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M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO レンズレビュー 完全版

このページではOM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO」のレビューを掲載しています。

管理人の評価

評価:

尖ったチューニングの大口径20mm

F1.2 PROと同じく線の残らない滑らかなボケ描写を重視した光学設計。非常に滑らかな後ボケを堪能できるが、遠景撮影に影響する収差が目立ち、PROレンズとしては絞り開放の解像性能が安定しない。その一方で接近時に極端な描写の乱れは無く、安定感のある絞り開放を利用することができる。
用途によっては欠点が気にならない場合もあるが、撮影シーンによっては使い辛く感じるかもしれない。

ポイント 評価 コメント
価格 PROレンズとしては安いが…
サイズ 大口径+WRとしては良好
重量 大口径+WRとしては良好
操作性 必要最低限だがリングの操作は滑らか
AF性能 非常に良好
解像性能 無限遠の周辺部が甘い
ボケ 非常に滑らかな後ボケ
色収差 まずまず良好
歪曲収差 RAWで目立つ樽型歪曲あり
コマ収差・非点収差 非点収差が目立つ
周辺減光 大口径レンズとしては良好
逆光耐性 PROレンズとしては良好
満足度 接近戦が得意な20mm大口径

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PROのレビュー一覧

まえがき

2021年11月4日に正式発表された13本目のPROシリーズレンズにして、OM SYSTEMブランド初となる新製品。OM SYSTEMの門出を象徴づけるものとして、携帯性の良い大口径レンズに仕上がっている。これまでラインアップを続けてきた超大口径・大型の「F1.2 PRO」シリーズから大きく舵を切った形だ。

概要
レンズの仕様
発売日 2021-12-10 初値 75,240円
マウント MFT 最短撮影距離 0.25m
フォーマット 4/3 最大撮影倍率 0.11倍
焦点距離 20mm フィルター径 58mm
レンズ構成 10群11枚 手ぶれ補正 -
開放絞り F1.4 テレコン -
最小絞り F16 コーティング ZERO・F
絞り羽根 9枚 円形絞り
サイズ・重量など
サイズ φ63.4×61.7mm 防塵防滴 IPX1
重量 247g AF STM
その他
付属品
レンズフード・ケース

焦点距離は従来のM.ZUIKOレンズには存在しなかった「20mm」を採用。これは35mm判換算で「40mm」に相当する画角であり、競合他社でも採用が続く人気急上昇の焦点距離だ。マイクロフォーサーズで競合するレンズは非常に少なく、思いつく限りではパナソニックの「LUMIX G 20mm/F1.7 II ASPH.」しか存在しない。

開放F値はパナソニックよりも少し明るく、フォーカス駆動はステッピングモーターでインナーフォーカスを採用している。大口径ながら高速AFを期待できると共に、防塵防滴仕様でPROシリーズらしい耐候性を実現している。

レンズ構成は10群11枚構成で、構成中にはSEDレンズ1枚、EDレンズ3枚、SHRレンズ2枚、非球面レンズ2枚を採用している。レンズ構成の半数以上に特殊レンズを使用した贅沢な設計だ。

さらに8-25mm F4 PROに続いてフッ素コーティングを採用。従来のPROレンズと比べて前面の撥水・撥油性が高まっている。プロテクトフィルター無しでメンテナンスしやすい仕様となっている。屋外での撮影が多いと思われるOM SYSTEMでフッ素コーティングに対応したメリットは大きい。

ちょっと気になったのがMTF曲線。PROレンズとしては同心方向と放射方向の乖離が目立つ。ここ最近のレンズで、ここまで非点収差が目立つ標準単焦点はあまり見かけない。それも中央付近から非点収差が大きくなっているので、影響を受ける範囲はかなり広いと思われる。遠景の絞り開放はあまり期待しないほうが良いかもしれない。

価格のチェック

売り出し価格の最安値は75,240円。マイクロフォーサーズ用の標準大口径レンズとしては少し高めの価格設定だ。例えば「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.」であれば56,990円で購入することが可能である。LEICA DG IIも防塵防滴仕様であり、光学性能にも定評がある。差額2万円の価値が20mm F1.4にあるかどうかじっくり検証していきたい。

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

一見すると従来通りの黒を基調としたデザインだが、よく見ると「OLYMPUS」のロゴが「OM SYSTEM」に変わっている。前述した通り、これはOMデジタルソリューションズが「OLYMPUS」ブランドから「OM SYSTEM」ブランドに切り替えた最初の製品だ。ただし「M.ZUIKO」ブランドネームはそのまま使い続ける模様。
ちなみに、従来の箱はマットな質感だったが、20mm F1.4 PROの箱は光沢のある塗装だ。

付属品は薄っぺらなレンズポーチとレンズフード、説明書、保証書が付属する。

外観

M.ZUIKO PROシリーズらしく、外装は大部分が金属製のしっかりとした作りだ。レンズ先端のフードマウントのみプラスチック製である。デザインはPROシリーズらしいもので、表面にはレンズ名やフィルター径、撮影距離などがプリントされている。

コントロールはフォーカスリングのみのシンプルな仕様。PROシリーズでお馴染みのL-Fnボタンやフォーカスクラッチ構造は採用していない。防塵防滴仕様を実現するには歓迎できる仕組みだが、一般的な撮影シーンではL-Fnボタンやフォーカスクラッチ構造があったほうが助かると思う。

レンズキャップのロゴは「OM SYSTEM」に切り替わり、キャップ表面の質感も少し変化が見られる。

ハンズオン

全長61.7mm、重量247gとF1.4の単焦点レンズとしては小型軽量だ。F1.8レンズと比べると一回り大きいが、F1.2 PROと比べるとかなり小さい。全体的なサイズは12-45mm F4.0 PROに近い。
金属外装のしっかりとした質感が手に伝わってくる。

前玉・後玉

このレンズはM.ZUIKOシリーズとしては珍しくフッ素コーティングに対応している。撥水・撥油性が高く、プロテクトフィルター無しでも水をはじきやすい(従来のPROレンズは水滴が付着すると厄介だった)。衝撃ダメージが予想される場合はフィルターが必要だが、滝などのシーンで積極的にプロテクトフィルターを装着する必要は無いと思われる。

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フィルター径は58mmに対応。オリンパスレンズで58mm径に対応するモデルは少ないが、12-45mm F4.0 PROも同型を採用している。小型軽量システムとして組み合わせるには面白いコンビだ。そのほかにも75-300mm F4.8-6.7 IIも58mm径なので、この辺りをシステムに組み込むのも一つの手。

レンズマウントは金属製で、4本のビスで固定されている。周囲は防塵防滴用のシーリングが施され、水や小ゴミの侵入を防ぐ。レンズ後玉はマウント面付近で固定されているので、内部は完全に密閉されている。

フォーカスリング

30mm幅の金属製フォーカスリングは適切なトルクで滑らかに回転する。ただし、PROレンズでお馴染みのフォーカスクラッチ構造には対応していない。AF/MFスイッチも無いので、フォーカスモードに切替はカメラ側の操作が必須となる。
フォーカスリングは電子制御でフォーカス用モーターを動かす仕組み。回転速度によってピント移動距離は変化する。ゆっくり回転する場合は0.25mから無限遠まで1回転以上の操作が必要となるが、素早く回転すると90度程度のストロークで操作可能となる。操作に遅延は見られず、リングの回転に合わせて滑らかに動作している。

フォーカスクラッチ構造に対応していないので、リニアレスポンス(回転速度に関わらず一定量の操作でピント移動が可能)のマニュアルフォーカス操作は出来ない。このため、動画撮影用としては使い辛い一面がある。個人的にはフォーカスクラッチ構造を省略すべきでは無かったと考えている。

レンズフード

プラスチック製の花形レンズフードが付属する。ボタン式のロック構造が無いシンプルな作りで、PROシリーズ用としては少し安っぽさを感じる。必要最低限のフード。
フードの型番は「LH-61G」であり、実は12-45mm F4.0 PRO用と同じであり。ただし、こちらは「OM SYSTEM」にロゴが切り替わっている。

レンズフードは逆さ付けも可能。この際にフォーカスリングの広範囲が覆い隠されてしまうが、指で操作できないこともない。とは言え、扱い辛いので外してしまったほうが好ましい。

装着例

OM-D E-M1 Mark IIIに装着。小型軽量なレンズであり、カメラと組み合わせてもバランスは悪くない。むしろカメラボディが大きすぎる感があり、E-M5 Mark IIIやE-P7くらいのサイズが丁度良いかもしれない。

LUMIX GM1Sに装着。最軽量クラスのボディと比べると、このレンズは大きく感じる。しかし、扱えないレンズサイズでは無いように感じる。個人的には面白い組み合わせだと思う。

AF・MF

フォーカススピード

特に記載は無いが、このレンズのフォーカス駆動はステッピングモーターだと思われる。滑らかで高速なフォーカスを実現する駆動方式だ。ユニットが小さく、レンズサイズを抑えるのに一役買っている。
E-M1 IIIと組み合わせて動作を確認してみると、至近距離から無限遠までとても快適なフォーカス速度を実現しているのが分かる。S-AFは合焦直前のウォブリングが混じるものの、C-AFは合焦まで迷いなくキビキビと動作している。おそらく、カメラ側のAFシステムが向上することで、より使いやすくなると思う。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指す。画角の変化が大きいと、フォーカシングで画角が広がったり狭くなったりするので気が散ったり、AFが不安定化する原因となる。出来ればフォーカシングブリージングは無い方が良い。
今回はブリージングの影響を確認するために、レンズを最小絞りまで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

僅かに画角の変化があるものの、大口径レンズとしてはフォーカスブリージングを良く抑えているように見える。動画撮影でも目立つことは無いはず。それだけにフォーカスクラッチ構造が無いのは残念。

精度

E-M1 Mark IIIと組み合わせた限りでは、特に大きな問題は見られない。同じピント位置での再現性も良好だが、極稀にピントを外した状態で合焦することがある。

MF

90°~360°のストロークで操作できるフォーカスリングで操作性は良好。前述してきた通り、フォーカスクラッチでリニアレスポンスのMFを利用できると完璧だった。

解像力チャート

撮影環境

テスト環境

  • カメラボディ:OM-D E-M1 Mark III
  • 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • RAW出力
  • ISO 200 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェック)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性あり。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果 2000万画素

「絞り開放からピークの性能」というわけでは無く、F1.4付近は少しソフトな描写。絞ることで解像性能は改善するが、中央から隅にかけてパフォーマンスの改善幅が異なる。抜群の解像性能とは言えないが、絞り開放でも隅まで安定感のある画質は肯定的に評価できると思う。

中央

F1.4では球面収差・軸上色収差の影響が残っているように見える。ディテールのコントラストが低く、解像感が少し低い。F2まで絞ると改善するが、それでも収差の影響が抜けきっていない。
F2.8まで絞ると画質が大きく改善し、F4以降に大きな変化は見られない。

周辺

中央とほとんど同じ画質に見える。遠景解像では非点収差か像面湾曲の影響が強かったものの、近距離で似たような傾向は見られない。完璧からは程遠いが、中央から一貫性のある画質と言える。やはり絞ると徐々に改善し、F4前後でピークを迎える。中央ほど数値が伸びないのは、おそらく僅かに非点収差の影響が残っているため。

四隅

絞り開放は基本的に中央や周辺部と同じ画質。F1.4の開放F値を考慮すると安定感のある画質に見える。ただし絞っても画質は大きく改善しない。これは倍率色収差と非点収差の影響が残っているように見え、実際に数値上で低い結果となる。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 2679 2727 2514
F2.0 3211 2858 2462
F2.8 3384 3184 2618
F4.0 3562 2937 2779
F5.6 3504 3016 2618
F8.0 3141 2806 2748
F11 2758 2543 2359
F16 2306 2123 1996

実写確認

テスト結果 8000万画素

絞り開放付近はハイレゾショットの恩恵が低い。F2.8からF5.6まで絞って撮影することでフレームの大部分で非常に良好な結果を得ることが可能。

中央

絞り開放は通常時と同じく収差が強めで少しソフトな描写。F4まで絞るとコントラストやシャープネスがグッと改善して解像性能が大きく伸びる。ピークはF4~F5.6で達成され、F8以降は回折の影響で急速に低下する。

周辺

絞り開放は中央と同程度で、絞ると改善する。ただし、F2.8以降は伸び悩み、中央ほど改善しない。解像感は悪くないが、ハイレゾショットの恩恵は薄い。

四隅

ハイレゾショットを使用した隅の画質としてはF1.4から安定している。絞ると周辺減光や色収差は改善するものの、解像性能の数値としては伸び悩んでいるように見える。

数値確認

中央 周辺部 四隅
F1.4 3088 3152 2841
F2.0 3787 3681 3140
F2.8 4356 3774 2972
F4.0 4626 3883 2844
F5.6 4678 3817 2780
F8.0 3930 3633 2844
F11 3285 2897 2371
F16 2426 2226

実写確認

競合レンズ比較

決して悪くない性能だが、「M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8」「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 II ASPH.」などと比べるとコストパフォーマンスが悪い。やはり周辺部から隅にかけて残存している非点収差が解像性能を足を引っ張っているように見える。

中央 F1.4

どのレンズにしても色収差の影響が僅かに残っている。

中央 F4

どのレンズもF4付近まで絞ると非常にシャープな結果を得ることが出来る。

周辺 F1.4

20mm F1.4 PROはLEICA DG 25mmよりも安定感があるものの、25mm F1.8が最も安定している。

周辺 F4.0

絞った時に大きく改善するのはLEICA DG。20mm F1.8 PROや25mm F1.8は非点収差の影響が残っているように見える。

隅 F1.4

20mm F1.4 PROは隅まで安定感のある絞り開放だが、それは25mm F1.8も同じ。比較してLEICADG 25mmは少しソフトな画質となる。

隅 F4

LEICA DG 25mmは絞ると画質が大きく改善する。20mm F1.4 PROや25mm F1.8はそれほどでもなく、非点収差が少し残っているように見える。

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2021/12/10・晴れ・微風
  • カメラ:OM-D E-M1 Mark III
  • 露出:絞り優先AE・ISO 200
  • ピント位置:中央1点
  • RAW
  • Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネスオフ

テスト結果

PROレンズに期待していた結果を大きく下回る。「あらあら一体全体どうしちゃったの?」と言いたくなるレベル。中央と比べると周辺、隅に向かってパフォーマンスが大きく低下しているのが分かる。少なくともF1.4の明るさを活かした夜景の撮影に適したレンズとは言えず、F4まで絞った場合でも12-45mm F4 PROのほうが良好な結果を期待できる。これは像面湾曲の影響と思われ、絞って被写界深度を広げることで少し改善する。

中央

絞り開放から芯のあるシャープネスだが、球面収差の補正不足かコントラストが僅かに低い。軸上色収差による色づきは少ないものの、シャープな結果を得たい場合は少なくともF2まで絞っておきたいところ。F2まで絞るとコントラストが改善する。シャープネスに目立った改善は見られない。
F2.8まで絞るとコントラストがさらに改善し、クロップした際のディテールがより良好に見える。ピークの画質はF5.6まで続き、F8以降は回折の影響で画質が徐々に低下する。

周辺

中央と比べると遥かにソフトな画質で、ピントが合っていないように見える。初期不良か?と思いたくなるくらいの画質低下だが、MTF曲線を見る限りでは非点収差の影響と思われる。絞りによる根本的な改善は期待できないが、被写界深度を広げることで非点収差を目立たなくすることは可能。
F1.4~F2はソフトな画質で、F2.8まで絞ると多少の改善が見られる。それでも被写界深度は不足気味なので、可能ならばF5.6~F8まで絞るのが好ましい。F8以降は回折の影響で中央画質が低下し始めるので、状況に応じて調整したいところ。

四隅

周辺と同じく、非点収差の影響か少しソフトな画質。極端な画質低下が見られないぶん、非点収差が非常に惜しく感じる。絞りによる影響は周辺部と同じで、F5.6からF8までしっかり絞らないとディテールがぼやけてしまう。

撮影倍率

最短撮影距離は0.25mで、最大撮影倍率は0.11倍だ。寄りやすいマイクロフォーサーズレンズが多い中では寄りにくいほうだが、それでも十分なクローズアップ性能を備えている。接写時にパフォーマンスの低下が少なく、周辺部でもそれなりに安定した結果を期待できる。ただし、後述する像面湾曲の影響があるので、フラットな被写体を撮影するのに適してはいない。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指す。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられる。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないものの、近距離では収差が増大して目立つ場合もある。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要は無い。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか問題の回避手段がない。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

少なくとも近距離では周辺部に向かってピント面が近側に向かって移動しているように見える。その影響量はやや目立ち、フラットな被写体を撮影する際は周辺部にピントを合わせることができないかもしれない。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれを指す。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要。ただしボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できるので、残存していたとして大問題となる可能性は低い。特にミラーレスシステムでは後処理に依存する傾向がある。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

海外レビューサイトのサンプルギャラリーでは倍率色収差が目立つ作例がいくつかあったものの、当方のテスト環境では特に目立つ色収差は見られない。実写でも特に大きな問題は無く、無視できる収差だと思われる。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指す。ピントの手前側は主にパープルフリンジとして、ピントの奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差と考えられる。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところだが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多い。

軸上色収差を完璧に補正しているレンズはピント面のコントラストが高く、パンチのある解像感を期待できる。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

完璧な補正状態ではなく、絞り開放付近では軸上色収差の影響がいくらか残っている。これが目立つシーンは少ないと思うが、ハイコントラストな領域で色収差が発生する可能性はある。絞ると徐々に改善し、F4までに無視できるまで収束する。ちなみに絞った際のフォーカスシフトは見られない。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがち。個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と評価し、逆に「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写は好ましくないと感じる。ただし、感じ方は人それぞれなので、ひょっとしたら逆のほうが好ましいという人がいてもおかしくない。
参考までに「滲むボケ」「輪郭の硬いボケ」のサンプルを以下に示す。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向がある。
特殊な方法として「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在する。

実写で確認

ピント面の直前・直後はボケに偏りが少ない、比較的ニュートラルなボケだ。軸上色収差による色づきは残念だが、ボケ質そのものは滑らかで綺麗。ただし、滲むようにボケ始める描写ではない。
ボケが大きくなると、前後のボケ質に違いが現れ始める。比較てして後ボケがより滑らかに、前ボケがより硬い描写となっているのが分かる。とは言え、描写の極端な偏りは見られず、まずまず使い勝手の良い描写に落ち着いている。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

ここで言う「口径食」とはレンズ口径がボケへ影響していることを指す。
口径食が強いと、フレーム四隅のボケが楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりする。この問題を解消するには絞りを閉じるしか方法が無い。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来る。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がる。口径食が強いと、ボケが小さく感じたり、場合によってはボケが荒れてしまう場合もある。
できれば口径食の小さいレンズが好ましいが、解消するには根本的にレンズサイズを大きくする必要がある。携帯性やコストとのバランスを取る必要があり、どこかで妥協が必要。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生する(前後ボケのレビューで示した通り)。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまう。

実写で確認

F1.4の大口径レンズとしては口径食はまずまず良好に抑えられている。周辺部まである程度の円形を維持している。玉ボケの内側は少しざらついているものの、非球面レンズに起因する玉ねぎボケの兆候は見られない。さらに玉ボケの縁取りはほとんどない、非常に綺麗な描写だ。
F2まで絞ると口径食が小さくなるが、ボケの輪郭に色収差が目立つようになる。F2.8まで絞ると口径食はほぼ完全に抑えることが可能だが玉ボケが僅かに角ばるようになる。
全体的に見て非常に肯定的な描写だが、コントラストが高い領域に軸上色収差の影響が見られるのは少し残念だ。

ボケ実写

その1

接写時はボケが大きく、後ボケは非常に滑らかな描写だ。ピント面から背景に向かって徐々に輪郭が溶けている。周辺部の口径食は目立たず、大口径のPROレンズらしい使い勝手を楽しめると思う。絞るとコントラストがしっかりと付くが、ハイライトの滑らかさが少し低下する。

その2

被写体との撮影距離が長くなっても絞り開放は滑らかな描写だ。ボケには縁取りが無く、周辺部や隅のボケ描写にも騒がしさが無いのは評価できる。

その3

さらに撮影距離が長くなるとボケの柔らかさが失われ、周辺部や隅の描写が少し騒がしくなり始める。それでも標準単焦点としては健闘しているように見える。周辺が騒がしい描写になる時はF2まで絞ると緩和する。

参考 FE 40mm F2.5 Gとの比較

フルサイズの40mm F2.5と見比べてみると、ちょうど同程度のボケ量に見える。撮影時期が異なるので正確なことは言えないが、ボケ質はほぼ互角で、周辺部においてF1.4 PROのほうが少し滑らかに見える。

撮影距離

全高170cmの三脚を人物に見立てて撮影。
フレームに全身を入れても背景をなんとかぼかすことが可能。とは言え、被写体を背景から分離することはできない。膝うえ、上半身まで近づくことで十分なボケ量が得られる。ボケ質はまずまず良好だ。バストアップまで近づくと被写体を背景から分離可能。さらに顔のクローズアップで背景を溶かすこともできる。

球面収差

前後の玉ボケを見比べてみると、明らかに質感の違いがある。これは美しいボケを得るために、球面収差と意図的に残しているためだと思われる。この意図的な球面収差により、後ボケは輪郭が残らない滑らかな描写となり、逆に前ボケは少し縁取りが強めの描写となっている。
玉ボケの内側には非球面レンズが起因している輪線ボケ(玉ねぎボケ)のような描写が見られるが、実写でこれが目立つシーンはほとんどない。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに歪んでしまうことを指す。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれる。

参考:Wikipedia 歪曲収差

比較的補正が簡単な収差だが、「陣笠状」など特殊な歪みかたをする歪曲は手動での補正が難しい。この場合はレンズに合わせた補正用プロファイルが必要となる。

実写で確認

JPEGや純正ソフトなどのRAW現像ソフトでは自動補正で歪曲収差が目立つことは無い。しかし、自動補正が適用されないRAW Therapeeなどの現像ソフトでは中程度の樽型歪曲が発生していることが分かる。標準単焦点レンズとしては少し目立つ歪曲収差であり、直線的な被写体を撮影する場合は補正が必要だ。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な光量落ちを指す。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となる傾向。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生する。

ソフトウェアで簡単に補正できる現象だが、露出不足を後処理の補正(増感)でカバーするため、ノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合はノイズが強く現れる可能性あり。

実写で確認(最短撮影距離:無限遠)

最短撮影距離、無限遠どちらでも絞り開放で目に付く光量落ちが発生する。フラットな露出結果を得たい場合にはF2.8~F4まで絞るか、ソフトウェアによる修正が必要となる。極端な光量落ちでは無いので、撮影後の増感でも目立つノイズ増は発生しにくいと思われる。

コマ収差

コマ収差・非点収差とは?

コマ収差・非点収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指す。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日など、明るい点光源で影響を受ける場合あり。この問題は後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある。

参考:Wikipedia コマ収差

絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞ることが出来ず、光学的な補正が重要となる。

実写で確認

点像がわずかに変形しているように見えるが、一般的なガウスタイプの標準レンズと比べると遥かに良好な補正状態だ。この点で「M.ZUIKO 25mm F1.8」よりも少し良好である。また、F2まで絞ると点像の再現性は良好に見える。

逆光耐性・光条

中央

完璧とは言えないが、複雑な光学設計のM.ZUIKO PROシリーズとしては良好な逆光耐性に見える。ゴーストに対処する必要があるものの、フレアによるコントラストの低下は目立たない。

フレア・ゴーストの影響はほとんどない。PROレンズの中では良好な逆光耐性だ。絞っても結果は悪くない。

光条

F5.6付近からシャープな光条が発生し始める。回折とのバランスを取るのであればF8付近が最適解だが、F11~F16で最もシャープな光条となる。M.ZUIKOレンズとしては良好な光条だ。

まとめ

良かったところ

ココがおすすめ

  • OM SYSTEM初のレンズ
  • マイクロフォーサーズでは珍しい20mm
  • IPX1準拠の防塵防滴構造
  • フッ素コーティング対応
  • 頑丈な金属構造の筐体
  • 小型軽量
  • 滑らかなフォーカスリング
  • 高速かつ静音性の高いフォーカス駆動
  • フォーカスブリージングが目立たない
  • 絞ると良好な中央解像
  • 極めて滑らかな背景のボケ
  • 穏やかな口径食と周辺減光
  • まずまず良好な逆光耐性
  • シャープな光条

このレンズの長所は近距離で均質的な絞り開放の解像性能と、滑らかな後ボケ。さらに価値を高めるポイントとして逆光耐性や静音性の高いAF、防塵防滴などを挙げることが出来る。特に近距離でのスナップ撮影やポートレートが多いのであれば面白いレンズになると思う。E-M5 Mark IIIなど小型軽量で防塵防滴仕様のカメラと組み合わせることで、状況を選ばず様々なシーンで20mm F1.4を使うことが可能だ。

ピント面がフラットな遠景は少し苦手な印象を受けるものの、中距離の自然風景であれば特に問題なく撮影できると思う(ベストな選択肢ではないと思うが)。コンディションが悪くても、防塵防滴やフッ素コーティング仕様で状況を選ばずに撮影できるのは便利だと思う。フッ素コーティング仕様のPROレンズは少なく、前面に付着した水滴をブロアでさっと飛ばせる。

強みとなるボケ描写は線の残らない滑らかで溶けるような背景の描写が特徴的。被写体分離に役立つと感じる一方で、人によっては滑らか過ぎて違和感があるかもしれない。LEICA DG 25mm F1.4とは一線を画す滑らかさで、味わったことが無い人は一見の価値あり。好みは分かれると思う。

悪かったところ

ココに注意

  • フォーカスクラッチ構造が無い
  • L-Fnボタンが無い
  • F1.4レンズとしては少し高価
  • レンズフードが安っぽい
  • リニアレスポンスのMF不可
  • 絞ってもあまり改善しない周辺・隅の解像性能
  • 遠景で非点収差が目立つ
  • 近距離で顕著な像面湾曲
  • 場合によって軸上色収差が目立つ
    (ただしこの価格帯としては良好)
  • このクラスで少し強めの樽型歪曲

最も気になったのは解像性能。M.ZUIKO PROとして強調している「ボケと解像性能の高次元なバランス」とは感じず、ボケ描写に全力投球したようなレンズに見える。絞り開放は中央部まで収差が残り、特に周辺部は非点収差などが絞っても改善しない。「オールラウンダーのPROレンズ」として買いそろえようとしている人は気を付けたほうが良いかもしれない。(もちろん、ボケ重視で買うなら問題はない)

しっかりと絞って、カメラ内出力のJPEGであれば遠景の撮影で使えないこともない…。とは言え、ズームレンズとの差はあまり無いどころか周辺部で見劣りし、低価格なLUMIX 20mm F1.7 IIと比べて強みがあるわけでも無い。

総合評価

満足度は80点。
PROレンズの中では癖の強いレンズだ。小型軽量で防塵防滴、かつ大口径で高速AFを実現している。ここまでは「俺たちのPROレンズ」と言った印象だが、光学性能がボケ質に偏っている。決して悪くないものの、おそらく好みは分かれると思う。この傾向は25mm F1.2 PROに近い。

ボケは間違いなく良い。線の残らない、滑らかで綺麗なボケはF1.2 PROシリーズと通じるものがある。このようなボケを得ようと思ったら、絞り開放の解像性能がぐんと低下するNOKTONや中国製MFレンズで接写するか、多少高価なPROレンズを使うしかない。

しかし、この20mm F1.4 PROは小型軽量で美ボケを追求した結果、その他の部分に負担がかかっているように見える。遠景では周辺部に向かって非点収差が目立ち、絞り開放では軸上色収差がマイクロコントラストに影響を与えている。絞っても非点収差による影響は残り、周辺部の解像性能は伸び悩む。フレーム全体で均質的なパフォーマンスを得るのは難しい。「美しくにじむボケ」と解像力を高次元で両立と公式で主張しているが、少なくとも解像力には注意書きが必要だ。

レンズを売り出す際に「ボケ重視」をもう少し強調した方が良かったかもしれない(もちろんMTF曲線を見れば、解像性能の結果はある程度予想が付くと思うが)。少なくとも「開けてよし絞って良し」のレンズとは異なる。

ボケは確かに綺麗で美しい。線が溶けすぎて人によっては違和感があるかもしれないが、F1.2 PROを全て使ってきた身としては馴染みのあるボケ質である。ここは決して悪くないし、OM SYSTEM(オリンパス)らしい描写だと思う。ボケの一点突破で20mm F1.4 PROを買うのであれば、強くおススメしたい。ただし、それはある程度ボケが大きい場合の話となる。

ピント面直後の微ボケに関して滲む描写はイマイチだ。ここは17mm F1.2 PROや25mm F1.2 PROと比べて少し硬い。この領域で滲む柔らかい描写が必要であれば高価なF1.2 PROに手を出す必要があると感じた。

20mm F1.4 PROはボケ以外に逆光耐性がPROレンズとしては良好で、コントラストのバランスも良く見える。さらに20mmでは貴重な防塵防滴が役に立つシーンもあるだろう。色収差の影響は完璧な補正とは言えないものの、LUMIX 20mm F1.7 IIよりも良好である。それにオートフォーカスは圧倒的に速い。

悩ましいのは準広角・標準レンズに魅力的なレンズが多いこと。
焦点距離を広げると、より魅力的な光学性能の17mm F1.2 PROや25mm F1.2 PROがあり、より低価格で定評のあるLEICA DG 25mm F1.4 IIを購入することも可能だ。防塵防滴仕様や高速AFを諦めればLUMIX G 20mm F1.7 IIも選択肢としてあげることができる。それでも、とろけるようなボケを10万円以下の価格で味わってみたい場合は20mm F1.4 PROが面白い選択肢になると思う。

購入早見表

M.ZUIKO DIGITAL ED 20mm F1.4 PRO
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作例

オリジナルデータはFlickrにて掲載

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