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NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3 交換レンズレビュー完全版

このページではニコンの交換レンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」の操作性や解像性能、各収差の状態などに関する徹底レビューを掲載しています。小型軽量・キットレンズながらニコンクオリティの優れたズームレンズ。

NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3のおさらい

レンズ概要

  • 2020-08-28 発売
  • 商品ページ
  • データベース
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  • レンズ構成:10群11枚(EDレンズ2枚、非球面レンズ3枚)
  • 開放絞り:f/4(焦点距離24mm)、f/6.3(焦点距離50mm)
  • 最小絞り:f/22(焦点距離24mm)、f/36(焦点距離50mm)
  • 絞り羽根:7枚(円形絞り)
  • 最短撮影距離:撮像面から0.35m(ズーム全域)
  • 最大撮影倍率:0.17倍(焦点距離50mm)
  • フィルター径:52mm(P=0.75mm)
  • レンズサイズ:約73.5mm×51mm
  • 重量:約195g
  • AF:ステッピングモーター駆動
  • 防塵防滴:防塵・防滴に配慮した設計

「Z 5」と共に発表された非Sシリーズのコンパクトな標準ズームレンズ。「24-50mm」とズームレンジを狭くしたうえで、開放F値を「F4-6.3」と暗く、さらに「沈胴機構」を採用することで非常にコンパクトで軽量なフルサイズ用レンズに仕上がっています。同時期にソニーが「FE 28-60mm F4-5.6」を投入していますが、ニコンは24mmの広い画角をカバーしているのが特徴。どちらのレンズも小型軽量ですが、最大撮影倍率が小さく、クローズアップには不向きなレンズである点に注意が必要。
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」がZ 6のキットレンズばらし品として中古良品が安く出回っているため要検討。2020年9月現在で中古相場はほぼ変わりません。ズームレンジ全域で開放F値がF4固定、しっかりとした防塵防滴、逆光耐性などを考慮すると24-70mm F4 Sも個人的にはおススメです。24-50mmと同じく沈胴機構を採用しているため、レンズサイズに驚くほどの差はありません。
とは言うものの、このレンズの収納時におけるコンパクト差には敵いません。究極的にコンパクトな標準ズームレンズを探している場合、24-50mm F4-6.3を差し置いて他に候補は無し。光学設計にも妥協は見られず、使用している特殊レンズは24-70mm F4と遜色ありません。非球面レンズしか使用していないソニーよりも贅沢な設計となっています。この小型軽量な標準ズームがどれほどの光学性能を備えているのかじっくりと見ていきましょう。

NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3徹底レビュー

外観・操作性

箱・付属品

今回はZ 5のキットレンズをばらしたと思われる新品未使用品を中古で購入したので箱の紹介は出来ません。付属品はレンズキャンプのみ。レンズフードは別売りとなるので注意。

外観

全体的にプラスチックを多用した作りとなっています。過度に安っぽい質感ではありませんが、他のZレンズと比べるといくらか見劣りします。プラスチッキーなレンズですが、剛性はしっかりとしており、耐久性に不安はそれほど感じていません。

全体的なデザインは「NIKKOR Z 24-70mm f/4 S」とよく似ています。全長は24-50mmのほうが遥かに短く、収納性が優れています。ただし、レンズ直径はほぼ同じ。コンパクトなレンズですが、若干太めのレンズと感じます。

ハンズオン

全長51mm・重量195g。フルサイズ用の標準ズームレンズとしては非常にコンパクトで軽量です。30mm・40mm単焦点レンズのようなサイズ感。ジャケットのポケットやカメラバッグの片隅に簡単に詰め込めるコンパクトサイズは、このレンズにおける一番の強みと言っても過言ではないでしょう。直径はやや大きめですが、大口径Zマウントを最大限活かすために太めの設計となったのかもしれませんね。
このレンズはリング2つ以外にコントロールポイントがありません。AF/MFの切替はボディ側で操作する必要があります。

前玉・後玉

52mmのフィルター径を採用。フルサイズ用NIKKORレンズではあまり使わないフィルター径のため、持ち合わせがないという人は多いはず。手持ちの在庫を確認して、レンズフードと一緒に注文しておくのがおススメ。
比較的フラットな前玉のためメンテナンスは簡単。ただし、フッ素コーティング処理されていないので、汚れが付着するような環境ではプロテクトフィルターを装着しておくと良いでしょう。
前面にレンズ名が印字され、フィルターへの反射を予防するためか色はグレーを使用しています。

レンズマウントはプラスチック製。フルサイズ用NIKKOR Zレンズとしては初のプラスチックマウントととなります。耐久性が気になるところですが、他社のプラスチックマウントよりもいくらか剛性がしっかりとしているように見えます。個人的には不安を感じない作り。

マウント周囲には防塵防滴に配慮したようなシーリングが施されています。ただし、ゴム製シールでは無く、プラスチックパーツが少し出っ張っているような形状です。これでマウントを覆うことで防塵防滴性を高めているのかなと。いわゆる高精度な組み合わせで浸水を防いでいるのかなと。過信は禁物に見えます。

後玉はマウント付近に固定されており、ズーム操作により移動することはありません。このため、カメラ側ーレンズマウント内部は完全に密閉された状態となり、センサー面の防塵防滴性に一役買っているように見えます。個人的には評価できる設計だと思っています。防塵防滴に定評のあるオリンパスも、このようにレンズ最後尾のレンズを固定して内部を密閉する傾向があります。

フォーカスリング

約10mmの電子式フォーカスリングは滑らかに動作します。抵抗量は程よく、誤操作しにくく、使用時に使い勝手が良い絶妙な調整。ボディ側のカスタマイズでコントロールリングとして使うことも出来ます。
リングの回転角は回転速度に依存し、素早く回すと90度で最短撮影距離から無限遠まで移動します。ゆっくり回転させると360度以上の回転角を確保することが可能。

ズームリング

約20mm幅のズームリングを搭載。ゴム製グリップを備えているので、思っていたより使いやすい。沈胴機構を含めると、可動範囲は約90度ほど。そのうち1/3を沈胴機構のオンオフで占めているため残り60度ほどで焦点距離を操作する必要があります。
沈胴機構のロック解除・ズームリングの操作はどちらも良好。

格納状態から24mmに設定することで内筒が繰り出すものの、その後は各焦点距離で顕著な違いはありません。50mm伸ばしっぱなしでも特に気にならないレベル。

内筒ももちろんプラスチック製。外装と比べると少し安っぽく感じます。ガタツキは小さいものの、S-Lineと比べると少し心もとない感じ。

レンズフード

レンズフードは別売りです。キットレンズとは言え、安い値付けでは無く、数千円のフードくらい初期装備で付けてくれても…。
形状は24mmに最適化されており、それ以外の焦点距離で遮光性はあまり期待できません。遮光性と言うより前玉の保護と考えたほうが良いかもしれませんね。逆さ付け可能で、ズームリング・フォーカスリングはどちらもそのまま操作できます。

装着例

小型軽量なZシリーズとの相性は良好。一眼レフと比べると遥かに良好な携帯性のフルサイズシステムを利用できます。このままでも十分良好な携帯性と言えますが、さらにファインダーやグリップを省略したボディが登場すると、24-50mmの存在価値が高まりそう。

AF

フォーカス駆動にはステッピングモーター駆動を使用。静かでまずまず高速なフォーカス速度を実現しています。フォーカス速度は大部分の撮影で十分と思われるレスポンスがあり、被写体をしっかりとロックします。望遠側でも十分良好。AF-C時にいくらか出遅れる傾向が見られたものの、これはボディ側の性能に左右されるように見えます。
フォーカスブリージングは皆無ではありませんが、ほぼ無視できる程度に良く抑えています。

最短撮影距離・撮影倍率

最短撮影距離はズーム全域で0.35m…と仕様には記載されていますが、実際に試してみるといくらか異なります。(望遠端に向かって少し長くなる)
最大撮影倍率は広角24mmが最も小さく、望遠端50mmに向かって徐々に大きくなります。最大でも0.17倍しかないため、小さな被写体のクローズアップには不向き。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:Z 7
  • 交換レンズ:NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • Z 7のRAWファイルを使用
  • ISO 100 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

24mm

この解像力チャートで測定できる限界値がおよそ「4800」。高解像なマクロレンズや単焦点レンズで4500?4800の数値を出すことがあります。このレンズは単焦点レンズほどの解像性能を発揮する訳ではありあm千が、絞り開放から良像と呼べる数値(2500?3000)を遥かに上回る結果を出しています。
特に四隅までのパフォーマンスが均質であり、小型軽量な広角24mmの結果としては素晴らしいポイント。絞っても性能はほぼ変わりませんが、ピークは概ねF5.6からF11にかけて。

中央 周辺部 四隅
F4.0 3782 3707 3406
F5.6 3757 4212 3950
F8 3795 3794 4044
F11 3833 3928 3638
F16 3701 3361 3323
F22 3239 2864 3561
28mm

おそらくこのレンズにおけるスウィートスポットと呼べる焦点距離。絞り開放からフレーム全域で「4000」前後となる非常に良好な性能を発揮。この時点でパフォーマンスはピークであり、絞っても改善することはありません。性能はフレーム全域で均質であり、ケチのつけようが無いテスト結果です。

中央 周辺部 四隅
F4.5 4208 4054 3928
F5.6 4189 4227 4038
F8 3962 3938 4038
F11 4035 3842 3885
F16 3866 3514 3436
F22 3122 2956 2770
35mm

中央から周辺部は28mmと同様、非常に良好な性能を発揮。特に中央は解像力チャートの解像限界に近い数値に到達しています。
比較して四隅はやや出遅れ、F8まで絞ると周辺部に近い水準まで向上します。とは言え、中央から周辺部が非常に良好と言うだけで、四隅も良好な結果に違いありません。

中央 周辺部 四隅
F5.0 3898 4062 3342
F5.6 4306 4194 3387
F8 4662 4250 3902
F11 4306 4025 3755
F16 3773 3509 3295
F22 3167 2859 2785
40mm

35mmと同じく中央・周辺部は非常に良好な結果を維持。標準ズームと言えば、中間域から望遠域にかけてパフォーマンスが低下するものですが、このレンズでそのような結果は見られません。
敢えて言えば四隅のパフォーマンスが低下しているものの、それでも絞り開放から良好な結果と言うことが出来ます。やはりF8まで絞ると大きく改善し、フレーム全域で均質な性能を得ることが出来ます。

中央 周辺部 四隅
F5.3 3881 4038 3264
F5.6 3977 4109 3275
F8 4227 4245 3958
F11 3977 4031 3919
F16 3861 3506 3399
F22 3206 2994 2802
50mm

35?40mmと比べると僅かに性能が低下するものの、恐らく視認できないようなパフォーマンスの低下に抑えられています。標準ズームの望遠端としては立派な性能と言えるでしょう。光学倍率を低く抑えた結果なのかもしれません。拍手喝采。
50mmの四隅はこのレンズで最もパフォーマンスが低下するポイント。とは言ったものの絞り開放から「3000」を超える立派な数値であり、特に弱点と呼べるほどの性能低下ではありません。十分良好な画質です。

中央 周辺部 四隅
F6.3 3739 3890 3065
F8 3890 3890 3164
F11 3984 3890 3304
F16 3800 3389 3172
F22 3145 2983 2917
F32 2359 2302 2183

NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sとの比較

24mm

中央解像は24-70mm F4に分があるものの、周辺部や四隅までの均質性は24-50mm F4-6.3のほうが良好。ただし、これはあくまでの近距離での解像力テストの結果であり、無限遠を使った場合は異なる可能性あり。そのあたりは後日チェック予定。
今回のテストでは24-50mmの四隅が非常に安定しており、24-70mm F4との差は明らか。広角の解像性能を重視するのであれば、24-50mmも検討する価値は大いにあると言えるでしょう。

28mm

24mmと同じく四隅までの安定感が段違い。新品価格が遥かに高いS-Lineを凌ぐ性能(周辺・四隅)とは凄いですねえ。

35mm

中央から周辺部のパフォーマンスはほぼ互角。ただし、四隅の性能は依然として24-50mmに分があります。

50mm

パフォーマンスが逆転する焦点距離。24-70mmの50mmは中央解像が突出しており、さらに周辺・四隅も非常に良好な性能を維持しています。
24-50mmも中央と周辺部は非常に良好ですが、四隅は絞っても改善せず、キレッキレの解像感と言うにはあと一息及ばない印象。

遠景解像力

テスト環境

撮影環境

  • Nikon Z 7
  • LEOFOTO LS-365C
  • LEOFOTO G4
  • 電子先幕シャッター
  • ISO 64固定
  • 焦点距離ごとに絞り値を変えながら撮影
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ーシャープネス0
    ーカラープロファイル「標準V2」

テスト結果

24mm

解像力チャートテストの結果通り。フレーム全域で絞り開放からほぼピークの性能を発揮しています。全体的に画質差が少なく、フレーム全域で一貫した描写性能と感じます。完璧な均質性とは言えませんが、中央から四隅にかけての画質低下はとても小さく抑えられています。コンパクトな標準ズームの広角端24mmで四隅まで良好なパフォーマンスを得らるのは凄い。
絞っても画質に大きな影響がないため、被写界深度が問題なければF4常用でもOK。ベストを尽くすのであればF8。
パフォーマンスはF8までピークが続き、F11で少し低下、F16?F22にかけて回折の強い影響を受けます。

28mm

基本的には24mmと同様。中央は絞り開放からシャープで、絞り値による画質改善はありません。周辺部は中央と比べて少し劣りますが、特に大きな問題は無し。F8~F11まで絞ると細部の甘さが抜けてシャープさが少し増します。
四隅は倍率色収差の影響がいくらか確認できるものの、解像性能は絞り開放から立派。絞っても色収差はあまり改善しませんが、F8~F11で僅かな甘さが抜けてマイクロコントラストが改善します。
全体的にF16~F22で回折の影響を強く受けます。特に最小絞りであるF25ではディテールがかなりソフトとなるので避けるのがおススメ。

35mm

中央は相変わらず絞り開放からトップスピード。絞っても特に画質改善は期待できません。周辺部もほぼ同じ傾向。四隅は色収差の影響が僅かにあるものの、非常に良好な性能に違いありません。F8~F11で少し安定するようにも見えますが、大した差では無いので気にする必要無し。

40mm

ズームレンジ後半でも中央解像は絞り開放からトップスピードを維持。非常に頼もしい解像性能です。周辺部や四隅も同じ。

50mm

望遠端50mmでも中央解像は全く問題無し。気兼ねなくF6.3を利用できます。周辺領域もパフォーマンスの低下は見られず。
望遠端の四隅も良好な性能を維持。全く問題ありません。

軸上色収差

軸上色収差とは主にピント面の前後で発生する色ずれのことを指しています。ボケに緑や紫の色づきがあれば主な原因が軸上色収差のはず。特に大口径レンズで目立つ収差ですが、ズームレンズでもいくらか目に付く場合があります。
このレンズで特に大きな問題はありませんが、望遠端でいくらか色収差が強くなっているように見えます。高コントラストな領域、例えば逆光時におけるハイライトとシャドウの境目など、で色ずれが目立つ場合があるかもしれません。
同時にいくらかフォーカスシフトの兆候があり、絞るとピントの山が奥側へ移動しているのが分かります。接写時だけの問題であり、特に心配する必要はないと思います。

24mm

28mm

35mm

40mm

50mm

倍率色収差

倍率色収差とは、フレーム四隅に向かって目立ちやすい色ずれを指しています。

このレンズは広角端24mmから望遠端50mmまで特に大きな問題はありません。四隅まで綺麗に補正されており、細部のコントラストは良好な状態を維持しています。このようにコンパクトな標準ズームレンズでこれほど綺麗な倍率色収差補正の状態であるのには驚きました。少なくともキヤノンの廉価モデル用キットレンズ「RF24-105mm F4-7.1 IS STM」よりはずっと良好です。
とは言え、実写で特に厳しいハイコントラストな状況ではいくらか色収差の発生を確認しました。

前後ボケ

明らかに後ボケ重視の調整。ズームレンズとしては非常に綺麗な後ボケを得られる反面、前ボケはかなり騒がしい描写。とは言え、このようなズームレンズで十分な前ボケを得るのは難しく、正しい取捨選択のように見えます。

玉ボケ

「24-50mm F4-6.3」というスペック、そして高くない接写性能の性質上、ボケはあまり大きくなりません。全体的に口径食の影響はそこまで強くありませんが、非球面レンズの影響で玉ボケの内側に目立つムラがあります。正直綺麗な描写とは程遠いものの、幸いにもボケ量が小さく目立ちません。

歪曲収差

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

このレンズはボディ内で歪曲収差が自動補正され、それを手動で解除することは出来ません。LightroomのようなRAW現像ソフトでも強制的に適用されています。そこで今回はレンズ補正が適用されないRawTherapyを使って現像した作例を掲載しています。

ご覧のように、24mmでは少し目に付く樽型、28mmで極僅かな樽型、35mmで糸巻き型に切り替わり、40mm?50mmで徐々に糸巻き型の歪曲収差が強くなります。
決して光学的に完璧な補正状態ではありませんが、個人的にはもう少しデジタル依存のレンズかと思っていました。(より極端な歪曲収差が発生すると予想していた)
ミラーレス用の標準ズームレンズとしては十分良好な光学補正が施されており、歪曲収差のデジタル補正は最小限のように見えます。もちろん被写体によっては歪曲が目立つ場合もありますが、個人的には評価できるポイント。

周辺減光

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。

 

コンパクトなズームレンズらしく、周辺減光は目立つ傾向があります。特に広角側は影響が強く、絞っても完璧には解消しません。35?50mmでは周辺減光がいくらか軽減するものの、光学的に補正するためには1?2段ほど絞る必要があります。

24mm

28mm

35mm

40mm

50mm

コマ収差

コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。

24mmでのみ、四隅に僅かな痕跡を見ることが出来ます。下の作例を見ると分かるように、特に目立つ点像の変化では無いので大きな問題では無いでしょう。28?50mmでは絞り開放を使っても全く問題ありません。

逆光耐性・光条

S-Lineほど強力な逆光耐性ではありませんが、キットレンズ用の廉価ズームとしては良好に見えます。致命的なコントラスト低下は無いものの、薄いゴーストがいくらか発生するため、RAW現像でシャドウを持ち上げると目立つ可能があります。
絞り羽根が7枚のため、絞ると14本の光条が発生します。先細りしない、分散タイプの光条であり、シャープな描写はあまり期待できません。

総評:ニコンクオリティの小型軽量ズームレンズ

ココがおすすめ

  • 小型軽量・沈胴機構の24mm始まり標準ズーム
  • フルサイズ用標準ズームとしては低価格
  • マウント面で固定された後玉(気密性の向上)
  • ズーム操作によるレンズ全長に大きな変化なし
  • 静かで快適なAF・無視できる程度のブリージング
  • ズームレンジ全域で非常に良好な中央・周辺解像性能
  • 広角?標準域で非常に良好な四隅解像性能(絞ると40?50mmも良好)
  • 無視できる程度の軸上色収差
  • 綺麗に補正されている倍率色収差
  • 非常に滑らかな後ボケ
  • このクラスとしてはまずまず良好な歪曲収差補正
  • 良好なコマ収差補正
  • 良好な逆光耐性

光学性能はこのクラスのズームレンズとしては「間違いなく良好」と言える水準です。期待していたよりずっと良いテスト結果となりました。ズームレンジ全域で安定した解像性能を発揮し、特に中央から像高5割までは50mmまでパフォーマンスを維持しているのが凄い。四隅も絞れば中央に性能が追い付くほどには良好です。
驚いたのが倍率色収差や歪曲収差が光学的に補正されていること。ミラーレス用の標準ズームレンズと言えば、補正しやすい色収差や歪曲はデジタル補正に任せて、他の収差を積極的に補正する傾向があります。このため、RAW現像時に酷い歪曲や色ずれが目立つのですよね…。それがこのレンズでは皆無。コマ収差まで良好に補正している光学設計には拍手喝采。
ボケ描写には欠点もありますが、後ボケ重視の賢明なバランス調整が施されているように見えます。

ココに注意

  • 光学2.08倍とズームレンジが非常に狭い
  • 開放F値が4.0-6.3と暗い
  • プラスチックマウント
  • 簡易防滴
  • レンズフード別売り
  • AF/MFなどのスイッチが無い
  • クローズアップには不向き
  • 接写時のフォーカスシフト
  • 前ボケがやや騒がしい
  • 玉ボケがやや騒がしい
  • 特に広角側で周辺減光が目立つ
  • 絞っても光条がシャープにならない

光学性能に申し分ありませんが、個人的に注意して欲しいのは狭いズームレンジ。一般的な標準ズームレンズと比べて光学倍率が低く、特に望遠域を使えない50mm止まりの望遠端は少し不便と感じます。「旅行や行楽にコレ一本」とはおススメし辛く、特に運動会や動物園など遠くの被写体をクローズアップするには明らかに力不足です。高画素モデル「Z7」と組み合わせると、DXクロップで換算75mmの中望遠として使うこともできますが、2400万画素の「Z 6」「Z 5」ではあまり現実的な選択肢とは言えません。
小型レンズとしては避けられない問題ですが、周辺減光も少し気を付けたいポイント。特に広角側で減光が目立つため、低照度で予想以上にシャッタースピードが落ちたり、ISO感度が跳ね上がるかもしれません。デジタル補正可能ですが、増感によるノイズは避けられません。また、比較的低照度AF性能の低いZ 5と組み合わせる場合、夜景や暗い屋内でのパフォーマンス低下が顕著となる可能性あり。

管理人
管理人

満足度は90点。
小型軽量ながら、高い光学性能は流石のニコンクオリティと感じさせてくれる反面、光学2倍と狭いズームレンジや接写性能の低さが汎用性を制限しています。オールインワンのレンズを探している場合、「NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR」を検討したほうが良いでしょう。
携帯性重視で広角?標準をカバーした高解像ズームレンズを探している場合は強くおススメできるレンズ。ただし、防塵防滴仕様は完璧とは言えないので注意が必要。

作例

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