans AF 85mm F1.8 レンズレビューVol.3 解像チャート編
- 7Artisans AF 85mm F1.8 レンズレビューVol.2 遠景解像編
- 7Artisans AF 85mm F1.8 レンズレビューVol.1 外観・操作・AF編
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | やや安い | |
サイズ | 鏡筒がスリム | |
重量 | 比較的軽量 | |
操作性 | 一部動作に癖がある | |
AF性能 | 一部動作に癖がある | |
解像性能 | 近距離以外は非常に良好 | |
ボケ | 滑らかな後ボケ | |
色収差 | 倍率色収差が目立つ | |
歪曲収差 | ほぼ問題なし | |
コマ収差・非点収差 | 良好な補正状態 | |
周辺減光 | F2.0まで目立つ | |
逆光耐性 | 七工匠としては良好 | |
満足度 | 動作に癖があるものの優れた光学性能 |
評価:
動作に癖があるものの優れた光学性能
主な欠点はAFと絞りの動作で、光学的にはコストパフォーマンスの高いレンズ。将来的にファームウェアアップデートで動作が改善するのであれば、ソニー純正を差し置いて検討する価値があると思います。
The main drawbacks are AF and aperture behavior, and optically the lens is cost effective. If the behavior improves with a firmware update in the future, it would be worth considering in lieu of the Sony stock.
Index
まえがき
2024年7月に発表した7Artisans3本目となるAFレンズ。AF 50mm F1.8に引き続き、フルサイズに対応するF1.8大口径レンズ。他の中国レンズメーカーがAPS-Cレンズからラインアップを拡充しているのに対し、7Artisansは積極的にフルサイズ用レンズをリリースする模様。第二弾となる今回は85mmの中望遠をカバーする単焦点レンズ。
- 最新情報まとめ
- 発表日:2024年7月5日
- 初値:¥52,920
- マウント:ソニーE
- フォーマット:フルサイズ
- 焦点距離:85mm
- レンズ構成:7群10枚
- 開放絞り:F1.8
- 最小絞り:F16
- 絞り羽根:11枚
- 最短撮影距離:0.8m
- 最大撮影倍率:不明
- フィルター径:62mm
- 手ぶれ補正:-
- テレコン:-
- コーティング:不明
- 全長:96mm
- 重量:437.5g
- 防塵防滴:不明
- AF:STM
- その他:デクリック絞りリング
- 付属品:レンズフード
レンズサイズや重量はAF 50mm F1.8とほぼ同じ。フォーカスリングや絞りリングの位置も統一されています。静止画でも使いやすいサイズですが、どちらかと言えば動画ユースを狙った統一感のように見えます。
レンズ構成は7群10枚で、うち2枚のEDレンズと高屈折率レンズを使用。競合製品よりも構成枚数が多く、EDレンズ使用数が多い。
価格のチェック
売り出し価格は5万円強。ソニー純正品「FE 85mm F1.8」が6万円程度と考えると、社外製の85mm F1.8としては決して安いとは言えません。互換性の保証などを考慮すると、差額を考慮しても純正品の購入がおススメ。また、7Artisansと同価格帯にVILTROX・YONGNUOなどの競合製品がひしめいています。後発で性能や互換性が未知数な7Artisansを選ぶのは少々リスキー。それでも本レンズを選ぶ理由があるのかどうかチェックしてみましょう。
レンズレビュー
外観・操作性
箱・付属品
ここ最近のAF 7Artisansレンズらしく、白を基調として赤いラインがアクセントのデザイン。箱にはレンズの図面や特徴がプリントされています。
レンズフードと前後のキャップ、さらにファームウェア更新用のUSBケーブルが付属しています。
外観
外装はシンプルながら金属製のしっかりとした作り。フォーカスリング・絞りリングも共に金属パーツを使用しています。外装の作りで言えば、VILTROXほど大きく重くなく、YONGNUOのようなプラスチック感もありません。競合製品の中ではバランスの良いビルドクオリティ。
シンプルなデザイン。7Artisansのロゴはカメラ装着時に下面となるように配置。絞り値やロゴは加工したうえで塗装が施されています。そのいっぽう、CEマークなどが目立つシルバーカラーのシールで目立ってしまうのが残念。
ハンズオン
全長96mm、重量430gと適度なサイズ・重量。ソニー純正品よりも少し大きく重いですが、心配するほどの差ではありません。しっかりとした金属外装の筐体を考慮すると、許容範囲内。
前玉・後玉
レンズ前面のコーティング類は不明。フッ素コーティングの記載は見当たらないため、ダメージが想定されるシーンでは保護フィルターの装着がおススメ。フィルター径はソニー純正で採用数が少ない62mmを使用します。
金属製レンズマウントは3本のビスで本体に固定。マウント面にはシリアル番号と更新用のUSB-Cポートが存在します。後玉付近はフレアカッターを搭載。
マウント面に防塵防滴用のシーリングはありません。
フォーカスリング
約2cm幅の金属製フォーカスリングを搭載。適度な抵抗感で滑らかに回転します。心地よい操作性。リングはリニアレスポンスで、ピント全域のストロークは約360度と長め。MFでの使用にはストロークが少し長すぎる。微調整時にピント位置が「段階的」に移動していますが、大部分の撮影では困らない程度に微小なジャンプ。
絞りリング
F1.8からF16、Aポジションに対応する金属製絞りリングを搭載。滑らかに回転しますが、基本的にクリックレスの動画向け。絞りは目盛りごとに1/3段刻みで動作します。絞り羽根の駆動音はゼロと言えず、ファインダーをのぞきながら耳で聞こえる程度には音量が大きめ。
F16からAポジションの間に目盛りがあります。特殊な動作が発生するわけではなく、Aポジションまでのストロークに何故か目盛りがある状態。「A」ポジション手前で微細なクリック感あり。「A」と「F16」間に絞りリングを調整すると、絞り羽根の誤動作が発生するので注意が必要。
F1.8とF2.0の間に2つの目盛りがありますが、細かく切り替わるわけではありません。(単にF1.8からF2.0までのストロークが長いだけ)
スイッチ・ボタン
側面には一般的なAFLボタンとして使うことができるボタンを搭載。ストローク浅めのクリック感があるボタンで、配置は良好。AF/MFスイッチも適度な抵抗感で操作しやすい。
ケラレ耐性
85mmの中望遠レンズということで画角は狭め。フィルターを2~3枚重ねて装着しても問題ありませんでした。
レンズフード
プラスチック製のシンプルなレンズフードが付属。フィルター操作窓やロック機能などはありません。本体にはしっかりと装着可能。
装着例
α7R Vに装着。フルサイズ用の85mm F1.8としては適度なサイズ・重量で、長時間の持ち運びやカメラバッグの収納性について問題はありません。85mm F1.8としては筐体が細身で、グリップとの間の空間に余裕があり、厚手のグローブを装着した状態でも握りやすいと思われます。
AF・MF
フォーカススピード
フォーカスはステッピングモーターで動作。リニアモーターと比べると高速と言えませんが、一般的な撮影距離での使用で不満を感じるほどではありません。
気になったのは絞りの動作。ソニーEマウントは基本的に実絞り測距ですが、このレンズはAF-S動作時に絞り開放測距となっています。このため、絞った状態の場合は測距時に絞りを開き、測距後に絞りを閉じる動作が加えられています(上の動画を参照してください)。
なぜこのような動作を採用しているのか理由は不明。また、AF-C時は通常通り実絞り測距で動作します。
ブリージング
ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指します。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となります。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離・無限遠で撮影した結果が以下の通り。
ピント位置により画角が大きく変化しています。特に近距離では画角がかなり狭くなる点に注意が必要です。
精度
前述したように、レンズのファームウェアVer01の段階において、AF-Sの動作が絞り開放測距に固定されています。このレンズはフォーカスシフト(絞るとピントの山が移動する)が目立つため、絞った状態でAF-S後に撮影すると、ピントを少し外したややソフトな結果となる可能性が高い。これを回避するためには、AF-Cを使うか、MFでピントを合わせるしかありません。問題となるのは主に近距離で、遠景では特に問題ありません。
MF
前述した通り、細部のピント合わせでMF操作時に極わずかなピント位置のジャンプが発生します。これが問題と感じるシーンは少ないと思いますが、三脚に固定して微調整する際は少し気になるかもしれません。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:ILCE-7RM5
- 交換レンズ:7Artisans AF 85mm F1.8
- パール光学工業株式会社
「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」 - オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- RAW出力
- ISO 100 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
遠景の解像性能では良好な性能を発揮していましたが、近距離では絞り開放付近で伸び悩んでいます。中央は球面収差、周辺や隅は非点収差や倍率色収差が影響していると思われます。実写作例を確認すると悪くない結果のようにも見えますが、収差により測定用の楔型が読み取れなくなっている模様。それでも中央は絞ることで大幅に改善し、F5.6で解析ソフトの上限に達しています。
中央
数値の結果と同じく、絞り開放付近は球面収差の影響かややソフト。絞ると改善しますがF2.8でも若干のソフトさが残っています。ベストを尽くすのであればF4-5.6まで絞るのがおススメ。
周辺
中央と同じく絞り開放付近でソフトな結果となり、絞ると徐々にシャープな描写へと変化。ただし、中央と比べて倍率色収差の影響が目立ち、状況によってはカメラや現像ソフトでの補正が必要と感じるかもしれません。
四隅
基本的には周辺と同程度で、顕著な画質の低下はありません。ただし、倍率色収差の影響がさらに強くなり、解析ソフトで誤検出が頻発。実写ではレンズ補正をオンにしておくことをおススメします。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
F1.4 | 3075 | 2896 | 2538 |
F2.0 | 3242 | 2673 | 3110 |
F2.8 | 3356 | 3008 | 2020 |
F4.0 | 4220 | 2812 | 3030 |
F5.6 | 4750 | 2963 | |
F8.0 | 4755 | 2975 | |
F11 | 4698 | 3075 | 3472 |
F16 | 3809 | 3175 | 2853 |
実写確認
遠景解像力
テスト環境
- 撮影日:2024.7.11 くもり 微風
- カメラ:α7R V
- 三脚:Leofoto LS-365C
- 雲台:SUNWAYFOTO GH-PRO II
- 露出:絞り優先AE ISO 100
- RAW:Adobe Lightroom Classic CC
・シャープネスオフ
・ノイズリダクションオフ
・レンズ補正オフ
テスト結果
絞り開放から抜群の解像性能とはいかないものの、中央から隅にかけて画質低下が穏やか。フレーム全体で一貫性のある結果が得られます。F8.8まで絞ると中央から広い範囲で非常に良好となり、隅の端もF4-5.6で同程度の結果まで画質が向上します。以降に大きな変動はありません。倍率色収差の影響がわずかに残っていますが、未補正でも無視できる程度で、レンズ補正を適用することで解消します。
中央
絞り開放付近はごく僅かに残存する球面収差や軸上色収差の影響でコントラストが少し低い。F2.8で改善し、F4でピークの性能に到達します。
周辺
中央とほぼ同じ。F4まで絞るとピークの結果が得られます。非常に良好。
四隅
F1.8から良好であり、これと言った欠点はありません。中央や周辺と比べて大幅な低下は見られず、F4付近でほぼ同じ結果を得ることができます。
撮影倍率
像面湾曲
像面湾曲とは?
中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の可能性あり。
最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合があります。と言っても、近距離でフラット平面の被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。
ただし、無限遠でも影響がある場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がありません。
実写で確認
遠景ではF1.8からフレーム全域で被写界深度内に収まっているように見えます。像面湾曲に関して大きな問題はありません。
倍率色収差
倍率色収差とは?
主にフレームの周辺部から隅に現れる色ずれ。軸上色収差と異なり、絞りによる改善効果が小さいので、光学設計の段階で補正する必要があります。ただし、カメラ本体に内蔵された画像処理エンジンを使用して、色収差をデジタル補正することが可能。これにより、光学的な補正だけでは難しい色収差の補正が可能で、最近では色収差補正の優先度を下げ、他の収差を重点的に補正するレンズも登場しています。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向あり。
実写で確認
解像チャートテストで指摘したように、フレーム隅に向かって倍率色収差の影響が強く発生します。カメラ側で簡単に補正できる収差のため、レンズ補正は適用しておくのがおススメ。
軸上色収差
軸上色収差とは?
軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれ。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられます。F1.4やF1.8のような大口径レンズで発生しやすく、そのような場合は絞りを閉じて改善する必要があります。現像ソフトによる補正は可能ですが、倍率色収差と比べると処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えておきたいところ。ただし、大口径レンズで軸上色収差を抑える場合は製品価格が高くなる傾向があります。軸上色収差を完璧に補正しているレンズは絞り開放からピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できます。
実写で確認
完璧とは言えませんが、低価格の85mm F1.8としては良く抑えられています。F2.8まで絞ると、厳しいシーンでもほぼ抑えることが可能。
軸上色収差ではありませんが、ピント固定で撮影するとF2からF2.8/4.0でピント位置が遠側で移動するフォーカスシフトが発生していることが分かります。このレンズはAF-Sが絞り開放測距となっているため、絞った状態でAF-Sを動作させる場合は気を付ける必要があります。
歪曲収差
歪曲収差とは?
歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうこと。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすく、魚眼効果のような「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。
比較的補正が簡単な収差ですが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となります。
実写で確認
光学的にはごく僅かな糸巻き型。このままでもほぼ無視できると思いますが、完璧を目指す場合にレンズプロファイルが無い場合は手動での修正が必要となります。
コマ収差
コマ収差・非点収差とは?
コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないこと。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要あり。
絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる場合もあります。
実写で確認
コマ収差は良好に補正されています。完璧ではありませんが、F1.8からコマ収差が目立つシーンはほとんどないと思われます。
球面収差
前後のボケ質には若干の違いがあり、近距離ではフォーカスシフトの影響が発生しています。
前後ボケ
綺麗なボケ・騒がしいボケとは?
ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくない(もしくは個性的な描写)と定義しています。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人もいることでしょう。参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルが以下のとおり。描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によるもの、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。
後ボケ
ニュートラル寄りながら後ボケが少し滑らかで綺麗。色収差の影響があるものの、ボケの縁取りが弱く自然な描写に見えます。
前ボケ
後ボケと比較するとボケの縁取りが硬く、僅かに2線ボケの兆候あり。と言っても基本はニュートラルな描写でであり大きな影響はありません。
玉ボケ
口径食・球面収差の影響
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまいます。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法がありません。しかし、絞るとボケが小さくなったり、絞り羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じて口径食を妥協する必要あり。
口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが可能。できれば口径食の小さいレンズが好ましいものの、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要があります。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。
球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。
中央
中央のボケは滑らかな描写で綺麗な円形。F2.8・F4まで絞っても綺麗な描写を維持しています。
隅
フレーム隅では口径食が目立ち、ボケの縁取りも少し強くなっています。F2.8-4で改善傾向が見られるものの、倍率色収差によるボケの色づきが目立つようになります。
ボケ実写
至近距離
接写では全体的に滑らかで問題はありません。ピント面直後のボケは柔らかい描写で、これと言って指摘するような欠点がありません。とても綺麗なボケに見えます。
近距離
撮影距離が少し伸びても問題なし。被写界深度以外で絞る必要性を感じません。
中距離
さらに撮影距離が長くなったとしても問題なし。全体的に滑らかで綺麗なボケを得ることができます。
ポートレート
全高170cmの三脚を人物に見立て、絞り開放(F2.8)で距離を変えながら撮影した結果が以下の通り。全身をフレームに入れるほど撮影距離が長くなると、周辺や隅のボケが少し騒がしく見えます。ただし、広い範囲は滑らかで綺麗。被写体に近寄ると全体的にボケが大きくなり、欠点が目立ちにくくなります。
周辺減光
周辺減光とは?
フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ち。
中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となります。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生。
ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景や星空の撮影などで高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。
最短撮影距離
絞り開放周辺で強めの減光が発生。85mm F1.8としてはコンパクトサイズですが、そのぶん周辺減光が強いと思われます。改善するには絞るかソフト補正の使用が必要。F2.8まで絞ってもまだ少し目立ち、F4まで絞るとほぼ解消。F1.8でフラットな露出を望む場合にはカメラやソフトでの補正が必要となります。
無限遠
最短撮影距離よりも減光が僅かに強くなるものの傾向は同じ。F4まで絞るとほぼ解消します。
逆光耐性・光条
中央
7Artisansのレンズとしては意外なことに、逆光耐性に致命的なフレアやゴーストが発生しません。フレアは良く抑えられ、少なくとも絞り開放におけるゴーストはほとんどなし。絞るとゴーストが発生するものの、それでもフレアは良く抑えられています。
隅
光源を隅に配置した場合、問題はほぼ無し。
光条
F11以降でシャープで綺麗な光条が発生します。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 比較的安い
- コンパクト(最大径が小さくスリム)
- 金属製の頑丈な外装
- このクラスでは珍しい絞りリング
- AF/MFスイッチとAFLボタンを搭載
- フレーム隅まで均質性の高い解像性能
- 像面湾曲が目立たない
- 軸上色収差の補正が比較的良好
- 歪曲収差が目立たない
- コマ収差が目立たない
- ボケが綺麗で滑らか
- 逆光耐性がまずまず良好
- 光条が綺麗
低価格ながら優れた解像性能と滑らかなボケを併せ持つ中望遠レンズ。色収差も良く抑えられており、全体的にバランスが良い。光学性能だけで言えば、サードパーティ製の85mm F1.8 レンズの中で優先的に検討したいレンズ。”一部を除き”ビルドクオリティも良好。
悪かったところ
ココに注意
- 競合製品が多い
- 絞りの動作
- 段階的にジャンプするフォーカスリングでの微調整
- フォーカスブリージングが目立つ
- 近距離時に解像性能が低下する
- 倍率色収差が目立つ
- 周辺減光が非常に目立つ
特に気を付けたいのが絞りの動作。少なくとも現行ファームウェアでAF-Sを使用するとフォーカスシフトの影響を受ける可能性があり、合焦速度もワンテンポ遅れる印象あり。AF-Cを使用することで問題を回避することは可能。ただし、それ以外にも絞りリング「AとF16の間」で動作不良が発生する可能性があり、F1.8とF2.0の間に目盛りが多いのも気になるところ。
光学的な欠点は補正が可能だったり許容範囲内である点が多く、気を付けたいのは接写時のフォーカスシフトくらい。最大の問題は競合するサードパーティ製レンズが多く、ソニー純正品の価格と驚くほどの価格差がないこと。
結論
満足度は90点。
主な欠点はAFと絞りの動作で、光学的にはコストパフォーマンスの高いレンズ。将来的にファームウェアアップデートで動作が改善するのであれば、ソニー純正を差し置いて検討する価値があると思います。
購入するを悩んでいる人
FE 85mm F1.8
まだ使用経験がないので光学性能はノーコメント。サードパーティ製と比べて驚くほどの価格差があるわけではないため、互換性や動作の不安を抱えたくないのであればこれ一択。
YN85mm F1.8S DF DSM
優れた中央解像で使い勝手の良い光学性能。倍率色収差やコマ収差の補正状態がイマイチ、状況によっては欠点が目立つ可能性あり。購入するタイミングによっては7Artisansよりも低価格だったものの、最近は値上がり気味。鏡筒やレンズフードがプラスチッキーである点を考慮すると所有する喜びはイマイチ。
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作例
関連レンズ
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