このページではVenus Opticsの交換レンズ「LAOWA 50mm F2.8 2X ULTRAMACRO APO」のレビューを掲載しています。
まえがき
LAOWA 50mm F2.8 2X ULTRAMACRO APOのおさらい
レンズ概要
- ?2020-10-26:発売
- 商品ページ
- データベース
- 管理人のFlickrアルバム
- レンズ構成:10群14枚
- 開放絞り:F2.8
- 最小絞り:F22
- 絞り羽根:7枚
- 最短撮影距離:13.5cm
- 最大撮影倍率:2倍
- フィルター径:φ49mm
- レンズサイズ:φ53.5×79mm
- 重量:約240g
- インナーフォーカス
- 金属外装
- 自動アシスト・自動絞り・レンズデータ記録に対応
- アポクロマート設計
マイクロフォーサーズ用の望遠マクロレンズです。フルサイズで言うところの「100mmマクロ」に相当します。
このレンズの特徴はフォーサーズセンサーで「2倍」の撮影倍率を実現しており、フルサイズ判換算で4倍に相当するクローズアップ撮影が可能となっています。マイクロフォーサーズ用レンズとしては極めて珍しい撮影倍率のレンズであり、本当に小さな被写体を撮影している人にとって面白い選択肢となるはず。
LAOWAシリーズを手掛けるVenus Optics社は2020年2月にマイクロフォーサーズシステムに賛同しており、正式にマウント情報を得ているものと思われます。このため、マイクロフォーサーズ用レンズとしては初めて電子接点を搭載。自動絞りや自動MFアシスト、レンズデータの記録に対応しています。フォーカスはマニュアル限定ですが、絞っても開放でのフォーカシングが可能となるのは便利。
レンズは10群14枚(EDレンズ3枚含む)構成で、インナーフォーカス方式を採用しています。2倍マクロでインナーフォーカスを実現しているのは凄いですね。レンズ全長が伸びないので、マクロ撮影状態で持ち運びやすいのはGood。
価格のチェック
国内での価格設定はおよそ5万円前後。純正の中望遠マクロレンズと比べてアドバンテージのある値付けではありませんが、他社にはない2倍マクロに興味があるなら他に選択肢がありません。そう考えると、手ごろな価格設定かなと感じます。
LAOWA 50mm F2.8 2X ULTRAMACRO APOレビュー
Index
外観・操作性
箱・付属品
LAOWAらしい白を基調とした小さな箱にレンズが入っています。見えているのは外カバーで、内箱がもう一つ存在します。
箱にはモデルネームの他、レンズ構成が特殊レンズの配置を含めて記載。
- レンズ本体
- 金属製レンズフード
- レンズキャップ前後
- 説明書
- 保証書
- ビニール製ソフトケース
国内正規品のため日本語の説明書が付属しています。
外観
外装はほぼ全て金属パーツの頑丈な作り。この点でオリンパス純正「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」よりも高級感のあるレンズに仕上がっています。
ロゴ・ピント距離などの表示は全てプリントです。刻印では無いので、長期間の使用ですり減ってくる可能性あり。
ハンズオン
フルサイズで言うところの100mmマクロレンズですが、マイクロフォーサーズでは非常にコンパクトなレンズに仕上がっています。全長はオリンパスよりも少し短いですが、ほぼ同じサイズと感じます。
金属鏡筒のため、オリンパス60mmよりも少し重くなっています。とは言え。重量は300g以下であり、小型ボディに装着しても抵抗感の無いサイズ・重量と言えるでしょう。
前玉・後玉
フィルター径は49mm。マイクロフォーサーズでは多いかと思いきや、実はかなり少ない。主流は「46mm」もしくは「52mm」なので、ステップアップリング経由で52mmを揃えるのがおススメ。
望遠マクロレンズですが、2倍マクロ利用時はワーキングディスタンスがほとんどないのでレンズが被写体と接触しやすい。プロテクトフィルターを装着しておくと事故が少なくなると思います。
インナーフォーカス式のためレンズ全長は変化しません。前玉が1枚固定されており、その奥で複数枚のフォーカスレンズが動いている模様。2倍マクロ時にフォーカスレンズが最も前方へ移動し、無限遠時に後方へ移動します。
後玉もマウント面で固定されています。内部が密閉されているのでフォーカシングによる空気の出入りはありません。防塵防滴仕様のレンズではありませんが、小ゴミの混入はすくないはず。
Venus Optics社は2020年2月にマイクロフォーサーズシステムに賛同しており、マウント情報を得られたのか電子接点を搭載して正確なレンズ情報をカメラ側へ伝達可能となっています。
さらに電子制御の絞りを搭載しているため、絞りリングナシで任意の絞り値に設定可能。ライブビューにて絞り開放のフォーカシングが可能となったのは大きい(実絞りの場合、開放でMF操作後にピント合わせをしないと山を掴みにくかった)。
フォーカスリング
幅35mmの金属製フォーカスリング。電子接点付きのミラーレス用レンズでは珍しい機械式フォーカスリングを採用しており、抵抗量と滑らかさはほぼ完璧。
フォーカスリングの回転角は無限遠から2倍マクロまで約180度。そのうち約100度ほどが2倍マクロから30cmまでのピント距離で使用しています。マクロ領域での操作性は非常に良好ですが、1mから無限遠の回転角が非常に小さく微調整が難しい。
電子接点を搭載しており、フォーカスリングを操作するとカメラ側で自動的にMFアシストが起動します。これは非常に便利で、特にパナソニック製カメラではPIP表示の拡大が利用できるので快適にMFマクロを楽しめます。ただし、距離エンコーダーは非搭載らしく、LUMIXのライブビューに表示されるピント距離表示は固定され動きません。
レンズフード
バヨネットタイプの金属製レンズフードが付属しています。クリック感のあるロック機構はありませんが、それなりに抵抗量があるため、誤って脱落する可能性は低い。
逆さ付け可能ですが、フォーカスリングがまるっと隠れてしまうので使用時は素直に外した方が良いかも。
装着例
細長いレンズなので、サイズの大きなボディに装着すると少し不格好に見えます。最小クラスのGM1に装着しても問題の無いサイズ感はGood。
不具合
個体の問題か、ファームウェアの問題か、今のところ明らかとなっていませんがいくつか不具合に遭遇しました。
- ボディ内手ぶれ補正が動作しない
- 特定の光環境で動画モード時に絞り羽根が異常動作
- ファインダーを覗くとカメラがフリーズする
などなど。純正レンズを装着すると全く問題なので、おそらくレンズ側に問題があるのでしょう。現在、レンズを返品して別の個体で発現しないか購入店と交渉中。
更新
どうやら初期不良だった模様。現在、交換品を調達中
さらに更新
交換品が届くものの、やはり直らず…。
AF・MF
フォーカススピード
MFレンズのため無評価。あえて言えば、回転角が比較的小さいので素早いMFが可能です。
ブリージング
マクロ撮影時と無限遠時で画角が大きく変化します。動画撮影で使おうと考えている場合は気を付けたほうがいいでしょう。
精度
無限遠側の回転角が小さく、特に無限遠に近い領域でピントの山を掴みにくくなっています。
解像力チャート
撮影環境
テスト環境
- カメラボディ:OM-D E-M1 Mark III
- 交換レンズ:LAOWA 50mm F2.8 2X ULTRAMACRO APO
- パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)」
- オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
- 屋内で照明環境が一定
- 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
- E-M1 Mark IIIのRAWファイルを使用
- ISO 200 固定
- Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
・シャープネス オフ
・ノイズリダクション オフ
・色収差補正オフ - 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
(像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています) - 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)
補足
今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。
テスト結果
テスト結果
中央
抜群のパフォーマンスではないものの、絞り開放から非常に良好な性能です。パフォーマンスのピークは絞り開放で、絞るといくらか性能が低下します。フォーカスシフトの可能性も疑いましたが、その兆候は見られません。やや不思議な傾向。
性能は絞り値全域である程度一貫しており、回折の影響はいくらかあるものの、最小絞り「F22」以外は快適に利用できると思います。
ハイレゾショットの伸びしろは思っていたほど高く無く、純正PROレンズのような伸び方とはなりません。
周辺
中央と比べるといくらか性能が低下しますが、基本的には絞り開放から良好です。性能は絞り値全域で非常に一貫しており、F11付近まではピークの性能を維持しています。絞り値による変化が少ないものの、絞って使う機会の多いマクロレンズとしては適した傾向と言えそうです。
ハイレゾショットの恩恵はほとんどありません。あえて三脚を使ったハイレゾモードにこだわる必要性は無し。F8まで絞るといくらか伸びるため、ハイレゾショットを使いたいのであればF8推奨。
四隅
基本的に性能は周辺部と同様。まずまず一貫した解像性能であり、マクロレンズとしては評価できる性能だと思います。絞り値の傾向も周辺部とほぼ同じ。ハイレゾショットでピークの性能を得たい場合はF8まで絞ると良いでしょう。
全体的な評価
マクロレンズとしては評価できるフレーム全域・絞り値全域の均質性を備えています。中国製と侮るべからず。
手ぶれ補正の動作が怪しいため、ハイレゾショットのテスト結果は本来の実力を発揮していないのかもしれません。
数値確認
中央 | 周辺部 | 四隅 | |
---|---|---|---|
F2.8 | 3411 | 2758 | 2569 |
F4.0 | 2960 | 2652 | 2545 |
F5.6 | 2769 | 2572 | 2543 |
F8.0 | 3042 | 2998 | 2758 |
F11 | 2824 | 2785 | 2758 |
F16 | 2523 | 2519 | 2466 |
F22 | 1893 | 1846 | 1880 |
M.ZUIKO 60mm F2.8 Macroとの比較
似たような価格設定・焦点距離・F値のオリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」と比べて解像性能はほぼ互角。中央のピークや四隅の安定感はオリンパス有利ですが、実写で大きな差は感じないはず。
オリンパスはAF対応、防塵防滴、良好な逆光耐性を備えているので、無難な選択肢と言えるでしょう。もしも等倍以上のマクロ撮影がしたいのであればLAOWAをチョイス。
実写確認
絞り開放から四隅まで安定したマクロレンズらしい画質です。キレッキレと言うにはあと一息足りない気もしますが、画像処理次第でどうとでもなる程度の甘さです。やはりF2.8からF16まで安定した画質に見え、F22のみソフトな描写。
遠景解像力
テスト環境
ポイント
- 2020-10-27 撮影
- 晴天・微風
- Leofoto LS-365C
- Leofoto G4
- OM-D E-M1 Mark III
- RAW
- シャープネス「0」でLightroom Classic CCにて現像
テスト結果
中央
絞り開放から画質のピーク。絞ると極僅かにコントラストが改善しているようにも見えますが、僅差。F4からF8はほぼ同じ水準で利用でき、F11からF16で回折の影響による低下が見られ、F22で非常にソフトな描写となります。全体的に見て、F2.8からF16までは許容範囲内に収まっている印象。
周辺
中央と同じく絞り開放からピークの画質ですが、絞ると僅かに改善します。中央と見比べて遜色のない結果であり、均質性の高い描写と言うことが出来ます。
四隅
マクロレンズらしく四隅まで一貫したシャープネスを実現しています。絞り開放から非常に良好で、絞っても特に大きな改善は見られません。中央・周辺との画質差も少なく、快適に利用できるはず。
マクロ解像力
撮影倍率
フルサイズで言うところの2倍、4倍までクローズアップ可能です。接写時の画質低下はほとんど無く、諸収差も良く抑えられています。フレーム全域を被写界深度内に収めるのは難しいですが、パンフォーカスを狙っても十分活用できる画質です。
実効F値
大部分のマクロレンズと同じく、撮影距離が短くなるにつれて実効F値が大きくなります。等倍で約1段、2倍で約2段ほど暗くなるため、シャッタースピードやISO感度に影響しやすいので注意が必要。
倍率色収差
絞り値全域で良好に補正されているので後処理の必要は低いです。
軸上色収差
絞り開放からほぼ完璧に補正されており、色収差を心配する必要は全くありません。フォーカスシフトの兆候も見られず、開放でのマニュアルフォーカスで問題無いはず。
前後ボケ
後ボケはやや騒がしく、比較して前ボケが少し滑らかな描写となっています。一般的なボケ描写で重要となるのは後ボケで、ココが少し騒がしいのは残念。
玉ボケ
F2.8のレンズとしては口径食がやや強めですが、滑らかで綺麗な描写。ただし、絞るとボケが急速に角ばり、不自然な描写となってしまいます。絞っても内側は比較的良好ですが、全体的な見栄えは好みが分かれるかも。
歪曲収差
マクロレンズらしく、歪曲収差はほぼ完璧に補正されています。後処理の必要は全くありません。
周辺減光
絞り開放で僅かに周辺減光があるものの、補正でなんとでもなる程度の減光しかありません。F4まで絞ると光学的に解消可能。通常、無限遠側で減光が強くなるものの、本レンズでは接写時に減光が強くなる傾向があります。
コマ収差
完璧ではありませんが、四隅の端を除いて絞り開放から全く問題ありません。僅かに残存する収差もF5.6~F8で解消します。
逆光耐性・光条
これはこれで面白いですが、一言で言えば悪いです。強い光源がフレームに入ると、全体的な画質を損なうフレアが発生します。ここまで見事にフレアが発生すると、逆にこれを活かしたくなるところ。「主人公のビームライフで撃たれる雑魚キャラの視点」ではこんな光景なのかもしれないな、という感じの派手さがあります。
マクロ撮影時のフラッシュが問題となる可能性あり。
特にF16-F22まで絞ると訳分からなくなるフレア描写となります。
総評
肯定的見解
ココがポイント
- 小型軽量
- 金属製の頑丈な鏡筒・フード
- 快適に調整されたフォーカスリング
- インナーフォーカス
- 電子接点によるレンズ情報を取得できる
- 絞り開放からフレーム全体で非常に良好な解像性能
- マクロから遠景までピント距離で変化しない安定した性能
- 2倍マクロ
- 倍率色収差補正が良好
- 軸上色収差補正が良好
- 前ボケが滑らか
- 絞り開放の玉ボケ
- 歪曲収差を無視できる
- 周辺減光がわずか
- コマ収差がわずか
批判的見解
ココに注意
- フォーカスリングの回転角が小さい
- マニュアルフォーカス限定
- 防塵防滴非対応
- 距離エンコーダー非対応
- カメラで動作不良が発生する
- 後ボケが騒がしい
- 絞ると玉ボケが急速に角ばる
- 悲惨な逆光耐性
総合評価
マクロに強いマイクロフォーサーズレンズは数あれど、2倍マクロに対応したレンズはそう多くありません。このレンズはピント距離全域で一貫した解像性能を発揮し、尚且つ等倍・2倍のマクロ撮影が可能な数少ないレンズ。頑丈な金属鏡筒に加え、電子接点によるレンズ情報の記録や自動絞りに対応しているのも強み。これにより絞り開放付近を使ったピント合わせが簡単となり、撮影時のみ小絞りを利用することとなります。フォーカス操作で自動アシストが有効となるのもGood。特にPIP表示が使えるLUMIXで便利と感じます。
いくつか問題点は残されており、距離エンコーダーが正常に動作していないのは注意したいポイント。おそらく、これが原因でボディ内手ぶれ補正が効果的に動作していないのかもしれません。さらに一部ボディとの組み合わせで動作不良も発生しており、ファームウェアアップデートで対応できるのかやや不安が残ります。
光学的な問題はほぼありませんが、あえて言えば逆光耐性が悪く、場合によってコントラストが低下したり、フレアで全体的な見栄えに強く影響します。マクロフラッシュを利用する際も気を付けたいポイント。
2倍マクロが必要無ければ、AFや防塵防滴仕様で安定した動作が期待できるオリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」がおススメ。ただ、等倍マクロでは撮れない世界が間違いなく存在します。欠点を理解して使うのであれば、LAOWAも面白い選択肢と言えるでしょう。
手持ちの個体で動作不良が目立ったのは残念でしたが、マクロレンズとしての使い勝手は良いと感じました。
購入早見表
作例
関連レンズ
- M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
- LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.
- 7Artisans 60mmF2.8 Macro
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