このページではキヤノン「EOS R7」のレビューを掲載しています。
EOS R7のレビュー一覧
- キヤノン EOS R7 徹底レビュー 完全版
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.8 カスタマイズ編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.7 AF・MF編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.6 解像性能編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.5 ISO感度編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.4 ダイナミックレンジ編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.3 メニュー編
- キヤノン EOS R7 徹底レビューVol.2 ドライブ編
- キヤノン「EOS R7」徹底レビューVol.1 外観・操作性編
- キヤノン EOS R7 ハンズオン 外観と起動時間やシャッター音の確認
管理人の評価
ポイント | 評価 | コメント |
価格 | やや高価だが性能を考えると適切 | |
サイズ | やや大きめ | |
重量 | やや重め | |
グリップ | 非常に良好 | |
操作性 | 独創的だが良好 | |
応答性 | 非積層型としては良好 | |
AF性能 | 被写体検出対応 | |
画質 | 高解像だがノイズ多め | |
カスタマイズ | 自由度が高い | |
メニュー | やや複雑 | |
レンズ | 早急な拡充が必要 | |
ファインダー | 価格を考えると微妙 | |
モニター | この価格帯では一般的 | |
バッテリー | 良好なバッテリーライフ | |
満足度 | 優れたアッパーミドルモデル |
評価:
APS-C EOS R初の高バランスモデル
高解像センサーにボディ内手ぶれ補正、30コマ秒連写、被写体検出AFなどなど、見どころが多いカメラに仕上がっている。やや高価だが、高解像とAF/連写性能を重視しているのであれば面白い選択肢だ。
被写体の適正
被写体 | 適正 | 備考 |
人物 | 検出AF・ローパスが便利 | |
子供・動物 | 検出AFと高速連写が便利 | |
風景 | 高い解像性能 | |
星景・夜景 | 高ISO感度のノイズが少し多め | |
旅行 | APS-Cとしては少し大きめ | |
マクロ | 便利なMFアシストあり | |
建築物 | 高解像でローパス搭載 |
Index
まえがき
カメラのおさらい
キヤノンEOS Rシステム初となるAPS-Cミラーレスカメラ。同時に登場した「EOS R10」がどちらかと言えばエントリー寄りのモデルで、一方のEOS R7はハイスペックなカメラに仕上がっている。APS-Cとしては高画素な3250万画素センサーを搭載し、最大8段分のボディ内手振れ補正を内蔵。1/8000秒までにメカニカルシャッターや1/16000秒の電子シャッターに対応し、最大で30コマ秒の連写速度を利用可能だ。さらにキヤノンAPS-Cとしては初となる4K 60pやC-logに対応し、マイクやヘッドホンも利用可能である。USB経由での充電や給電も利用でき、バッテリーはフルサイズと同じ大容量タイプを使用。いくつか気になる部分もあるが、それはレビューで指摘していきたい。
カメラの特徴
概要
- 商品ページ
- 仕様表
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- 発売日:2022年6月23日
- 売り出し価格:178,002円
主な仕様
- イメージセンサー
・タイプ:DPCMOS
・有効画素数:3250万画素
・除塵ユニット:
・ボディ内5軸手ぶれ補正:最大8段分 - プロセッサ:DIGIC X
- ISO:100-32000・拡張51200
- JPEG・HEIF・CR3(RAW / C-RAW)
- AFシステム:デュアルピクセル CMOS AF II
・測距点:651点・5915ポジション
・測距輝度範囲:-5EV~20EV
・被写体認識:人物・動物・車両
・その他:フレキシブルゾーン - 連写性能:
・メカニカルシャッター:~1/8000秒
・電子シャッター:~1/16000秒
・15コマ秒連写 メカニカル
・30コマ秒連写 電子
・連続撮影枚数:59枚
・フラッシュ同調速度:~1/320秒
・プリ連写:最大0.5秒 遡って記録 - ファインダー:0.39型 236万ドット OLED EVF 1.15倍
- モニター:162万ドット バリアングルモニタ
- 動画:
・MP4 IPBのみ
・4K:60p / 30p(7Kオーバーサンプリング)
・C-Log3
・電子IS:
・連続撮影時間:制限なし - インターフェース:
・USB:USB-C USB3.2 Gen2
・ヘッドホン:3.5mm
・マイク:3.5mm
・HDMI:D
・LAN:-
・リモコン:RS-60E3
・メモリーカード:デュアルSD UHS-II - バッテリー
・タイプ:LP-E6NH
・撮影可能枚数:380/660枚
・充電方法:USB充電・給電対応 - サイズ:132.0×90.4×91.7mm
- 重量:612g
- 防塵防滴:対応
- ボディ材質:
・シャーシ:マグネシウム合金
・外装:エンジニアリングプラスチック
価格をチェック
売り出し価格はボディ単体で178,002円だ。APS-Cミラーレスとしては決して安い部類のカメラではなく、どちらかと言えばハイエンドに近い。これ以上に高価なAPS-Cミラーレスを投入しているのは富士フイルムくらいだ。連写性能などを考慮しなければ「EOS RP」などフルサイズカメラも視野に入ってくる価格帯である。購入前にじっくりと検討しておきたい。
EOS R7 ボディ | |||
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EOS R7 18-150mmキット | |||
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カメラレビュー
外観・箱
箱・付属品
箱
EOS R7 18-150レンズキットを購入。黒を基調としたEOS Rシリーズらしいシンプルなデザインだ。表面は少し光沢があるので傷がつくと目立ちやすい。
間仕切りはプラスチック製容器を使用している。従来品と比べると充電器やバッテリーの配置が確立しているので、元に戻す時に分かりやすい。
付属品
カメラ本体のほかに、ストラップやバッテリー、外部充電器が付属する。レンズキットであるRF-S18-150mmにはレンズフードが付属していないので、必要であれば別途注文しておく必要がある。
外観
デザイン
キヤノンEOS Rシリーズらしいボディだ。EOS RPやEOS R5・R6と同じように、ボディに対してファインダーが上部に突出しておらず、左右に向かって少し撫で肩の曲線デザインを採用している。「Canon」「EOS」のロゴは従来通りのフォント・配置で、カメラの型番を瞬時に判断できる。塗装は従来通りグレー味のあるブラックをマットな質感で塗装している。
質感
シャーシはマグネシウム合金を使用しているが、外装は基本的にプラスチックパーツを使用している。底面もプラスチック製だ。全体的な印象としてはEOS 90Dに近い。EOS R5などマグネシウム合金を多用しているカメラと比べると僅かに質感が劣るものの、堅牢性について不安は無く、決して安っぽい印象は受けない。
底面
プラスチック製の底面にはシリアル番号やバッテリースロットがある。縦位置グリップ用の端子は存在せず、当然ながら純正品として縦位置グリップは用意されていない。バッテリーグリップに対応していたEOS 90DやEOS 7D Mark IIと比べると気になるポイントだが、バッテリーライフを伸ばしたいのであれば、携帯可能なUSB-PD対応バッテリーでUSB経由の充電・給電となっている。縦構図時の保持力を強化したいのであれば、社外製グリップの登場を待つしかない。
バッテリーはEOS R5やR6と同じ、最新の大容量バッテリー「LP-E6NH」を使用。大容量であることに加え、USB-C経由での内部充電や外部給電駆動に対応している。キヤノンAPS-Cカメラとしては電源周りのスペックが画期的だ。古いバッテリーも利用可能だが、その際はUSB給電・充電に対応していない可能性がある。バッテリースロットのドアは防塵防滴仕様で、内部に浸水しにくいようになっている。
メモリーカード
EOS R7はSD UHS-IIに対応するカードスロットを2基搭載している。次世代メモリーカードである「CFexpress」に対応していないのは残念だが、手ごろな価格で流通しているSD UHS-IIで十分と言う人は多いだろう。シールが施されたバッテリースロットと異なり、メモリカードスロットのドアにシールは施されていない。この辺りの仕様は「EOS 90Dと同程度の防塵防滴」という主張を裏付けるものとなる。問題は無いと思うが、耐候性に過信は禁物だ。
ハンズオン
サイズ
132.0×90.4×91.7mmのカメラサイズはAPS-Cミラーレスとしては決してコンパクトではないが、ボディ内手ぶれ補正を搭載する高級機としては一般的だ。ただし、しっかりとしたグリップを搭載しているぶん、奥行方向のサイズが少し大きくなる。もしも収納性や携帯性の優先順序が高いのであれば、一回りコンパクトなEOS R10も検討してみると良いだろう。
重量
バッテリー込みで612gだ。一眼レフカメラと比べると軽量だが、APS-Cミラーレスの中では重量級である。EOS R7以上に重たいカメラは富士フイルムのX-H2SやX-H1くらいのもの。グリップが大きく握りやすいので、使用時の重量感は軽減されるかもしれない。しかし、カメラバッグ収納時は僅かに重いと感じる。
カメラグリップ
ボディそのものはコンパクトだが、カメラグリップが大きく、大きなレンズを装着しても快適だ。一眼レフカメラほど大きなグリップではないものの、EOS Kiss Mシリーズのグリップと比べると厚みがあり、しっかりと握ることが出来る。
ジョイスティックやリアホイールは親指で自然と操作しやすい配置となっているが、指が短い私には少し上過ぎる。M-Fnボタンや録画開始ボタンは自然と指をかけることができ、ISOボタンやLOCKボタンは意識して手を動かさないと難しい。
グリップサイズは大きめだが、ミラーレスらしく全高はそれほど高くない。小指が余りがちとなり、追加グリップが無いのでこれを補う手段がないのは残念だ。せめてEOS RPのようにエクステンショングリップが用意されると良かった。
コントロールレイアウト
正面
正面にはキヤノンでは珍しいAF/MFスイッチを搭載。従来通りプレビューボタンとしても機能するが、カスタマイズで別の機能を割り当てることも可能だ。
最初は戸惑ったものの、慣れてくると使いやすい形状・配置と感じた。富士フイルムにも似たようなコントロールがあるが、圧倒的にこちらのほうが使いやすい。特にレンズ側にコントロールが無い低価格でコンパクトなRFレンズで重宝する。今後はフルサイズカメラにも導入して欲しい。レンズ側にAF/MFスイッチが存在する場合はレンズ側が優先される。
背面
一見すると背面ホイールの無いEOS Kiss系のコントロールレイアウトに見えるが、実はファインダー左にジョイスティックと統合されたコントロールとして存在する。
最も目を引くのはファインダー横の統合されたジョイスティックと垂直ホイールだ。このようなデザインのカメラは初めてで、操作に慣れる時間が必要となる。奇抜なデザインに見えるが、実際に使ってみると普通のジョイスティックとホイール(ダイヤル)だ。操作はあっという間に慣れると思うが、ホイールは指と接触する面積が小さく少し操作し辛く感じる。機能は一般的なジョイスティックとホイールと同じで、カスタマイズなども従来のEOSカメラと同様だ。
ボタンカスタマイズに対応しているのはAF-ON、AEL、フォーカスフレームボタン、そして4方向キーと中央のSETボタンを自由に変更することが可能だ。特にこのクラスのキヤノンカメラで方向キーのカスタマイズに対応しているのは珍しく、様々な機能を呼び出すことが出来るのは便利と感じる。カスタマイズ可能な機能も増えているので、EOS R7を購入した際はまず最初に確認しておきたい。MENUボタンは左上に存在するが、カスタマイズで右側のボタンのどこかに配置することも可能だ。ただし、ソニーのようにメニュー操作時の「キャンセル・戻る」として機能はしない。
上面
上部のデザインはEOS R6とよく似ているが、ロックボタンが追加され、電源スイッチを搭載している点で異なる。特にキヤノンの電源スイッチは左肩にあることが多く、ベテランキヤノンユーザーであれば慣れが必要かもしれない。慣れてしまえば右手のみで撮影が可能だ。
電源スイッチには動画モードへの切替機能がある。これによりモードダイヤルを操作する必要が無く、動画撮影時のP/A/S/M/Fvモードへの移行も簡単となる。
フロントダイヤル周辺のM-Fn・動画撮影・ISOボタンはカスタマイズ可能だ。残念ながらLOCKボタンはカスタマイズできない。
ファインダー
0.39型の236万ドットOLED電子ファインダーを搭載。光学系のファインダー倍率は1.15倍だ。必要十分なスペックと言えるが、EOS R7の価格設定を考えると少し見劣りする部分である。特に不満は感じないが、強みとも言えない。
EOS R3と同じくOVFビューアシストに対応しているので、ライブビュー時のハイライトやシャドウの諧調を確認しやすい。ちなみに背面液晶パネル使用時の見え方にも変化がある。
モニター
3.0型 162万ドットのカラー液晶を使用したバリアングルモニタを搭載。従来のキヤノン製APS-Cカメラよりも高解像で、撮影後の結果を確認しやすくなっている。初期設定だと明るい日中で視認し辛くなるが、クイックメニューにも設定可能なモニター輝度設定で明るくすることで改善可能だ。従来通り、キヤノンらしい洗練されたタッチ操作に対応している。
センサー保護
カメラは初期設定で電源オフ時にメカニカルシャッターを利用したセンサー保護機能が有効となっている。これでレンズ交換時にセンサー面へ小ゴミが付着する可能性を低減している。もちろん繊細なシャッター幕に触れないように注意が必要だ。必要無ければ、保護機能をオフにすることも出来る。
レンズ装着例
RF-Sレンズをはじめ、フルサイズ用RFレンズやアダプター経由でEF-Sレンズ使用時もバランスが取れている。大きなカメラグリップなので、望遠ズームレンズや大口径レンズを装着しても問題は感じない。レンズマウントとグリップの間の空間も余裕があり、手袋を装着したままでも、窮屈にはさほど感じないだろう。
起動時間の確認
起動時間は非常に短く、電源投入後に素早くシャッターを切ることが出来る。もちろんレンズ側のAFなども関係してくるが、スナップ撮影に適した起動速度と感じる。
センサー保護機能をオフにして同じテストを繰り返してみたが、起動速度に顕著な改善は見られなかった。
シャッター音の確認
シャッター音はやや軽めで、EOS 90Dと言うよりもEOS M系のシャッターに近い印象を受けた。ただし、EOS Mのように電子先幕シャッター限定ではなく、先幕シャッターもメカニカルに対応している。完全メカニカルでも動作音は静かで軽めだ。
電子先幕シャッター(過去のカメラではソフト撮影)に切り替えても連写時の動作音そのものに変化はあまり無い。今回は撮りわすれてしまったが、シングルショット時はメカニカルシャッターと電子先幕シャッターでハッキリと違いを聞き分けることができる(特にスローシャッター時)。
解像性能
チャートテスト
レンズテストで恒例の解像力チャートを使用してEOS R7の解像性能をテストした。使用レンズはSIGMA 70mm F2.8 DG HSMで統一している。
このチャートの解像上限は4700付近だ。EOS R5は上限に近い数値まで解像していることが分かる。EOS R5には及ばないが、少なくとも3000万画素のEOS Rと比べて良好な結果が得られている。ただし、R7は絞ると回折の影響で解像性能が徐々に低下。特にF8以降には顕著な低下が見られるので注意が必要だ。F11以降はEOS Rと結果が逆転するので、絞り過ぎには気を付けたい。
同じテスト環境で絞りを固定し、ISO感度ごとに測定した結果をグラフにした。ベースISOからISO 800までは良好な解像性能を発揮している。この際のパフォーマンスはEOS R以上であり、競合機種となる富士フイルムの2600万画素センサーよりも良好だ。ただし、ISO 1600から解像性能の低下が始まり、ISO 3200に向かって急速に数値が下がってゆく。ISO 6400以降はノイズが多すぎて測定不能だった。X-S10はこの点でノイズを良く抑え、ISO 12800までEOS Rとよく似た結果が得られている。
モアレ
競合他社はローパスフィルターレスが主流となりつつあるが、キヤノンはローパスフィルターを採用し続けている。このため、ディテールはローパスフィルターレスほどではないかもしれないが、モアレは確実に抑えられている。ただ、富士フイルムが独自配列である「X-Trans」のCMOSセンサーはローパスフィルターレスながらEOS R7並みだ。解像限界を超えた先で発生する色付きも良く抑えられている。
EOS R7 | X-S10 |
実写テスト
このテストではEF-Sレンズの中では特に解像性能が高い「EF-S35mm F2.8 マクロ IS STM」を使用している。解像性能はF2.8からF8まで一貫しているが、F11以降で回折の影響が顕著だ。ディテールが目に見えて低下するので、細部を重視するのであれば、絞りはF8付近までを目安に抑えたほうが良い。
全体 | |||
F2.8 | F4.0 | ||
F5.6 | F8.0 | ||
F11 | F16 | ||
F22 | F32 |
EOS R5との比較
EOS R5との比較では、定点から「SIGMA 70mm F2.8 DG HSM」を使用して同じ個所をクロップした。当然ながら、APS-Cフレームでより高解像なEOS R7のほうが解像していることが分かる。ただし、同じ被写体を同じ構図で撮影して見比べたとしても、解像性能の差はわずかに見える。RFレンズのAPS-Cクロップを前提として、EOS R7の購入を検討しているのであればおススメしない。また、回折の影響を受けやすく、F11まで絞るとEOS R7の高解像を活かしきることが出来ない。
EOS R7 | EOS R5 | |
F2.8 | ||
F5.6 | ||
F11 |
ISO感度ノイズ
解像性能のテストで恒例の定型チャートを使用してチェックした。ISO感度ごとに撮影したRAWをLightroom Classic CCにてカラーノイズのオン・オフで現像したのが以下の作例だ。輝度ノイズの補正はオフにしている。
カラーノイズはISO 800から徐々に増加し始める。本当にクリアな画質はISO 400までだ。ただし、画質への影響はわずかであり、カラーノイズを補正するとISO3200くらいまではディテールを損なうことなく利用することができる。ISO6400~12800で細部のディテールが低下し始め、ISO25600で大幅に低下する。ISO25600~32000はできるだけ避けたほうが良いだろう。富士フイルムの裏面照射型2600万画素センサーやニコンの2000万画素センサーと比べると少し見劣りするが、解像度の差を考慮すると許容範囲内のように見える。
カラーノイズはISO12800以降で目立つようになり、鮮やかな発色が少し変化してしまう。
ノイズリダクション
ISO3200~6400までならばコントラストの高い描写に大きな変化は見られない。敢えて言えばNRが強いとモアレの影響が緩和しているのが面白い。ISO12800付近からコントラストが弱い部分のディテールが低下し始め、ISO25600では顕著な影響が見られる。
シャドウや低コントラストな領域はNRの影響を受けやすく、特にISO6400からNRによるディテールの低下が目立ち始める。低照度の場合、画質を優先するのであればISO3200くらいまでに抑えたい。もしもISO6400以降を使う場合はNRの効果を弱めたほうが良いかもしれない。
ダイナミックレンジ
撮影環境
- EOS R7 + SIGMA 70mm F2.8 DG HSM
- ISO 100
- 一定の照明環境となるミニスタジオ
- グレースケールを適正露出前後±5EVで撮影
(上の画像は撮影直後のJPEG) - 露出アンダー・オーバーの作例を適正露出に復元して現像
メカニカルシャッター
RAW
キヤノンのAPS-Cセンサーとしては良好なダイナミックレンジを備えている。ハイライトの粘り、シャドウのノイズ耐性は高解像センサーながら良好なパフォーマンスだ。シャドウは-3EVの回復までノイズを抑えた良好な結果を期待でき、-4EVでもカラーノイズの処理次第で実用的な画質と言えるだろう。-5EVの回復はノイズ目立つので避けるのがおススメだ。ハイライトの粘り具合はニコンの2000万画素CMOSセンサーと似ているが、富士フイルムの2600万画素ほどではない。もしもハイライトのトーンを重視する場合は「高輝度・諧調優先」モードで対応しよう。ただし、その場合はシャドウの暗い部分が犠牲となるので気を付けたい。
C-RAW
圧縮RAWとなる「C-RAW」は通常のRAWと比べると圧縮率が高く、ファイルサイズで有利となる。その反面、シャドウの情報を必要最低限で間引いているのでRAWの柔軟性が低下するのが一般的だ。しかし、EOS R7のC-RAWはダイナミックレンジにほとんど変化が見られない。R7のC-RAWは積極的に使用しても大きな問題が無さそうだ。
電子シャッター
RAW
キヤノンの電子シャッターはダイナミックレンジが狭くなると評価されており、実際に私もEOS R5でそれを確認している。EOS R7も例外ではなく、主にシャドウ側の復元時にノイズが少し強めに発生する。と言っても以前のカメラと比べて影響は軽微で、-4EVまでの回復であればメカニカルシャッターと比べて大きな画質差は無いように見える。
C-RAW
メカニカルシャッターと同じく、RAWとC-RAWの画質差はこれと言って見当たらない。より厳密なチェックでは差があるのかもしれないが、少なくとも実写でRAWとC-RAWの違いを説明するのは難しいだろう。
オートフォーカス システム編
フォーカスモード
フォーカスモードは他社で言うところの「AF-S(ワンショットAF)」と「AF-C(サーボAF)」の二つだ。一眼レフカメラのようにAF-CとAF-Sを自動的に切り替える「AIフォーカス」モードは存在しない。二つのモードを切り替えるためにはメニューのAFカテゴリから設定を変更する必要があるが、クイックメニューやボタンカスタマイズを利用することで素早く切り替えることが可能だ。ボタンカスタマイズで素早く切り替えるのも便利だが、親指AFにカスタマイズすることで、サーボAFをワンショットAFのように使うことも可能である(後述)。
フォーカスエリア
EOS R5・R6までのカメラとは少しことなるので詳しく解説しておきたい。EOS R7のAFは基本的にEOS R3を継承しており、R5やR6よりも新しい世代のシステムとなっている。
エリア種類
- スポット1点
- 1点
- 領域拡大5点
- 領域拡大9点
- 全域
- フレキシブルゾーン1?3
基本的には従来通りのシステムだが、ゾーンAFがカバーエリアを自由にカスタマイズできる「フレキシブルゾーンAF」に変化した。オートエリアに近いカバーエリアにしてもよし、横一文字・縦一文字の特殊なフォーカスエリアにカスタマイズすることもできる。
フレキシブルゾーンAFは「AFフレーム選択」モードで再度「AFフレーム選択」ボタンを押すことでカスタマイズモードへ移行することが出来る。通常のメニューシステムにはフレキシブルゾーンAFをカスタマイズする項目が見当たらないので注意が必要だ。
AFエリアの変更方法
AFエリアの変更方法は5種類。
- コントロールリング
- サブ電子ダイヤル
- AFエリアダイレクト選択
- AFフレーム選択
→M-Fnボタン - ダイヤルファンクション
「コントロールリング」「サブ電子ダイヤル」「ダイレクト選択」は機能を割り当てて操作することでシームレスにAFエリア変更を実施することができる。AFエリアダイレクト選択はボタンを押すごとに次ぎのAFエリアに切り替わる仕組みで、コントロールリング・サブダイヤルと異なり、切り替わる順番(方向)が決まっているので少し使い辛い。最も操作しやすいのはダイヤルだが、EOS R5やR6のような「第3のダイヤル(ホイール)」が無いので、Fvモードで利用できなくなるのが難点だ。
AFフレーム選択は「モード呼び出し→選択→決定」の3アクションが必要となるので素早く操作することが出来ない。ただし、フレキシブルゾーンAFをカスタマイズしたり、トラッキングのオンオフを変更できるのはこのモードのみだ。ちなみに、EOS R3のような「登録AFフレームに切り換え」機能は無い。ダイアルファンクションからAFフレーム選択を操作してもトラッキングの切替は出来ない。
移動方法
AFエリアの移動は「ジョイスティック」「方向ボタン」「前後ダイヤル」「タッチパネル」の4系統があり、それぞれ以下のようなモードでAFエリアの移動が可能となっている。
- ジョイスティック(マルチコントローラー)
・AFフレームダイレクト選択
・AFフレーム選択 - 方向ボタン
・AFフレームダイレクト選択
・AFフレーム選択 - 前後ダイヤル
・AFフレーム選択 - タッチパネル
・タッチAF
・ドラッグAF
AFフレームダイレクト選択はフレーム選択モードへ移行することなく、通常のライブビュー画面でAFフレームを移動できる機能だ。EOS R7のジョイスティックは初期設定でこの機能がオンとなり、方向ボタンもこの機能を割り当てることが出来る。
ただし、方向ボタンは通常のボタンカスタマイズにも対応しているので、フレーム選択はジョイスティックに任せ、方向ボタンは別の機能を割り当てることで柔軟性が高まる。
AFフレーム移動時の速度は「AFフレーム選択の敏感度」で調整可能だ。と言っても前後に1目盛り調整できるだけであり、設定値の細かい変更は出来ない。
ジョイスティックを搭載するEOS R7はタッチ&ドラッグAFが初期設定でオフとなっている。この機能を使うことで、ファインダー使用時にタッチパネルを操作することでAFフレームを移動することが出来る。機能は従来通り、位置指定方法とタッチ領域を変更することが可能。ジョイスティックを搭載しているEOS R7で活用する人は少ないと思うが、ジョイスティックの無い従来機から移行した場合には一つの選択肢になると思う。
縦位置・横位置
カメラを水平・垂直に構えることで、AFエリアやフレームの自動切換えに対応している。登録モードは無く、実際に水平・垂直に傾けてモードを切り替えた際にエリアやフレームを変更する。斜めにカメラを構えた際に誤反応することもあるので個人的には使い辛い機能だ。
トラッキング・被写体検出
トラッキングの切替
被写体追尾(トラッキング)は従来で言うところの「顔優先・追尾」モードに近い。被写体検出を使わずに初動で指定した物体を認識してフレーム全域でトラッキングを開始する。トラッキングの有無を設定する手段は以下の通りだ。
- メニュー
- AFフレーム選択
→M-Fnボタン
→infoボタン - カスタムボタン
(ただしトグル機能ではない) - ジョイスティック(マルチコントローラー)中央押し込み
最も素早く操作できるのはボタンカスタマイズで「トラッキング」の開始/停止」を使用することだ。割り当てボタンを押すことで設定に関わらずトラッキングを開始することが出来る。ただし、メニュー画面や電源のオンオフでトラッキングはオフとなるので、必要であれば再度ボタンを押す必要がある。
トラッキングの開始/停止を使用する頻度が高いのであれば、いっそのことジョイスティック中央押し込みボタンに割り当てるのも一つの手だ。このボタンのカスタマイズは分かりづらくなっているが、ボタンカスタマイズ「マルチコントローラー」項目にてINFOボタンを押すことで機能を変更することが出来る。
次に簡単な操作方法はメニュー項目をお気に入りに登録しておくこと。AFフレーム選択からAFエリア選択を経由してトラッキングの有無を切り替えることが出来るが少々手間がかかりやすい。
ジョイスティックや方向ボタンを「AFエリアダイレクト選択」で使用している場合は対応していないが、「AFフレーム選択」をボタンカスタマイズに割り当てておくことで、「M-Fn」ボタンでAFエリア選択から「INFO」ボタンでトラッキングのオンオフを切り替えることが可能だ。
被写体検出の切替
EOS R5・R6から実装が始まった被写体認識機能にR7も対応している。対象は「人物」を基本として、「動物」「車両」を優先して検出することも可能だ。
検出する被写体を変更するには以下の方法がある。
- クイックメニュー
- メニュー
トラッキングと異なり「AFフレーム選択」や「ボタンカスタマイズ」でオンオフを切り替えることが出来ない。その代わりに、クイックメニューのカスタマイズで専用の項目を追加することが可能だ。
瞳検出
被写体検出とは別に瞳検出のオンオフを設定することが出来る。「顔検出」の設定項目は無い。あくまでも被写体検出に付随する設定項目であり、被写体検出をオフにした状態で「瞳検出」のみ動作することは無い。特に問題を感じなければ「瞳検出:する」で固定しておけばいいだろう。ただし、動物検出の場合は稀に瞳を誤検出することがあるので気を付けたい。
サーボAF特性
他のEOS Rシリーズと同じくサーボAF特性のカスタマイズとプリセットに対応している。後述するAF設定の呼び出し機能にも含まれている。
登録AF機能
ボタンカスタマイズに割り当てることで登録したAF設定を「押している間だけ」呼び出すことが出来る。似たような機能に「撮影機能の登録と呼び出し」が存在するが、登録AF機能は主にサーボAF時の特性や設定切替に特化している。「ワンショットAF・サーボAF」の設定項目が無いので、例えば「風景撮影中に飛び出てきた子猫をサーボAFで追いかける」と言った使い方は難しい。そのような場合は全体的なカメラ設定を切り替えることが可能な「撮影機能の登録と呼び出し」を活用したほうが良いだろう。
オートフォーカス 実用編
応答性
DIGIC Xプロセッサ搭載のフルサイズミラーレスと同じく、非常に応答性の高いAFだ。至近距離から無限遠までほとんど迷いが無く、電光石火のAFスピードで動作する。マクロや望遠レンズの大デフォーカス時はフォーカス速度の低下が見られるものの、それでもピントが前後に行き来するような迷いは見られなかった。サーボAFを使った至近距離での追従性も良好で、特に広角側であれば素早く動く被写体でも大きな問題を感じない。
被写体検出 人物
被写体検出「人物」は従来通り頭部と顔、瞳をそれぞれ認識する。瞳を優先的に検出し、手前側の瞳にピントを合わせる仕組みとなっている。二つの目が検出されているのなら、方向ボタンで左右の目どちらにピント合わせるか指定することも出来る。
眼鏡装着時の瞳検出も非常に良好だ。EOS R5の初期ファームウェアよりも良好で、良く改善されているのが分かる。(EOS R5も最新ファームウェアの場合は似たような検出結果が得られる)
被写体検出 動物
従来通り鳥を自動的に検出して、瞳まで認識する。たまに検出が外れることがあるものの、一瞬だけで直ぐに検出・追従を再開する。
一般的な鳥類をカジュアルに撮影するぶんには全く問題が無いように感じる。連続撮影中はライブビューのフレームレートが低下するものの、高速連写で目立ちにくく、バッファが詰まった後は通常のライブビューに戻るので気にならなかった。
亀の目も検出するが、他に目立つ被写体が存在する場合は検出から外れてしまい、復帰も難しかった。上の動画を見ると分かるように検出精度も完璧ではなく、瞳ではない部位をフォーカスし続けてしまうこともある。
猿なども検出可能だ。
何だったらクラゲも認識できる。
チンアナゴも問題ない。
親指AF
親指AFとは一眼レフのころから存在するボタンカスタマイズの方法の一つだ。通常はシャッター半押しでAFが動作するが、これを無効にして別のボタンにAF開始を割り当てることを意味している。これにより、親指でAFを操作し、人差し指はダイヤル操作やレリーズに集中することが出来る。
ボタンカスタマイズで「シャッターボタン半押し」から「AF開始」を外す。これで他のボタンにAF開始を割り当てる下地が出来上がる。
割り当てることが出来るボタンは限定的だが、絞り込みボタンやAF-ONボタンに「AF開始」を登録することが可能だ。これによりシャッター半押しと同じ効果を得ることができる。AFが必要なければボタンを押さなければよいので、サーボAFをワンショットAFのようにも使うことができる。(フルタイムMFの設定無しで)シャッター半押し中にMF操作も可能だ。
マニュアルフォーカス
回転方向・応答性
最近は他社も対応するメーカーが増えてきたが、EOS Rシステムは初期の頃からフォーカスリングのレスポンスを変更可能だ。使い方に応じて回転速度・回転量でMF操作速度を調整することが出来る。ただし、リニアレスポンス(回転量)・ノンリニア(回転速度)どちらもストロークや感度を調整することは出来ないので、リニアレスポンスでもストロークが長すぎたり、短すぎる場合がある。
フォーカスリングは電子制御式のため、回転方向を切り替えることが可能だ。もちろん対応レンズのみだが、一眼レフ時代に社外製レンズなどで純正レンズの回転方向になじみが無ければ調整するのがおススメ。
フルタイムマニュアル
初期設定はワンショットAF後にシャッター半押しのままフォーカスリングを操作してもMFは不可能だ。ただし、電子式手動フォーカス設定でワンショット後のフォーカスを可能にすることで操作できるようになる。ソニーのDMFなどとよく似ているが、ニコンのようにワンショットAF前にMF操作することは出来ない。
「レンズの電子式手動フォーカス」と似ているが、こちらはワンショットAF前やサーボAF中でもMFへの移行が可能となる機能だ。ただし、この機能に対応しているレンズは限られており、2022年7月現在の対応レンズは以下の通り。
- RF16mm F2.8 STM
- RF400mm F2.8L IS USM
- RF600mm F4L IS USM
- RF70-200mm F2.8L IS USM(要ファームウェア更新)
- RF70-200mm F4 L IS USM(要ファームウェア更新)
- RF100-400mm F5.6-8 IS USM
- RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM(要ファームウェア更新)
- EF400mm F2.8L IS III USM(要ファームウェア更新)
- EF600mm F4L IS III USM(要ファームウェア更新)
フォーカスガイド
CinemaEOSで導入され、2018年に登場したEOS Rでスチル向けのコンシューマー機にも採用した機能だ。他社のMFアシストは合焦時のみ点灯するので、被写体に対してピント位置が前後どちらにあるのか判断し辛かった。しかし、フォーカスガイドはある程度のデフォーカスならピント位置を判断できるアシスト機能である。
測距情報とレンズの距離情報を利用したデュアルピクセルフォーカスガイドを表示※。前ピン、後ピンがひと目で把握でき、スムーズで厳密なピント合わせが行えます。さらに、あらかじめ設定した位置へ瞬時にガイド表示を移動できるプリセット機能も備えました。
これが非常に便利。さらにMFでも瞳検出は有効となっているので、フレーム上で顔の位置が変化したとしても簡単にピント位置や合焦を確認することが出来る。
ピーキング
フォーカスガイドの他にも一般的なピーキングに対応している。レベルは2段階、色は3種類から選択可能だ。ボタンカスタマイズで呼び出すことができるほか、クイックメニューに登録することも出来る。
メニューシステム
動画で確認
まずはざっとメニュー一覧を動画を使ってみてみよう。
基本的にキヤノンではお馴染みのメニュー構成だ。前ダイヤルでタブの切替、後ダイヤルで上下カーソル移動が割り当てられているほか、ジョイスティック、マルチコントローラーを使った操作も可能である。APS-C一眼レフ「EOS 90D」と比べると項目が非常に多く、さらにAFが独立したカテゴリとなっている点は注目に値する。90Dのようなミドル機から乗り換えた場合は、その機能性に驚くことだろう。それではカテゴリごとにメニューシステムをチェックする。
撮影メニュー
撮影メニューは10ページ52項目だ。一昔前のメニューシステムと比べると随分と複雑になっている。1~6ページくらいまではお馴染みの項目となるが、7~10ページには目新しい機能が数多くある。
特徴的な機能として「RAWバーストモード」がある。このモード中は連続撮影中のRAWが一つの画像データに格納されるので管理が非常に簡単となる。撮影後は再生モードで結果を確認しながらRAWやHEIFなどを切り出すことが可能だ。注意点として、RAWバーストモードのファイルはひとまとまりの「.CR3」として出力されているので、そのままLightroomなどで読み取ることができない。カメラやDPPでRAWバーストモードから単一のRAWを出力する必要がある。少し面倒くさい。ちなみに、RAWバーストモード中はプリ撮影に対応している。プリ撮影をオンにすることで、シャッター全押し前の最大0.5秒から記録することが可能だ。決定的瞬間をとらえやすくなっている。
以前は「ソフトシャッター」や「静音撮影モード」だったシャッター方式が他社と同じ具体的なネーミングに変更されている。初期設定は「電子先幕」だが、このモードのまま大口径レンズで高速シャッター(1/2000秒くらいと言われている)を使用すると露出ムラが発生してしまうので気を付けたい。そのような場合はメカニカルシャッターや電子シャッターに切り替えよう。電子シャッターは「サイレントシャッター機能」でも切り替わるが、電子音や電源オフ時のシャッター閉幕機能などがオフとなってしまう。あくまでも電子シャッターを使いたいだけなら「シャッター方式」ぁら電子シャッターを選ぶのがおススメだ。
手ぶれ補正の設定も細かく調整できるようになった。静止画や動画で手ぶれ補正のオンオフを設定できるほか、静止画撮影時のみ手ぶれ補正が効くように調整できる設定項目もある。
目新しい機能として、手ぶれ補正を活用した自動水平補正機能を搭載している。これは回転ブレに対応したボディ内手ぶれ補正を利用して水平を調整してくれる機能だ。画像処理ではなく物理的にセンサーを回転して調整するのでフレームのクロップなどは発生しない。ただし、電子先幕時の高速連続撮影時は無効となる。
詳しくはカスタマイズ編で解説するが、EOS R7はクイック設定メニューをカスタマイズ可能だ。これはEOS R3から導入した機能であり、EOS R5やEOS R6では利用できない。従来までクイック設定メニューの項目は固定され使い辛かったが、他社のFnメニューのようにカスタマイズ可能となり、多用する機能を割り当てて使うことが出来る。
登録できる機能は11枠あり、計28の機能がある。ただし、「画質」機能のみ2枠使う必要があり。素早く設定変更できる機能が多いが、中には設定メニューへのショートカットでしかない項目もあるので要確認だ。被写体検出や背面モニターの輝度調整などこれまで使いそうで割り当てスペースが無かった機能を複数登録できるのは便利と感じる。
従来の「露出シミュレーション」が「表示シミュレーション」へと進化している。従来はライブビュー中に露出をシミュレーションするかどうかシンプルな機能だったが、EOS R7ではライブビュー中に絞りが設定値まで動作する、いわゆる「実絞り」動作に対応している。これまでは「絞りプレビュー」機能を使用して確認する必要があり、その際にMF操作が利用不可となるのが不便だったが、これで解決した。是非ともEOS R5やEOS R6にもファームウェアアップデートで導入して欲しいものである。
EOS R3で初登場した機能だ。ミラーレスのファインダーは露出や仕上がり設定をシミュレーションしながらライブビュー像を確認することが出来る。「OVFビューアシスト」は敢えてミラーレスの利便性を排除して、光学ファインダーのような見栄えを得ることが出来る機能だ。あくまでもOVFに似せたファインダー像であり、光学ファインダーを期待しているとがっかりするかもしれない。クイック設定メニューに登録することが出来ないので、活用したいのであればボタンカスタマイズでショートカットを配置するのがおススメだ。
AFメニュー
AFエリアのシステムは基本的に従来通りだが、EOS R3と同じようにゾーンAFがカスタマイズに対応している。縦幅と横幅を自由に変更可能で、3枠まで利用することが出来る。使用しないAfエリアは表示から外すこともできるので、3枠あっても邪魔とは感じないはずだ。
フレキシブルゾーンで少し残念なのは範囲をカスタマイズできる設定項目がクイック設定メニューにしかないことだ。通常のメニューやボタンカスタマイズに対応しておらず、クイック設定メニューからフレキシブルゾーンのカスタマイズモードへ移行する必要がある。もしもフレキシブルゾーンを活用したいのであれば、クイック設定メニューとセットになることを覚えておこう。フレキシブルゾーンはEOS R3から導入された新しい機能なので、将来的にインターフェースが改善することを期待したい。
追記
以下の手段でもカスタマイズモードへ移行できることを確認
- AFフレーム選択ボタン
- M-Fnボタン
- カスタマイズするフレキシブルゾーンAFを選ぶ
- AFフレーム選択ボタン
- カスタマイズモード
追尾AFはシステムが一新されているので注意が必要だ。以前のカメラはライブビューのトラッキング(追尾)AFはオートエリアのみの機能だったが、EOS R7ではすべてのAFエリアでトラッキングが可能となっている。トラッキングのオン・オフは専用の設定項目があり、ボタンカスタマイズでも割り当てることが出来る。
EOS R7はフルサイズ機と同じように被写体検出に対応。売り出し価格が10万円台のカメラで被写体検出に対応しているのは非常に珍しい。様々な被写体に対応しているが、大別して「人物」「動物」「乗り物」の3種類に分けられている。詳しくは「AF編」で解説するが、カジュアルに撮影する際は非常に便利な機能である。
従来通り「被写体追従特性」「速度変化に対する追従性」をカスタマイズすることができ、被写体に合わせたプリセットが4種類用意されている。
AFフレーム選択の敏感度を調整することで、ジョイスティック操作時の移動速度を調節可能だ。個人的に初期設定がバランス良いと感じるが、気に入らなければ前後に調整することができる。と言っても細かい設定は出来ず、標準と比べて前後に1目盛り動かすことが出来るだけだ。
EOS Rより実装しているフォーカスガイドをEOS R7でも利用可能だ。詳しくはEOS Rで紹介した記事を参考にして欲しい。フォーカスガイド中も検出機能は有効であり、瞳を追いかけながらフォーカスガイドも利用できる。
初期設定で電子式フルタイムMFはオフとなっている。もしも一眼レフのような操作性のフルタイムマニュアルを使いたければオンにしておくといいだろう。
フルタイムMFの設定項目とは別に、ワンショットAFのMFに対応の有無を変更することができる。
一眼レフとは異なり、フォーカスリングの回転方向を切り替えることが可能だ。
RFレンズのMFリングはレスポンスを変更することができる。回転量に連動したほうが直感的な操作が可能となっているが、場合によってストロークが短いと感じるかもしれない。微調整が必要であれば回転速度に連動させたほうが良いだろう。
再生メニュー
再生メニューは従来通りだ。APS-C機として珍しいのはHEIF→JPEG変換があること。
通信メニュー
通信メニューは1ページ7項目のみ。スマートフォンとの連携は非常に簡単で、複数のカメラとペアリングした状態でも動作は安定している。使い勝手は良好だが、ニコンSnapbridgeのようにBluetooth接続で自動的に縮小画像を転送できる機能があると良かった。
セットアップメニュー
セットアップメニューは6ページ35項目で構成されている。大部分は従来通りだが、一部には変更点や追加機能があるので補足したい。
EOS R5までの節電機能に加えて「モニター低輝度表示」の時間を設定することが出来るようになった。設定時間は0秒から30秒まで5秒刻みで調整可能だ。
EOS R5などフルサイズ機と同じく、電源オフ時のシャッター閉幕機能に対応している。10万円台のカメラに実装される機能としては珍しく、特にAPS-Cミラーレスとしては初めてだと思われる。レンズ交換時にセンサーのごみ付着を予防できる素晴らしい機能だが、繊細なメカニカルシャッターを利用している点を忘れてはならない。
キヤノンとしては珍しくカメラ前面にAF/MFスイッチを搭載しているが、これを使わないと思ったらセットアップメニューから機能をオフにすることが出来る。出来ればオリンパスやパナソニックのような「Fnレバー」として使えるように変更出来ると良かった。
カスタム撮影モード3枠はカスタムモードで設定を随時変更できる「登録内容の自動更新」に対応している。電源オン/オフでカスタムモードの設定がリセットされるのを嫌うのであれば「更新する」に設定してみよう。
カスタマイズメニュー
カスタマイズメニューは5ページ23項目で構成されている。基本的には従来通りで、特筆すべき項目はない。カスタマイズに関する詳細は文字量は多くなるため、特集記事にて紹介したい。
マイメニュー
従来通りのマイメニューシステムを利用可能である。利用できる機能が増えているので、ボタンカスタマイズやクイックメニューで対応しきれない項目を積極的に登録しておきたい。登録したい設定項目を選ぶ際は大量のページから探す必要があるのは残念だ。できればオリンパス・OMデジタルのような操作性が好ましい。
カスタマイズ
文字数が多くなるので別ページに掲載。
連写・ドライブ
連写速度
EOS R7の連写速度(メカニカル・電子シャッター)はキヤノンの仕様表を参考にすると以下の通りだ。
メカ | 電子 | |
高速連続撮影+ | 15 | 30 |
高速連続撮影 | 8 | 15 |
低速連続撮影 | 3 | 3 |
APS-Cでは珍しいノンクロップの30fpsに対応した連続撮影速度に対応している。富士フイルムも最大30fpsに対応しているが、この際は1.25倍のクロップが必要だ。(ただし、最新X-H2Sは積層型CMOSセンサーで40fpsの連写速度となっている)
さらにメカニカルシャッターも15fpsに対応しているため、電子シャッターでは撮影できないようなシーン(高速移動・フラッシュ使用など)でも一眼レフのスポーツモデル並の高速連写が可能だ。
バッファ・バッファクリア
EOS R7のバッファは仕様表でRAW46枚(SD UHS-IIで59枚)となっている。実際に手持ちの環境でテストした結果が以下の通りである。
撮影条件
- EOS R7 電子シャッター
- RF50mm F1.8 STM(MFで固定)
- 絞り優先 F1.8 ISO 100 SS 1/1000秒
- ProGrade Digital COBALT SD UHS-II 64GB
- 5秒・10秒・15秒の連続撮影で撮影できた枚数をカウント
- RAW・C-RAW・RAW+JPEG出力でそれぞれテスト
RAW | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
15コマ秒 | 49 | 62 | 86 |
30コマ秒 | 52 | 73 | 87 |
RAW出力でのテストでは、5秒を待たずしてバッファが詰まり、その後はバッファが少し回復したら連続撮影が再開可能となる。1枚ごとにバッファの空き容量が復活するわけでは無いので、バッファが底をついてしまうと低間隔での撮影が難しくなる。
連写→バッファ尽きる(撮影不可)→バッファクリア中(撮影不可)→10枚程度のバッファ回復(撮影可能)→連写→バッファ尽きる…
このため、撮影するタイミングによっては全くシャッターが切れず、思ったよりも長い空白期間が発生してしまうので気を付けたい。無駄うちは避けたいところだが、連写速度や撮影枚数の制限など、他社にある便利機能が使えないのは残念だ。
C-RAW | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
15コマ秒 | 77 | 97 | 134 |
30コマ秒 | 73 | 109 | 134 |
圧縮によるファイルサイズ減で書き込み速度が向上する「C-RAW」を使うことで時間あたりの撮影枚数を増やすことが可能だ。ただし、この場合もバッファが詰まると長い空白期間が発生してしまう。
RAW+JPEG | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
30コマ秒 | 49 | 64 | 86 |
ついでにRAW+JPEG(L)でもテストしてみたが、JPEGが結果に及ぼす影響は極僅かだ。連続撮影枚数のためにJPEGを省略しても効果はほとんど期待できない。
Kingston RAW | 5秒 | 10秒 | 15秒 |
30コマ秒 | 49 | 71 | 86 |
同様のテストを低価格なSD UHS-IIカードであるKingston 32GB(購入時は2900円程度)で試してみたところ、結果はProGrade Digital COBALTとほぼ同じ枚数となった。コストパフォーマンスを求めるのであれば手ごろな価格のSD UHS-IIで十分である。
オートISO
従来機と同じくAUTO ISO感度設定の機能を利用可能だ。使用するISO感度設定の下限・上限を設定できるほか、オート時のISOレンジも限定可能。さらに、オートISO時にシャッター低速限界を設定することで手ぶれや被写体ブレを抑えつつ、絞り優先AEなどを利用することもできる。
低速限界設定は焦点距離に応じて変化する「自動設定」モードがあり、標準ではレンズに応じて「1/焦点距離」となるシャッタースピードが下限になる。これは前後3段階で調整可能で、1目盛り1段分の調整幅となる。つまり、50mmレンズ(APS-Cでは80mm相当)を装着すると標準で1/80秒が下限となり、1目盛り「速め」に調整すると、下限は1/160秒となる。
また、低速限界設定の手動設定も可能だ。調整幅は1/8000秒から1秒まで1段刻みで設定可能。被写体ぶれなどを抑えたい場合はこちらを活用するのがおススメだ。この場合、設定は小まめに切替たいところだが、残念ながらショートカットボタンは存在しない。マイメニューに登録して操作速度を改善することは出来る。
ローリングシャッター
CMOSセンサー全体を一度に露光出来るのが理想的だが、現在は発熱やノイズなど、様々な問題から実現に至っていない。現在はイメージセンサーの上ラインから下ラインまで段階的に読みだしていく「ローリングシャッター」方式が一般的だ。言葉で説明しても難しいので、下部の動画で分かりやすい。
動画のように、コンシューマー向けのデジタルカメラは大部分がローリングシャッター方式を採用したイメージセンサーを使用している。海外企業で「PIXII」のようなカメラがグローバルシャッターを採用しているが、国産ミラーレスでこの方式を採用しているカメラは存在しない。(キヤノンの業務用向けカムコーダーくらい)
実際にこのカメラのローリングシャッターの影響を調べた結果が以下の通りだ。
ご覧のように扇風機の羽根が不自然な描写となってしまっている。ローリングシャッター方式では、このように高速移動する被写体を撮影する際に問題が発生する。他のカメラではどのような影響があるのか?は以下の通り。
ご覧の通り、どのミラーレスカメラにしても影響は少なからず発生している。同じ3250万画素のEOS 90DやフルサイズのEOS Rと比べると良好で、X-S10やZ fcの12bit RAWと同程度だ。ただし、EOS R5や4/3型の最新センサーほどではない。Z fcと同程度であるところを見ると、スキャンレートは24ms程度だと思われる。
まとめ
良かったところ
ココがおすすめ
- 外部充電器が同梱
- 頑丈で防塵防滴仕様
- 大容量のLP-E6NHバッテリーに対応
- デュアルSD UHS-IIカードスロット
- 大きく快適なカメラグリップ
- カスタマイズの自由度が高い
- AFジョイスティック搭載
- 電源スイッチを右手で操作可能
- デジタル接続に対応するホットシュー
- センサー保護機能(シャッター閉幕・超音波除塵)
- 起動時間が速い
- 3250万画素の高解像センサー
- 良好なダイナミックレンジ
- C-RAWのデメリットが目立たない
- EOS R3を継承した最新AFシステム
- 被写体検出機能
- クイックメニューがカスタマイズ可能
- 最大30fpsの高速連写
EOS Rシリーズ初のAPS-Cミラーレスだ。APS-Cモデルとしては少し高めの価格設定だが、3倍以上高価なEOS R3のAFシステムを継承し、この価格帯では珍しい被写体検出にも対応している。バッファは物足りないが、30コマ秒の連写速度に対応した高速連続撮影も魅力的である。ローリングシャッターが気になる場合は15コマ秒のメカニカルシャッターを利用可能だ。
APS-Cでは珍しい3250万画素の高解像センサーを搭載しているのも魅力的なポイントだ。2400万画素よりもトリミング耐性に優れ、小さな被写体をクロップで拡大する際にも高解像を活かすことが出来る。高解像ながらダイナミックレンジは良好で、ISO感度ノイズもフレーム全体を使う分には良好だ。ただし、解像性能を活かせるのはISO1600-3200あたりまでと考えておこう。
効果的なボディ内手ぶれ補正を搭載しているのも強みと言えるだろう。APS-Cミラーレスのボディ内手ぶれ補正搭載モデルはまだまだ少ない。ISO感度を抑えたり、手持ちでスローシャッターを撮影することが出来る。特に広角~標準の単焦点レンズと相性が良い。
ボディは決して小型軽量とは言えないが、充実した物理コントロールを搭載している。CFexpressメモリーカードに対応していないのは残念だが、他は概ね満足のいくデザインだ。将来的にR7に似あうコンパクトなデジタル接続のマイクが登場すると嬉しい。
悪かったところ
ココに注意
- 縦位置グリップ非対応
- CFexpressメモリーカードに非対応
- APS-Cミラーレスとしては大きめ・重めのボディサイズ
- 電源スイッチが誤操作しやすい
- ファインダーの解像度がやや低め
- シャッター音が軽めで騒がしい
- 高ISO感度でノイズ多め・解像性能の低下
- 連写速度に対してバッファクリア速度が不十分
- ブラックアウトフリーではない
- 競合他社と同等のローリングシャッター
最初に気になったのはCFexpress非対応であること。30コマ秒の連写速度は素晴らしいが、フルで活用するとバッファは2秒も持たない。さらに10枚程度のバッファを回復するまでは撮影が出来なくなる。テンポよく高速連写を利用したい人にとって不満と感じるポイントとなる。SD UHS-IIに対応しているとはいえ、バッファが回復するまで待ち時間が発生するのは痛い。
売り出し価格が15万円以上であることを考えると、一昔前のミドルクラスのようなファインダーも少し残念 なポイントだ。ファインダー倍率は必要十分と感じるが、せめて369万ドットの解像度だと良かった。
メカニカルシャッターで15コマ秒の連写速度を備えているのは素晴らしいことだが、バッテリー残量やバッテリーの種類のよって影響を受けやすい点には注意が必要である。さらにシャッター音が少し安っぽく、少し大きな駆動音が発生する。必要に応じて電子シャッターと切り替えて使っていきたいところ。
総合評価
満足度は90点。
完璧なハイエンドモデルでは無いが、優れたアッパーミドルモデルだ。EOS 7Dシリーズほどプロ仕様の作りでは無いが、EOS MシステムやEOS 90Dなどから乗り換えるのであればおススメの1台に仕上がっている。EOS R7を購入する多くの人は望遠レンズを装着してAFや連写を活かした撮影を想定していると思う。被写体検出に対応するEOS R3譲りのAFは確かに良好で快適なシステムだ。
EOS R7 ボディ | |||
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併せて検討したいカメラ EOS R10
EOS R7と共に登場したAPS-Cミラーレス。基本的にはEOS R7と同じようなシステムのカメラだが、R7のような高解像センサーやボディ内手ぶれ補正、いくつかの撮影機能を搭載していない。防塵防滴にも非対応である。ただし、基本的に同程度のAF性能を備え、ジョイスティックやボタンカスタマイズなどは遜色ない。価格が10万円ちょっとと手ごろで、EOS R7との差額で望遠ズームなどを購入できるのは魅力的だ。
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購入早見表
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作例
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