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OMDS「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」レンズレビュー完全版

このページではの交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」のレビューを掲載しています。

管理人の評価:95/100点

MFTシステムの高性能・高機能な本格マクロレンズ

  • 小型軽量で防塵防滴仕様のマクロレンズ
  • イメージサークルが広く、四隅まで安定した光学性能
  • ピント距離に依らない滑らかなボケ描写
  • プラスチッキーな細長い鏡筒

安定した解像性能・ボケ・収差補正を実現しており、ピント距離に依らない高パフォーマンスと撮影環境を選ばない機能性を備えたオールインワンの理想的なマクロレンズ。

まえがき

レンズのおさらい

レンズ概要

  • 2012年10月 5日?発売
  • 商品ページ
  • データベース
  • 管理人のFlickrアルバム
  • レンズ構成:10群13枚(EDレンズ、HRレンズ2枚、E-HRレンズ)
  • 開放絞り:F2.8
  • 最小絞り:F22
  • 絞り羽根:7枚(円形絞り)
  • 最短撮影距離:0.19m
  • 最大撮影倍率:1.0倍
  • フィルター径:φ46mm
  • レンズサイズ:φ56 x 82mm
  • 重量:185g
  • ステッピングモーター駆動
  • AFリミッター搭載
  • 防塵防滴
  • レンズフード別売り

2012年発売のマイクロフォーサーズ用マクロレンズ。パナソニック「LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.」次いで設計の古いマクロレンズながら、価格.comで売れ筋No.1を独走する人気モデルで、カメラ専門店でも「納期未定」と書かれるほどの品薄っぷり。新型コロナウイルスでマクロレンズが良く売れるようになったと言われていますが、このレンズも例外では無い模様。

焦点距離は60mmでフルサイズ判換算で120mmの画角をカバーする望遠マクロ。現行のマイクロフォーサーズ用設計のマクロレンズとしては焦点距離が最も長く、プロ・アマチュアを問わず愛用している人は多いはず。
さらに、数あるマクロレンズの中でも防塵防滴仕様はこの60mm F2.8 Macroのみ。撮影環境を選ばずにマクロを撮りたい場合は選択肢がコレしかないのです。(ロードマップ上には望遠PROマクロが存在します)
残念ながらレンズフードは別売りのため、前玉保護、遮光性の観点から購入しておくことをおススメします。

撮影倍率は1.0倍。「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」の1.25倍には及びませんが、フルサイズ判換算で2倍までクローズアップ出来るので十分な撮影倍率と言えるでしょう。
フォーカス駆動にはステッピングモーターを使用しているので静かで滑らかな動作を実現。MFはバイワイヤ式となるので直感的な操作は難しいですが、回転速度に応じて動作するので微調整は簡単。

価格のチェック

最安値は4万円?5万円で推移。30mm F3.5 Macro25mm F1.845mm F1.8と比べると少し高価ですが、驚くほどの価格差ではありません。7万円超のLEICA DG 45mm F2.8と比べると安い安い。ただし、スライド式レンズフードは別売りのため、追加投資4000円程度は確保しておきたいところ。

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
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フォーカスギア PPZR-EP03
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マクロフラッシュ STF-8
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レンズレビュー

外観・操作性

箱・付属品

比較的古いレンズのため、最近の黒を基調としたデザインの箱ではありません。個人的にはコレはコレでアリかなと。中は段ボールで間仕切りされ、レンズ本体は緩衝材に包まれています。

同梱品はレンズキャップと説明書・保証書。前述した通りレンズフードは付属しません。スライド式レンズフードが高価になるのは理解できますが、せめてシンプルなプラスチック製フードくらいはつけて欲しかった。

外観

外装はフォーカスリングやフォーカスリミッターを含めてプラスチック製で、この価格帯のオリンパスレンズらしい作り。安っぽい作りでは無いものの、 金属外装のレンズと比べると高級感や堅牢性で見劣りします。写真のレンズは中国製ですが、現在は工場をベトナムに移転しており、新しく購入した2本目のレンズはベトナム製。

ハンズオン

全長が82mm、重量が185g、と望遠マクロレンズとしては小型軽量。とはいえマイクロフォーサーズの標準中望遠マクロレンズと比べると少し長い。携帯性を損なうようなサイズアップではありませんが、小さなカメラバッグに収納する場合や取り回しの良さを重視するのであれば標準マクロレンズを選んだ方がいいでしょう。

前玉・後玉

前玉は非常にフラットでメンテナンスしやすい形状。ただし、フッ素コーティングは施されていないので、汚れの付着が想定される状況ならばプロテクトフィルター装着をおススメします。フィルター径は46mmと小さいので、わずかなコストで十分良好なフィルターを購入することが出来ます。(参考:Amazonで46mmフィルターを探す
このレンズの他にも46mmフィルター対応モデルは数多く存在するので使い回しやすいのはGood。レンズはインナーフォーカスタイプのため、前面が繰り出したり、回転したりすることはありません。

後玉はレンズマウントと同じ位置で固定され、レンズ内は密閉状態を維持しています。さらに金属製レンズマウント周囲は防塵防滴用のシーリングが施されているので耐候性はバッチリ。

実はこのレンズは2本目であり、1本目は三脚からカメラを落下させてしまい、その表示にマウント部が破損。金属マウントを固定している4本ビスはプラスチックパーツに固定されているように見えます。脆い構造にも見えますが、今回の破損は完全に自分のミスであり、このレンズがどれほど強い負荷に耐えられるのかは不明です。細長いレンズなので、当たり所によってはマウント部への負荷が高くなる可能性はありそう。あくまでも参考までに。

フォーカスリング

幅33mmのプラスチック製フォーカスリングは滑らかに回転し、少し緩めの抵抗があります。フォーカスバイワイヤ方式であり、リング操作でステッピングモーターを駆動してフォーカスレンズを動かします。
ピント全域を移動するには素早く回転して約2回転必要で、フルマニュアルの高速操作には不適です。逆にゆっくり回転させると、最短撮影距離0.19mから0.20mまでに4回転ほど必要となり、非常に高精度なピント操作が可能となります。ピントの推移は非常に滑らか。

ミラーレス用レンズとしては珍しくピント距離表示を搭載。あくまでも簡易的なものですが、おおまかに現在のピント位置を把握することが出来ます。

レンズ側面にはフォーカスリミッターを搭載。「0.19-∞」のフルレンジのほかに、「0.4m--∞」「0.19-04m」の切替が可能。さらに特殊機能として、「1:1」でピント位置を等倍まで素早く移動することが出来ます。これが非常に便利で、なぜ他のレンズに同じような機能が無いのか不思議なくらい。

レンズフード

プラスチック製の別売りレンズフードも手に入れています。あこぎな商売しやがって…。
別売りのやや高価なレンズフードですが、便利で機能的なフードであるのは確か。普通に装着した状態で格納したり展開することが出来ます。特にC-PLフィルター装着時や最短撮影距離でフードが邪魔になるときに便利。
ただし、可動部位があるフードは得てして壊れやすいものです。取り扱いには気を付けたいところ。特にカメラバッグから取り出す際にフードが引っかかってしまった時は焦らず慌てず対応したい。

装着例

レンズは長いものの、太くはありません。カメラ装着時にフォーカスリングの操作はしやすく、小型ボディ(例えばPENやGM)に装着してもバランスは良好。とは言え、細長デザインは個人的には好みじゃありません。また、レンズ先端に負荷がかかると、マウント部を損傷しやすいので気を付けたいところ。

AF・MF

フォーカススピード

ピント移動距離が長いことを考えると、まずまず良好なフォーカス速度です。マルチフォーカスの駆動方式が功を奏しているのでしょうか。動作は静かで、目立つひっかかりはありません。

ブリージング

ブリージングとはピント位置によって画角が変化することを指しています。最小絞りのF22まで絞り、最短撮影距離と無限遠で撮影した結果が以下の通り。

マクロレンズで「ブリージングが目立つ」と指摘するのは野暮ってもんですが、確かに驚くほど目立ちます。どちらも同じ距離で撮影していますが、画角はズームレンズのように変化しています。像がボケて分かりづらいので、以下に無限遠の全体像と最短撮影距離時の画角を赤枠で掲載。

実際のところ、ピント距離が大きくことなり、画角の変化に合わせて背景がボケるので、実写で問題と感じる場面は少ないと思いますが、動画撮影のピント移動で画角変化が目立つのは確か。

精度

特に大きな問題はありませんが、コントラスト検出のAF(例えばLUMIX)では合焦速度が低下し、結果的にピントを外す機会が多いと感じました(特にマクロ)。オリンパスの像面位相差AF搭載モデルで使うのがベターかなと。

MF

基本的にAFで問題無いと思いますが、MF時は精度の高い操作が可能。ただし、回転速度に応じてピント移動量が変化するので、誤って素早く回転してしまうと、微調整が水の泡となる可能性あり。フォーカスリングはもう少し抵抗量が強めか、感度を落としても良かったのかなと。

解像力チャート

撮影環境

イメージ図です。マイクロフォーサーズのRAWアスペクト比は「4:3」であり、測定時は4:3に合わせてフレーミングしています。このため、「3:2」イメージセンサーよりも四隅領域の判定が厳しめとなる傾向があります

テスト環境

  • カメラボディ:OM-D E-M1X
  • 交換レンズ:M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
  • パール光学工業株式会社「【HR23348】ISO12233準拠 8K解像力テストチャート(スチルカメラ用)
  • オリンパス HYRes 3.1 解析ソフト
  • 屋内で照明環境が一定
  • 三脚・セルフタイマー10秒・電子シャッター
  • OM-D E-M1XのRAWファイルを使用
  • ISO 64 固定
  • Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像
    ・シャープネス オフ
    ・ノイズリダクション オフ
    ・色収差補正オフ
    ・格納されたレンズプロファイル(外せない)
  • 解析するポイントごとにピントを合わせて撮影
    (像面湾曲は近接で測定が難しいので無限遠時にチェックしています)
  • 近接でのテストであることに注意(無限遠側はさらに良好となる可能性あり)

補足

今回はRAW出力を元にしてシャープネスをオフの状態で検証しています。ボディ出力のJPEGやRAW現像でシャープネスを整えるとより数値が向上する可能性があります。今回の数値はあくまでも「最低値」とお考え下さい。

テスト結果

マクロレンズらしく全体的に良好な解像性能を発揮。絞り開放では僅かに四隅領域で低下が見られるものの、1段絞ると非常に均質的な画質となる。
このレンズの強みは実用的な絞り値F2.8~F11付近までに画質の変化が少なく、気軽に被写界深度の調整をすることが出来ること。F16-F22は回折の影響でソフトな描写となりますが、F16は処理次第でシャープになるはず。F22は少し厳しい。
ピークの性能は「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」とほぼ同じですが僅かに60mm F2.8が有利。

数値を確認

中央 周辺部 四隅
F2.8 3222 3034 2629
F4 3425 3535 3134
F5.6 3234 3115 3162
F8 3152 3015 3015
F11 2737 2714 2659
F16 2119 2249 2222
F22 1720 1702 1637

ハイレゾモード

中央領域は絞り開放から高解像となり、この解像力チャートの限界に近い数値を記録。絞っても解像性能はあまり変化しません。一方で周辺部や四隅はハイレゾショットの恩恵が少ない。絞ると徐々に改善しますが、特に四隅は改善速度が遅い。周辺部まで高解像がイメージが欲しければF5.6、フレーム全域で均質な解像性能を目指すならF8まで絞るべき。ただし、F8まで絞ると中央と周辺領域の解像性能は少し低下するので注意が必要。

数値を確認
F値 中央 周辺部 四隅
F2.8 4599 3222 3061
F4 4696 3986 3061
F5.6 4504 4465 3309
F8 3857 3863 3639

実写確認

ハイレゾ

遠景解像力

テスト環境

  • 撮影日:2021年5月14日-晴天-微風
  • 三脚:Leofoto LS-365C
  • 雲台:Leofoto G4
  • 露出:絞り優先AE-ISO 100
  • 現像:RAW-Adobe Lightroom Classic CC
    ・シャープネス「0」
    ・ノイズリダクション「0」

お知らせ

残念ながら通常モードでのF8を撮り損ねていました。
ただし、ハイレゾモード 80MPのF8で撮影しています。

テスト結果

中央

絞り開放からシャープネスとコントラストはピークの状態であり、絞ってもこれと言って変化はありません。F2.8からシャープであり、コントラストも良好。被写界深度が必要なければ絞る必要性は無いように見えます。

周辺

中央と性能・傾向も共に同じ。絞り開放から非常に良好であり、絞り値による改善効果はありません。よく見るとシャープネスとコントラストが僅かに改善しているようにも見えますが、等倍を重視しない実写で気が付くほどの画質差では無し。

四隅

中央や周辺と比べるとコントラストが少し低下しているように見えます。ただし、シャープネスは絞り開放から良好で、やはり絞りによる大きな変化はありません。
全体的に見て、隅から隅まで一貫した光学性能を発揮しており、マクロレンズらしい特性を備えていると言えそうです。

実写で確認

全体的に均質性が高く、F2.8から良好なシャープネスとコントラストを得ることが可能。パフォーマンスは概ねF11まで持続し、F16以降は回折の影響が強くディテールが悪化しているように見えます。接写時に被写界深度が必要な場合を除いて、絞りはF11までに抑えておくのが良さそう。

ハイレゾ

8000万画素相当のハイレゾモードを使用しても中央画質の大きな問題はありません。しかし、周辺部や四隅は8000万画素に対応しているとは言い難く、絞り開放では像がわずかに甘いように見えます。絞っても大きく改善するわけではありません。しかし、最高画質を目指すのであればF5.6まで絞っておいたほうが良いでしょう。

マクロ性能

撮影倍率

撮影倍率とはセンサー面に対して被写体をどれほど大きく写すことが出来るかを指しています。マイクロフォーサーズが搭載している「4/3型 MOSセンサー」は水平方向の幅が17.3mmなので、撮影倍率が「1.0倍」であれば17.3mmの被写体をフレーム一杯に写すことが可能。フルサイズセンサーの「1.0倍」は36mmとなるので、およそ倍ほど大きくクローズアップすることが出来ます。(と言うわけでオリンパスやパナソニックでは「35mm判換算で2倍」と表現しています)
ちなみにマイクロフォーサーズの「等倍」ならば、直径20mmの1円玉をフレーム一杯以上にクローズアップすることが出来ます。

中央解像

絞り開放は少し甘く見えるものの、まずまず良好な結果を得ることができます。F4?F5.6でピークのパフォーマンスとなり、F8?F11で回折の影響が徐々に強くなる。F11以降は回折の影響がかなりソフトとなるので出来れば避けたいところ。

周辺解像

今回は像面湾曲の影響を無視してピントを周辺部に合わせて撮影しています。
非点収差・コマ収差と思われる像の流れがあり、中央と比べると安定感に欠ける描写です。周辺部を安定して写したいのであればF8まで絞りたいところ。F11以降は中央のパフォーマンスが大きく低下するので、F8を利用するのが無難。

像面湾曲

像面湾曲とは?

ピント面が分かりやすいように加工しています。

中央から四隅かけて、ピントが合う撮影距離が異なることを指しています。例えば、1mの撮影距離において、中央にピントが合っていたとしてもフレームの端では1mの前後に移動している場合に像面湾曲の影響が考えられます。

最近のレンズで目立つ像面湾曲を残したレンズは少ないと思いますが、近距離では収差が残存している場合もあります。ただし、近距離でフラットな被写体を撮影する機会は少ないと思われ、像面湾曲が残っていたとしても心配する必要はありません。

無限遠でも影響が見られる場合は注意が必要です。風景など、パンフォーカスを狙いたい場合に、意図せずピンボケが発生してしまう可能性あり。この収差は改善する方法が無いため、F値を大きくして被写界深度を広げるしか手段がありません。

参考:Wikipedia 像面湾曲

実写で確認

特にこれと言った問題は無いように見えます。

倍率色収差

倍率色収差とは?

主にフレーム四隅に現れる色ずれです。絞り値による改善効果が小さいため、この問題を解決するにはカメラボディでのソフトウェア補正が必要となります。ボディ側の補正機能で比較的簡単に修正できます。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

絞り値全域で倍率色収差の影響は見られません。全体的に良好な補正状態ですが、絞り開放側で最も良好となり、最小絞り側で僅かに色収差の影響が強くなっているように見えます。どちらにせよ、大きく拡大しても問題となる可能性は低い。

軸上色収差

軸上色収差とは?

軸上色収差とはピント面の前後に発生する色ずれを指しています。手前側で主にパープルフリンジとして、奥側でボケにグリーンの不自然な色付きがあれば、その主な原因が軸上色収差です。簡単な後処理が難しく、できれば光学的に収差を抑えて欲しいところですが、大口径レンズでは完璧に補正できていないことが多いです。

参考:Wikipedia 色収差

実写で確認

絞り開放で僅かに色づいているようにも見えますが、基本的には問題ありません。高コントラストな撮影シーンでも軸上色収差が目立つ機会は少ないはず。

前後ボケ

綺麗なボケ・騒がしいボケとは?

ボケの評価は主観的となりがちですが、個人的には「滲むように柔らかくボケる」描写が綺麗と感じます。逆に、「急にボケ始めたり、ボケの輪郭が硬い」描写を好ましくないと感じています。

描写傾向の違いは主に球面収差の補正状態によって変化し、前後どちらかのボケが柔らかい場合はもう片方のボケが硬くなる傾向があります。また「アポダイゼーション光学素子」などを使って強制的に滲むボケ描写を実現しているレンズも存在します。

実写で確認

小ボケ領域はニュートラルで前後にムラの無い描写ですが、ボケが大きくなると後ボケが比較的滑らかな描写となり、前ボケが少し硬調となる。大きな前ボケが硬調で騒がしくなるシーンは少ないと思われるので、このバランスは評価できるポイント。

玉ボケ

口径食・球面収差の影響

口径食が強いと、四隅が楕円状に変形したり、部分的に欠けてしまったりします。これを解消するには絞りを閉じるしかありません。しかし、絞ると羽根の形状が見えてしまう場合もあるので状況に応じてF値を変化させる必要あり。

逆に口径食の影響が少ないと、絞り開放から四隅まで円形に近いボケを得ることが出来ます。これは玉ボケに限った話ではなく、一般的な四隅のボケ描写の質感にも繋がります。口径食が強いと、ボケ量が少なく感じたり、四隅のボケが荒れてしまう場合もあるため、口径食の小さいレンズが好ましい。

球面収差の補正が完璧では無い場合、前後のボケ描写に差が発生します。この場合はどちらかが滲みを伴う滑らかな描写になり、反対側で2線ボケのような硬い描写となってしまいます。

実写で確認

このレンズは絞り開放における玉ボケが完璧と言えず、四隅に向かって少し歪な形状の玉ボケとなる。一段絞ると歪な形状はほぼ解消するので、ボケ量に問題がなければF4まで絞るのがおススメ。
それ以外にこれと言った問題点は見当たらず、軸上色収差による色づきが少なく、非球面レンズによる輪線ボケも目立たない良好な描写。前ボケ

球面収差

テスト環境で前後の描写に大きな違いはありません。球面収差は良好に補正されているように見えます。

ボケ実写

撮影距離 近

マイクロフォーサーズ用の単焦点レンズとしては焦点距離が長く、F2.8でも十分にボケを大きくすることが可能。近距離では口径食が少なく、四隅まで一貫した描写傾向のボケ描写を得ることができます。ボケはまずまず滑らかで綺麗。球面収差を利用した滑らかなボケと比べると硬いものの、特にケチをつける様な描写ではありません。

撮影距離 中

撮影距離が長くなると、同時にボケも小さくなる。特に悪目立ちする描写ではないものの、コントラストが強い背景の場合は騒がしくなる可能性あり。ただし、この場合も四隅まで口径食が少なく、安定した結果を得ることが可能。

撮影距離 遠

撮影距離がさらに長く、ボケが小さくなったとしても、悪目立ちするボケとは感じず。適度に絞ってもまずまず良好。ただし、口径食が少し強く、四隅のボケが少し小さくなることで背景が騒がしくなる可能性はあるかもしれません。

撮影距離 全身ポートレート

背景はボケるものの、背景と被写体を完全に分離するのは難しい。ボケの質感は撮影距離を考慮すると善処している印象あり。

撮影距離別

全高170cmの三脚を全身像と仮定し、全身・上半身・バストアップ・顔のクローズアップとして撮影。
全身像で大きなボケを得るのは難しいものの、上半身程度の撮影距離なら被写体を背景から分離するための十分なボケ量が得られるように見えます。

歪曲収差

歪曲収差とは?

歪曲収差とは、平面上で直線的に写るはずが直線とならずに「歪む」収差です。特に直線が多い人工物や水平線が見えるような場合に目立ちやすい。主に魚眼効果と似た形状の「樽型歪曲」と中央がしぼんで見えてしまう「糸巻き型歪曲」に分かれています。

参考:Wikipedia 歪曲収差

実写で確認

ミラーレス用レンズはしばしば歪曲収差がデジタル補正に依存した設計となっていますが、このマクロレンズは光学的に歪曲収差が綺麗に補正されています。光学的にゼロに近い収差に抑えられているので、追加の補正は必要無いように見えます。

周辺減光

周辺減光とは?

周辺減光とは読んで字のごとく。フレーム周辺部で発生する不自然な減光のことです。中央領域と比べて光量が少なく、フレーム四隅で露出不足となっていることを指します。主に大口径レンズや広角レンズで強めの減光が発生、ソフトウェアで簡単に補正できる現象ですが、露出不足を増感でカバーするのでノイズ発生の原因となる点には注意が必要。特に夜景で高感度を使う場合にはノイズが強く現れる可能性があります。

実効F値

AFの項目で指摘したように最短撮影距離では画角が非常に狭くなり、そして同時にセンサーに到達する光量が低下します。原理は「実効F値 マクロ」で検索すると数多くの解説ページが見つかるはず。(マップカメラの図解が分かりやすいかも)
このマクロレンズも最短撮影距離で実効F値が大きくなります。露出を固定したままピント位置を最短撮影距離と無限遠で撮影した場合、露出差はおよそ4/3段。つまり、F値・ISOの設定を維持したままマクロ撮影をする場合はシャッタースピードが大きく低下する可能性があります。シャッタースピードを維持したい場合はISO感度を上げるしかありません。必要に応じて三脚、ボディ内手ぶれ補正を活用したいところ。

最短撮影距離

絞り開放から光量落ちはほとんど発生せず、無視できる水準に抑えられています。後処理の必要性は無く、基本的にノイズフリー。

無限遠

最短撮影距離と比べるとF2.8における周辺部の光量落ちが目に付きます。それでも大問題と言うにはほど遠く、F4まで絞るとほとんど解消します。

コマ収差

コマ収差とは?

コマ収差とは主にフレーム四隅で点像が点像として写らないことを指しています。例えば、夜景の人工灯や星、イルミネーションなど。日中でも木漏れ日などが影響を受ける場合があります。後処理が出来ないため、光学的に補正する必要がある収差。絞ることで改善するものの、夜景や天体撮影など、シャッタースピードが重要となる状況では絞り開放のコマ収差補正が重要となります(絞るとシャッタースピードかISO感度に影響があるため)。

参考:Wikipedia コマ収差

実写で確認

絞り開放から全体的に良好であり、コマ収差の影響は四隅の端においても極僅か。点光源が多い夜景などでも、絞り開放から快適に利用することが出来ます。

逆光耐性・光条

中央

強い光源をフレーム中央に配置した場合、予想していたよりもゴーストやフレアが少ない。しかし皆無ではなく、絞ると隠れていたゴーストが顕在化するので注意が必要。それでも、全体的にコントラストは良好な状態を維持しているように見えます。

少なくともレンズフード装着時に絞り開放でコントラストを低下させる顕著なフレアの発生は無し。絞ると光源から筋状に伸びるフレアが発生するものの、撮影するフレームを少し調整することで簡単に回避することが可能。

光条

絞ることで光条が発生するものの、シャープな描写となるのはF16?F22。マイクロフォーサーズで回折の影響が目立ち始めるのはF8以降であり、全体的な画質とのバランスを考慮すると使い勝手が悪い。

イメージサークルの確認

これまで6回にわたりレビューしてきましたが、このレンズは均質性が高く、四隅まで安定したパフォーマンスを得やすいレンズであることが分かりました。何故このような性能を引き出すことができるのか?という答えを得るため、フルサイズミラーレスにこのレンズを装着して撮影したのが以下の作例。(電子接点が無いため、ピント位置は無限遠に固定されています)

イメージサークルはAPS-Cをほぼカバーしており、4/3型センサーサイズ用のレンズとしては余裕のある光学設計であることが分かります。例えばLEICA DG 15mm F1.7やLAOWA 10mm F2のイメージサークルは以下の通り。(フルサイズの場合のみ)

同社の75mm F1.8も同程度のイメージサークルを備え、周辺まで安定した解像性能と均質的なボケ描写を実現しています。

総評・作例

肯定的見解

ココがポイント

  • 手ごろな価格
  • 小型軽量
  • 防塵防滴
  • スライド式レンズフード(別売)
  • ピント距離表示
  • AFリミッター(等倍スイッチ対応)
  • インナーフォーカス
  • 静かで滑らかなAF
  • ピント距離を選ばない均質的で高い解像性能
  • 良好な色収差補正
  • ニュートラルで滑らかなボケ描写
  • 口径食が少ない玉ボケ
  • 球面収差の補正状態が良好
  • 良好な歪曲収差補正
  • 周辺減光の影響が少ない
  • コマ収差の良好な補正
  • 絞り開放付近の逆光耐性

イメージサークルが広く、フレーム端までパフォーマンスの低下が目立たない均質的でマクロレンズらしい光学性能に仕上がっています。フローティングフォーカス構造も手伝ってピント距離による収差変動が少なく、撮影シーンを選ばず安定した描写が得られるのがこのレンズの特徴と言えるでしょう。癖が少なく、後から味付けしやすい。
この価格帯のマクロレンズとしては珍しく、等倍シフト可能なフォーカスリミッターと防塵防滴に対応。別売りではあるものの、便利なスライド式レンズフード対応と機能性が高い点も評価したい。

批判的見解

ココに注意

  • レンズフード別売り
  • 細長いデザインと堅牢性
  • フッ素コーティング非対応
  • フォーカスブリージングが目立つ
  • ハイレゾショットで伸びるのは中央?周辺
  • 絞り開放の玉ボケ形状がいびつ
  • フレーム外の逆光が影響する可能性あり
  • 中程度に絞っても光条がシャープとならない

光学性能についてこれと言った弱点は無いものの、敢えて言えばフレーム外の逆光に影響される可能性には気を付けたい。特に絞って使うことが多いマクロレンズで、予想外のフレアやコントラスト低下に繋がるかもしれません。
ビルドクオリティの面では、若干プラスチッキーな外装が気になるものの、価格を考慮すると妥協すべきポイント。また、フォーカスクラッチ構造が無いので、直感的なMF操作に対応していない点も注意が必要。このあたりは登場が予告されている望遠マクロPROレンズに期待したい。

総合評価

管理人
管理人
満足度は95点。
マイクロフォーサーズで本格的なマクロ撮影を楽しみたいのであれば、真っ先に検討したいレンズ。むしろ、これ以外の選択肢は「焦点距離が短い」や「防塵防滴非対応」「AFリミッターが無い」などなど、なんらかの妥協が必要となるのが悩ましい。オールインワンとしては唯一の選択肢ですが、十分に満足のいく光学性能に仕上がっています。プラスチッキーで細長いデザインに気を付ける必要があるものの、強くおススメできるマクロレンズ。

購入早見表

M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
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スライド式レンズフード LH-49
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フォーカスギア PPZR-EP03
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マクロフラッシュ STF-8
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作例

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